それいけ!血塗ちゃん   作:九条空

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小話:真人

 五目並べで真人をボコボコにした俺は、「もっかいもっかい!」とうるさい真人を黙らせるべく囲碁で相手をしていた。

 このバブちゃん呪霊は、五目並べで勝てない相手に囲碁で勝てるわけないってことがわかんないらしい。

 まったく、もっとゲームを研究してから出直して来てほしい。

 

 俺白がいいって真人は後手番持って行ったが、普通に黒の先手の方が有利だからな。

 将棋もオセロも先手のが強いんだわ。

 だからコミ出しがあるわけで——まあそんなことわざわざ教えてやらんし、ハンデつけたら舐めてんのかって逆にキレられそうだからやめておく。

 

「半分人間で半分呪霊ってどんな感じ?」

「逆に聞くけど全部呪霊ってどんな感じ?」

 

 碁石をパチパチ打ちながら質問をされたので、俺は質問で打ち返した。

 俺の打ち方を見よう見まねで真似したそれが妙に様になっていてムカつく。

 なにその質問、って顔をされたが、俺だってなにその質問って顔する権利あるだろ。

 

「自分のことすらわかってないくせに他人を知れると思うなよ」

 

 知ろうとするのはいいと思うけどね。

 自分のことをわかっていなくても、他人を知ろうと努力するのは大事だと思う。

 人を知ることで己も知れるからな。

 

 じゃあなんで俺が突き放した言い方したかって?

 相手が真人だからだよ。ムカつくんだよな顔が。

 つかなんでこいつの成長を応援しなきゃいけねえんだよイケメンは爆発しろ。

 

「は? お前は自分のこと知ってんの?」

「知るわけないだろ! 生まれて1時間のバブちゃんだぞ!」

「なんで俺キレられてんのかな……」

 

 顔がムカつくからに決まってんだろ!

 

「呪霊だけの世界作りたいんだっけ? だとしたらお前らは旧タイプの呪霊ってことで生き残れなさそうだな」

「旧タイプ?」

「呪いは人からしか生まれない。非術師でも術師でも呪いは作れるけど、世界の全部を呪いにしたいなら、みんなが両面宿儺にならなきゃいけないだろ」

 

 両面宿儺は人だ。

 人の胎から生まれている。

 呪いの王っていうけど、そもそもあれって概念的に呪「霊」でいいの?

 復活前の今なら霊でいいのかな。

 

 呪霊は自分で自分を呪えない。

 自分自身に対して術式を使えるとかいう話ではない。

 第二の両面宿儺にはなれないってことだ。

 端から肉体を持っていないのだから、屍蝋を遺すなんて芸当は不可能だし。

 

 呪霊に自分で新しく呪いを作り出すってことはできないはずだ。分身ならまだしも。

 そんなことになってんだったら倍々ゲームで呪霊増えてもうすでに人類滅んでるでしょ。

 

 子孫残せない種族が生き延びられると思ってんのか?

 この地球の歴史的に無理だろ。

 寄生虫だって子孫を残せるのに、呪霊には不可能。

 呪胎という呪霊の赤ちゃんの概念はあるが、それだって結局は人間から生まれてくるのだ。

 

「お前は自分の呪いを誰にも託せないもんな。カワイソ」

 

 死んだらそれで終わり。

 後続を育てることもなけりゃ、自分の意思を継いだ何かがいるってこともない。

 まあ、人間が恐れるものなんてそうそう変わらないから、また似たような呪い自体は生まれてくるだろうけどな。

 

「そんなことする必要がないじゃん。誰にも負けなければ呪い続けられるでしょ」

「あっめえ考えだな。人が後続になにかを託すのは、弱いから、死ぬから、ってだけじゃねえし――そもそも強いだけでは達成できないことが山ほどあるんだよ。お前はまだ知らねーだろうけどな」

「なんでお前は知ってんの」

「プププーッ、聞いたらなんでも教えてもらえると思うなよ」

「血塗は誰かに託すの?」

「兄弟になー」

「それは教えてくれるんだ」

 

 俺には兄弟がいるから存分に託していく所存だ。

 だってお兄ちゃんたちの方が強いし。

 そりゃ俺だって弟なら守れるけど、そもそも今どこにいるんだかもわからないからなあ。

 

「ふーん」

 

 真人は興味なさそうに、碁石をおはじきのように飛ばした。

 

「ちょおい! 盤面めちゃくちゃにすんな!」

「もーいいよ絶対負けてたもん」

「負けるまでやれって言いたいが素直に負けを認められるのは偉いな褒めてやろう」

 

 実際めちゃくちゃ前の段階から勝負は決まっていたので真人が負けを認めるなら問題ない。

 参りましたの一言くらい欲しかったけどな。

 

「面白そうだから血塗と縛り結んであげてもいいよ。ただし俺が勝負方法決めるからね」

「……ハッ! そういえば縛り結んでない!」

「今気づいたの?」

 

 今気づいた。

 だって縛りとかやったことな……嘘です、呪術師に特級呪物として存在することを許される代わりに自分からはなんもしないっていう縛り結んでた。

 でもそれお兄ちゃんたちの見よう見まねで適当だったし仕方ねえよな。

 

「……俺、なんでこんなのに勝てないんだろ。余計に悔しいから、もうちょっと賢くやってくんない?」

「人生の立ち回りのうまさとゲームのうまさに関連性がない事が証明されてよかったな」

 

 俺は前世の頃から体感で知ってるぜ。

 テトリスがうまくても部屋は汚かったからな。

 コンビニ弁当の空き箱とペットボトルは横に並べても消えないんだもん。

 

「将棋崩しって知ってる? これなら俺でもいけるでしょ!」

「プププ! その勘違いを正してやるよ!」

 

 この後めちゃくちゃ勝利した。

 

「ねえほんとになんでそんな強いの!? 指一本でコマ触るってルールだったから指変形までしたのに!」

「将棋崩しに指の形関係ねえだろ。見ろよ俺の尖った指、超絶クールだけど将棋崩しには向いてねえぞ」

「だからなんでそれで俺が負けんの!? 悔しいんだけど! もっかい!」

「何回やっても一緒だから構わんけど」

「次これ! ジェンガ!」

「めちゃめちゃいろんなゲームあるじゃん」

 

 遊戯王でも目指してんのか?

 俺も目指そうかな。口から滅びのバーストストリームを撃てるように……いや方向性が違うか。

 それ遊戯じゃなくて海馬の方だしな。

 

 その後も続いた「もっかい!」を全部受け入れても集中力が切れることがなかったので、半分呪霊だと疲れ知らずなんだなと俺は感動した。

 このゲーム大会にお兄ちゃんたちもいれば最高なんだけどな……と思ったところで、そもそもこれゲーム大会じゃなかったなと気がついた。

 

「はい真人、UNOって言ってない」

「あークッソ!」

 

 そして俺は辞め時を完全に失ってしまったので、気がついたらゲームを始めてから8時間が経っていた。

 

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