勇者リンクS’の人理修復配信RTA   作:はしばみ ざくろ

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リメイク・少女

深海の魔を纏って、怪異は大地に現れる。

轟音と地響きが城を吹き飛ばしたのを、カルデアの面々は驚愕をもって受け止めた。

 

 

バードマスター えっ

騎士 ハ?

いーくん ん~?

 

 

リンク達もまあまあ驚いていた。何だアレ。

そして時の勇者は即座に音楽魔法を発動していた。高速歌唱、ぬけがらのエレジー。

動かぬ分身を生み出すと魔法で気配をぼやかし、立香が移動したら連動して動くように細工した。

飛び散る瓦礫に意識を奪われている周囲は気づかない。縮地で消えたリンクを追いかけるのは、画面越しの勇者達だけ。

 

 

何だ急に!?あのセイバーじゃね!?

 

 

厄災ハンター 多分そうじゃね

海の男 間違いないんじゃね

銀河鉄道123 やだな~~~第三勢力の出現やだな~~~

 

 

同意を得られた所で人影を見つける。怪異の後方で風に吹かれながら立つ姿は、シュヴァリエ・デオンにしか見えない。

カバンに手を突っ込みまことのメガネを取り出したリンクと、舞い散る金髪越しに視線が合う。

しばらくして先に声を発したのは勇者の方だった。疲れの滲んだ顔で問いかける。

 

「両儀式。ガノンドロフに呼ばれたのか?」

「ええ。ご機嫌よう勇者さま。私、今は悪い子なの」

「そうみたいだな・・・・・・」

 

隠蔽されていた姿が解けていく。

着物を纏った女性は無垢な童女のように微笑む。刀から手を離さないのに抜くそぶりを見せないリンクを見て、眩しそうに目を細めた。

 

「・・・本当に、優しいのね。勇者さま」

「お前を斬ってもなぁ・・・。大人しく巣に帰ってくれれば、もうそれでいいんだが」

「でも、それじゃあ王様が満足しないかも。サーヴァントの首くらいは取っていこうかしら」

「アイツの満足ラインってなんだよ・・・。どうせ今回は様子見だから、指示を仰いだ方がいいぞ」

 

 

なんで俺がアイツのフォローみたいなこと言ってんの?

 

 

ウルフ やっぱ魔王はクソですわ

 

 

きしむ音が耳に響く。膨大な力が干渉し合い、空間がわずかに歪みを作る。

渦のように吸収されていく魔力は赤い光を纏って一点に集まっていった。

 

「あれは・・・ギルガメッシュ・・・?」

「・・・あら、帰ってくるように言われたわ。またね、勇者さま」

「マイペースがすぎん?」

 

 

うさぎちゃん(光) ギルガメッシュなんでエア抜いてんの?めちゃめちゃにならん?

守銭奴 対界宝具すげ~

 

 

ちくしょう。現場は辛いぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脳裏に浮かぶ1つの光景がある。私はいつもそれに手を伸ばす。

だが届かない。当たり前だ、私はそこに居なかったのだから。

 

それでも何度も手を伸ばした。幾度も請い願った。

結末は変わらなかった。

 

ああ、何故私はあの場に居合わせなかった。

何故、誰も彼女を救ってくれなかった?

 

 

 

「ジル・・・って、サーヴァントのジルさんだよね」

「ええ。私達と同じように呼ばれ、竜の魔女に加担していたのでしょう」

 

暗雲が晴れる。

光は全てを切り裂き、粉砕し、結末を告げる。

わずかに残った霊基が落ちてくる。駆け寄る魔女を見て、顔を歪めた。

 

「ジル、」

「ジャンヌ・・・」

「ねぇ、アンタ私を復讐の道具にしたかったの?」

 

その場全ての視線が魔女に集まる。どんな顔をして言っているのかは、キャスターにしかわからない。

 

「聖女の代わりに世界を壊してほしかった?本物じゃないのに、本物だって言ったの?」

「違います!ジャンヌ!私っ、・・・私は!」

 

 

ああ、何故私はあの場に居合わせなかった。 

 

 

「私は!」

 

 

何故、私は。

 

 

「貴女に・・・」

 

 

彼女を、救ってあげられなかった?

 

 

「幸せになって・・・ほしくて・・・」

 

ジル・ド・レェは絶望している。誰よりも己に。自分自身を憎んで。

けれど月日は憎悪すら狂わせた。

神、王、国。

全てを恨み、呪い、いつしか何も見えなくなった。

 

「・・・馬鹿ね」

 

嗚咽を漏らすキャスターを見下ろして、呆れた声で少女は言う。

 

「しょうがないから許してあげる。どうあれ聖女サマは私の存在を認めているのだし、この世に存在する因果はもう手に入れました」

 

ゆっくりと振り返った顔はもう、魔女の顔に戻っていた。

 

「次はもっと上手くやるわ。たとえ泡沫(うたかた)だとしても、覚めない限り私はいる(・・)

「・・・まったく、そちらの私はやんちゃですね」

「ハァ!?!?」

「我が友、ジル・ド・レェ。そして魔女の私。貴方たちが地獄に落ちるというなら、その時は私も一緒ですよ」

 

唖然としたまま霊基が消えていく二人に、朗らかにジャンヌは続けた。

 

「貴方たちだけに罪を背負わせたりはしません。いつか夢が覚めたときは、共に眠りましょう」

 

光の粒子は空に消えていく。

地上をのぞき込むようにして現れた太陽が、優しく人々を照らした。

 

 

 

 

第一特異点 邪竜百年戦争オルレアン 定礎復元

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰り!」

 

わっと歓声があがる。

立香は照れ笑いを浮かべ、マシュは安堵したように受け止めた。

フランスで召喚されたサーヴァント達と別れ、ギルガメッシュと共にカルデアに帰ってきたのは、時計の針が十二時を過ぎた頃である。

 

「マスター立香、そしてマシュ。よくぞ無事に帰ってきました」

 

震える声を押さえつけて、オルガマリーがねぎらいの言葉を贈る。

 

「ファーストオーダー、コンプリートです。・・・本当に、よく頑張ったわ。お疲れ様」

「ありがとうございます、所長」

「所長もお疲れ様!この聖杯はどうしよう?」

「それはとりあえず私が預かっておくよ。二人とも、今日はよく休むんだよ」

「ありがとう、ダ・ヴィンチちゃん」

 

聖杯を渡すと、待ちかねたように立香のお腹が鳴った。

ますます照れたように笑う立香を、職員達も微笑ましく見つめている。

 

「マスター、マシュ。食事の準備ができているから、まずは着替えてくるといい」

「えへへ・・・」

「エミヤさんのご飯ですか?久しぶりですね」

「もちろんだ。さぁ行くぞ」

 

アーチャーに先導され二人が退室する。

 

「・・・さて、ギルガメッシュ王。先ほどの宝具についてなのですが」

「なんだ。我の采配に不満でも?」

「そういう訳ではなく・・・。ただ、あんなにもあっさり出すとは思わなかったので・・・」

 

ロマニの指摘に眉を顰めるものの、すぐに機嫌を取り戻す。

 

「当然だろう!出し惜しみなど勇者はせぬ!常に全力、全霊!なによりあのタイミング!まるで大空の勇者が放つスカイウォードが如く!我がことながら心が躍って」

「あっわかりましたもう大丈夫ですありがとうございます」

「まだ話は終わっておらんぞ!!」

「ギルガメッシュ王。特異点の記録作成の為にも、続きは私が聞きますので・・・」

「む、そうか?」

 

オルガマリーに促され着席したギルガメッシュからそそくさと離れ、ロマニは息をついた。

 

「なんだい、聞いてやればいいじゃないか」

「ダ・ヴィンチ、人ごとだと思って・・・」

 

けらけらと笑いながらダ・ヴィンチがキーボードを叩く。

冷めたコーヒーを啜るロマニの顔色はすぐれない。

 

「人ごとさ!結局あのセイバーは正体が分からなかったねぇ」

「また会うって言ってたし、そんなに心配することないんじゃ・・・」

「・・・やけに疲れてるね?なにか気になることでも?」

「・・・うーん」

 

がやがやと司令室は賑やかだ。

働く職員達を眺めながらぼんやりとした顔を浮かべるロマニを、ダ・ヴィンチだけが心配そうに窺っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新しい英霊を召喚し、維持するためにも、電力と魔力は保たないと・・・」

「しかし肝心のリソースがない。そうだろう、マスター」

「ええプロフェッサーM。無いものは動かせません。・・・どうしよう」

 

深夜のカルデアは密会に適している。

机を挟んでマスターとサーヴァントは会話を続ける。

 

「リソースならあるじゃないか。聖杯が2つ。これ以上ないエネルギーだと思うがネ」

「・・・私の独断で使えません。せめてロマニやダ・ヴィンチに相談しないと・・・」

「反対するような要素はないと思うけどネー。・・・それとも、コフィンの電気を落とすかい?」

「しないわ!・・・・・・プロフェッサーM、彼らの蘇生は人理が修復されてからです。それまで触る気はありません」

「ふむ」

 

カルデアの施設データに目を通しながら、プロフェッサーM(ジェームズ・モリアーティ)は机の上に手を組んだ。

付け焼き刃のカリスマはいつしか本物の刀になるだろう。教え子が成長するのは悪くない気分だ。教授は優雅に微笑む。

 

「Aチームのメンバーくらいは起こしてもいいんじゃないかね?彼らは優秀なんだろう?」

「・・・ええ」

「煮え切らないネェ」

「医術に特化したサーヴァントが来れば、あるいは・・・視野に入れるべきかもしれません。しかし、彼らは“藤丸立香”とあまりに違いすぎる」

「・・・」

「第一特異点の時点で気づきました。Aチームの彼らでは、人理を修復できるという確信がない」

 

マグカップからふわりと上がる、湯気だけが元気だった。

 

「所長の判断か。それなら従おう」

「・・・ありがとう」

「礼を言うことではないよ。胸を張っていなさい。キミはへりくだってはいけないからね」

「うん、・・・ええ」

 

夜の端まで雲は泳ぐ。

デジタル時計がぱっと光り、時間を進めた。

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