そのアンサーは五条悟との会話でやるべきかなと思いましたのでこちらをどうぞ。
いずれは渋谷ハロウィン編を書いて完全な解答とさせていただきたいところです。
俺は一応、転生者であることは伏せておこうかなと思っている。
別に言ったって構わないのだが、ただでさえ頭がちょっと弱いと思われているのに、さらに不思議ちゃん属性が付け加えられることで、発言の全ての信用を失う羽目になりそうだからだ。
俺の目標はとりあえず決まっている。
兄弟たちの生存。
加茂憲倫の殺害。
こんなとこだ。
世界の覇権を人間が握ろうが呪霊が握ろうが、両面宿儺が復活しようが、呪霊がいない世界が達成されようが、そういうのはどうでもいい。
俺自身さえ死んだって構わないのだ。
だって転生している時点で一回は死んでるわけだしな。
今の俺はボーナストラック。おまけの人生だ。
そりゃあ楽しめるだけ楽しんで生きてやろうとは思うが、苦しんでまで生き延びたくはないね。
だから拷問されたらキリキリ吐いていく。
担当は意外にも五条悟だ。最強だからそういう雑務はしないと思っていた。
と言いつつも、出張ってきた理由はわかっているんだけど。
「お前を受肉させた呪術師の名前が夏油だって?」
「そう呼ばれてたよ。知り合いか?」
何も最初から五条悟が俺の拷問を担当したわけじゃない。
俺が前世の知識的にまったく知らない、多分それなりにそういう業務——呪詛師を吐かせるのに慣れている呪術師が俺との対話を試みていた。
そこで出てきた情報が伝わった結果、やってきたのだろう。
「親友。もう死んでるから人違いだと思うけどね」
「人違いじゃねえよ」
こんなのは前世の記憶を使わなくったって話せる内容だ。
「だってあいつも死んでたもん」
そういうのはわりかしわかる。
俺の術式が関係しているのか、生まれが関係しているのかはわからないが。
「ゾンビになって蘇ったって?」
「そっちの方が良かったのか? 額に縫い目あったから普通にガワだけだろ」
あ、ヤベ。今のに関してはかなり適当だった。
確か六眼で見ても本人にしか見えないんだったか。
まあ俺は元の夏油傑を知らないからいっか。
「親友なら死体もちゃんと守ってやれよ。せっかく生まれて死ねたのに」
適当に話ごまかそう。
「ま、本当にお前の言う夏油かはわかんない。似顔絵描いてやろうか? 俺絵うまい自信ある! 描いたことねえけど」
「その自信どっから出てくんの?」
前世では四コマ漫画を連載していた。小学校の頃だけど。
「腕縛られてるから口頭で言うしかないかぁ。夏油はムカつく顔してたな」
「よくそれで伝わると思ったね」
「変な前髪」
「いやもういい、伝わったから」
伝わってんじゃん。
「他にもなんか聞くか? 俺あいつらの術式についてはさほど詳しくないかな。ジョーゴが炎でハナミが草で、ダゴンが水で真人が魂改造するクソ外道だってことくらいしか」
「いや詳しいな。なんで親切にそんなこと教えてくれんの?」
「にーちゃんが死ぬのはいやだからな。あいつらにーちゃん殺すもん。体か精神かは知らんけどさ」
真人は虎杖悠仁を殺したがっている。
他の呪霊たちは、宿儺を復活させることで呪霊の世を築きたいと思っている。
どっちであっても俺は困るのだ。にーちゃん死ぬじゃん。
俺が勝手に「にーちゃん」呼びをする人間を増やしたことで、にーちゃんがお兄ちゃんたちに殺されるという可能性もワンチャンなくはない。
その場に俺がいれば背中に王蟲の幼虫を囲うナウシカばりに「やめてー! 殺さないでぇー!」って言ってあげられるけどどうかな。
そもそもその場に俺がいなければ虎杖悠仁をにーちゃん呼びしていることも割れないか。
ってなると、お兄ちゃんたちは宿儺の復活のために動くだろうから結局にーちゃんを……あー頭痛くなってきた。
どうすりゃいいかな。まあいいや、ノリでなんとかなるだろ。
「で、お前は親友の死体好き勝手使われててもオッケーなタイプ?」
「そう見える?」
「うーん、性癖は人それぞれだからな……」
「多様性を認めてくねぇ」
俺自身が人間と呪霊のハーフだからあんましいろんなもの否定したくないよな。
あ、今はハーフじゃなくてダブルって言うんだっけ。
「もうちょっと色々知ってるけど、言っても罠だと思われてめんどくさいことになりそうだから言わなくていいか?」
「うんいいよーって言ってもらえると思った?」
「ワンチャンあるかなって」
この世界に生まれてから知った情報に、大したものはない。
だから渡すならそのほとんどが前世のそれになるが、果たしてどこからどこまで話したものか。
バカだから考えたくねえなあ。
でもここで考えなかったらもう一生頭使うことないし、一応考えるかぁ。
言いたくなくても吐かされそうだしな。
「あっそうだ、他にも吐かなきゃいけないものがあったんだった」
「なに?」
「これ」
べぇっと舌を伸ばし、大きく開けた口から両面宿儺の指を吐き出した。
いつまでも体内にあると落ち着かないので、早々に吐き出しておきたいと思っていたのをすっかり忘れていた。
なんかこう、宿儺の指が体にあると、総理大臣と添い寝してるみたいな緊張感がずっとあるんだよ。
「うわキモ」
「今キモいって言った!? 呪いの王に失礼だなー!」
「キモいのはお前」
「なんだ俺か」
「ばっちいから触りたくないなぁ」
「俺も縛られてるから触れないんだけど。洗面器に吐けばよかったな、ごめん」
「宿儺を吐瀉物扱いしてるのそっちじゃん」
消化しきれずに口から出したんだから分類的に吐瀉物だろ。
「お前、人間らしすぎない?」
「そう? 初めて言われた。てか生きてる人間とちゃんと話すの、五条悟が初めてだし」
「拷問をちゃんと話すって呼ぶのどうかと思うよ」
「あとは挑発と命乞いくらいなんだけど」
「それなら拷問は相対的にはちゃんと話していることになるね。相対的にはね」
「でも世の中のものは全部何かと比較しなきゃわかんないだろ」
「僕、倫理科目教える資格持ってないんだけど」
そもそも五条悟は教師の資格を持っているのだろうか。
呪術高専は特別だから教員免許はいらないのだろうか。
それとも五条悟はきちんと高校に教育実習とかやりにいってんの?
……まあ人気でそうだな。こんな先生いたら面白いもんな。イケメンだし。
「てかにーちゃんは無事? 変な後遺症残ってないか? 首絞めた女の子も平気か? あんなのやるの初めてだったからそれこそ後遺症が不安だな。あ! 最後に見たときは普通にしてたけど黒い人って脳への損傷は……」
「待って待って」
「なんだよ」
「悠仁に妙に執着してるのはわかったけど、野薔薇と恵はなんで?」
「五条悟、さてはお前一人っ子だな?」
「今関係ある?」
「弟はにーちゃんの友達とも仲良くしたいもんなんだよ! バカめ!」
もしくは俺のにーちゃんを取るなよ! と嫉妬心に狂うかのどっちかだ。
俺はどちらかというと一緒に仲良く遊びたいタイプ。
え? 兄のことを好いていない弟の場合? ちょっと考えつかないですね。
「連れてきてあげよっか」
「え!? 危ないからダメだ!」
「いやいや、散々言っといて危害加えるつもり?」
「危ねえのは立場の方だろ。なんで特級呪物の受肉体なんかと会わせようとするんだ、ただでさえ危ういにーちゃんの立場を揺らがす気か。呪霊側だと思われて呪術界に消されちゃうだろ。にーちゃんが俺と仲良くしてたら特級呪物に洗脳されてるとか言われるぞ」
「どっちかというと君の方が洗脳されてそうだけどね」
は? 洗脳なんかされるわけないだろふざけないでください。
「しかしなんだかなぁ。上層部の腐ったみかんどもより人間性のあること言ってるよ」
「みかんはちょっと腐ってるくらいが美味しいだろ」
「それバナナじゃない?」
「俺は腐ったみかんも腐ったバナナも食べたことがないのでわからない」
「君との会話、ものすっごくペースを乱されるんだけど。おかしいな、僕って人を振り回す側だと思ってた」
「俺半分呪霊だからな」
「そういうことではなく」
「五条悟、いい加減真面目な話しようぜ」
「誰のせいだと思ってるの?」
「……?」
「本気でわからないって顔できるのすごいな」
よくわからないが、よくわからなかったことで五条悟から褒められた。
世の中って何が起きるかわからないな。俺は何も理解できないぜまったく。
「んー、呪霊たちの目的は、両面宿儺の復活ってことでいいと思うぜ。呪霊の世界を作りたいんだとさ。目的と手段が合致してるかは知らねえけど」
「君は違うってこと?」
「俺の目的は兄弟たちの生存とパパの殺害だな。世界とかどうでもいいんだ、家族が平和なら。家内安全第一」
「家庭内のパパ殺そうとしてんのに?」
「パパが生きてると平和じゃない。パパは死んだ方がいい」
「全国のパパが聞いたら泣くよ」
全国のパパに俺のような息子はいない。
「
「死んでるなら殺そうとしねえだろ」
「呪霊にはわかんないかな? 150年あったら人間って死ぬんだよ?」
「両面宿儺生きてんじゃん……いや死んでた。ごめん。人間って死ぬのか」
「そこからなの?」
「そこからだった」
「……今の話なかったことにしていい?」
「いやしなくていいって。加茂憲倫は生きてる。この目で見てるからな——五条悟の親友の中にいるよ」
「そう。あー、いろいろ調べなきゃな……」
何調べるんだろう。夏油の死体が横流しされてないかとかだろうか。
しかし、予想外に五条悟は冷静だ。
まあそもそも真実かどうか測りかねているだろうし、怒って俺に八つ当たりされても困るけどね。されたら死ぬ。
「他の兄弟の奪還は目的じゃないんだ」
「150年間俺たちを殺せずに放置した連中の手の中にある今は特に心配してないかな」
「受肉させたいとは考えないの?」
その質問に俺は片方の眉を上げた。
「そりゃ俺が生まれてよかったと思えてからになるよな。好き好んで弟を地獄に送り出しはしねえよ」
……ハッ! こう言ったら呪術師たちが俺にひどいことしてくるようになっちゃうか!?
でももう言っちゃったもんは仕方ねえや。
てか情報吐かされた後普通に殺されそうだもんな、アッハッハ。
「オッケー。じゃあ、選んでいいよ。今すぐ死ぬか、呪胎九相図を処理し終わってから死ぬか」
「呪胎九相図の処理ってどういう意味だ?」
「受肉した君のお兄ちゃんたちを祓うか捕まえるかってこと。
「そうか。じゃあレーダーはやってやるし、なんならその処理ってのも手伝ってやるよ。お兄ちゃんたちに会いたいしな。でも俺たちのこと祓うっていうのはやめろ」
「それ命乞い?」
「ちげえよ。
呪霊でもあり人間でもある俺たちだが、死ねば必ず死体が残る。
少なくとも呪霊ではなく、呪詛師と同じ感覚で扱ってもらいたいところだ。
「やっぱり君、随分人間みたいだ。下手すりゃ人間よりね」
「近頃は人類の人間離れが進んでるもんなー」
「ちょっと僕その辺の事情は知らないかな」
その代表がなんか言ってる。
さて、ひとまず俺は、しばらくの生存を確保したわけだ。
考えるのに疲れてきたので、緊急の用件でなければ拷問でゲロるのはこの辺にしておきたいが——ああいや、まだ緊急の用件が残っていた。
「そういや夏油の他にも呪霊に手を貸してる人間いたけど名前知りたい?」
「そういうのもっと早く言ってよ。君自分の情報の価値ちゃんとわかってる?」
「よくわかってない……」
「そうだよね、ごめんね、僕が悪かった」
ついに五条悟を謝らせることに成功してしまった。
試みてもいなかったのに不思議である。
最強の謝罪、貴重なので脳みそに刻んでおくことにしよう。
「ふふ、そいつの名前を聞いて驚くなよ——
「……参考までに聞きたいんだけど、なんでその名前を聞いて僕が驚くと思ったの」
「名前がめちゃくちゃ格好いいからに決まってるだろ! 俺が今まで聞いてきた名前の中で一番かっこいい」
「ああ、そう」
「あいつ死にそうだから早く捕まえた方がいいぞ」
「忠告痛み入るよ」
究極メカ丸に直接会ったことはないが、名前が超絶格好いいので妙に愛着がある。
具体的にいうと死んで欲しくないと思っている。
呪術師側の戦力が減るしな——是非一緒に真人の顔を殴りたいものである。
「もういいか? 俺はちょっと疲れた。生まれてこのかたこんなに喋るのは初めてだ」
言ってるそばから、いや思い返すといろんなとこで結構喋ってきたな……と思ってしまったが、まあいいだろう。
疲れているのは事実だ。
俺を縛っている鎖のような呪物は、おそらくゆっくりと俺の呪力を吸い取ってその辺に拡散している。
呪力がなくなれば呪霊は死ぬが、俺は半分人間なので吸い尽くされても直ちに死ぬことはないだろう——要するにじわじわと弱っている。
普通の幼女以下になるまであと数時間というところだろうか。
「いいよ、休んでなよ。僕ちょっと用事あるから」
「んー。まだ話すことある気がするからそのうち戻ってきてくれー」
頭の中で話すことを整理しなきゃな。
疲れでぼんやりするが、頑張らなければ。
——5分後、五条悟が自分の生徒3人を連れてやってきたので俺は休憩が短すぎるとキレた。
アンサー「夏油も多少困ってると思います」