病院内の白く清潔感のある部屋にピッピッピと規則正しい機械音がなっている。
ベッドに横になり規則正しい呼吸を繰り返している少年の頭にはまるでレーサーのヘルメットの様な見た目をした機会が取り付けられている。
そしてその少年を見守っている1人の女性
その女性は黒く艶やかな黒髪を腰の辺りまで伸ばしており、病院の先生やナースという訳では無いのに白衣を来ている。
そう…その女性の名は平塚静
比企谷八幡が通学していた総武高校の教員である。
「やぁ比企谷、なかなか来れなくて申し訳ない
しかし、君はアレだな。本当に周りの人のことを考えない…」
口ではこういっているが静の表情はとても優しいものだ。
「まぁいい、そうだ土産を持ってきたんだ。」
そう言って静は白衣のポケットから黄色と黒色、2色の缶を1つ取り出した。
「君がよく飲んでいたものだ。」
そして同じ物をもう1つ取り出して蓋を開け
静は中身を少し飲んだ
「よくもまぁ君はこんな甘いものを好んで飲んでいたな…」
静は両手でその缶を包み込むように持ち比企谷八幡の反応を見た。
「やはりいくらお前でもこの程度では起きないか…」
比企谷八幡は静かに呼吸している
静は不安だった、いつの日か突然この呼吸が止まってしまうのではないかと…
そして二度と目覚めないかもしれない…と
静は缶の残りを全て飲みきる、そして空になった缶を握りしめながら言った。
「ばかもの!いつになったら帰ってくるのだ!一体君はどれ程の人間に心配を掛ければ気が済むんだ!早くしないとお前は私の花嫁衣裳の姿を見れないかもしれないんだぞ!」
比企谷八幡ならきっとこんな時相手は見つかったんですか?と軽口を叩く…そう願いを込めた最後の一言
しかし依然比企谷八幡は眠ったままだ
「…そして…頼む…一緒に囚われている一色いろはをどうか…守ってやってくれ…」
静は涙を流していた
本来頼むべきことでは無い…学生生活と違い今の比企谷八幡は命をかけて戦っているのだ
そんな相手に頼むしかない…静はそんな己の無力さと比企谷八幡への申し訳なさで涙を流したのだ。
しかしその言葉に反応したのか点滴のため一時的に布団の外に出していた比企谷八幡の左腕の指先がピクッと動いたような気がした。
それをみた静は軽く笑いながら
「ははっ、君はいつもそうだ…自分の事なら反応しない癖に他人の事…特に君が大切に思っている者の事となると直ぐに対処しようとする…まぁ方法は褒められたものでない事が多いがな。」
静は涙を拭き比企谷八幡の手を握りながら言った。
「比企谷、コレは奉仕部としての依頼だ。一色いろはと共に必ず戻ってこい。
だが絶対に自分を犠牲にするな、いいか2人で戻ってくるんだ。
君が傷付く所を見て痛ましく思うものがいるんだ。
そのことを決して忘れるな」
そう言って平塚静は比企谷八幡の病室を後にした。
その表情はとても晴れやかな顔をしていたという。