提督は艦娘の母性に救われる《完結》   作:室賀小史郎

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新連載をスタートさせます!
主人公はちょっと癖が強いですが、それでも楽しんでもらえるように頑張ります!
よろしくお願いします!


名将の素顔

 

『整れーーーつっ!』

 

 泊地の本部・大広場で号令が響く。

 晴天の下に集まった提督たちは綺麗に整列し、自分たちの前にある朝礼台へ視線を向けた。

 

 そこには大元帥にして泊地本部長、青江吾郎(あおえ ごろう)、四六歳になるナイスミドルが朗らかな笑みを浮かべている。

 

 本日は日本にとっても、世界にとっても、歴史的な日だ。

 何故なら人類が深海棲艦からシーレーンを奪還し、完全にシーレーンの回復が実現したから。

 

 深海棲艦が現れ、世界が混迷を極めた。

 そこへ艦娘が現れ、長い長い戦いの果てに世界を救った。

 

 世界に先駆けて艦娘を世に出した日本は世界の救世主。

 今や日本なくして世界平和は成立しないだろう。

 

 しかしシーレーンが回復したからといって、深海棲艦はまだまだ脅威。

 人類はこれからも艦娘と共にこの平和の維持をしていかなくてはいけない。

 

 戦争への拒否反応があれだけ強い日本に深海棲艦へ対抗出来る艦娘が誕生したのは意外なことかもしれないが、国の存亡が掛かればそこに右派も左派もなかった。

 シーレーンが回復した今でも、大多数の国民世論は軍の予算維持を支持し、それに伴う課税にも応じている。寧ろ平和と安全のためならば予算を増やしてもいいとすら大多数の国民が支持しているくらいだ。

 一方で消費税を0パーセントに引き下げたり、国会議員や地方議員の給料を大幅に下げたりと日本政府は国民に負担を強いるだけではない。

 

 政府はそうやってバランスを取り、国内秩序を仕切っている。

 民主主義国家なので必ずある程度の不満の声が上がるのは致し方ないが、多くの国民が政府の行動を支持している事実は誰も覆せない。

 変に不安を煽るテレビ局も、禄に裏取りもせずに都合の良い風に情報を流す新聞もSNSも今は鳴りを潜め、あの頃が嘘のように言論の自由の下に健全に機能しているのだ。

 

 日本がこんなにも変わったのは政治の力でも、軍の力でもない。

 自分たちを守ってくれる艦娘たちを支えるのは我々だと責任感を持った、多くの日本国民なのだ。

 日本国民が日本を、そして世界を救ったのだ。

 

 ――――――

 

 シーレーン回復の祝賀会が本部の大広間に場所を移して行われている。

 提督たちの顔は皆笑顔で、それでもこの平和を守ろうと思う力強いものだ。

 そんな中に人集りが出来ている。

 中心にいるのは人形のように整ったベビーフェイスの男の提督で、名を甘江光一(あまえ こういち)と言い、『海戦の策略家』とも呼ばれる泊地、更には日本国防海軍を代表する名将の一人で階級は少将。

 

 歳は三〇。身長はシークレットブーツ込みでギリギリ160センチ。小柄ながら元潜水艦乗りの父親から柔術を習い、その腕前は同盟国の米兵を赤子のようにいなせる程。

 かなりの戦略家で、シーレーン奪還作戦においてもその緻密な計算と予測で敵の大艦隊を己の連合艦隊一つで屠ってしまった。 

 今は正式な場のため前髪を上げているが、普段はそのミディアムの黒髪で左目を隠している。一方で襟足は短い。

 彼は大変整った美丈夫だが、左目のすぐ下に痛々しい切り傷の跡がある。

 本人はそれがコンプレックスだが、周りはそう思わない。

 そのベビーフェイスからは想像もつかない戦略と艦隊指揮能力がある彼程の名将が慕われるのは当然だ。

 

 しかし天は全てを与えない。

 何故なら彼は、

 

「あの、そろそろ僕は鎮守府に戻ります。お母さんやみんなが僕の帰りを待っていますから」

 

 重度のマザーコンプレックスだから。

 

 よって人は彼を陸の上ではこう呼ぶ――

 

 

 

 

 

 甘えん坊将軍

 

 

 

 

 

 ――と。




一話目はプロローグってことで短めです。
次回からもう少し長くなりますのでご了承ください。

読んで頂き本当にありがとうございました!
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