それいけ!血塗ちゃん   作:九条空

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プロットに血塗ちゃんのこと「バカで善人」と殴り書いてあったので感想を読ませていただく限り正しく伝わっていると思います。


小話:伏黒恵

 五条悟の計らいで、俺は呪術高専の中であれば一人で行動することを許されていた。

 しかもにーちゃんの隣の部屋までもらってしまった。

 すごい。人間として扱われている。俺感激。

 

 深夜、俺が150年ぶりの携帯ゲーム機——スイッチで遊んでいると、ノックの音がした。

 ノックするなら五条悟じゃないなと思った俺は、にーちゃんかなとドアを開けたのだが、予想は外れた。

 向こうにいたのは真剣な顔をした伏黒であった。

 にーちゃんの隣の部屋だから必然的に、伏黒ともご近所さんなんだよな。

 ゲーム音は小さくしていたがうるさかっただろうか……と戦々恐々としていると、向こうから話し出した。

 

「聞きたいことがある」

「まだぁ? 散々拷問で話したのに……いいよぉ」

「いいのか」

 

 いいに決まっているだろう。

 俺は前世で呪術廻戦を読んでいた時に、伏黒恵がかなり好きだった。

 いいよねこういう無愛想キャラ。でも今世は呪胎九相図箱推しなんで。

 

 とりあえずどうぞ、と部屋に招き入れたものの、俺の部屋には椅子がない。

 ついでにテーブルもベッドもない。家具がゼロだ。

 まあ急に転がり込んだしね。俺はゲーム機もらえただけでハッピーだから問題がない。

 このニンテンドースイッチは五条悟が「欲しいものある?」と聞いてきたのでゲームと言ったらもらえた。

 

「床にしか座るところないんだけどそれでいいか?」

「……いやいい、このままで」

「そう?」

 

 でも俺は立ってるのだるいので床に座るけどね。

 真剣そうな話っぽいので、俺はスリープ状態にしたゲーム機をそっと床に置き、体育座りをした。

 

「なんで俺を殺さなかった?」

「必要がなかったから。俺は平和主義なんだ。だからお前が死にそうになったら手を貸すつもりではあったけど、死ななさそうだったからただ見てた。言うてあのとき黒い人と宿儺の指を取り込んだ呪霊はどっちも俺の敵だったからな。同士討ちしてくれたら平和だなーと思って。案の定漁夫の利で宿儺の指手に入れられたし」

「お前の言う平和ってなんだよ……」

 

 平和主義にはたくさん種類があるが、とりあえず俺は人を殺すという発想が簡単に出てこないですかね。

 殺しを考えるのは本当に致し方のない時だけだ。両面宿儺の復活の阻止とか。もうしないけどね。

 

「あの時、お前は虎杖と釘崎を殺そうとしていたはずだろう。なんで俺だけ助けるつもりだった?」

「いや殺そうとしてたのはにーちゃんだけ——まあいいや。黒い人は俺を助けようとしてただろ。だからだよ。俺ってそんなに恩知らずじゃないぜ」

「……お前が呪霊だってわかってたら殺してた。それでもか」

「殺さなかったじゃんか。女の子の術式、あれ発動した時にわかってただろ」

 

 釘崎の共鳴り。

 壊相兄者との縁をたどり俺までついでで食らった、釘崎からしてみればぼた餅攻撃だった。

 結界の中で戦闘中の伏黒にしてみればまるで状況はわからなかっただろうが、それでも釘崎の攻撃が入ったということは俺が敵で、呪霊側ということくらいはわかったはずだ。

 だからそのあとの領域展開で、俺ごと殺したってよかったはずなのに。

 

「それはお前が……俺を助けるようなことを言ったからだ」

 

 は? ツンデレかよ。

 

「漁夫の利狙いって言ったじゃん。相打ち狙ってんだから両方応援するでしょ」

「お前呪霊の方応援してたか?」

「してない! 呪霊なんか応援したって意味ないだろ!」

「おい、自分が言ったこと秒で忘れてるだろ」

 

 俺は自分の両膝を見た。図星だったので。

 

「お前の言う平和ってなんなんだ」

 

 さっきも言ってたな。

 あれってツッコミじゃなくて質問だったのか、スルーしてしまって申し訳ない。

 

「弱くても楽しく生きられるのが平和かな。お兄ちゃんたちは呪霊が支配する世界の方が都合がいいと思っているみたいだけど、実は俺あんまし賛成できないんだよな。呪霊って完全に弱肉強食だからね。お兄ちゃんたちに守ってもらわないと生き残れないってのが確定しちゃうからさ、俺の思う平和とは違うなー」

「弱肉強食を生き抜ければいいんじゃないのか。強くなりたくはないのか?」

「なりたくないわけじゃねえけど、ならざるを得ないと言う方が正しい。そもそも強くならなくったっていい状況の方が望ましいじゃん。自分が強くなきゃいけない状況って自分の大事なものが脅かされる時だろ。嫌だわー、そんなのが頻繁にあったら」

 

 呪霊が支配する世界になれば、それは頻繁ではなく常時になるだろう。

 まあ、そんな状況でも兄弟が良いってんならいいんだけどさ。

 世紀末になっても家庭内が平和ならもうそれで。

 

 伏黒は、じっと俺を見た。

 まるで何かを見極めようとしているようだ。

 まあ、まるで、じゃないんだろう。俺が無害か、自分で判断しようとしているらしい。

 

「人を殺すのは嫌いか?」

「それって好き嫌いで話すことか? でもその二極で言うなら嫌いだよ。俺は楽しいことが好きなんだ。人殺しても面白くないからな」

「面白いなら殺すのか」

「うーん、どういう状況それ? 人殺して面白いと思えることあるかなあ……あ、でもゲームでなら勝ったら面白いからその感覚で……いや、そいつに一回しか勝てないの面白くないな。ゲームなら何回でも勝てるのに。うん、やっぱゲームのが面白いじゃん。人殺すのはゲームの中だけでいいよー、ほら俺五条悟からゲーム機もらったんだぁ」

 

 ドヤ顔で自慢しておく。ゼルダの伝説ってどのハードでやっても面白いな。

 伏黒が俺に対してどんな判断を下したのかはわからない。

 とりあえず、何かはわかったのだろう。質問はここまでにするようだ。

 

「お前が人間に害をなすと判断した場合、俺はお前を殺す」

「うん、いいよー」

「それから……俺は黒い人じゃない。伏黒だ」

「そうか伏黒。俺は血塗だぜ」

「ん。俺はもう寝る」

「おやすみー」

 

 伏黒を見送って、俺はまたゲーム機をつけた。

 こういう時半分呪霊って助かる。寝ずにゲームできるからな。

 




真人「魂なら何回でも殺せる」
血塗「ゲームなら何回でも負かせる」
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