五等分の園児   作:まんまる小生

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涙は零れず恵みは静かに零れるその4 恩師と教え子

 デートといっても、他人のものと比べると華のない静かなものかもしれない。

 

 子供たちが見たら怒り狂って駄目出しした後、上機嫌にデートコースを修正するぞ。お付きの人が五人加わってな。

 

 お互いに散財などしない性質だ。二人でデパートの中をうろついても財布の紐は固い。気が合うって素晴らしい。

 

 どうせ金を使うなら家族を喜ばせたい。

 

 だからデートにショッピングを選んだとしても、話題はあいつらに関するものばかりだった。

 

 CDショップにてあいつらが好みそうな音楽を試しに聴いていた時もそう。

 

 

 

「一花の奴、最近洋楽が好きらしい

 前に俺の知人から目当てのCDを借りて見せてやったら大喜びでな」

 

「一花が洋楽を…映画繋がりでしょうか

 私には英語を勉強したいと教えを請われたので、参考書をあげました」

 

「単純な奴だな

 好きなことには意欲的だから、その調子で英語を覚えてくれ」

 

「一度見てそれっきりです

 優しいお兄ちゃんが教えてくれないとやる気が出せないそうですよ」

 

「…単純過ぎる、見返りなんて求めず一人でやれ」

 

「そうかしら…

 一花が何もかも一人でこなせる子に成長してしまうことが…私は怖いわ

 私たちには良い子であろうとしている傍ら、我慢し続けている

 きっと一番に家を出たがっているでしょう」

 

「…」

 

「子供の成長は早いものです

 最近は嘘が上手になって困ります」

 

「嘘ね…誰に似たんだか

 頑張っているところは好きなんだけどな」

 

「その頑張っているところが照れ臭いようです

 隠れて見ていると本気で怒られてしまいますから、気をつけたほうが良いですよ」

 

「思春期の男子か、あいつは」

 

「ふふ、最近は意地悪してでもあなたの気を引きたいのでしょうね

 怒られても嬉しがっているもの」

 

「…単純な奴…」

 

 

 

 調理器具が並ぶフロアにて包丁を眺めていた時もそう。

 

 

 

「二乃から家の包丁の切れ味が悪いと酷評されているのですが、どう思いますか」

 

「どうとは、小学生の分際でプロ意識なんて十年早い」

 

「危ないでしょう、切れ味が良いと」

 

「…もう4、5年台所に立ってませんか、あいつ

 調味料から換気扇の掃除まで殆どあいつが管理してますよ、あそこ」

 

「ですが…まだ小学生ですし、重たい包丁など使ったら…

 …過保護過ぎますか?」

 

「砥石を買って来いと言われなかっただけマシだぞ

 あのケーキ屋にはあるからな、憧れてるに違いない」

 

「…

 夜な夜な二乃が包丁を研いでいる姿を想像して…鳥肌が…

 に、二乃…やめて…っ」

 

「何やってんの、あんた」

 

「全力で避けなくてはいけない惨事です

 あ、ほら これなんかいかがですか

 セラミックで取っ手も可愛らしいでしょう、是非これにしましょう」

 

「あいつ、包丁含めて調理器具には可愛さ求めてないみたいなんで

 携帯みたいにデコレーションなんかしたら受け取り拒否されますよ」

 

「砥石よりはマシです」

 

「いや、別に砥石は買わなくていいからね」

 

「セラミックなら切れ味が落ちることもそうありません

 軽くて、取っても滑り止めがあって、二乃も満足するに違いありません

 砥石で研ぐ事もできませんから」

 

「一旦砥石から離れろ」

 

「包丁を研ぐと手が錆臭くなってしまいますから

 二乃も気に病むでしょう、ですがこれなら――」

 

「わかった、俺が悪かった!」

 

「冗談です」

 

 

 

 小物売り場にて、棚に並ばれた兎の置物に目が惹かれた時もそう。

 

 

 

「色取り取りで五種類揃えるとあの子たちのようね」

 

「五つ子のくせに毛色が違う方がらしく見えるってのも異様だけどな

 結構可愛い割に安いし、買っていってやるか?」

 

「兎は二乃が好きですから…また三玖と喧嘩しそうね」

 

「あいつなら渡すんじゃね」

 

「貴方が買ったものなら断固として譲ろうとしないわ

 あの子の棚の中を見たことありますか?」

 

「棚? あいつらの私物か」

 

「あなたがあげた勉強道具などが沢山詰まっています」

 

「…いやそれ、あげたんじゃなくてやれって言った奴じゃ」

 

「らいはちゃんから借りていた、あなたの写真をしまっていたようで」

 

「またあいつ借りパクしてるのか」

 

「あなたからの贈り物が詰まった引き出しの中で写真が折れていたそうです

 その日は一日泣いていたわ、もう折れないようにあなたの写真を写真立てにいれて謝っていました」

 

「それ俺死んでません?

 というか、人ん家の物破損させないでくれませんか」

 

「すみません

 ですが、最近はデジタルで保管すればいいことを学びまして、携帯に興味があるそうです」

 

「それ…結局二乃と喧嘩になるじゃん…」

 

「…隠し撮りしてほしいと頼まれて困っていると、二乃から相談を受けました

 気をつけてくださいね」

 

「…あいつ、後でしばく

 つーか、いい加減あんたからも止めてくれないかっ!

 おい、聞けぇ!」

 

 

 

 スポーツ用品店でシューズを眺めていた時もそう。

 

 

 

「四葉は以前から中学は陸上部に入ると楽しみにしています

 進学したらあの子が選んだものを買ってあげたいわ」

 

「申し訳ありませんが、その情報はもう古い」

 

「…はい?」

 

「あんたが入院している最中に聞いた話ではバスケ部に入ると」

 

「は…はぁ…そうでしたか

 ですがバスケ部でしたら靴は必要――」

 

「その次に聞いたのがテニス部」

 

「…色んなことに興味があることは素晴らしいことです

 テニスでも靴――」

 

「最後に聞いたのが帰宅部」

 

「…」

 

「全部やりたいから帰宅部に入って、助っ人としてお呼ばれされたいそうだ」

 

「意欲的なことは素晴らしいことです」

 

「運動部を嘗め腐ってるぞ」

 

「…その調子ですと、文化部だとしても運動靴は買ってあげないといけませんね…」

 

「一週回って陸上部になりそうだけどね」

 

 

 

 本屋にて教材を眺めていた時もそう。

 

 

 

「ガイドブックですか、観光にでも行く予定あるんですか」

 

「いえ、五月が欲しがっていたので

 既に何冊か買いまして、このシリーズが好きなのです」

 

「え? あいつ旅行に行きたがっているんですか、意外な趣味」

 

「いえ、お土産や有名なお店の料理を調べるのが楽しいようです」

 

「…納得」

 

「いつか連れて行ってあげたいものです」

 

「…俺が四人と留守番してるから、五月と行ってきたらどうですか

 子供一人なら出費もそうしないだろ」

 

「…いいえ、そうはいかないようです

 姉妹と一緒でないと楽しめるものも楽しめず、美味しい料理がもったいないそうですよ」

 

「母親と一緒でもか」

 

「四人を置いて一人で贅沢するのなら、五人一緒で白米だけ食べているほうが良いと」

 

「…」

 

「?」

 

「いや…まったく

 じゃあ、全員で行かないといけねえな」

 

「はい

 その時は是非あなたも」

 

「了解」

 

 

 

 穏やかな時間が居心地良かった。子供たちがいる手前では話せないことだろう、極めて。

 

 たまにはいいものだった。あいつらといる時間は騒がしく、あっちを向いてこっちを向いてで首が疲れる。

 

 二人きりのデート中、先生の後ろをついていくと…やはり、いつもと違う髪型に違和感を抱いてしまう。

 

 目で追わないと間違えてしまいそうな気がする。そうだ。間違えるからつい見てしまうんだ。

 

 普段見えなかった、背後から首筋が覗けることに。艶やかな髪の間から見える素肌に釘付けになっているなんてありえない。

 

 二人で行動する中、お互いに手は握らなかった。店内では雨の心配はいらない。

 

 先生に限っては珍しい。子供の視線が離れると掴んでくる人だ。

 

 深くは詮索しないでおく。普段デリカシーがないと言われているが、このくらい察するさ。

 

 13時が過ぎて腹が空いた頃。昼食をどうするか声をかけたところで、俺たちは外へ出た。

 

 子供たちもお腹を空かせているかもしれない。心配な母親は食欲はなさそうだった。

 

 以前より短くなった髪を靡かせて、向かった先は公園だった。

 

 雨はやや強くなっている。せっかくの衣装が濡れてしまわないか心配な程に。

 

 雨天に公園に用がある人はおらず。二人で小さな池を眺めていた。

 

 

 

「退屈な時間でしたか?」

 

「…この近くは既に飽きる程、あいつらと遊び尽くした」

 

「それもそうですね」

 

 

 

 参った。やはり気を利かせてしまったか。

 

 雨の粒は大きくなりつつある。しかも風も吹いている。体は冷える一方だ。

 

 それでも二人きりになれる場所は少なく、先生はここを選んだ。

 

 

 

「悪かった先生

 あまり気乗りしなかったんだ」

 

「お気になさらず、私は楽しかったですよ」

 

 

 

 食欲がないのは俺のほうだったのかもしれない。先生に見透かされていた。

 

 

 

「あんたが髪を切った姿を見せてくれたのは嬉しかったんだぜ」

 

「はい」

 

「…」

 

「お疲れですか

 それとも、何かあったのですか」

 

 

 

 せっかくのデートが台無しだ。申し訳なさと後ろめたさが募る。

 

 楽しい時間だった。五月から、五つ子たちから試されると知って張り詰めていたものが解けた。

 

 同時に思い出した。この人には告げるべき話があった。

 

 俺は昨日、大金を手にした。

 

 否、返された。元は俺の金だった。

 

 元より、子供たちと会うからにはその母親とも会うだろうと思って…持ってきていた。

 

 持参していた鞄から紙袋を見せると、先生は怪訝な顔をした。怪しまれているな…

 

 

 

「昨日、親父から

 俺が家に入れていた金…溜めてやがった」

 

「…」

 

「五百万はある

 一枚ぐらい神頼みに使ってもいいかもな」

 

「…

 そうですか…お父様はあなたが懸命に稼いできたお金を今の今まで使っていなかったのですね」

 

「ああ…ずっとな

 だから…今になって」

 

「…」

 

「…こんな金、いらねえって…よ」

 

「上杉君」

 

 

 

 恋人相手に笑い話にもならないものに、笑うしかない。

 

 先生の反応は無だった。淡々と俺の言葉に耳を貸している。

 

 つまらない話だろう。他人の家の事情だ。先生は不用意に突いて盛り上がる程の野次馬でもない。

 

 代わりに、髪に触れられた。横髪をかき上げるように指を指し込まれた。

 

 俯きがちな視線がそっと持ち上げられる。親指で頬を撫でられた。

 

 年上だからって子供扱いしないでほしいぜ。滅入るだろ。

 

 

 

「親父は毎日働いてばかりだ、休みなんて片手で数えられる程度のもんだった

 体調悪くても家を出て行きやがる

 なのに…あの野朗…使わなかったんだぜ」

 

「…はい

 使えるはずがなかったのでしょうね、そのお金は」

 

「あんたは肯定するのか、ふざけてやがる…

 どいつもこいつも…少しは休めよな

 たまには休んで、家族全員で過ごしても良かったじゃねえか」

 

 

 

 溜め息しか出ない。先生も親父と同類だったな。

 

 がさっと紙袋を潰す音が雨音をかき消して響く。家族とはいえ、どうしてそこまでできるんだ。

 

 らいはならいい。なぜ俺に対してそこまでした。

 

 人知れず傷ついてばかりで何も言いやしない。

 

 そんなことしてると…疲れ果てて…死んでも誰も気づいてくれないぞ。

 

 ふと、紙袋を握りしめる手を先生が掴んでいた。髪に触れる手はそのまま。

 

 先生は傘を手放して雨に晒されていた。

 

 俺は慌てて傘を先生に向ける。が、もう濡れてしまっていた。

 

 雨の雫に目元を打たれようと、先生は俺を見据えていた。

 

 

 

「…あなたは積み重ねてきたものを無碍にされたことで、傷ついたのではなく

 今でも、ご家族を助けたいと願っているから傷ついたのでしょう

 困り果てているのでしょう? どうしたら助けたら良いのかと

 私に対しても同じだった、違いますか?」

 

「…」

 

「なら伝えるべきではありませんか

 あなたの本当の気持ちを」

 

「…は?」

 

 

 

 手を引っ張られた。紙袋は濡れるからと鞄に突っ込まれて。

 

 伝えるって…まさか、親父にか。冗談言うなよ。

 

 確かに病院であんたに胸の内を暴露した結果、あんたは入院を認めた。

 

 それはあんたに限った話で…親父に包み隠さず言えというのかこの人は。

 

 傘も差さずにさっさと足早に歩く先生に俺はブレーキをかけた。

 

 

 

「ま、待て先生、断る!

 もう終わったことだ! 余計なことはしないでくれ!」

 

「余計なこと?」

 

「…いや…

 先生、俺は何も返せていないんだ」

 

「…」

 

「育ててくれた恩も、見守ってくれた恩も…まだ半端なままなんだ

 俺に口出しする権利なんてねえ

 これ以上は…俺の我侭だ、ただの甘えなんだ

 受け入れるしかないとわかっているんだ

 だから、やめてくれ」

 

「…

 ふざけているのは、あなただわ

 なぜ今ここでそんな言葉を私に投げかけるのですか」

 

「せ、先生」

 

 

 

 この人は五つ子の親だ。

 

 同じ親として。二人の子供を育て切ったことに尊敬していた人が、すれ違いから失敗に終わろうとしている今、心から嘆いていた。

 

 先生は自分を軽視しがちでも、他人を見離せる人ではなかった。

 

 肩を掴まれ、恩師が必死に訴えかけてくる。掴まれる肩は痛かった。

 

 

 

「それを知るべき相手は、あなたの父親ではないのですか?

 私を咎めてきた貴方なら、十分知っているでしょう?

 なぜ…あの人がそのお金に触れられなかったのか、理解できませんか?」

 

「それは…お袋絡みだろ

 プライドが許さないんだろ」

 

「…果たしてそれだけでしょうか

 頼られる親で、ありたいからでしょう

 それを使ったらもう後戻りできないから、貴方に求められる親になれないから」

 

 

 

 先生の、その一言が、最後の一言が頭の中で沈殿する。

 

 鈍い重みに頭が上手く回らない。

 

 俺は、誰かに求められる人間に… 

 

 思考は途絶える。掴まれ、揺すられ、懸命に答えを解いて教えてくれる先生の顔が見える。

 

 

 

「子供が頑張っているのに!

 あなたのお父様がそんなこと、できるわけないでしょう?

 気持ちだけで十分だと、そうおっしゃっていたのでしょう!?

 なぜわからないのですか!?」

 

「―」

 

「我が子が弱音を吐いて、甘えてくれる日を待っているのではないのですか

 いつも気にかけているのでしょう?」

 

「…そんなものを求められても、困る…」

 

「言葉にはできないのかもしれません

 …きっと、それしかあなたの気持ちに報いる術を知らなかったのです

 少なくとも、私が知っているお父様はあなたへの思い遣りに満ちた方です」

 

 

 

 肩を掴まれた手が降ろされた。

 

 …あんたまで…そんなことを言うのかよ。ぶっ倒れたくせに。

 

 気持ちに報いるだと。頼られたいだと。

 

 気持ちだけで十分だと。俺が頑張っていたからだと。

 

 貧乏人が自慢げに言いそうなものだ。結果が実らなければ意味がない。

 

 結果がなければ、得られるものは空虚なものばかりだから。

 

 せっかく着飾ってくれたというのに。先生の髪先には雫が滴り落ちている。

 

 傘なんていらないらしい。先生は怒っていた。

 

 これまで掴んでは零してばかりだと嘆いていた人間が、俺の手を強く握りしめる。

 

 

 

「貴方は十年前から、変わってないわ

 その優しさで、人の気持ちを蔑ろにするのは…勝手が過ぎるわ…」

 

「…」

 

 

 

 何でそうなってしまったんだと。やるせなさを晒す、初めて見る表情だった。

 

 その顔は、あの時の親父に酷似していた。

 

 俺はあの日。先生を恋人として親父に紹介した日。

 

 俺は気恥ずかしさから目を逸らしてしまった。

 

 親父は恥ずかしげもなく息子の話で陽気に笑い、他人を毛嫌いしていた人間が変わってくれたことを喜んでいた。

 

 そんな親の愛情を知っているこの人は、怒っていた。

 

 

 

「あなたは自分の父親を否定してばかりで、分かり合えてないわ

 

 お金があって、頼れる存在で

 毎日早く帰って子供に夕飯を作って上げられる

 休日は子供たちが望む一時を過ごせる

 困った時は助けてあげられる

 泣いている時いつだって寄り添ってあげられる

 

 それができない親は…別のもので愛情を示すしかないでしょう?」

 

「…ああ、わかってる」

 

「出来た答えではないことはわかります

 模範解答なんて、そんなもの紙っぺら一枚の世界でしかありえないわ

 答えがわかっていても、それが書けない人間がいます

 親であっても、子供であっても

 大切な人が満足できるものを求めて、自分だけの答えを示すのです

 これは…間違いなのですか?」

 

「…だが」

 

「あなたは心から父親を慕っていたはずです

 夢を抱いて、過ちに気づいて泣いたあなたが…これを否定するのですか?」

 

「…違うんだ先生…それでも」

 

 

 

 言葉が見つからなかった。

 

 先生は嘆いている。他人の家庭を慮るその気持ちはあまりにも不器用で…優しかった。

 

 普段、不良生徒に無表情で説教をする人だ。そんな人がここまで怒る理由を考えると胸が痛かった。

 

 子供たちから拙くも無垢な愛情を受けてきた人だ。知っているんだろう。

 

 貧乏人ってのは、残酷だ。

 

 金がなければ、道具がなければ。できないことばかりだ。

 

 役に立ちたい、助けたい。そんな優しさを抱いていても叶えられない。

 

 貧乏な家なら特に起こりえることだ。金も物も、何もかも足りないんだ。

 

 必然だった。だから俺は…優しい家族が好きになれた。

 

 だが、認めたくないものもある。

 

 俺がここで諦めたら、誰が親父を止めるんだ?

 

 お袋はもういねーんだぞ。親父が無理をすれば心配するに決まってる。

 

 

 

「借金を抱えている上、子供二人抱えていたんだ

 馬鹿みたいに貧乏だった、ガキの頃は雑草を食ったこともあった

 そんなガキに自分の分の飯を分けてたんだぞ」

 

「…」

 

「どこに…幸福なんてあるんだよ

 いくら手を差し伸べても、自分から幸せを求めようとしてねえんじゃ…

 金を手放したんだぞ…!

 俺がいくら変わったって、助けられないだろうが!」

 

「…あなたはもう成れたのではありませんか

 だからこそ、それを返したのでは」

 

「…」

 

「手に取れば確かに楽になれる

 ですが、そんなものよりも、子の幸せを願うのが親です」

 

 

 

 それは…死んでも構わないという覚悟もあってのことか。

 

 先生は一歩前に。そして俺の手を、両手を取って、その手に包んでくれた。

 

 冷たくも温かい。胸が震えるほどに。

 

 

 

「子供の優しさだけで強く在れたお父様をどうか誇ってください

 信じてください

 愛情と信頼を持って、これからも支えてあげてください」

 

 

 

 手を胸に抱かれる。

 

 それが先生の切なる願いなら、俺の答えは決まっている。

 

 もう甘えたことも、戯言も終わりだ。変わると決めたら、その瞬間から。

 

 前を向いてお礼を言おう。俯きがちだった視線を上げると先生の真剣な眼差しに蹴落とされた。

 

 

 

「あなたは私が支えますから」

 

「…」

 

「もちろん、命を懸けて」

 

「プロポーズかよ…」

 

「…

 そう捉えていただいて構いません」

 

 

 

 なんてことをしてくれるんだ… 目を逸らすしかないじゃねえか。顔が熱い。

 

 絶対に笑われる。年下の彼氏を辱めて楽しいのか。

 

 

 

「くっ…嫌がらせかっ

 つーか…だせえな、俺

 またあんたに説教くらうなんてな」

 

「年上で教師ですから

 あなたの憧れなら尚更」

 

 

 

 至って真面目に、真正面から告げられたものにさらに顔が赤くなるのが嫌でもわかる

 

 隠そうと逸らしても間を詰められて見上げられる。意地悪だ。

 

 大人がどうしようもない子供を優しく諭す目なのか。傷ついた男を慰める女の顔なのか。目が離せなかった。

 

 濡れて冷えてしまったその体を抱きしめる。濡れた髪に触れて雫を拭う。

 

 こんなんじゃあ、あいつらに認められるはずがねえ。

 

 親父に抱いていた感情は…我侭だ。口にするのも憚られる子供の意見だ。

 

 求められていないのなら俺は何も言うべきじゃない。そんな俺の気持ちに十分だと言われても納得なんてできなかった。

 

 ろくな答えじゃない。だが…もしも

 

 もしも、いや。

 

 親父は見せてくれた。押し返したものを強く握り締めた時のあの表情。

 

 父親にあんな顔させちゃいけねえ。

 

 信じよう、これまで示した己の気持ちを。言葉にできなくても、もう伝わっているから。

 

 

 

「…雨が」

 

「ん?」

 

 

 

 先生の声に、降りしきる雨を二人で見上げる。

 

 段々と雨音が変わりつつある。

 

 どれほど抱き合っていたか、雨はやみ、傘の代わりに虹が差した。

 

 至る所の雫が太陽の日差しを受けて七色の輝きを返していた。

 

 雨音しかなかった静かな公園に、鳥のさえずりも響く。

 

 

 

「先生、服」

 

「…子供たちから怒られてしまいますね」

 

 

 

 水を吸ってしまってずぶ濡れだ。上着を脱いで先生の肩にかけておく。

 

 傘があるってのに何をしているんだか。子供たちに呆れられてしまうな。

 

 俺のせいなんだけどな。先生まで巻き込んでしまった。

 

 閉じた傘を手にして、手を繋いだ。

 

 やっぱり好きなんだな。先生は握り合う手を見て、笑っていた。

 

 

 

「なあ先生

 …お願いがある」

 

「なんでしょう」

 

「こんな金、手に余る

 だから…その、式をな」

 

「いけないわ、私があなたを抱いたせいで上杉君までも濡れてしまいました

 どうか家へ寄って行って下さい、あの子たちも待っているわ」

 

「おい、またか」

 

「風邪をひいてしまいます

 走りますよ」

 

「逃げるな!

 あれだけ啖呵切ってたくせに! 何でそこは頑なに拒否するんだ!」

 

 

 

 あれだけ絡み合っていた指はあっさりと離されて逃げられてしまった。

 

 追いかけて問い詰めるしかないようで、雨でできあがった水溜りを避けて走る。

 

 まだお礼も言っていないというのに、勝手に逃げられたら困る。

 

 背中を向けて前方を走る先生が振り返った。恥ずかしさと照れた笑顔があった。いつも見るあの笑みだ。

 

 屈託のないあんな顔ができるのは、あの人がどこまでも真剣だった証だろう。

 

 澄んだ雫が重なり続けた水面は曇りのない綺麗な青空を写していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

 

 

 空はせっかく晴れたというのに、この家はどこか薄暗く閑散としていた。

 

 

 

「五つ子ゲーム、するのか?」

 

「…うーん…五月ちゃん?」

 

「…」

 

「フー君、ごめんなさい

 五月のことは気にしないであげて」

 

「五人揃わなかったらできないよー」

 

「今はそんな気分じゃない…」

 

 

 

 雨で濡れて帰ってきた先に待っていたのは、部屋の隅で体育座りをしていた五つ子たちだった。

 

 せっかく買った衣服が濡れていることに驚いて、子供たちはすぐに湯を張って母親に風呂を勧めてくれた。

 

 その後はこの有り様だ。嫌なものには耳を塞ぎたい一心なのか。

 

 先生との話を思い返すと…娘たち五人は母親の背中を押したはずだった。しかし今は気持ちを沈ませている。

 

 狭い家だ。風呂場からの物音だけが微かに聞こえる。

 

 先生には長風呂で頼むと伝えてある。この調子だと先生がのぼせてしまいそうだ。

 

 俺も服を塗らしてしまっていたが、なぜか置いてある俺のYシャツに着替えて澄んだ。以前泊まっていた時の物を回収し損ねていたようだ。

 

 散り散りになっている子供たちに手招きする。

 

 一花と二乃、四葉は大人しく集まった。

 

 だがやはり、三玖と五月からの反応は悪かった。三人も無理矢理連れてくる気は流石になかったようだ。

 

 

 

「話があるんだ」

 

「…

 …わかった」

 

 

 

 三玖は俯いていた顔を上げて、億劫そうに立ち上がった。

 

 この子とも話をしないといけない。

 

 五月は…反応なし。嫌々と頭を振って膝を抱えて塞ぎこんでいる。

 

 傍に寄って、その頭を撫でた。

 

 

 

「おまえは変わらねえな

 平気そうだと思って安心してたら、最後になって泣きついてきやがる

 意地っ張りめ」

 

「…

 お母さんが無事で…

 ずっとこの時間が続くと思ってたのに」

 

「…」

 

「一番最初に変わったのは、上杉君じゃないですか…っ

 嘘つきっ

 嘘つきぃ…!」

 

「…変わってはいねえよ

 だが、おまえの期待には応えられないそうにない

 俺はおまえの兄貴分だ、これ以上何を求めるんだ」

 

「…う…ぐすっ…

 三玖がお嫁さんになるって

 駄目なのに

 わ、私だって…なりたいよぉ」

 

「…

 おまえ、それでやたら三玖に噛みついてたのかよ」

 

「上杉君好きなの、私もなのに

 私だけのお兄ちゃんなのに!」

 

 

 

 見てみろ、俯いて泣いているおまえは知らないのだろうが。三玖が気まずそうにみるみる俯いていくぞ。

 

 

 

「おまえな、あれだけ三玖を貶してたくせに」

 

「…誰かが止めてくれると思ってたから」

 

「ん?」

 

「私なんかより、皆が言えば

 聞いてくれると思ってたのに…っ

 でも行っちゃうから! 嫌だぁああっ!」

 

 

 

 末っ子がわぁああんっと声を上げて泣いている。罪悪感を抱くものだが、残念な事に呆れしかない。というか憎たらしい。

 

 こ、このやろう…姉を上手いこと利用する魂胆だったらしい。真面目一辺倒な損ばかりする子だと思っていたら随分と逞しくなったな!

 

 背後を振り向くと一花も二乃も複雑な顔をしている。二乃は半分呆れて怒っている。後でうるさくなりそうだな。

 

 普段は聞き分けの良い子なのに。嫌われているのならまだしも好きだからお断りとは認め難いぞ。

 

 とりあえず、子供が喜ぶようなメリットを並べてみる。別に全てが悪い方に運ぶわけではなかろうが。

 

 

 

「なあ五月、俺は先生と結婚したいと願っている

 あの人を支え続けたいし、俺は…あの人が傍にいてほしい」

 

「…」

 

「つまり…父親代わりになるってことだ

 おまえらと同じ家にいるってことだろ

 今までより仲良くなれるんじゃねーの」

 

「いや、勘違いしないでフー君

 そんなことされたら私たち失恋した上に生殺しの毎日よ、どうしてくれるの

 一生実家暮らしで引き篭もるわよ? いいの? 責任取ってくれる?」

 

「一緒に暮らせるのは嬉しいけど、理想とはかけ離れてるし

 その上…フータロー君とお母さんの子供が私たちの妹になって

 …

 私もう誰も好きになれそうにないかも」

 

「小学生が社会人の男に何を求めてんだ

 気持ちは嬉しいが…おまえらのその要望には応えられない、諦めるんだな

 俺ロリコンじゃないし」

 

「これでもかってくらい死体に鞭を打たれてるっ

 フータロー君の極悪人! 鬼教師!

 結婚したら私たちを顎でこき使うろくでなしになるんだわ…娘にお小遣いせびって!」

 

「あと十年…いえ、五年早く生まれていれば…」

 

 

 

 しっしと追い払う素振りに一花と二乃が悲鳴を上げる。母親と違って、子供の我侭で押し通せる相手ではないことに絶望している。

 

 一花の取り乱しっぷりに頬を抓っておく。

 

 三玖はだんまりを決め込んでいる横で、四葉は姉が苦戦する様子に焦燥感が滲んできた。五月と同じく、根は姉に頼りたい子だ。

 

 その姉が倒されたことに、五月を一目見てから前に出てきた。何やら自信ありげに。

 

 その胸を張る様に座り込んでいた五月の期待度も高まっているようだ。手に汗握って膝立ちになって四葉を応援している。末っ子は都合の良い性格してやがる。

 

 

 

「上杉さんだって、もしお母さんが他の人と結婚したら嫌ですよね!?

 辛くて泣いちゃいますって!」

 

「流石に小学生の頃だったら、どうも思わない」

 

「アウトです! 上杉君がお母さんを愛してるのは知ってますし、今日だってデート行ってたし!」

 

「いいですか上杉さん、愛しているからこそ怖くなるのが当然ですっ!

 上杉さんが皆の気持ちを踏み躙るのはよくありません! ひとまずご一考を!

 今すぐ結婚する理由なんてないでしょう!」

 

「四葉の言う通りですよ上杉君! まだ23で若いんですから後5年10年待っても!」

 

「上杉さんなら余裕ですし! なんなら私たちの誰かが責任取っ――」

 

「私が責任取る、全部任せてくれていい」

 

「あんた、ここぞって時に割り込むんじゃないわよ!? ひっこんでなさい!」

 

「目が死んでたのに生き返ってるわ」

 

 

 

 四葉の提案に三玖が全力で乗ってきた。結局全員騒がしい。

 

 ここまで全員が抵抗してくると、呆れよりも嬉しさが高まりつつある。顔に出ないよう隠すのが大変だった。

 

 反応が悪いと見た四葉は最後まで抵抗してくる。この子との持久戦では俺が負けるに決まっている。

 

 

 

「ほら五月が泣いてるんですよ! 上杉さんは失恋経験ないからそんなことできるんです!

 結婚している人を好きで居続ける辛さを知らないから」

 

「…

 つーか俺がおまえらと同じ歳の頃って

 先生がおまえら生んだ頃だし、旦那もいた新婚さんだぞ

 俺が告白したとして、真剣に取り合ってくれるわけがない」

 

「―」

 

「はっ!? し、しまった!

 そうだった! お母さん結婚してたんだった!

 い、今のなし! なしです!」

 

「強く生きてくれ」

 

「ま、待ってください! ご一考! ご一考を!」

 

 

 

 ごんっと五月が床に顔をぶつけて悶えていた。これでも駄目だった現実に脳が拒否反応を起こしている。憐れな。

 

 自分が小学生の頃は流石に先生に恋い慕っていたわけではないのだが、都合の悪いものは黙っておこう。

 

 四葉がご一考ご一考連呼しているが、おまえドラマか何かで覚えたってだけで意味わかってないだろ。一花と二乃が見るドラマを遠目で見てるだけだしな。

 

 四女の撃沈に、それどころか状況を悪化させたことに姉二人が負のオーラを漂わせている。特に長女が怖かった。

 

 五女は床に突っ伏して泣き崩れ、四女は額に脂汗滲ませて死にそうな顔をして、三女は鬱蒼とした顔で諦観を決め込んで、次女は涙目で半ば自棄気味に頭を掻いて暴れ、長女は思い通りにな

 

らない事態に目が据わっている。

 

 俺はこいつらの親代わりになりたいの? 冗談きつい。四葉の言うとおり考え直すべきなのかもしれない。

 

 

 

「逆効果じゃん四葉、何してんの」

 

「ひぃっ!?」

 

「この馬鹿四葉! 私たちの言い分通りづらくなっちゃったじゃない!」

 

「と、というかみんなお母さん応援するんじゃないの!?

 美容院でそう話したじゃん! 嫌なのはわかるけど我慢するんでしょ!?

 私だって嫌なんだよ!?」

 

「で、でかい声出さないの、ママに聞かれちゃうからっ」

 

「…実際に見送るとやっぱり辛い

 でもお母さんには幸せになってほしいのは本当…

 手放したら最後、もう終わりだから」

 

「み、三玖…」

 

「…何でこんな俺をそこまで好きになるんだか

 先生見ただろ、デートでびしょ濡れにしちまう男だぜ」

 

 

 

 子供たちの心境は母親を応援したい気持ちと、俺に対する抗議で苦悶しているようだ。好みはバラバラなのに。

 

 小学校のクラスメイトに好きな男子とかいねえのか。何度も聞いた話題だが一向に進展がなかった。

 

 五月が立ち上がり、腰にしがみついてきた。よくあることだ。

 

 泣いてばかりいる子が助けを求めている。

 

 五月が正面から、背後からも何人かくっついてきた。三玖と一花だった。

 

 続けて二乃と四葉まで。四方八方から頭を擦り付けられて身動きが取れなくなった。

 

 先生のことを悪く言えないな。確かに今すぐ結婚したい理由も必要もない。

 

 

 

「わかった

 結婚はやめよう」

 

「ほ、本当? それ本当? フータロー君」

 

「フータローっ!」

 

「ああ、先生は恩人で俺の大事な人だが

 おまえらが望むのなら我慢しよう」

 

「…我慢なんて」

 

 

 

 しがみつく子供たちの頭をそれぞれ撫でて降参する。

 

 子供の為に大人が我慢するなんて当然のことだ。

 

 だが一層、五つ子から強くしがみつかれた。三玖も喜びの表情から一転、何か腑に落ちず俯きがちになる。

 

 子供たちが求めているものはこんなものではない。この子たちも本当はわかっている。

 

 我侭だとわかっていても止められないのだろう。大人になってもその我侭は理性的な判断ができないものだ。

 

 

 

「おまえら俺のこと好きなんだな

 しょうがねえなー そこまで言われちまったらお兄さん考えちゃうなー」

 

「うわっ なんかその言い方むかつくなー ちゃんと見てるって約束したくせに!」

 

「何を今更、ゾッコンだって言ってたっつーのっ」

 

「私がこの中で一番ずっと言い続けてきた、お嫁さん」

 

「上杉さん大好きです! 結婚してください!」

 

「こんなに辛いなんて思わなかったんです…!」

 

 

 

 さらっと四葉まで便乗してるし。子供のくせに生意気なんだよ。もう少し恥じらいを持て。

 

 五人の背中を叩いて、この輪を解かせる。

 

 一度は母親を応援し、自分の気持ちを押し込めるつもりだったのだろう。熱が冷めると不満が高まったらしい。

 

 勝手で面倒な五つ子だ。だがそれで良かったと思う。恐らくは先生も…同じように安堵してくれるのではないか。

 

 両の膝をついて、並ぶ五人の前で視線を合わせる。

 

 何も不安に思うことなんてないだろ。笑ってやった。

 

 

 

「先生一人よりも、おまえら五人が好きだぜ

 大好きだ、昔からずっとな」

 

 

 

 告白を受けた相手は、次第にくしゃくしゃに顔を歪ませていく。

 

 もしもだ。

 

 先生と五人の子供。どちらを助けるかと言われたら…俺は目の前で泣きそうになっている子供たちを選ぼう。

 

 きっと先生も同じものを選ぶ。たとえ好きな人を失い泣こうと、罪悪感で死にたくなる程辛くても、子供たちがいれば大丈夫だから。

 

 俺たちはそんな人間だ。おまえら五つ子も面倒だが、それ以上に俺も先生も面倒な人だと思う。

 

 

 

「もしも、俺が後十年遅く生まれていたら

 それか、おまえらが十年早く生まれていたら

 きっと、おまえらの誰かに告白していた」

 

 

 

 もしかしたら。この内の誰かと修学旅行の京都で出会っていたかもしれない。

 

 先生の娘なんだ。同じように、きっと俺の間違いを正して夢を抱かせるのだろう。

 

 そんな世界があったらいいな。そう思ってくれたら俺は…嬉しい。

 

 目尻から涙が零れ落ちているが、子供たちは聞いてくれていた。

 

 そっと五人を腕に抱きしめた。

 

 背中に回された手は小さく、強く掴まれる。

 

 

 

「これは俺の我侭だ

 我侭を許してくれないか」

 

 

 

 少しして…その手は下ろされた。

 

 腕を離すと、子供たちは涙を拭ってこちらを見つめていた。

 

 手を膝元に下ろし、前を向く。五人ももうわかっている。

 

 だが、これで終わりではない。

 

 おまえら一人一人と向き合うつもりだ。

 

 こんなだせぇ俺の勝手な願いだ。

 

 俺はあの時と変わらないさ。必要とされる人間になりたい。

 

 

 

「俺の家族になってください」

 

 

 

 失敗してばかりの人間だ。それでも掴んでほしいと願い、手を差し出そう。

 

 家族に対して、何も思い遣れない人間だ。

 

 それでも、間違ってばかりではなかった。

 

 それを教えてくれたのは俺の家族で、先生で。

 

 おまえたちがいなければ俺は気づけなかった。

 

 俺は弱い人間だから、一人じゃ変われない。

 

 こっちを見て。教えて。遊んで。一緒にいて。助けて。

 

 そんなおまえらが俺の手を必死に掴んでくれたから変われたんだ。

 

 昔と変わらない。俺の手には五人の手が重ねられた。

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