太陽はきらきらと人々を照らす。快晴の午前。
「みんな~!情報をもらってきました~!」
情報収集のために町に行っていたマリーが帰ってきた。
竜の魔女が従えるあの巨竜の名はファヴニール。数多の神話・物語に名を残す最上級の竜種である。
しかしマルタは教えてくれた。聖杯は因縁のあるものを呼ぶと。
リヨンという都市に
「結論から言うと、リヨンにはジークフリートと思わしき騎士がいたそうよ。でも今は町に行くことが出来ないみたい」
「? どういうことですか?」
「少し前に恐ろしい人たちがやってきて、住人は一人残らず避難した・・・。その後様子を見に行こうとしたら、謎の歌声に阻まれて町までたどり着けないみたいなの」
「歌声・・・?」
リヨンへ近づくたびに強い目眩、混乱を起こし調査は断念されたという。
騎士の行方も知れず、難民達は心配しているようだった。
「恐らくサーヴァントの仕業だろう。僕の音楽で相殺できると思うよ」
「流石アマデウスさん。ではお願いしますね」
「・・・そうそう、シャルル七世が討たれたのを切っ掛けに、混乱していた兵をジル・ド・レェ元帥が締め上げたそうよ」
「ジルが・・・!?」
「魔女と戦うため、準備をしているのでしょう」
森で彼らに会ったことは、リンクの進言によりジャンヌには伏せられている。
合流するかどうかはジャンヌの様子に合わせた方がいいと。
「ジル・ド・レェはジャンヌの信奉者でしょう?ジャンヌがお願いすれば、きっと力になってくれるのではなくて?」
「・・・だからこそ、です。“竜の魔女”となった私のことは知っているでしょう。彼がそんな自分を受け入れるとは思えません」
「・・・」
「・・・そう。なんとなく。違う気もするのだけど。でも、会いたくない気持ちも分かるわ!だって女の子だもの!」
「うん、無理して会わなくていいと思うよ」
この件はジャンヌの意志を尊重するべきだ。立香達は目配せをすると、一路リヨンを目指す。
小高い丘を越えると歌声が響いてくる。アマデウスが使い魔を呼び寄せ、守りのメロディを纏わせた。
「・・・先輩!町の入り口に誰か居ます!」
「アレが声の主か。さて、顔を拝見しようかね」
平地に朗々と広がる独唱は、来訪者を真っ向から阻む。
サーヴァント、ファントム・オブ・ジ・オペラ。竜の魔女の配下であり―――――。
「おまえ達はクリスティーヌか?」
歌姫を導く音楽の天使である。
「は?」
「邪悪が来る。全てを燃やし尽くすために。竜が来る。悪魔が来る!私はそれを待っている」
「悪魔・・・」
「竜殺しはモンリュソンへ行った。追いかけるのなら早くしろ。私はクリスティーヌの邪魔をしない」
「!」
「えっ」
ファントムの言葉にカルデア側は動揺する。
彼は竜の魔女が召喚したサーヴァントではないのか?なぜこちらの味方をするような言動を?
『! 所長!立香ちゃん!退避を推奨します!』
『どうしたの、ロマニ』
『サーヴァントを上回る、超極大の生命反応だ!ファヴニールに間違いない!』
「そんな・・・!」
「邪悪って・・・そういうことか!」
マリーの馬に乗りこみ逃げる準備をする。立香はファントムを振り返った。
「あの・・・!キミは・・・!」
「行きなさい。クリスティーヌ」
『ごめん!サーヴァントも三騎追随!』
「・・・成る程。なら俺も付き合おうかな」
「セイバー・・・!」
セイバー――リンクがひらりとファントムの側に立つ。振り返って笑う。
「大丈夫だよ。俺は強いからね。ちゃんと追いつこう」
「・・・ならば
「清姫!?」
着物を揺らして少女も立つ。立香達を見上げて言う。
「モンリュソンで合流しましょう、マスター」
「・・・うん。待ってるから。気を付けてね」
「セイバーさん。清姫をよろしくね」
「もちろん」
走り去った馬は硝子の煌めきを残していく。
瞬間、空を覆う黒い影。鼓膜を揺らす咆哮。
「清姫、残って良かったのか?」
「貴方が
「なるほど、期待には応えないとな」
黒いコートの処刑人、シャルル=アンリ・サンソン。
全身を鎧で覆い、黒い霧に包まれている男――ランスロット。そして竜の魔女。端から見たら分の悪い対決だが――――。
「下がれ、ファヴニール。貴様の出る幕はない」
「・・・?」
『――――――』
魔力と交わって巨竜に突き刺さり、その心臓を握る。
巨竜は自身の死を明確に知覚した。恐れて止まった。恐れてしまった。
竜を殺した逸話だけじゃこうはならない。もっと大いなる功績からくるプレッシャー。
絶対に勝てないと思った。もう動けない。
「!? 何をしているのですファヴニール!動きなさい!」
「ファントム、上まで連れて行ってやる。魔女と話してきなさい。清姫、あのアサシンの相手を。俺はあの鎧の騎士をやる」
「は、はい」
清姫達には、セイバーが言葉を発したことしか分からない。
ピアノの鍵盤を叩いたときのような音と共に、ファントムが巨竜の上、魔女に前に立つ。準備は整った。
「お待たせ・・・おっと」
土煙と共に突進してきたバーサーカーを刀で受け流す。
地面を抉りながら体勢を直し大剣を振るう。魔力を纏った一撃は、しかしそれより早い突きが頭、胴、剣の腹を叩いたことで崩される。
重心を壊され弾かれるように反った体を右足が蹴り飛ばした。重い打撃音。
「・・・Arrrrrrr!」
「狂気に堕ちた騎士か。ここまで狂ってると救いようもないな」
○騎士 不倫じゃないか?
○銀河鉄道123 でも狂化入ってる時点でカモ
○Silver bow 入ってなくても多分時なら勝つんだよな・・・・・・
更に速度の増した右薙ぎは魔力壁にぶち当たって止まる。予兆もなく脈絡もなく、魔法は間髪入れずに発動した。
「ディンの炎よ」
大炎がランスロットを覆う。巻き起こった熱風が大地を舐め、霊核を燃やし砕く。
「A・・・アーサー・・・王・・・・・・」
「ランスロット!?くっ・・・!」
清姫と打ち合っていたサンソンが距離を取る。
炎を壁のように出すことによって近距離の攻撃を防ぎ、火の玉を纏って剣の直撃を避ける。清姫は実に上手く対応していた。
焦ることはない。自分の役目は敵を倒すことではなく、彼が来るまでこの場を凌ぎきることだ。
「清姫、無事だね」
「はい。
「?」
「
「・・・その件は後でね」
にっこり笑った少女から目を逸らしつつ、アサシンに向き直る。
ここで倒しておかないとね。
「逃げるなよ?――フロルの風よ」
「うっ・・・!?」
強風がサンソンを包む。風神に握られているかのように体はぎちぎちと締められている。
指一本動かせぬまま男の刃に貫かれた。刀は心臓を砕き、赤い瞳と目が合う。
「殺人者に堕ちた処刑人なんて笑えないぞ。ムッシュ・ド・パリ」
「・・・え・・・ぁ・・・・・・。え?」
「次はもう少しマシな召喚をされるといい」
バチン!と頭の中で音が響く。朝の清涼な空気を吸った時のように、思考が明瞭になっていく。
消滅の間近で狂化を外された男は、自身を解放した剣士を見た。
「貴方は、」
「王妃に会う前で良かったな」
「・・・・・・必ず、お礼を」
そう言い残してサンソンは消える。残った風が服をはためかせ、空を泳ぐ。
「アサシン!バーサーカー!?・・・なんなの。何なのよあの男!?」
「おまえにはけして、届かぬ人だ」
「貴方、裏切ったの!?」
「いいや、私は歌うだけ。クリスティーヌを導くだけ。
「は?」
ファントム・オブ・ジ・オペラは怪物として扱われた。怪人は愛されない。人を傷つけて踏みにじる。
けれどエリックは愛を知った。歌姫の栄誉を願った。
「私は
「何の話・・・」
「魔女、おまえはどうする?憎悪の具現として作られて、そのまま生きるのか?」
「は・・・」
作られたもの同士わかる。魔女もまた、聖杯に作られた存在なのだと。
彼女は知らなければいけない。そのためにファントムは導こう。歌をもって教えよう。
「だが絶望することはない。なぜならおまえは何にでも成れる。希望は全てに振りそそぐ」
「なに。何を・・・」
「在り続けろ、もう一人のジャンヌ。きっと星は見ていてくれる」
「・・・うるさい!!」
灼熱の炎が身を焼いても、ファントムは苦しむ様子さえ見せなかった。
怒りと屈辱、未知に対する恐怖は、魔女の体を震えさせる。
こいつは何を言っている。作られた?私が?何を訳の分からない――――。
思考はごちゃごちゃでまとまらない。ようやく巨竜が動けるようになった時には、荒い息だけが響いていた。
「まぁ、つまりだね」
「はい」
「俺はセイバー・・・の力も持つクラスなので・・・嘘ではなくて・・・」
「嘘でないのはわかります。クラス名は?」
「・・・エクストラクラス・ブレイヴ」
魔女はほっといて大丈夫。という彼の言葉に従いさっさと離脱したのはいいが。
・・・ブレイヴ・・・?
「・・・それは日本語に訳すとどういう意味になるんですか?」
「勇者」
「・・・貴方は勇者なんですか?」
「そうだよ」
彼は勇者らしい。勇者・・・?
視線をちらりと落とす。腰に下げられたのは刀だ。日本人の清姫にはなじみ深い。
「日本人なのですか?」
「日本人じゃないよ」
「・・・真名は?」
白銀の髪がざぁと揺れた。
綺麗な人だ。女性の清姫でも見惚れるくらい。
「皆には内緒にしてくれる?」
「誰にも言いません」
「ありがとう。――隠蔽魔法・解除」
ぱちん、とシャボン玉が割れるような音が聞こえた。
輝く金色が飛び込んできて、反射する光の隙間から青い瞳が見える。
「真名は――リンクと言うのだけれど」
知ってる?という声が耳に届いた後、清姫は腰を抜かした。
「だっ、どうした!?」
「・・・・・・・・・・・・」
「息してる!?息して!?呼吸大事!」
「・・・・・・うそ」
「嘘じゃないぞ!現実だぞ!」
「まっ・・・て・・・ください・・・・・・。受け止めるのに時間が掛かる・・・」
「オッケーゆっくり飲み込んでいこうか!」
清姫が立てるようになったのは1時間後だった。
「初めまして。ライダー、真名をゲオルギウスと言います」
「俺はセイバー。ジークフリートだ」
ティエールの町を越え、モンリュソンにいたのは二騎のサーヴァントだった。
ジークフリート曰く、魔女の手先を避けた後、鎮魂に赴いたゲオルギオスと合流したらしい。
「あの・・・町の入り口にサーヴァントが」
「あのアサシンだろう?彼はマルタ殿と同じく俺を助けてくれた。味方と判断していいだろう」
「私はリヨンの難民がこの町にも避難してきたため、様子を見に伺ったのです。・・・しかし、竜の魔女がもうそこまで迫っているとは。この町の市民も、避難し始めた方がいいかもしれません」
市長に進言してくるというゲオルギウスといったん別れ、立香はジークフリートと共に今晩の宿を取ることにした。
「そのセイバーの男はそんなに強いのか?」
「うん、凄く。だから清姫も大丈夫だと思うよ」
「私もまだそこまで戦闘のことに詳しくはありませんが、彼が別格なのはわかります」
「剣だけじゃなくて弓も使えるのよ!カーミラを射貫いたの!」
「でも真名を隠してるんだよねぇ。教えてくれてもいいのに」
「駄目よアマデウス。秘密があるのは女の子だけじゃないの」
『こっちでも特定できてないんだよね。流石に情報が少なくて』
「なるほど」
会話が弾み始めた立香達を余所に、ジークフリートは痛み始めた胃をそっと抑えた。
(絶対勇者リンクのことだ・・・・・・・・・。緊張しすぎて胃が痛い・・・・・・。前回は咄嗟のことで握手しかして貰えなかったが、サインってして貰えるのだろうか・・・・・・)
「清姫、そろそろ立てそうか?」
「はい・・・」
「深呼吸だ。・・・そう、上手だな」
○ウルフ 要介護者?
○災厄ハンター 足メッチャ震えてる
「モンリュソンは結構遠い。なので馬に乗って行こうと思うんだけど」
「馬」
「馬。エポナって言うんだけど・・・それはどういう感情の顔?あっ馬乗ったことない?」
「乗りたいです!!」
「うん!」
微妙に噛み合ってなかったけど気にしたら負け。
エポナをオカリナで呼び出し、二人乗りして町に向かった。日が暮れる前にはたどり着くだろう。
清姫が前、リンクが後ろだ。落ちないように手綱を持つ手で挟んでいる。
馬を持ってるセイバーもいるので、エポナを連れてるのはおかしなことではないが、名前とか聞かれたら困る。嘘をつくわけにもいかないので。
○ウルフ いいと思います
○りっちゃん エポナ凄い顔してるけどそこには触れていいの?
○災厄ハンター 後で機嫌取るの俺らなんですけど
○フォースを信じろ 苛つきが爆走に変換されてめっちゃ速え
ごめんエポナ・・・。あとでニンジンいっぱいあげるから・・・。