ハチとアルゴが迷宮区に向かう時、イロハとキリトそしてアスナは攻略組に追いつくため迷宮区内へと入っていった。
「おい、イロハ。向かうのはいいが何か手はあるのか?」
走りながらイロハに向かい叫ぶキリト
「無かったらこんなに急いで行きませんよ!」
答えるイロハ
「一体どうするつもりなの?」
アジリティの関係で二人よりも若干前を走るアスナもイロハに問い掛ける。
「まぁ見てて下さい!それよりも前!」
イロハの言葉に促され前を見るキリトとアスナ
するとそこにはセーフゾーンがあり、なんと攻略組の全員がそこに集結していた。
「どういうことだ?ボスの所まではまだかなりの距離があるはずだ」
「分かりません…でも好機です!早く合流しちゃいましょう!」
そう言ってセーフゾーンに飛び込む3人するとセーフゾーン内ではどうやら言い争いが発生しているようだった。
「どういうことですか!」
「なんで進まないんですか!」
「ビーターなんてものに頼らなくても俺達なら余裕で勝てますよ!」
3人がこっそり集団の前まで行き様子を覗き込む
するとそこには2人のプレイヤーが残る全員を足止めしている姿が見て取れた
「アカンゆうとるやろがァ!!!
なんでそないなこともわからんのや!ホンマいい加減にしぃや!!!」
「皆落ち着いてくれ!なにも攻略をしないとは言ってないんだ!確実に攻略するための情報を待とうと言っているだけなんだ!」
そう…キバオウとリンドが攻略組の面々をなだめようとしているところだったのだ。
「キバさん!なんでビーターの肩なんて担ぐんですか!」
「リンドさんも!あいつが一層で言った言葉を忘れたんですか!アイツは意地汚いビーターなんですよ!」
その言葉を聞いて俯くイロハ
どうして伝わらないのだろうか…先輩は攻略組の為にわざと悪役になっているのに…
「じゃかしいわ!!いつ、誰が意地汚いビーターなんぞの肩を担いだっちゅーんや!言ってみいや!!」
「いや…だって…キバさんアイツらの言うことを信じて…」
「信じる?何を当たり前なことを言うとるんや!アホかお前らは!
ええか?ワイが信じらへんのは意地汚いビーターや。
それにな、いくらビーターが強いっていうても、1人でやる事には限界がある。考えてもみいや、もしホンマにアイツがボスを独り占めしよ思っとるんやったら、なぜ第1層でやらんかったんや?
答えは簡単や、いくらビーターと言えども1人でボス攻略なんぞ不可能だからや」
「で…でもアイツには仲間が…」
それを聞いてキバオウは大きなため息をつく
「はぁ…だから言っとるやろ?そないな事が出来るんやったら第1層攻略時にやっとるハズや
それに…、あの時…第1層ボス攻略の時アイツはお前らのこと見捨てたか?見捨てへんかったやろ?
だからワイはな…アイツのことをある意味では信用しとんのや…」
その言葉を聞いて攻略組の面々は静かに腰を落とした
キバオウの言葉に気圧されたのか、はたまた納得したのか
そしてその様子をこっそり見ていたイロハは静かに涙を流していた。
大切な先輩のことを理解してくれた人が…信じてくれた人が自分やキリト、アスナ以外にもいてくれたことを…
イロハの涙は、嬉しさそして若干の嫉妬が混ざっていた…