提督は艦娘の母性に救われる《完結》   作:室賀小史郎

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遅くなってごめんなさい!


妙高母ちゃんの絶対愛

 

 深海棲艦との戦争が終結し、提督たちにも余裕が出来た。

 戦争中は休みという休みはなく、日夜策を練り、如何に艦娘たちと日本を勝利に導くことが求められてきた。そしてそれとは別で執務に追われていた。

 

 しかし今となっては日夜策を練ることもなくなり、提督たちも艦娘たち同様に休暇を過ごせるようになったのだ。

 

 光一もその一人。彼の場合はママ艦隊のお陰でまとまった休憩時間が確保されていたので、他所の提督たちに比べたら比較的健康的な日々を送れていた。

 今日は執務もお休みで、

 

「光一ちゃん、お昼に何か食べたい物はありますか?」

「ん〜……母ちゃんの唐揚げ! 柚子胡椒のやつ!」

「あらあらまあまあ……光一ちゃんはいつもそうねぇ」

「だって母ちゃんの唐揚げは世界一だもん!」

「ふふっ、嬉しいわ♪」

 

 光一は長官官舎で妙高母ちゃんに添い寝をしてもらいながら、まったりと過ごしている。

 今は光一にとって最も大切な母親ニウムの充電時間。それ以外では他の艦娘たちも一緒に過ごしたりするが、この充電時間だけは必ず取る。寧ろこれがないと光一ではないのだ。

 

「光一ちゃん、母ちゃんお料理の用意があるから、おんぶでもいい?」

「うんっ!」

 

 妙高母ちゃんの提案に光一は元気に頷いて、母ちゃんの背中にその身を預ける。

 すると母ちゃんは軽々と光一を背負い、おんぶ紐で我が子の体を固定した。因みにこれは飛鷹が絹布で作った物。

 

 ―――

 

「こんにちは〜」

 

「あ、はーい! あらあら、提督もご一緒でしたか」

 

 光一をおんぶしたまま、母ちゃんは鳳翔や間宮たちがいる食堂へとやってきた。

 いつも食材は食堂で分けてもらうのだ。

 

 傍から見たらただの羞恥プレイ罰ゲームだろうが、ここではありふれた光景である。

 故に鳳翔も「あら可愛い」とほっこり笑顔。

 

「こんにちは、鳳翔」

「はい、こんにちは提督」

「食材分けてくーださい」

「ええ、勿論いいですよ」

 

 鳳翔に了承を得て、光一は母ちゃんにおんぶされたまま厨房へ。

 

「光一ちゃん、どれが食べたいですか?」

 

 肉や魚用の冷蔵庫の前に着き、母ちゃんは我が子へ訊ねる。

 

「骨があるやつ!」

「分かりました。では、骨付きのモモ肉ですね。鳳翔さん、大丈夫ですか?」

「ええ、勿論です。いつものように好きな物を好きなだけ持っていってください」

 

 食堂にある食材は基本的に毎日新鮮な物が近隣の市町村から卸される。新鮮といっても、スーパーに出せない訳あり品が多く、前の日の肉や魚も売れ残りが殆どだ。

 軍としては安く仕入れられるし、業者からすれば売れないはずの物にも値がつくということで、まさにWin-Winである。

 また食堂のメニューは間宮たちがしっかりと栄養バランスを考えて、傷みやすい食材から消費していくので何も問題はない。

 

 ―――

 

「下ごしらえも終わりましたし、下ろしますね」

「はーい」

「おトイレは大丈夫ですか?」

「行ってくるー」

 

 光一はそう言うと、一人でトイレへと向かう。

 それを見送りながら、妙高はおんぶ紐のしわをを丁寧に伸ばし、畳んだ。

 

 艦娘故に普通の人間とは力が違う。なので光一を背負っていても、艤装を身に着けているより身軽である。

 

「ただいまー」

「はい。ちゃんとおてては洗いましたか?」

「うん!」

 

 元気に返事をすると、光一はすぐに母ちゃんの胸に飛び込み、そんな彼を母ちゃんは優しく抱き止めて頬擦りした。

 

 妙高はこの鎮守府に初めて着任した重巡洋艦で、光一の第一印象はしっかり者だった。

 しかし彼の過去を知り、その過去の記憶から逃げるように仕事に没頭する彼を見て、妙高は『私が彼の母になる』と決意した。

 既にその時には飛鷹が『お母さん』として君臨していたので、自分は『母ちゃん』になった。

 物腰の柔らかい初春と同じく『母上』のようではあるが、妙高は優しくも厳しい。光一が人として間違ったことをすれば、愛を持って厳しく叱るのだ。

 故に妙高は光一の『母ちゃん』なのである。

 

「では光一ちゃん。お昼の前にお部屋のお掃除をしましょうね?」

「えー」

「光一ちゃん?」

「……やったら、褒めてくれる?」

「母ちゃんが褒めなかった時ありましたか?」

「ない!」

「ふふふ、ではお掃除しましょうね。母ちゃんも一緒にやりますから」

「はーい!」

 

 ◇

 

 時刻はお昼。

 茶の間で光一は母ちゃん特製の骨付き唐揚げを今か今かと待っている。

 勿論、食器を運んだり、おひつを運んだりとお手伝いもバッチリだ。

 

「出来上がりましたよー」

 

 骨付き唐揚げが乗った大皿を持って母ちゃんがやってくると、光一の表情はより輝きが増す。

 塩と柚子胡椒、そして料理酒とおろしにんにくをよく混ぜてパックに入れ、そこへ鶏肉を入れて軽く揉む。

 それから少し冷蔵庫で寝かせ、小麦粉と片栗粉を別々のボールに入れ、小麦粉、片栗粉の順番で全体にまぶしていく。この時混ぜ過ぎずムラがあるくらいが好ましい。

 フライパンに深さ一センチほどの常温の油を注ぎ、鶏肉を投入してから強火で加熱。こうすることによってゆっくりと温度が上がり、中まで火が通るのだ。

 衣が剥がれないように裏返し、パチパチと音がしてきたら火加減を弱めていき、衣がいい色になったら完成。

 

「いただきまーす!」

「熱いので気をつけてくださいね?」

「はーい!」

 

 母ちゃんの言うことは絶対。なので光一は先に春雨サラダを食べる。

 こちらはハム、キャベツ、薄焼き卵を千切りにした物を醤油、白ごま、お酢、砂糖、鶏ガラスープの素、ごま油で和えたもの。添えられたプチトマトも光一の大好物だ。

 

「美味しい!」

「お味噌汁もありますからね」

「はーい!」

 

 しっかり噛み、しっかりと飲み込んでから返事をする光一。

 美味しそうに食べてくれる我が子を母ちゃんは幸せそうに微笑んで、いつまでも見つめる。

 

「おかわり!」

「はい……どうぞ」

「ありがとう!」

 

 早くも一度目のおかわりをした光一。光一はこう見えてよく食べる上に、本当に美味しそうに食べるので、艦隊のみんなは光一が食べているところを見るのが好き。

 故にママ艦隊の面々はそれを特等席で見れるので、よく「ズルイ」と言われる。しかし皆譲るつもりはない。

 

 ママ艦隊は光一と強い絆を築いた者しかそこに名を連ねることは出来ない。

 しかしだからといって光一を無理矢理お世話するのはご法度だ。故にそこまでになるには並々ならぬお艦力が試される。

 

「唐揚げ美味しいー!」

「たくさんありますからね。よく噛んで食べてください」

「ごくん……はーい!」

 

 この最高の笑顔が見られるのなら、自分は何でもやるし、他に譲らない。

 妙高は母ちゃんとしての決意をまた固め、その後も甲斐甲斐しく光一に寄り添うのだった。

 

 最後に残った鶏の骨は水で綺麗に洗ってから水で煮込み、鶏の出汁を作り、夕飯はそれを使ったチャーハンやワンタンスープを振る舞った。

 

 今日も光一は愛情をたくさん注がれ、母ちゃんの胸で幸せな夢へと旅立つ。




読んで頂き本当にありがとうございました!
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