勇者リンクS’の人理修復配信RTA   作:はしばみ ざくろ

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特上カルビ2人前

「スパルタクス、ガリアを頼むぞ」

「自由なる民を守ろう。圧制者などには一歩たりとも、この門を越えさせぬよ」

 

歓声と声援に見送られながら、帝国軍はローマへの帰路につく。

リンクは皇帝達が心配だと言い、同行を申し出た。当然こちらには断る理由がない。

 

「そういえば・・・、エポナさんは一緒じゃないんですか・・・?」

「あ~ちょっといま機嫌が悪くって・・・。今回は呼べないな」

「そ、そうなんですね・・・。残念です」

 

旅の途中ですれ違う人々は様々な情報を持っている。

あっちに連合軍が。むこうに怪物が。地中海に古き神が―――――。

もしも本物の神霊なら放置は出来ない。ネロの判断で一同は海を目指す。

 

「立香、マシュ。船は初めて?」

「はい。船旅は今回が初めてです」

「中学生の時に一回くらい?ボートに乗ったよ」

 

 

船酔いしたらヤなので影の中にいます

 

 

奏者のお兄さん なんで乗り物酔いは普通にするんだろうな・・・

騎士 多分お前に関してはあらゆる感覚が過敏すぎるのかと

奏者のお兄さん ええん・・・

 

 

「そんならオレが周りを警戒してるから、この隙にのんびりするといい」

「いいの?」

「運転は余がしよう!なに、遠慮するな!さあ行くぞ!」

「おっと、出発するみたいだな。ほら、座ってな」

「ありがとうございます。リンクさん」

 

そうして意気揚々と船は港を飛び出した。

雲が緩やかに流れる、午前の時である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うむ、良い風を掴まえたな!かつてない攻め攻めな旅路であった!」

「・・・三半規管も強化されていて助かりました」

「・・・・・・・・・・・・・・・おぇっ」

 

荒波よりもさらに激しく、船なのに盛大にドリフトし、時に波に乗って空を舞う。

予想していたよりも遙かにクレイジーな運転技術を披露したネロは、満足そうに頬を上気させて船から下りてくる。

対して動けないのは護衛の兵と立香だ。

転覆紙一重を回避した衝撃は、脳をしっかり揺らしてデバフになった。もう絶対吐く。喉元まで来てる。

 

 

影の中にいてよかった~~~~!!!!!

 

 

海の男 代われェ!!!!!!!!帰りは儂が運転する!!!!!!

銀河鉄道123 免許剥奪しろ!!!!!!!運転を舐めるな!!!!!!

フォースを信じろ プロの方が

 

 

『立香、大丈夫ですか?』

『ま、まぁ。ともかく無事に到着して――。ん?これはサーヴァント反応・・・?』

「ドクター?どうし・・・」

 

不可思議な気配を纏って、人影は現れる。

紫の髪をツインテールにし、白と黒のドレスに身を包んだ女性。

 

「ご機嫌よう。勇者のみなさま。当代に於ける私のささやかな仮住まい、形ある(・・・)島へ」

 

小さな唇が弧を描いた。ふわりと囁く声。

 

「ふふっ、あら。どんなに立派な勇者の到来かと思ったのだけれど。サーヴァントが混ざっているだなんて驚きました。残念だわ、人間の勇者を待っていましたのに」

 

神性と艶麗を携えて、女神ステンノは微笑んだ。

ゴルゴン三姉妹が一柱。か弱き偶像(アイドル)。優雅で上品な理想の女性。そう生まれた(・・・・)神。

 

『たとえ神霊だとしても“神そのまま”であるはずがない』

『そうだね。英霊にしてもそうだが、その力はダウンサイジングされていて然るべきだ』

「あら、詳しいのね。魔術師さんたち」

 

でも、少し無粋でしてよ?

笑み一つでプレッシャーを放つ。直接向けられた訳ではない立香とマシュにも震えが走った。

ネロはすこし身をすくめ、しかしすぐに胸を張って話し出す。

 

「余を放って話を進めるでない!だが大雑把には理解したぞ。つまり、そこの女神は敵ではないのだな?」

「はい、その認識であっています」

「ふむ。ならば話は簡単でないか。古き女神ステンノよ。我がローマへ来るがよい!」

 

女神はとろりと視線を向ける。

困惑も驚愕もなく、ただ涼やかな佇まいがあった。

 

「あら、とっても眩しいのね。貴方って。アポロンと良い勝負。でも、ごめんなさいね皇帝陛下。私には妹のように、雄々しく戦う力は持ち合わせていないのです」

『えー?本当かなぁ?』

「持ち合わせてはいないのです♡」

『あっはいスミマセン』

「でも、そうね。せっかくここまで来てくれた勇者さまだもの」

 

ご褒美をあげなくちゃいけないわ。女神は謳う。

海岸沿いを歩いて行くと洞窟がある。その一番奥に宝物があると。

この時代には存在しないとっておき。楽しい貴方たちにさしあげますわ。

 

「ほう、女神の祝福か・・・。それはまた・・・」

「お宝!行ってみようよ」

 

盛り上がっていく少女達を見つめる、女神の笑みは崩れない。

ただ胸の奥に、ちいさな落胆があるだけ。

人間などには悟らせぬ、サーヴァントなどもってのほか。

もしかしたら―――――、と思ってしまった。己の愚かさを嗤うだけ。

 

「わん」

 

・・・空耳かしら?

声の元を探して視線は動く。影がするりと動いて視界を遮った。・・・黒い狼がいる。

 

わふっ(こんにちは)

 

ぱたぱたと耳を揺らしたまま、魔力の光が狼を包んだ。

現れたのは端麗な青年。ぱっちりと開かれた、青い目が優麗に笑う。

 

「女神ステンノ。お会いできて光栄です」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まぁ」

 

たっぷりと余白を使って、女神は反応を返した。

 

「あ、リンク!」

「リンクさん!・・・今、狼の姿で・・・!?」

「いま影の中から出てこなかったか!?そんなこともできるのか!?」

「そんなこともできるんだぞ~。オレはちょっと女神様と話してるから、洞窟はお前らだけで行ってきな」

『えーー!?』

 

『なんでなんで一緒に行こうよ』「リンクのダンジョン攻略みたいな」「今のってトワイライトの狼ですか」『影の魔法・・・・・・詳しく・・・・・・』『まって見逃したまって』『今の録画してただろうな!?!?』『そうだ録画!!!あとでデータ下さい!!!』

 

 

すいませんねぇ人気者で

 

 

うさぎちゃん(光) ステンノさまかわいい

バードマスター 神霊も出てくるとは・・・

守銭奴 ちやほやされるために出ていくタイミングを計ってた・・・ってコト!?

 

 

ちくちく言葉だぞ!!出るタイミングはマジであそこしかなかった

 

 

わいわいがやがやちらちらと振り返りつつも、洞窟に向かう部隊を見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

波が浜に打ち付けられる、等間隔の音だけが響いている。

狼の体に寄りかかり、毛並みを撫でる女神は、それだけで絵画の一枚になりそうなほど美しかった。

女神の四肢を包む繊細なフリルが、しゃらりと寄り添い、揺れる。

 

「くうん(女神ステンノ、落ち着きましたか?)」

「・・・・・・あら。私、慌てているように見えたかしら」

「(どちらかというと、周りを警戒してぴりぴりしているように見えたな)」

「・・・・・・・・・勇者さまにはお見通しね」

 

地平線の向こうから流れる風は冷たく。しかし頬にふれる温もりが安らぎをもたらした。

 

「・・・サーヴァントとして呼ばれても、私に出来ることなんてないわ」

「(でも、カルデアに行けばご姉妹に会えるチャンスはあるかもですよ?それに――)」

「それに?」

「(どうせなら、楽しい方がいいじゃないですか。取りあえず一緒に、ローマに行きませんか?)」

 

ステンノは不変の女神である。

完成された美。可憐な少女。誰かに守られなければ生きられない。

男の理想の存在であり、男に奪われることを運命づけられた女神。

一人では何も出来ない、というのは謙遜ではないのだ。

 

「勇者さまが守ってくださるの?」

「(立香やマシュもいますよ)」

「・・・・・・」

 

柔らかくて、つやつやで、ふわふわな椅子は、ぴるぴると機嫌良く鼻を鳴らしている。

ステンノは黙って体を預けた。この獣が、己に牙を剥くことなどないと知っているから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

じめじめと湿気た通路は、本能的な不快感をもたらす。

暗い場所は見通しが悪い。わかりきっているのにぼやいてしまう。

洞窟の隙間から、岩の影から湧き出る怪物を八つ当たりぎみに蹴散らして、カルデア一行は進む。

カタカタと蠢くのは骸骨の魔物。虚空の眼孔が剣を振り上げ、白亜の盾が砕き飛ばす。

 

「・・・・・・ふう。余はちょっと疲れてきた・・・。戻って休みたい・・・」

『おや、どうやら洞窟の奧に辿り着いたようだよ。そこに特殊な反応がある。これは――』

「どしたのドクター。お宝あった?」

 

咆哮。

四方八方の岩壁にびりびりと響く。

 

『幻想種だ!竜種ではないが、強力な幻獣の反応が一体!』

「で、でかいではないかー!むっ、しかしあの獅子の顔は可愛いぞっ!」

「そうかなぁ!?可愛いかなぁ!?」

 

古代ギリシャに伝わる怪物、キメラがどすどすと襲いかかってくる―――――。

 

 

 

 

 

奏者のお兄さん みんな遅いね

小さきもの まあ夕飯までには帰ってくるでしょ

 

 

「ステンノ様ー、お昼なんにします?」

 

 

いーくん 女神と二人っきりいちゃいちゃ食事イベントじゃん

海の男 ミドナ姫にチクろ

 

 

その台詞はライン越えてますよ。やめろください・・・マジで・・・

 

 

騎士 尻に敷かれてんな

 

 

オレンジのように瑞々しい夕日が、地中海の島を照らす。

へろへろの顔で帰ってきた立香達を、蕩けた笑みで女神が迎えた。

 

「むむっ!このかすかにキャットをくすぐる良い香り!さては噂の勇者クッキング!しかし残念だったな。これからご主人のランチタイムはこのアタシが担当するワン」

「サーヴァント?」

「宝箱の中にいたんだよ」

「にゃにゃんと!噂に聞く以上のイケメン!しかしアタシにはアタシの魅力がある。このワンだふるな毛並みとか」

 

耳はキツネ、語尾はワン、名前はキャット。服はメイドさん。

タマモナインのひとつ、タマモキャット。クラスはバーサーカーである。

 

「趣味は喫茶店経営。好きなものはニンジンときた」

 

だそうです。

 

「かわいいじゃん。野生?」

「先ほどご主人ができたのだ。つまり野生であって野生ではない。だワン」

「現界するときに引っ張ってきたの。私だけじゃ心許なかったものですから」

 

 

うさぎちゃん(光) キャットっていうの?可愛い~!

奏者のお兄さん カワイイは無敵だな・・・

 

 

『いやはや。もうすっかり日が暮れちゃったねぇ』

『まあ新しい仲間も増えたし、骨折り損でもなかったんじゃない?』

「そういえばステンノ様もローマ来るってさ」

『えっ』

「えっ」

「よろしくお願いしますね?帝国軍のみなさま」

 

リンクに優しく抱えられて、女神はにこりと微笑んだ。

たっぷりと熟した桃の果汁のような、甘い甘い笑みだった。

 

『オ゙ッ゙。い゙っ゙、ぎっ。・・・・・・ぐうう・・・・・・!』

「すいません今誰か死にました?」

『大好きな勇者が大嫌いな神を抱えているという画にギルガメッシュ王が床を殴っています』

「お、王様ーー!気を確かに!」

 

リンクは無言で船に向かった。対応が慣れてきている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・ん!?諸君、サーヴァント反応だ!海から来るぞ!』

「海・・・!?」

 

波が砕ける。

砂がぎゃぎゃりと鳴く。

ばしゃんと泡をふりほどき、その男は現れた。

 

「余、の・・・・・・!」

「叔父上・・・!?」

 

真っ赤に滴る瞳は、もう何も見えていない。

愛しいものを奪うために。貪るために。引き裂くために。

己の全身で無茶苦茶に蹂躙して。汚して穢して愛するために。

カリギュラは現れた。すべては欲望のままに。

 

「美しい、な・・・!おまえは美しい・・・・・・!」

 

にじり寄る男からネロを隠す。

あまりに異様な雰囲気が、少女達から言葉を奪った。

 

「みなぎる毛並み、沸き立つ獣性! しかしそれはアタシの十八番。ウェルダン?それともレア?キャットはこんがり丸焼き派だワン」

 

しかしキャットは動じない。なぜならハンドがド迫力。マッハでキュートな肉球をくらえ!

 

殴ッ血KILL(ぶっちぎる)!」

「キャット!」

 

文字通りの野生の動き。

しなやかな体が飛び回り、鋭い爪がカリギュラを切り裂いていく。

 

「ネロォォオ・・・・・・!」

「ママママママッッハ肉球ぅ!」

『つ、強い・・・!なんだあのバーサーカー!?』

「キャット、応急手当!ダメージに気を付けて!」

 

カリギュラの我武者羅な反撃を受けて、キャットのエプロンドレスが汚れていく。

だが立香のサポートを得て、すぐに純白を取り戻した。やはり良妻の勝負服(エプロン)はこうでなくてはな!

 

「むっふっふ~。ご主人に愛されて百ネコ力!その脂身を燃やす──Fat cat Busterrrrr!」

 

とっても大きなオムライス。・・・え、なんで?

ケチャップでネコが描かれている。・・・かわいいね?

赤い旗は肉球だ。・・・なんで?

とにかくオムライスが激突したのである。・・・カリギュラー!!

 

「カッ、カリギュラさーん!」

「叔父上ー!?」

「報酬に人参をいただこう!」

「よしよし」

 

立香は一周回って落ち着いていた。メイドさんなんだからオムライスくらい出るよね。

嫌な慣れである。

 

「勇者さま、参加しなくて良かったの?」

「オレが出たら一瞬で終わりますよ」

「あら」

 

ステンノを膝の上に乗せながら、リンクはのんびりと茶を啜った。




キャット難しすぎひん・・・?かわいく、たのしく、そうめい・・・?
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