まず最初に、うとうと寝てたら京都来てた。
寝ていた、というより、半分以上気絶だと思う。
やはりまだまだ俺は回復できていないらしい。
「あ、起きた」
たどり着いたのは京都校、かと思ったら全然違っていた。
温泉旅館。なんでもズタボロなんで療養しとけと。
「本当面倒ごとを押し付けられたわ」
「療養なのでいいじゃないですか、温泉ですよ温泉」
それで俺、知らない真依と三輪と置いていかれたの?
五条悟? え? 一回帰った? うっそだろ。最後まで面倒見ろよ。
「歌姫先生は後から来るらしいですよ」
「ああそう……そうか……」
京都校の連中に俺が殺されかけたって話、五条悟知ってるんだよな?
え? だよな? そもそも新幹線の中でその話を俺にしてきたのあいつだよな?
向こうが新顔になったんなら、尚更俺が殺される可能性あるって考えないか? なあ? おい?
「知り合いがいなくて心細いと思いますが、私も一応呪術師なので安心してください!」
いや心細いとかは本当にない。むしろいない方がいいなって確信して安心した。
というか呪術師が安心する要素だと思ってる三輪は何?
呪術師のことなんだと思ってるんだ? お前にーちゃんの暗殺任されたことあるだろ?
総合すると。
「お前……いいやつだな……」
預けられたのが三輪じゃなかったら死んでた。
「三輪です! 三輪霞、三級です!」
「そうか三輪。俺は血塗、特級です」
「呪術師の階級と同列扱いで特級呪霊だって名乗るのやめなさいよ」
三輪と違って名乗りはしなかったが、血でわかる。
どうしたって真希の最も近しい親族だ。
「思ってたより小さいのね、呪胎九相図」
そんでもって真希と同じこと言うんだ。
「お前は思ってたより胸がでかいな、真希の妹」
「いきなりセクハラを!?」
俺も真希に言ったことと同じことを言っておいた。作法かと思って。
真依は腕を前で組んでいたので、ただでさえ大きい胸が強調されている。
記憶にある真希の胸より大きく見える。実際の差は知らん。
うーん、名古屋にいれば間違いなくおっぱい選手権優勝、次回シード権獲得だったのに。
三輪がこそこそと耳打ちしてくる。
「血塗ちゃん。女性に限らず、体のことをどうこういうのはあまりよろしくないですよ……!」
「……。そうなの……!?」
えっ、そう、なの……!?
そんなの東京では誰も言ってなかったけど……!
あまりに愕然とした顔をしていたのか、真依が「ガキ……」と呟いたのが耳に入った。あ、あかちゃんだもん……!
三輪と話していると正しい常識が学べるに違いないと思った俺は、積極的に三輪と話すことに決めた。
「三輪か、そういやメカ丸が言ってたな」
「メカ丸を知ってるんですか!?」
「あ? ああ、まあ……おお!?」
「どこで会いましたか! いつ! 今どこにいるかは!?」
「んなあああそんな勢いで揺するなぁ! きもちわるくなる!」
「あっすみません!」
こ、こいつ……前後だけでなく左右にも振ってきやがった。脳みそがシェイクされてクラクラする。
なんだ、動揺した俺が新田弟の肩掴んでシェイクしたのの敵討ちか? その話を知っているのかは知らねえが。
「メカ丸が今どこにいるかなんて知らねえよ、捕まえてないのか?」
「そういう話は聞いてません。少し前から行方不明で。心配なんです。何でもいいから情報が欲しくて」
少し前、というと俺が高専に来てからだろうな。
うわあ、死んでそう。だから五条悟に言ったのに、早く捕まえた方がいいぞって。
いや、死んでるなら死体が見つかってるか?
どうかな。原作ではハロウィン当日まで死体見つかってなさそうな感じだったからな。
「知ってること、なんでもいいので教えてください」
「メカ丸について知ってることか。名前がドチャクソかっこいい」
「そ、そういうことではなく……」
そういうことじゃなかったのか。
じゃあ究極(アルティメット)部分が苗字にあたるんだぜ、とか言っても違うって言われるだろうな。
いやー、三輪がメカ丸と結婚したら究極(アルティメット)霞になるのか。ふふっ、強そう。
「俺と三輪が似てるって言ってたな」
「えっ? それ、どういう意味ですか?」
「俺に聞くなよ知らねえよ」
……あれ? メカ丸が俺と似てるって言ってたのって三輪じゃなかったっけ? 覚えてねえな。
「うーん、でもクラスメイトに例えるってことは、きっと血塗ちゃんが悪い子じゃないってことですよね!」
三輪、めっちゃ良い奴じゃん。
これで惚れない男いる? そんな男はよっぽどイカレてるぜ。
あ、呪術師はみんなイカレてるんだった。
「とにかく、仲を深めるために一緒にお風呂に入りましょう! せっかくの旅館ですしね!」
いいアイディアとでも言うようににっこり笑った三輪も、やっぱり少しはイカれているのかもしれない。
「真依も入りますよね?」
「入るけど一緒はいやよ」
「エー? 三輪一人じゃ俺の監視に不安があるからお前も来いよ」
「私が目を離した隙に同期をいじめる気?」
「自分の目で確かめな」
ニヒルに笑った俺を真依は心底嫌そうな顔でにらんだ。ヘヘン、美人ににらまれても怖くねえなあ! 美人は真顔のほうが怖えんだよ!(※個人の感想です)
真依は結局湯舟までついてきた。いい先輩である。
体を洗い終わって湯船に入ってしばらく、三輪が聞いてきた。
「血塗ちゃん、のぼせてませんか?」
「うん? 呪霊だから平気だぞ」
「そういうものなんですか?」
「そうだな〜」
なんとなくで言っただけでなんの根拠もなかった。改めて考える。
「低級呪霊なら壁すり抜けられるらしいし、お湯もすり抜けられるだろうからのぼせないだろ。上級なら気温差くらいで自分の呪力削れることないし平気だろう。うん、そういうものだと思うぜ」
「血塗ちゃんはすごいんですね〜」
「ククク、しかし俺は呪胎九相図の中で最弱……」
「な、なぜ急に自虐を……?」
三輪はギャグ漫画日和を読んだことがないらしい。
読んでても今の文脈は意味わからんかったか。
お兄ちゃん達の方がもっとすげえんだぜって言おうと思っただけだ。
「私はもうあがるわ」
「ム。そうか、なら俺もあがろう」
立ち上がり出て行こうとする真依について行こうとすると、眉を寄せて物理的に見下された。
「なんで私についてくるの? 媚びても好きになってあげられないわよ」
「は? なんでお前に好きになってもらわなきゃいけないんだ? 真希の妹がのぼせそうなら三輪ものぼせそうかもしれないからあがるだけだぞ。三輪はいい子だからどうせ俺に付き合う気だろうしな」
俺と真依がバチバチににらみ合った。
三輪が「私はまだ大丈夫ですよ〜」と呑気に言う。
風呂から上がった後に3人で牛乳飲んで卓球した。たのしかったです。
温泉回は野球回と同じくらい必要