二日前、東の村。
まだ欠けた者のない円卓。
『アズライール……?』
ロマニの声が立香の疑問を代弁する。
呪腕のハサン曰く、初代“山の翁”はアズライールの
立香はマシュの顔を覗き見て、よかった、マシュも分かってないっぽいぞ。とこっそりと安堵した。
『もしかして死告天使アズライールの事かい?』
「……はい。天命の下、諸人に死を告げに現れるアズライール……。本人が望まなくともその名を冠した暗殺者……」
それが“山の翁”の初代。教団を守護する者である。
「あの方であれば円卓の守護者など敵ではありません。獅子王すら問題ではないでしょう……」
「初代――つまり、皆さんの先祖ですね!確かに、味方になってくれれば頼もしいです!」
『うーん……それはどうかなぁ』
角砂糖をぼちゃぼちゃいれたコーヒーを啜って、ロマニは懐疑心が拭えない。
『山の翁の初代と言っても、やっぱりアサシンのサーヴァントだろう?対人特化はしているだろうけど、今の円卓やギフトを使いこなすアーサー王に対抗できるかな……』
「そもそも対抗できるなら、とっくに出てきて獅子王を暗殺しているんじゃないかい?」
どうなのその辺?とダ・ヴィンチも尋ねると、静謐のハサンはもごもごと難しそうな顔をした。
「……それは……そう、かもですが……」
「……いえ、静謐殿の言葉は正しいのです、魔術師殿」
疑問に答えたのはベディヴィエールだった。静謐も思わずベディヴィエールを見返す。
「アズライールの廟にいるサーヴァントは特別な存在。彼にとってあらゆるサーヴァントは平等と聞きました。強き者も弱き者も、その刃の前には“一つの命”にすぎない」
〇ウルフ そうなん?
〇フォースを信じろ(緑) つまり我らも
〇銀河鉄道123 諸行無常
「そのサーヴァントは自らの力で相手を殺すのではなく、彼に相対した者は“自らの運命”に殺されるのだと」
「自らの運命に、ですか……?それはどういう意味でしょう、先輩……」
「悪運が尽きる、みたいな……?」
「それだと私たちが悪い行いをしてきたことになっちゃうぞ!」
あっそうか。へへへ。
やれやれ立香ちゃんたら。ふふ。
という茶番は置いといて。
「……ベディヴィエール卿。我らが初代をそこまで敬っていただけるのは嬉しいが……」
呪腕のハサンはちゃんと真面目な顔を保っている。見習おうね。
「ますますもって貴方が分からなくってきた。円卓の騎士である貴方が、なぜその事を?」
「いえ、すべて受け売りです。ここへ訪れる前に魔術師に教わった知識にすぎません」
ベディヴィエールはゆるく首をふる。
「私自身は未熟な、円卓にいただけの騎士ですから」
「……ふむ。そういう事にしておきましょう。しかし貴公、嘘が下手ですなぁ」
「はい、申し訳ありませ……」
ベディヴィエールはあっさりボロを出した。
「いえ、嘘ではありません!ありませんとも!初代の伝説はフランスで直に聞いたのですから!」
「(言っちゃってるけど)」
〇いーくん 嘘が下手なのも才能だよな
〇海の男 ベディはそのままでいいよ
〇銀河鉄道123 ね
「フォーーーウ……」
フォウくんもこの顔である。
「おほん。とにかく、アズライールの廟に案内していただくこと、私も賛成です。“山の翁”の実力が伝説通りであれば良し、そうでなくとも戦力が一つ増えるのではありませんか?」
『それはその通りだ。ハサン君、その廟にはどのくらいで?』
「私が案内をもってすれば往復で二日、というところ。どうですかな、立香どの?」
立香は傾げていた首を元に戻して、真面目な――極めて真剣な顔で言った。
「やっぱりその人も髑髏面なの?」
「(マスター、ハサンさんに失礼かと……!初代さんとの挨拶は慎重にお願いします……!)」
マシュに小声で注意されてしまったのであった。
二日後、雲上の回廊と見紛うような山道で。
「――そしてものすごい絶壁です!これは聞いてなかったかと、マスター!」
「はあっ、はあっ……。普通にめちゃくちゃ疲れる……」
「私も、気を抜くと座り込んで立ち上がれそうにありません!」
立香たちは初代山の翁に会う為に洞窟を抜け、村を出発していた。
百貌のハサンとダ・ヴィンチちゃんは村の見張りでお留守番だ。
「怖いのでしたら、どうぞ私にお掴まりください。……その、何があっても離しませんので」
「いえ、いけます、慣れました。静謐さんは前方を注意してくだされば」
「はい。それでは立香様にぴったりとくっついて、前方を注意しますね」
〇海の男 ん……?
〇ウルフ ラブか?
〇海の男 なんでもかんでも恋愛感情に結び付けるな
〇銀河鉄道123 厄介オタクさん!
「あわわ……ちょっと待って、立香の腕はあたし!あたしの!落ちる、もう前を見てるだけで目がチカチカして落ちちゃう!あたし、こういうのダメーー!」
「ええい、暑さも寒さも地下も高所も駄目ときた!お主、それでも三蔵法師か!?」
〇ウルフ これはライク
〇海の男 いいだろう
〇銀河鉄道123 謎にウエメセのオタクさん!
「そんな様で天竺までの魔境巡り、どうやってこなしたというのだ!?」
「あれは事前に気合い入れてたの!頑張ったの!功徳全開だったの!でもこれ聞いてなかったーーーーっ!あたし、何事もいきなりはダメなんだってばーーーーっ!」
びゃっと幼子のようにぐずりだした三蔵を、頭痛がするときの顔でトータが引きずっている。師匠がポンコツだと弟子がしっかりするっていうよね。
「……フッ。あの廟への礼拝が、これほど賑やかになる時が来ようとは……」
髑髏面の下から、穏やかなまなざしが見える。
「まったく、運命とは分からぬものだ」
『おや。人生とは分からぬものだ、ではなく?』
呟きを拾ってロマンテイック。軌跡を描くような珍道中。
「そこはそれ、わが身は今や英霊ですからな。人としての生は、既に答えを出してしまっている。……まさに、無念しかない人生だった。これはもう変えようのない結末だ」
それに比べて己はどうだ。成功したつもりだったよ。
でも、愚かで小賢しい人間だった。
「それをこうして、英霊として体を得た今になって思い知らされる。虚しくもあるが、楽しくもある。だから運命は分からない、で良いのですよ」
「……………………」
ベディヴィエールは語らない。まだバラッドはうまれない。
『! 待った。敵性反応だ!こんな高所にも棲んでいるものがいるのかい、ハサン君!?』
「――――否!普段であれば晩鐘の音を恐れ、人も獣も寄りつかぬ!どうやら今は常ならざる事態であるらしい!立香殿、応戦を!」
「オッケー!」
山の上に登れば登るほど太陽が近くなるのに、実際はどんどん寒くなっていくのだ。
これもまた、現実の厳しさというものだろうか?なんて無益なことを考えながら、転がってきた小石を立香は蹴とばした。
「何とか鎮めましたが……。このような場所にどうして……?」
「おそらく逃げてきたのでしょうな……。地上、獅子王の荒野から」
『生態系にも影響を与えているの?…もう呆れたわね』
職員が持ってきたコーヒーをふうふうと冷ましながら、オルガマリーがぼやく。
今は恐怖よりも、システマティックな神に対する呆れの方が強い。
「草木も生えぬ、鳥すら寄りつかぬこの
「それほど追い詰められていたのだろう。うむ、それはそれとして、だ」
「三蔵ちゃんは戦わないの?」
しっかりマシュの後ろにいる立香の後ろに下がっていた法師様に、弟子のちくちくとした視線が突き刺さった。
「ぎゃてぇ!あたし高いのこわーい!」
「ええい、言い訳はそれだけか!」
わーんわーんと主張するお師匠を叱りに行ったトータを見ながら、ベディヴィエールが言う。
「……なんにせよ、廟まで夜を明かす必要があります。まずは野営に適した場所まで登りましょう」
「ええ。夕刻までには巡礼用の小屋に辿り着けましょう。滅多に使われないもの故、くたびれてはおりますが」
「屋根があるだけ嬉しいよ」
「はい。雨風が凌げるだけで十分です」
『二人とも……!すっかり野営になれて……!』
逞しくなったことを喜ぶべきなのか。悲しむべきなのか。
オルガマリーは苦い思いと共にコーヒーを飲み込むのだった。ごくん。
***
「――――三蔵さん、まだ起きていらっしゃったのですか?皆さんお休みになっていますが……」
星明かりも月明りもない夜、カンテラだけが机を照らしている。
「ん?寝る前に今日の出来事を書き留めていただけ。立香は?みんなはもう寝ちゃった?」
「はい、みなさんぐっすり。ドクターも所長とスタッフに任せて仮眠だそうです」
「そっか。カルデアも大変ね。ううん。大変っていうより凄いのよね」
ノートをぱたんと閉じて、ペンを置く。
狭くて古い巡礼小屋なのに、それを感じさせない不思議な気品がある。
「立香と
現世の人間が英霊を召喚した場合、それは“その英霊にちなんだ現象”を借りるだけだ。
「あたしだったら“三蔵召喚! 頭が良くなった!”みたいなね。聖杯とやらが特異点を作っちゃえば、あたしやトータみたいに出てくる英霊もいるんだろうけど……」
こういう時空の歪のないところで英霊そのものを召喚して、かつ使役するなんて普通は絶対に無理なのだ。
〇奏者のお兄さん カルデアと英霊召喚もまた、ブレイクスルーではあるのだろうね…
「だから、今は素直に驚いているわ。カルデアにはどんな奇蹟があるのかって」
「……私も詳しくは知りません。ですが、その……。グランドオーダーが発令されるまで、カルデアの英霊召喚は失敗続きでした。勇者リンクを召喚しようとしたことも含めて……」
〇奏者のお兄さん そんでこの件は知らないんだけど。縁結べてたの?
〇ウルフ まず俺ら先代に言われるまでカルデアのこと知らなかったんで
〇影姫 マリスビリーは何のためにオマエたちを召喚しようとしたんだ?
〇ワルフ わかんない…オレマリスビリーじゃないから…
「カルデアが独自に召喚できた英霊は三体だけ。そのうち二人目がわたしに力を預けてくれた英霊です」
「ふーん。どこの誰かは分からないけど、見る目あるわね、そいつ」
〇騎士 マリスビリー……怪しくないか……?
〇いーくん 主治医が不審死って言ってて怪しくないことない
〇バードマスター まあ隠し事はあるだろうけど後にしよう。死者が創れる偉業はないよ
「ま、そいつも“勿体ない”と思ったんじゃないかな。サーヴァントとして召喚されることは、
「そうなのですか?」
「そうなのです、さっきも言ったでしょ?英霊って、基本は“ただの力”なの。個人として召喚される事なんてない。これはとんでもない事よ」
〇りっちゃん 謎のままなのはどこですかー?
〇銀河鉄道123 カルデアス
〇りっちゃん 分析と解析なら大地の得手でしょー?
〇銀河鉄道123 稼働中の人工触媒を弄るのはわたしたちでもまずい。でもあれは原理的に止められない
〇銀河鉄道123 つまりカルデアスに問題があっても、今のわたしたちにはどうしようもない
〇りっちゃん なるほどー
「サーヴァントとして召喚された英霊はまず、みんなこう思うはず。“こんな奇蹟はもう二度と起きないだろう”って。だからこそ、それぞれの目的で行動するの」
頬杖を付いた、法師は少女を見つめている。
「だって絶対に有り得なかった、気を抜くと覚めてしまう二度目の夢だもの」
生前の理念で過ごす者もいるだろうし、生前の無念を晴らそうとする者もいるだろう。
「そこは英霊として定めてしまった属性の違いだから、あたしはどっちも悪いと思わない。ただ、ちょっと残酷だなって思うだけ」
「……」
「仮初めであれ個人としての生命を獲得したのに、あたしたちはただのお客様。その時代の住人になれるんじゃなくて、違う時代の異物として、ずっと仲間外れなんだから」
「そんな事は……ないと思います。皆さんが異物だなんて思った事は……」
少し沈んでしまった空気を振り払うように、三蔵は首を緩く振った。
「ありがと。でも気にしないで。疎外感は己の
「――――はい。三蔵さんが味方でいてくれて、嬉しいです」
「でしょでしょー?なにしろ旅のエキスパートだものね、あたし!」
〇海の男 儂も儂も
〇ウルフ オレもオレも
〇Silver bow 座ってろ
「天竺までの旅ですね!お供の三人……孫悟空、猪八戒、沙悟浄を連れての長い長い冒険譚!」
そこまで言ってマシュは、おずおずと伺うように続けた。
「あの……一つ、訪ねてよろしいでしょうか?西遊記を読んで気になっていた事なのですが……。三蔵さんは、どうしてそこまで旅を続けたのですか?玄奘三蔵の伝説には、その、貴方の動機があまり描かれていなくて……」
歴史に名を遺す英雄と言うのは、程度の差はあっても欲深く、気が強く、気持ちよく――――。
では、三蔵はどうだったのだろうか。名高い僧というものは、仏の名のもとに何でもできるのだろうか?かつて出会った聖職者たちのように。
「もっちろん、有りがたいお経を取ってきて、偉くなって、雷音寺で左うちわの生活をするため!」
ド俗物だった。
「……なんて、それもホントだけど」
俗物ではあるんだ。
「あたし、諦めが悪いの。凄く悪いの。三度、九度生まれ変わったくらいじゃ全然足りないの」
背中を押したのは別の意思でも、最初の一歩、最後の一歩を踏み出したのは自分だ。
心だけは、誰にも支配できない。
リンクと同じように、三蔵もそれを信じている。
「あと“天竺に行こう”とは思っていなかったわ。“絶対に天竺に行く”そう誓ってた」
「誓い……仏教における誓願、というものですか?自らが
「ううん。誓願はまた別の話よ。……あたしね、仏様のお声が聞こえる時があるの。それが聞こえちゃったらもう止められない」
未踏を歩むその瞳は、どんな高価な宝石よりも輝いている。
未知に挑むその勇気は、どんな財宝よりも得難いものである。
彼女も確かに、英雄なのだ。
「あたしは臆病で、泣き虫で、我が儘だけど――――。仏様のお声を聞いちゃったら頑張るしかないでしょう?」
神の声を聞いた、ジャンヌダルクのように?
「“天竺に行きなさい”“悟空をこらしめなさい”“この聖都から出なさい”“砂漠を越えなさい”
そんな感じ。だから今回も砂漠を越えたわ」
“神の声”というものは、リンク達にとっても遠いものだ。
“神の意思”というものは、リンク達から切り離せないものだ。
この二つの違いはなんだろう。
「悟空は“それは天の声だけど、天からの声じゃない”“お前の胸の裡から生じる声だ”って言ってた」
それは確かに、“やりたいこと”であったのか。
“やらなければならないこと”ではなかっただろうか。
「“人間はみんな御仏になれるとおまえは言った。じゃあ、それはおまえの声だ。おまえの中の、御仏の前借りだ”」
どちらでもいい―――――。すでに、覆せぬ過去であるが故。
ただ、未来の自分がこの“今”を振り返った時、後悔だけはしたくないと思った。
「とにかく、あたしの行動にはあんまり理屈はないの。やりたい事をやりたいようにやるだけ。ううん――――やるべきだと感じたことを、胸を張って信じてるだけ」
その結論に行きつくまでに、随分苦労したリンクもいた。
三蔵はとっくに、辿り着いていたようだ。
「貴女も同じよ、きっと。あたし、高僧だから分かっちゃう」
さすが三蔵ちゃん!
「……そうかもしれません。以前、お世話になった方――――ドレイクさんもそう言っていました。わたしはもう自分の願いを持っている。けれどそれを自覚しなくてもいい。その理由を知るのは最後でいいのだと」
「? よくわからないけど、あれかしら。“私はこのために生きているんだ”ってお尻を叩かれないと走れない人間と“私はこのために生きていたんだ”って最後に納得できる人間の違い?」
むむむと眉をひそめて、ぎゅっと唇を尖らせて高僧は言う。
「いいこというけど、そいつあたしたちとは正反対ね。きっと物欲まみれの英雄に違いないわ!」
「はい。たいへん魅力的な方でした。自分の欲望のまま世界を救ったのですから」
それに苦笑を返しながら、マシュは答える。
寝る前のひと時の筈が、随分話し込んでしまった。最後に一つだけ、尋ねてもいいだろうか。
「……あの。三蔵さんは我々の味方になってくれましたが……。三蔵さん自身の目的をわたしたちは聞いていません。三蔵さんにとって、獅子王は敵なのですか?」
「そこなのよね……あたし、獅子王は嫌いじゃない。実は聖都軍と戦う気はないわ。それに砂漠のオジマンディアス王ともね」
〇海の男 そうなの?
〇銀河鉄道123 あっちのスレでも話してましたよ
〇海の男 二窓してるんか?偉いの~
「なんかガミガミした女がいてオジマンディアス王には会えなかったけど……。砂漠の様子も見てきた。ものすごい独裁だったけど、平和だった」
獅子王もオジマンディアス王も本質は同じだ。
“自らの国の民だけを擁護する”
「あたし、どっちの正義も分かるのよ。……じゃなくて」
流れ落ちそうになった言葉をこほんと切って、言い直した。
「どっちの悪も分かるのよ。だから、迷っていたの。でも――――」
「でも……?」
「でも、今は夢があるから。サーヴァントとして呼ばれたあたし。貴方や立香というマスターに出会ったあたし」
外で風が吹いている。ごうごうと。
時間が滞りなく進んでいることを主張するかのように。
「マシュ。あたしね、この時代を平和にしたらカルデアに行きたいの。そこで師匠として立香を鍛えて、一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒に笑って」
大切なことを話している。
だからマシュは、風の音なんて気にならないほどしっかりと耳を傾けた。
「えーと、魔術王?とかいうやつ?に大勝利してもらうのが、あたしの夢。それがいま心の底から聞こえてくる、あたしが一番やりたいコトなの」
そうすれば、この小屋だけが世界から切り取られているような。
暗闇の中にぽつんと佇む明るい世界のような。
奇妙な閉鎖感。
あるいは―――秘密を共有する静かな夜?
この感覚をまだ、マシュはうまく語れない。
「たとえそれが、仮初の
「三蔵さん――」
夜が惜しいと思う。
早く明日になって、初代の廟に行かねばならないのに。
なぜか今日の夜は、ゆっくりと過ぎ去ってほしいと思った。
「……はい。それは、必ず。その時を待っていますね、三蔵さん」
***
「さて。マシュも寝ちゃったし、あたしもそろそろ眠りますか」
寝苦しくないように身だしなみを緩めながら、美貌の僧は呟いた。
「……ほんとう、『天竺からの帰り道』のあたしで良かった。こんな、天竺以上に楽しそうな目的を得られたんだもの。ま、御仏への道はまた遠くなっちゃったけど、これくらいは如来様も大目に見てくれるわよね?それに――――」
“ナイショ”だから、マシュにも言わなかったことがある。
「カルデアのみんなが魔術王に勝たないと、リンクもカルデアに来れないって」
ごろりと寝床に寝転がって、目を瞑った。