多分主人公以外のオリキャラが登場するので人を選ぶかと。
それに伴い、小説の分類を短編から長編に変えておきました。
続き書き上がるまではしばらく小話でお茶を濁させてください。
俺たち兄弟のために割り当てられた部屋に、たまたま俺が一人きりになっていたとき。
扉が開き、ひょっこりと白い頭が覗いてきた。
「ねえ血塗、いつ再戦してくれんの?」
「お兄ちゃんが良いって言ったらなー」
「絶対言わないじゃんあいつ!」
俺も言わないと思う。
つまり俺が真人とボードゲームで再戦する日は永遠にやって来ないということだ。
「じゃあ脹相がいない間にさぁ——」
「
手裏剣状の血液が飛んできて、真人の首を刎ねた。
そのまま首が転がり落ちる。
「キャーッ!?」
突然のホラー展開に俺は驚いて両手で口を覆ってしまったが、覆うなら目にするべきだった。
真人に嫌がらせで両目潰しされたばかりである。
学ばない生き物、それが俺だ。
しかし、俺が自分のどこを守らなくても、脹相お兄ちゃんが守ってくれていた。
いつのまにか俺と真人の間に入り、背中を見るだけでもわかるほどの怒気を発している。
「ちょっと。夏油に喧嘩すんなって怒られたばっかじゃんか」
「お前には弟に近づくなと言ったばかりだ」
真人は地面に落ちる前に、自分の頭部をサッカーボールのように足でドリブルすると、顔の前面をこちらに向けて両手でキャッチした。
これがデュラハンというやつか。
すでにフランケンシュタインみたいなのに怪物属性を増やすな。
「もう弟じゃないのに?」
「弟だ」
確かに、真人のせいで俺は弟じゃなくて妹に……と考えたところでお兄ちゃんが振り返ったので俺はビクッとした。
「弟だ」
2回言った。
「弟です」
自称しておいた。
お兄ちゃんがそう言うならそうなるからな。
「消えろ」
「ま、今日はいいや。なんか面白いゲーム見つけとくねー」
「それは正直気になる」
「血塗」
あ、はい。ごめんなさい。
そんな、飴ちゃんをもらったら誘拐されそうな子どもを見るような目で俺を見るのはやめてくれお兄ちゃん。
行かないから、ついて行かないからな。
願望が素直なお口からこぼれ落ちてしまっただけで、いざとなったら俺の理性がストップをかけてくれるから。
お兄ちゃんは真人の足音が十分遠ざかってから扉を閉めた。
それから俺を振り返って言う。
「もう一度あれに縛りを持ちかけて体を変える気はないのか」
脹相お兄ちゃんが使うあれという代名詞が指すのは、きっと間違いなく真人のことである。
「えー? でもだって、勝手に縛り結んだからお兄ちゃん怒ったんじゃないのか」
「今度は俺が見ててやる」
見てればいいんだ。あ、ライフセイバー的な?
俺が溺れたら助けてくれるのか……縛りってそういうのありだったっけ。
俺は首を傾げた。
「俺がどういう姿ならお兄ちゃん的に満足?」
「……血塗はどんな姿になりたいんだ」
俺が吉良吉影なら質問を質問で返すなあーっ!! ってキレてるぞ。
普通に脹相お兄ちゃんにとっての理想の弟像を知りたかっただけなのに。
俺って結構真面目だから努力はするぞ。能力はないので結果はついてこないと思う。
「お兄ちゃんたちに似てればいいから、今ので別にいいけど」
ああ、でも髪の色は黒の方が良かったな。
脹相お兄ちゃんも壊相兄者も、どっちも黒髪なのになんで青髪にしたんだ?
わしゃ初音ミクか。
あ、初音ミクで思ったけどツインテールにしようかな。
ちょうどお兄ちゃんもツインテールだし。
うなじに髪が当たってなんか変な感じがするのだ。
男だった前世ではこれほど髪が長かったことはない。
試しに自分の手で適当に髪を掴んで、上の方でツインテっぽくしてみる。
「どう?」
「……」
いや無言やめて。
俺がめちゃくちゃイタイやつみてえじゃん。
もともと男のくせしてなにかわいこぶってんだっていう目線なのかそれは?
髪から手を離し、ちょっとだけ落ち込みながら、思いついたことを言ってみた。
「壊相兄者の髪型にしよっかな」
「結んでやる」
なるほど、脹相お兄ちゃん的にモヒカンはなし。
勉強になりました。
……本格的に壊相兄者のあの格好についてどう思っているのか聞きたくなってきたな。
でもそれはパンドラの箱なのかもしれない。俺は口をつぐむことにした。
人形のように持ち上げられて、俺は後ろを向いた状態で、あぐらをかいたお兄ちゃんの足の間に座らされた。
お兄ちゃんがどっかから取り出した紐で髪を結んでもらう。
すげえ器用だな。なんでそんなことできるんだろうか。
ゴムならまだしも紐って。俺できる気しねえな。ゴムでも髪結んだことねえし。
元々の姿だと、俺たちは全然似ていない。本当に兄弟? という感じだ。
俺と壊相兄者はまだいい。術式が一緒だから。
だが、脹相お兄ちゃんに似ているところと言われると、ちょっと思いつかなかったのである。
うーんなんだろう、強いていえば血液が術式において重要なファクターになることだろうか。
だがそれって加茂憲倫が血を混ぜたからであって、それを俺たち兄弟の似ている所以には絶対に置きたくないんだよな。
あ、元々の俺とお兄ちゃんだったら、上の方の口があんまり動かないところとかは似てたかも——口に上とか下とかっていう形容詞をつけると途端に気まずくなるのはなんで?
読んでた官能小説の語彙のせいだろうか。いやそれがもう解答か。
「できたぞ」
「ありが……ハッ! 自分じゃ見れない!」
「今気づいたのか」
鏡は壊相兄者が持っていると思うが、今どっかに行っちゃってるからな。
「お兄ちゃん、俺似合ってるか?」
「ああ」
じゃあ見れなくても良いな。
お兄ちゃんに似せた髪型にして、お兄ちゃんが似合ってるって言うんならこれが正解だろ。
「だがカタチがすべてじゃない」
「まあな! 血が一緒だもんなー!」
うざってえ宿敵の血も混じってはいるが、俺たちは兄弟だ。
血を分けた兄弟、という表現に前世から憧れていた。
だってカッケーもんな。盃を交わすでもいいけど。
「お兄ちゃんが心配してるのは俺が女になったからか? 俺たちの母親みたいに俺がなるかもって?」
俺たちの母親は、呪霊と子を成せる特異体質だった。
それを最悪の呪術師、加茂憲倫に目をつけられ弄ばれたのである。
すっげえかわいそうだとは思うけど同じくらい俺たちもかわいそうだからなんとも言えない。
なんだかんだきちんと死ねただけましかなとは思う。
俺たちって生きられてすらいない生き地獄っていう最悪の中途半端を味わわされてるからね。
今の俺の体には子宮がある。
受肉しているのできっと普通に子が孕める。
あの母親の血を引いている以上、もしかすると人間だけじゃなく呪霊の子も孕めるかもしれない。
かわいそうでも抜けるタイプだけど自分が
「わぶっ!」
突然引っ張られ、お兄ちゃんの胸板に後頭部から激突した。
お兄ちゃんの腕が俺の腹側に回り、これはいわゆる——あすなろ抱きだ!
キムのタクさんがドラマの中でやったことからその名がついた、ざっくり言うと後ろからのハグ。
前世含めてそんなんされるの初めて。
お兄ちゃん急になんでぇ? 俺は内心首をかしげた。
「そんなことには、お兄ちゃんがさせない」
脹相お兄ちゃんの言葉に、俺はますます首をかしげた。
当然のことを言われると逆に不思議になっちゃうこと、あるよね。
「うん、お兄ちゃんがいるならそうはならないと思うぜ」
お兄ちゃんが真人にブチギレる理由として、思い当たったのはそれくらいしかなかったんだけど外れちゃった。
俺はバカだから頭のいい脹相お兄ちゃんの考えていることは読めない。
じゃあもうお手上げですわ。
お手上げついでに、おなか側にあるお兄ちゃんの腕に手を添えておいた。
……これ、抱きつかれてる方は腕の所在がなくなるんだけど?
バスケじゃないのに左手は添えるだけでいいんですか。
普通にハグの方がいいんじゃねえだろうか。そっちの方が相互的だよね。
「よくわかんねーけどお兄ちゃんがそうしたいなら俺、そうするよ。まひンンッ! えーっと、あれのとこ一緒に行く?」
「いや、いい」
いいんだ。
今のは俺の聞き方が悪かったかもしれない。
あたかも脹相お兄ちゃんが真人に会いたがっているみたいな言い方になっちゃったもんな。
「俺もっかい真人とゲームしたいかも。お兄ちゃんも一緒に——」
「ダメだ。絶対に行くな。やめろ」
「んグエッ」
食い気味で否定してくると同時に、腹の締め付けがきつくなったので呻いてしまった。
ギブギブという意味でお兄ちゃんの腕をタップするとすぐに緩くなったので、俺はお兄ちゃんの腕から抜け出して、正座で向き合った。
「行かないから怒んないで……」
もう俺、お兄ちゃんのこと全然わかんない。弟失格かも。
しょぼん、と顔文字みてえな表情を浮かべていると、お兄ちゃんが言った。
「……ゲームとかいうやつがやりたいなら持ってきてやる」
「ほんとかぁ!? お兄ちゃんも一緒にやろー! 兄者もよぼー!」
まあまあの勢いでお兄ちゃんに飛びついたが、まったく体幹をブレさせることなく受け止めてくれた。
俺たちのお兄ちゃんはマジで最高だぜ。
俺と壊相兄者がお遣いに出る、ほんの数時間前の出来事であった。
脹相はレイプと3Pが地雷なので貸すAVには気をつけよう。
兄弟の仲良し描写が本編で全然できなかったので追加しておきました。
次は感想での疑問に答えるために五条悟との話の予定でしたが、名前が2文字のキャラ続けた方がタイトルの文字数が並んでキレイだし真人にするかも知れません。