それいけ!血塗ちゃん   作:九条空

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 (そし)子さんから血塗ちゃんのファンアートをいただきました! ヤッター! カワイー!!
【挿絵表示】
自分で血塗ちゃんのイラストを描かなくてよかったなとつくづく思います。
九条空さんから血塗ちゃんのファンアートをいただきました!(自作自演)というネタをやろうと思ってたんですが、それよりも先に本物のファンアートが届いたんですよね。事実は小説よりも奇なりってか。
みなさんそれぞれの血塗ちゃんが見れて最高です。


小話:新田新

「血塗、まだ起きないの?」

「俺の術式は傷をその時点で止めるだけなんで、治療しないと厳しいと思いますけど……」

「でも、もうそろそろ起きる頃だと思うんだけどな」

「おなかにこんな大穴開いてるんですから無茶言わんといてくださいよ」

 

 誰かの話し声を聞きながら、俺は徐々に意識が浮上するのを認識した。

 

「あ、あれすればいいんじゃない? 人工呼吸!」

「僭越ながら、人工呼吸は自発呼吸が難しい要救助者に行うものです。今行う対応としては適さないかと」

「君真面目でおもんないね」

「なっ」

 

 なんか加茂が五条悟にいじめられてる。起きなきゃ。

 

「ガハッ!」

 

 気合い入れて身体起こそうとしたら、その前に口から血が飛び出してしまった。

 さながら、溺れた人に人工呼吸したら口から水吐いたみたいなあれ。

 え? 俺人工呼吸されてないよな? やめてよファーストキスまだなんだから。

 

「今ある傷はこれ以上悪化しないんじゃなかったの? すごい血吐いてるよ?」

「……治療にしちゃ杜撰だと思った、そういう術式か。今のは喉の奥に溜まってた血吐いただけだから。そいつのせいじゃねえからな」

 

 まぶたは開けたものの、とんでもなく目が霞んでいるので、状況がいまいち掴めない。

 とりあえずぼやけた視界内に天井っぽいのがあるので、俺は屋内で寝かされているらしい。

 頭もうまいこと働かない。血が足りん。血が足りんということはイコールで呪力が足りん。

 呪力がある限り失血死はしないが、呪力ごとすっからかんなので失血死しそうだ。

 いや、失血死しそうだったと言うべきか。術式使ってもらってるし。

 

 マジで死にかけた。あーびっくりした。生きてるじゃん。

 ここ地獄じゃないよな?

 ふざけた五条悟がそばにいる状況自体は地獄だけど、まだ五条悟を地獄に落とせるツワモノは存在してないはずだもんな。

 五条悟に殺される可能性くらいは考えてたけど、あんなうっかりうっかり! みたいな感じだったら嫌すぎるんだよ。生きててよかった。

 

 数えるとしたら気が遠くなりそうな数の血管が破れているのがわかる。

 そして破れたままだが、そこから出血はしていない。

 

 なるほど、傷の固定。面白い術式だ。

 便利で使い勝手がいい。便利と使い勝手がいいって意味同じか? 頭回らん。

 とりあえず俺が敵だったらこいつから殺すわ。すっげ厄介。すっげ邪魔。

 

 気を失う前に歌姫が言っていた、もう一人連れてきていたという生徒だろう。

 俺は特級呪霊だというのに、術式使ってくれるなんて優しいな。ちゃんと礼を言わなければならない。

 視線を、さっき声がした方に移動させながら口を開いた。

 

「助けてくれてありが——新田ァ!?」

「え、はい。なんで俺の名前知っとるん——うおお!?」

 

 俺は飛び起き、新田の肩を掴んで揺さぶった。

 

「新田お前なんで男になってるんだ!? 新手の特級呪霊か!? ……ハッ! まさか真人に!? 真人にやられたのか!? そうなんだな!? あの野郎なんてことを! 許せねえ!」

「ちょ、待」

「人間を男にするメリットってなんなんだよ!? いや呪霊の行動に合理性を求めすぎちゃいけないって伏黒が言ってたァ! ごめんな守ってやれなくて! 俺が仇討ってやるからな! いや無理か!? 俺そんな強くない無理だ! にーちゃんに仇とってもらおう! なっ!」

「落ち着け」

 

 新田をガックンガックン揺すっていたら後ろから加茂に羽交い締めにされた。

 

「冷静に考えろ。人間の性別は変わらない」

「は!? 変わるが!?」

「……そうだな。例外があるのは認めるが、今はそうじゃない」

 

 加茂があまりにも真面目だったので、一気に冷静になった。例外を認めるな。

 お前の言う例外って多分性転換手術とかのことだろ。ちゃんと考えるな。

 俺が言いてえのはそういうことじゃねんだわ。

 そして冷静になったら思い出した、新田って弟いたわ。

 

「君が性差をきちんと理解できているのかわからないが、彼には東京校で勤務している姉がいるのでおそらくそちらと誤解している。君にもいるのだろう、兄弟が。その概念は理解しているな」

「は〜!? 舐めんな! 性別くらいわかるし! 今だってちゃんと男だってわかってたし!」

「男だってわかったんやったら違う人間だってわかって欲しいんやけど」

「目が霞んでよく見えねえんだよバカ! 勘違いしてごめんな!」

「ええけど……てか本当に起きてびっくりした……」

 

 あまり目が見えなかったので、ほとんど()で判断してしまった。

 それもかなりアバウトな判定だったので誤作動起きまくりだよ。

 血族なら同一人物だと思っちゃうくらいには雑な判定だ。

 あーびっくりした! 今度こそ新田のこと守れなかったのかと思って泣きかけたぞ!

 

「俺は半分呪霊だから頑丈なんだ。新田じゃないならお前とは初めましてだな? えーと新田の兄か弟、俺は血塗です」

「あ、俺は弟の方です。新田新、京都校の1年です」

「そうか新田弟。新田には世話になってるしお前にも世話になったな。お歳暮贈るか?」

「ええ……? お歳暮……? 先輩にももらったことないわ……」

 

 お前の先輩って常識のないやばい奴しかいないからそりゃそうだろ。

 贈ってくるとして三輪くらいだろうけど、普通に貧乏だって言ってたしな。程度は知らんが。

 あ、そういえば俺って収入ないからお歳暮贈れねえわ。

 

 ぽへーっと京都の連中の顔を思い出していて気づいたが、そういや西宮と歌姫どこ?

 それを聞く前に、加茂に言う。

 

「つか、いつまで俺のこと羽交い締めにしてんの?」

「また暴れられては困る」

「暴徒か俺は」

「暴徒は複数人のことを指すのでこの場合の表現としては適切ではない」

「……真面目ちゃんめ! 勉強になった! へえ〜! お前頭いいな!」

「君よりはな」

 

 当たり前だろ、俺よりバカな奴はそうそういねえわ。

 お前はバカなんじゃなくて天然ボケだよ。嫌いじゃねえ。

 今の今まで笑うだけ笑って見ていた五条悟が口を開く。

 

「そのままでいいから聞いてよ血塗」

「俺がこのままじゃよくねえんだわ」

 

 いや、どちらかというと加茂がよくねえんだわ、加茂の絵面が。

 腹に穴空いた女児のこと羽交い締めにしたままの状況、まずいだろうが。

 

「まず状況説明ね。歌姫と魔女っ子ちゃんは、呪詛師を移送してるからここにはいないよ」

「お前が四肢ねじ切ったんだからお前がやれよ」

「血塗置いていけないでしょー、僕の管轄よ?」

「俺ごと移送しろや。つか俺を家入のとこに連れてくんじゃなかったのか」

「連れていかなくても死ななさそうだったからいいかなって」

 

 なるほど……なるほど?

 つまり俺はまだ名古屋にいるんだな?

 呪詛師が移送された場所は知らないが、メンツ的には京都方面だろうか。その場合、呪詛師の腹に格納されたまんまの俺の右腕もそこに送られたことになるんだけど……まだ隻腕だし……。

 

「治療した方がええですよとは言ったんやけど」

「仮にも特級呪霊よ? 放っとけば意識くらいは取り戻すって」

「……言ったんやけどね」

「新田弟、お前いいやつだな。五条悟と一緒にしたまま放置してごめん。大変だっただろ」

 

 そう言うと、新田弟は苦しそうな顔をした。

 待って、おい、俺の意識がない間に、五条悟に何らかのトラウマ植え付けられてねえか!?

 

「血塗ちゃんやったよね。ホンマ……堪忍な……」

「なんの謝罪だ!?」

 

 絞り出すような声で謝られてしまった。

 

「悠仁が血塗のこと心配してたよー」

「五条悟、にーちゃんに電話したのか?」

 

 苦しそうな新田弟も気になるが、にーちゃんの方が気になる。

 

「うん。てか向こうからかかってきた。血塗がいないんだけど五条先生知らない!? って」

「オイ! この任務のこと言ってねえのかよ! 俺が突然失踪したみてえになってんじゃねえか!」

「忘れてた。メンゴ!」

 

 ざけんなよこいつ。

 珍しく俺に任務があることを前日に報告したと思ったら、それ以外の誰にも、なんも言わずに出てきたのかよ。……さすがに夜蛾は知ってるよな?

 聞きやすいから、にーちゃんは夜蛾より先に五条悟に聞いただけだよな?

 今回の共同任務、明らかに楽巌寺学長絡んでるもんな、知らないってこと……ないんだよな?

 

「ちゃんと俺は大丈夫だって、にーちゃんに言っておいたんだろうな?」

 

 弟として、にーちゃんに無駄な心配をかけるわけにはいかない。

 こないだ真人に襲われた時も、俺についてこれなかったってだけで凹んでたんだ。

 これ以上心配かけられないだろ。何もなかったって感じで帰らねえと。

 にーちゃんの所に戻る前に腕くっつくかな……。そもそも呪詛師から腕取りもどせんのかな。無理なんかな。

 

「うん。でもめっちゃ慌ててウケたなー。血塗すっげえ血まみれじゃんそれ生きてんの!? って」

「オイィ! 電話は電話でもビデオ通話かよ! 正気か!?」

 

 新田弟が「堪忍な……」と呟いた。これかよ!

 

 ああそりゃ五条悟が血まみれの俺を背景にビデオ通話始めるの止められなかったら、まともな良心を持ってるやつはそのリアクションになるなァ!?

 腕無くなってるのまでにーちゃんに筒抜けじゃねえか! 誤魔化しようがねえわバカ!

 

「なにグロ画像見せてんだよにーちゃんが食事時だったらどうすんだ!」

「グロ画像じゃなくてグロ動画だけどね」

「俺気絶してんだから実質静止画だろ!」

「血塗の手、勝手に振っておいたから。あ、残ってる方のね」

 

 切り落とした方の俺の腕振ってたらさすがにサイコパスだろうがよ、コンサートで振るうちわじゃねえんだから。そんな残虐ライブがあってたまるか。

 いや、意識ない俺の手を勝手に振るのはそれだけで十分イカレてたな。

 

「五条悟、無断のビデオ撮影は俺じゃなかったら肖像権で訴えられてるからな?」

「そこなん?」

 

 それ以外に訴えられそうな罪が思い当たらないからしようがないだろ。

 ……いや傷害罪! 傷害罪あったな!? おもくそ腹に穴開けられとるやんけ! なんで思いつかなかった俺!?

 いや俺に人権ないから器物破損か!? ……ダメだ、俺の所有権が五条悟にあるからダメだ! 人権がないから肖像権もねえ! クソッ!

 強いていうなら俺を製作した加茂憲倫に著作権が……あっても意味ないな……。

 俺の名前の表記が血塗©︎になるだけだろ。

 

「でも血塗、その虎ちゃんの服を悠仁に見せるまでは死ねないって言ってたじゃん」

「ああ、言ったな。……? ……! オイ! 俺の未練をなくすなよ!? 殺してえのか!?」

 

 見せるなら新品の状態で見せたかったしそれこそ動画で見せてえわバカ!

 右の袖とか半分以上失われてんだよ俺の腕ごと!

 

「こんな控えめに言って手負いの虎状態見せてもカワイーってならんだろ……」

「控えめに言わないと?」

「瀕死の虎だろうが」

「あはは! まあ仮死の方が近かったけど」

「笑ってんじゃねえぞ。それはそれとして服、悪かったな。せっかく買ってもらったのにもうこれ俺の血で元の色わかんねえし」

「いいよいいよ。それ買ったの学長だもん」

「夜蛾かよッ! 謝って損したわァ!」

 

 五条悟にしては趣味がファンシーだと思ったよッ!

 あーそうか、子供服売り場でヤベー不審者と化す五条悟は存在してなかったんだな良かった。

 ……いや夜蛾が子供服売り場にいるのもどうかな……でもああいうパパも普通にいるよな?

 

「学長に血塗の虎ちゃん写真撮って送ったら『今どこだ』って即レス来たよ、直で見たいくらい似合ってるってことじゃん、よかったね血塗」

「なあそれ俺の現在位置がわからないからじゃないんだよな? オイ? てかお前俺の写真いつ撮ったんだよ、この状態の写真じゃねえだろうな」

「違う違う、新幹線乗る前。血塗の目を盗んで無音カメラ起動するくらいわけないよ、僕の六眼ならね」

「六眼を盗撮に使うな。祖先に謝れ」

 

 そして俺にも謝れ。夜蛾にも謝れ。

 こんなのを最強と呼ばなきゃいけない呪術界全体に謝罪しろ。

 

 ようやく視界が安定してきたので、そこそこ周りが見えるようになった。

 みた感じ、旅館か? 和風っぽい建物だ。

 ここで判明するのは、俺が寝かされていたのが布団だったってことだ。

 血でぐっちゃぐちゃだった俺が寝ていたので、当然布団も真っ赤になっている。

 

「なんで俺を布団に寝かせてんだよ」

「え、そこ不服なの? 寝かせてあげてんじゃん」

「布団ダメになってんだろうが。ブルーシートとかなかったのか?」

「そこに血塗寝かせたらマジの死体みたいじゃん」

「マジの死体ってそうなの? じゃあ新聞紙とか」

「それじゃ干物じゃん」

「干物ってそうなの? ……床に寝かすと掃除大変だもんな。布団なら買い直せばいいからそっちのが楽か。なら仕方ねえ、怒って悪かったな五条悟」

「僕は心広いからね。許す許す」

 

 フローリングでも溝に血液入っちゃうと取りにくいだろうしな。

 いや待てここフローリングじゃねえな畳じゃん。

 じゃあぜってえそのまま寝かせたらダメだ、あぶねえあぶねえ。畳の張替えが必要になる所だぞ。

 つか最悪の場合布団貫通して下の畳に血染み込んでないか!? 大丈夫か!?

 

「すごい頭痛くなる会話しとりますけど、こういうもんなんですか?」

「私に聞かないでくれ」

 

 加茂が頭痛くなってそうな声色になっている。かわいそう。

 ここで鳴る、着信音。五条悟の方からだ。

 

「おっと。ちょっとお話ししてくるから、2人は血塗のことよろしくねー」

「わかりました」

 

 真面目に答える加茂で気づいた、そうかこの場で一番偉いの五条悟か。

 歌姫がいないから指揮系統が変わっている。

 五条悟が指示出す側の人間、上司……いや俺は慣れてるしいいけど、この2人がかわいそうすぎるだろう。

 歌姫から一転してこれはない。温度差でグッピー死ぬ。

 

「はあ……監視が必要なのはあの人のような気がしますけどね」

「新田弟、本当にそれな」

 

 力強く同意した。

 

「あと加茂、いい加減離してくれ。もう暴れねえし」

「本当か?」

「五条悟いないから暴れる理由がない」

「なるほど」

 

 いやそれで納得すんのかい。

 解放してくれるならいいので文句は言わないが。

 

 さっきまでのやりとり、ずっと加茂に羽交い締めにされていたので、ずっと絵面がシュールだった。新しい形のシュールレアリスムだった。

 加茂は真面目にやってるんだろうけど、俺と五条悟は半分以上ふざけてたから一人だけまともそうな新田弟がかわいそうだった。

 もう本当にかわいそう。俺が五条悟のおふざけに付き合ってあげるから他を巻き込まないでほしい。

 

「五条悟が本当にごめんな……あいつは無下限術式で殴れねえから俺のこと代わりに殴ってもいいぞ……」

「せえへんよそんなん。なんで助けたのにトドメささなあかんの」

「それもそうだな! 殴るなら俺が元気な時にしてくれ!」

「いやそれもせえへんわ」

 

 苛立った本人を殴らないとストレスが解消できないタイプなんだろうか。

 

「まあその、あの人もわざとやってるんでしょ」

「何がだ?」

「血塗ちゃんをイラつかせるの。恨みつらみあった方が呪力の回復早いんちゃうの、呪霊なんやし。よう知らんけど」

「……! その発想はなかった! 新田弟、お前、めちゃめちゃいいやつだな!?」

「いやそこで評価上がるん俺なんおかしない?」

 

 えっじゃあ誰の評価を上げるんだ?

 あっ五条悟? 五条悟の評価か。上がるわけねえだろ。

 

「五条悟をそこまで好意的に解釈できる思考回路が善人のそれだ。そして俺は今からその幻想を打ち砕かなきゃいけない……五条悟にそんな発想はない。だっていつもああだもん」

「ああー……」

 

 怒ってる時の方が呪力が早く回復するっていうの、俺は聞いたことがないけど、どうなんだろうな。

 感情のブレで呪力の出力が不安定——過剰出力傾向になるのは聞いたことがあるが。

 どっちにしろさっきのやりとりで俺は怒ってないし恨んでもないから関係ないな。

 何回か驚きはしたけど、あの程度でマジに怒ってたら五条悟と会話なんかできんわ。

 ……いや歌姫は何度かマジでキレてそうだったな。

 

「そや、血塗ちゃんって東京校にお兄ちゃんおるん?」

「お? いるぞ! 虎杖悠仁、宿儺の器だ!」

「ええ? そうなんや……やっぱ宿儺の器って人間ちゃうんや」

「いや人間だわ」

 

 やっぱってなんだよ、やっぱって。

 呪術界ににーちゃん怪物説とか流れてんの?

 

「にーちゃんに会った時は術式よろしくな!」

「なんで出会いが向こうの負傷前提なん?」

 

 いや絶対そうだから。そうでもないと新田弟はにーちゃんに会わねえだろ。

 

「にーちゃんのことお願いするのになんか前払いとかしておいた方がいいか? 渡せるもんあったかな……ないな! 体しかねえわ! それも一部ねえし! わはは!」

「底抜けに明るい子やね……」

「いや、体痛すぎてちょっとハイになってるだけだ。普段はもう少し落ち着いているぞ」

「それ早く言い!? 加茂先輩、なんか麻酔とかあった方がええんちゃいます!?」

 

 加茂は少し迷って、手をチョップの形にした。

 

「これしかないが……」

「麻酔が物理的すぎません!?」

「オイ手刀はやめろ! 特級呪霊がその程度で気絶すると思うな!」

「私の手刀が普通の手刀と同じだと思わないでくれ」

「お前の手刀は超必かよ!?」

「チョーヒ……?」

 

 はわわ……! 超必(ちょうひっさつわざ)が通じないと思わなかった。

 こいつビデオゲームやらんのか、やらなさそう。

 本当に手刀を叩き込まれる前に話題をそらしておこう。

 

「つか、なんで今回の任務一緒に来なかったんだよ新田弟。俺殺すなら必要だろ」

「生かすんやなくて!?」

「あ? そりゃそうだろそういうにンムッ」

 

 加茂に口を塞がれてそれ以上言えなかった。

 なんだこいつ、と思って見ると、糸目を開いて俺を見返してきた。

 あっはい、新田弟には内緒なんだな? わかったわかった。

 

 この感じだと歌姫と新田弟は俺の暗殺に関わってねえのか。

 俺の術式が向こうに正しく伝わっているなら、蝕爛腐術対策として「傷をその時点で止める」っていうのはパーフェクトなんだけどな。要するに新田弟と、俺と壊相兄者は相性最悪。

 にーちゃんと釘崎とも相性最悪だからなー、蝕爛腐術弱点多いなあ。

 

 手を退けて欲しかったので、俺の口を塞いでいる加茂の手を舐めた。

 すると加茂が飛び退いた。おお、さっきのが限界かと思ったがまだそんなに目を開けたんだな。

 

「何をするんだ!?」

「お前こそ何すんだ、いきなり口塞ぐな」

「いきなり人の手を舐める方がどうかと思うが!?」

「どっちもどっちですよ……」

 

 あ、やべ。やっぱ場にまともな人間がいると、ふざけたあとに後悔するな……ごめん新田弟。




この話を書くのが本当にしんどかったのは、関西弁がわからなさすぎたからです。
おかげさまで代わりとばかりに無駄に五条悟が喋っちゃったよ。
新田姉弟って出身関西のどこ? 具体的に何弁? いやそれがわかってもかけねえけどね?
関西弁ネイティブの方、誤字報告機能とかでおかしいところのご指摘をお願いします。

20210410 りゅうだろうさんの関西弁に直しました

方言の正しさはわからないので、基本的に誤字報告として新しく届いたらそちらに変更します。
ピクシブ掲載分は原文のママにしておきます。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14968392
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