勇者リンクS’の人理修復配信RTA   作:はしばみ ざくろ

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梅雨はじめじめして困りますね。
湿気が凄いんじゃ!(千鳥ノブ)


オレンジの片割れ

すとん、と首が落ちる。レオニダスは反応が出来なかった。

 

気配に疎いわけではない。警戒を怠っていたわけでもない。ただの純粋な実力差。

得意の槍は振るわれず、盾はただの置物と化す。

驚愕と衝撃に染まった顔を兜の下に隠したまま、地面に落ちる前に消滅した。

下手人はもう見向きもしない。

 

「佳境かしら」

 

しゃらんと着物を翻し、両儀式は呟いた。

地面がかすかに大人数の移動で揺れている。遠目に見えるのは、首都ローマに帰還途中の帝国軍だ。

女神ステンノとタマモキャットをパーティに加え、軽やかな会話は途絶えることがない。

そよ風と共に消えた彼女を感知できたものはおらず。

下手人の行方は誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皇帝陛下ー!」「帝国軍万歳!!」「うおおおお!」

「おかえりなさーい!」「皇帝さまー!」

 

どっと湧いた歓声を受け止めて、ネロは凛と佇む。

喜びに笑みを染め、興奮に胸を高鳴らし、市民達は万雷の拍手を惜しまない。

 

「聞くがいい!我が愛しの民たちよ!」

 

ざわめきが小さくなる。自慢の皇帝の言葉を聞こうと、皆が耳を澄ました。

 

「ここにおわすは古き女神、ステンノである!未曾有の危機を迎えている我が国に加護を与えんとお出ましになった。女神を称えよ!勝利を謳え!もはや我らが負ける道理はない!」

 

馬上に佇む女神は優雅に微笑んだ。後光の差すその姿を直視した人々は、輝きに目を奪われる。

兵士達の歩む道は自然と人並みが割れていく。隊に紛れている勇者は、物珍しげに辺りを見回した。

 

「ふう・・・。やっと落ち着いたな」

 

ふかふかのソファーに腰掛けて、ネロは深く息を吐く。

 

「凄まじい人の賑わいでした。まるでお祭りのようです」

「町中が元気だったよね。出発したときよりずっと」

 

長い凱旋を終えて、立香とマシュも安堵の表情を見せる。

旅の疲れよりも記憶の方が光っていた。初めての体験が沢山積み重なっていく。

こんな時なのに、楽しいと思ってしまうのだ。

 

『はは、まんざらでもなかっただろう?あれが勝利の美酒の味わいってヤツさ』

「ほほう。姿なき魔術師殿。まるで、味わったことがあるような口ぶりだな?」

『ははは、ボクは想像力豊かな方だからね。おかげで色んな目に遭ったけど』

 

タマモキャットが飲み物を入れている。

もふっとしたお手々で器用なものだ。

 

『しかし、流石ネロ皇帝。女神を上手いこと紹介したね』

「女神の加護を得たことは事実だ。皇帝たるもの、あれくらいは言えんとな」

「格好良かったよ、ネロ」

「うむ、そうだろうそうだろう!」

 

リンクの膝の上でステンノは小さく欠伸をした。そういう会話には興味がない。

 

「恐れながら皇帝陛下に申し上げます!特別遠征軍、首都ローマへ帰還の途にあるとのこと!」

「なに――、あの者達が帰ってきたか!」

「はっ。将軍、両名ともご健在!しかし現在、連合の大攻勢に遭って足止めをうけているとのことです!」

 

急ぎ足で部屋に張ってきた兵士は、早口気味に報告を告げた。

帝国の人員は存外潤沢のようだ。知らせを受けたネロは立香たちのほうに向き直る。

 

「立香、マシュ!帰ってきて早々すまぬが――」

「大丈夫だよ。行こう、マシュ」

「はい、先輩」

「キャットはランチの準備があるのだな」

「見ての通りですよろしく。気をつけてな」

「うんっ」

『・・・!・・・!』

 

部屋を飛び出して行った少女達を、リンクは見送った。

歯ぎしりするギルガメッシュはもうみんなスルーした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「■■■■■■■■」

「見事に囲まれたな。周囲は敵、敵、敵。雲霞(うんか)の如し。私達は取り立てて問題もないだろう。しかし・・・・・・」

 

片や、中華風の青い鎧に身を包んだ巨躯の男。

片や、白い装束を纏う東洋系の美女。

 

「■■■■■■」

「ああ。ネロ・クラウディウスから預かった兵達を失うことになる。なるべく、避けたいな」

 

男の言葉は咆哮にしか聞こえない。なのになぜか、二人の会話は成立しているようだった。

 

「死中に活あり――。私や貴殿はそれが叶うだろうが、彼らに対してそれを強いるのは酷、と言うもの」

「■■■■■■■■■」

「・・・ん?」

 

遠巻きに感じる敵の殺気よりも、さらに遠くから音がする。

 

「援軍、か。戦車の女王(ブーディカ)闘士(スパルタクス)はガリアと聞いたが」

 

馬を飛ばしながら駆けてきた少女は二人。一足先にローマに行かせた兵も一緒だ。

自軍の兵からは困惑が、敵兵からは警戒が伝わってくる。

それを背中に感じながら、女は応援を出迎えた。

 

「・・・荊軻さんですね。聞いていた特徴と一致します。わたしたちは合流できたようです、マスター」

「良かった。あの、ネロに言われて来ました」

「話は後だ。そちらの君も私達(サーヴァント)の同類だろう?となると、君はマスターかな」

「はい」

 

ならばひとまずは大丈夫だろう。前途洋々。反撃の時間だ。

 

「共に活路を開こう。できれば多くの兵を活かしてローマへ帰したい」

「はい。マスター、多人数戦闘です。指示を!」

「ヴラド三世、お願い!」

「よかろう」

 

闇に溶け込む黒い装束は、日向にぱちりと現れる。

優雅に裾を払って王は手を振るった。人が吹き飛ぶ音。

 

「帝国軍よ、余に続け!」

「いくぞお前達、必ず生きて帰れ」

「■■■■■■■■―――!!」

 

地面を突き破って数百の杭が現れる。この魔槍こそ王の手足よ。

それは兵士を守るように円上に広がり、不埒者の侵入を堅牢に拒む。

注射針よりも鋭く、兵士の腕よりも太い杭が敵を縫い止める。その体を王の槍が吹き飛ばした。

険阻(けんそ)なフィールドはヴラド三世の独壇場。

巨体で暴れ回る男をするりと避け、隊列を組む兵士を援護すれば。戦場を軽やかに駆ける女を横目に、気品を失わぬ足取りで闊歩する。

 

「さあ、串刺しの時間だよ」

 

立香と兵士を背に守り、飛び交う弓を受け止めるマシュ。それをさらに後ろに庇いながら、血の晩餐は行われる。

劣勢を実感したのか、一人、また一人と連合軍が下がっていく。

剣と剣が鍔迫り合う鈍い音が減っていく。わあわあと騒ぐのは捨て台詞か。

潮が引くように怒号が遠ざかった。

こちらの勝利である。

 

「敵軍、撃破しました。先輩、ヴラド三世さん、お疲れ様でした」

「味方の損害は・・・軽微だな。ふん、たわいもない」

「貴方たちは・・・?」

「ネロ皇帝の客将です。味方です!」

 

そっと声をかけてきた兵士に応えると、感謝の言葉が返ってくる。

それを聞いてヴラド三世は満足そうに戻っていった。護国の王はここにあり。それを感じ取った立香の表情もほころぶ。

 

「改めて、礼を言おう。預かり物の兵達を失わずに済んだようだ」

 

彼女こそはアサシン、荊軻。

ネロ・クラウディウスの客将であり、斥候と暗殺を得意とする中国の伝説の暗殺者だ。

 

「戦場を実際に駆け抜けるのは彼の役目だ。呂布奉先、今回は裏切るつもりはないそうだよ」

 

のっしのっしと戻ってくる様は、さながら雄の熊。

呂布奉先。クラスはバーサーカー。

三国志演義に名高い、反覆・裏切りの将である。

 

「マシュに立香。君たちは異なる時代からの来訪者か」

 

遠征軍は帰還を始める。

首都ローマはもう目と鼻の先だ。

 

「さりとて、こちらのやることは特に変わらない。群がる皇帝どもを屠るだけだ。私も、呂布も」

『さすが伝説の暗殺者・・・。皇帝暗殺にこだわりがあるのも頷ける』

「既に、サーヴァントの皇帝を三体は殺している。君たちとは競争だな」

「三体も?・・・こっちはまだ二体か・・・」

「せ、先輩?これは競争だったのですか?」

 

むむむ、と争う姿勢を見せた立香にマシュは戸惑う。

 

「そう落ち込むな。挽回の機会はまだある。首都ローマに帰還し次第、ネロによる連合への本格侵攻が始まるだろう」

「■■■■■■■■」

「ああ、どちらがより多くの首を手にするか――。楽しみだな!」

「■■■■■■■!」

 

今にもスキップしそうなほど機嫌の良い荊軻と、どうやら同じようにテンションは高いらしい呂布。

どうせやるなら勝ちたい・・・と言い始めた立香を宥めるマシュ。

各々鮮やかな感情の色を見せながら、ローマの町に辿り着く―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋の空気は悪い。もうずっと初めから。

 

「――呂布の排除に失敗した、か」

「・・・如何する。レフ・ライノール」

 

かすかに気まずそうに言葉を落とした男を、一言一言に重みのある声が突き刺す。

 

「何、所詮どうということはないさ。私には聖杯がある。忘れるなよ、既に言っただろう?」

 

所有者の言葉に反応して、黄金の杯が輝き出す。

それをロムルスはつまらなさそうに見守った。事実、興は醒めている。

 

「私は、真にサーヴァントを召喚できるのだ。自在に。それが如何に強力無比な英霊であろうとも!」

 

現れたのは紅顔の美少年。全身から、堂々とした覇気を感じる。

 

「・・・サーヴァント・ライダーか。ふうん。それが僕のクラスという訳か」

 

周りをぐるりと見渡し、視線はレフに戻った。

 

「それで?僕は何をすればいい、マスター?」

「速やかにネロ・クラウディウスを抹殺するんだ。この時代を破壊し、これ以後の人類定礎を斬り崩せ」

「・・・軍勢を貸し与える。好きに、使え」

 

レフとロムルスの言外の温度差に気づいたのか、気づいていないのか。

少年は相槌代わりににっこりと笑った。

 

「わかったよ。要は、戦争をすればいいってことだね?」

「・・・・・・然り」

「戦争。戦争か。戦争、ね。僕はきっと、それ(・・)がとても得意なんだろうな」

 

ううんと伸びをして、少年は退出するために玉座に背を向けた。

 

「わかった。それじゃあ軍勢、借りるね――――?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・夢か?覚めなくては」

「現実だぞ」

「■■■■■■・・・?」

「何言ってるのかわからんけどわかる。本物です」

「いやそれは嘘だろ」

「■■■■■■■!」

「嘘じゃないでーす!人を指で差してはいけません!」

 

相変わらず膝の上にステンノを乗せたリンクを見て、返ってきたのがこれである。

 

「いやなんでリンクがここにいるんだ。えっ本物?本当に?証拠見せろ」

「■■■■■■■■■■■?」

「どんどん距離を縮めてくる。すごい近づいてくる。ちょっと待ってステンノ様降ろしますよ」

「しかたのない人ね」

「うわイケメンだなムカつくくらい。どのリンクだ。うわイケメン。えっマジ・・・?」

「■■■■■■■■■■■」

「近くね?」

 

髪が絡まりそうなほど近くでまじまじと顔を眺める荊軻に、見ているこっちがドキドキするし。

呂布は上からつむじを見下ろして、野生の肉食獣のようなしなやかな体を興味深そうに見ている。

 

 

今までにないタイプの反応

 

 

災厄ハンター 先輩!!!温泉ありましたよ!!!

奏者のお兄さん マ?

 

 

なんか静かだと思ったら温泉探してたのかお前!?!?こっちに興味持てよ!!!!

 

 

「ほーらマスターソードですよ」

「本物じゃないか!!」

「■■■■■■!!」

「光の勇者のリンクです。以後オナシャス」

「疾風のブーメランは?」

「あるよ」

「チェーンハンマーは?」

「これだな」

「ホークアイは?」

「はい」

「陶器の馬笛」

「こちらになります」

『まってまってまってまってまって』

「まってまってまって見せて見せて見せて」

 

バッグから出てきたアイテムを見て立香とマシュとネロがすっ飛んでくる。

机の上で存在感を放つ勇者のアイテムに、ごくりと生唾を飲んだ。

 

『ウワーーーーー!!!!!』

『ムニエル!!しっかりしろ!!ムニエル!!』

『ヒュ』

『医者ーーーーー!!!ジークフリートが息してない!!!』

『ジークフリート!!!傷は・・・深いかも知れないですけど!気を確かに!!』

「マジか・・・握手してくれ・・・なんらかの加護があるかもしれん・・・」

「いいぞ」

 

荊軻としっかり握手をすると、呂布も手を差し出してきたので握る。

握手した手をじっと見て、荊軻は今さらながらに実感してドキドキしてきた。

 

『ああああれが陶器の馬笛・・・・・・。イリアが勇者リンクのために作ったという・・・・・・あの・・・・・・』

「すごい・・・・・・・・・・・・」

「本物だ・・・・・・・・・・・・」

「ひえ・・・・・・・・・・・・」

 

そこらの金貨よりもきらきらと煌めく価値をもつ道具の数々に、目が離せない。

小説で読んだやつだ・・・。

勇者の冒険を助け、彩り、支えた、あの有名なアイテム達・・・・・・・・・!

 

『本当に・・・・・・・・・本物なんだぁ・・・・・・・・・・・・』

『うっぐすっ、うっ。ひっ、ひっ、うう・・・・・・』

『オルガ~また職員が泣いて・・・・・・泣いてる・・・・・・!』

 

またみんな泣き出してしまった。

感動よりも興奮が勝ってるため辛うじて持ちこたえたダ・ヴィンチちゃんは、わかるよ・・・とオルガマリーの背中を優しくさする。

 

 

小さきもの どこの温泉?

災厄ハンター 閻魔亭ってとこです。でもあんまり有名ではないみたいで・・・俺もあちこち探してようやく見つけたんですけど

 

 

温泉ならオレも行くからな!この特異点が終わった後な!

 

 

「進研ゼミでやったとこだ・・・」

『進研ゼミに書いてあるのか!?』

 

最近の進研ゼミにも勇者リンクのことは載っているらしい。エミヤは突然のジェネレーションギャップを感じる。

 

『おお黒きジャンヌ・・・。今からでも間に合いますよ・・・』

『ジル?どうしました?オルタの私も』

『あっ、アンタには関係ないわよ!』

『白きジャンヌ。こちらのジャンヌはゼルダの伝説を読んだことがないようで・・・』

『え!?!?』

「えっ!?!?」

「・・・あっ、そうか!聖杯で作られたから・・・」

 

聖杯によって作られた存在であるジャンヌ・ダルク・オルタは、ジャンヌであってジャンヌではない。

彼女にはジャンヌの記憶がない。過去がない。だから吟遊詩人を囲んで胸を高鳴らせた、あの日々のことも知らないのだ。

 

「オレは全然気にしないけど。なんならそっちの・・・ジャンヌ・オルタ?のほうが気になるんだけど」

「ええと、第一特異点はフランスで、ジャンヌが二人居て・・・」

「よしよし大丈夫だ。後でまた聞くから。立香、疲れてるだろ。タマモキャットがご飯作ってるから、食べようか」

「呼ばれて呼び出てキャットが登場。お待たせしたな、シェフのおすすめをくらうがいい!」

 

かちかちと歯車は噛み合っていく。

とある監獄塔で、復讐鬼が目覚めた。

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