○災厄ハンター いやー!2も楽しみだねぇ!
○奏者のお兄さん 何の話?
もう決戦は始まっている。
曇天に響くのは、研ぎ澄まされた鋼の歌。
「今こそ、余と、余の兵たる貴様たちの力を集めるとき。この戦いを以てローマは再び1つとなろう!」
赤薔薇の
鬨の声が兵士の背中を後押しした。
「忌々しくも“皇帝”を僭称せしものどもよ、今こそ、偽物のローマが潰えるときだ!」
「戦え、余の兵たちよ!我が剣となって僭主どもを悉く打ち倒せ!」
「聞き惚れよ。しかして称え、更に歓べ!余の剣たちよ!」
歓声がそれを受け止める。兵の士気は右肩上がりだ。
「先輩、わたしたちは王宮攻略作戦に参加します。件の宮廷魔術師、見つけられると良いですが・・・」
「レフ・ライノール・・・」
「確証はありません。ですが、その可能性は十分にあります」
人波に逆らわずに進む二人は、次第に緊張に顔を硬くしていく。
レフでなくとも、聖杯の所有者と遭遇した場合、何が起こるか分からない。
『前回は聖杯の力で竜種が大量に召喚されていた。今回も、英霊召喚のみに費やされているとは限らない。それに――』
『サーヴァント反応を感知!二人とも、警戒なさい!』
ごう、と耳許で風が唸る。
冷えてきた空気が体に当たった。
「・・・・・・勇ましきものよ」
王宮の入り口付近に、巨躯の人物が立っている。
「実に、勇ましい。それでこそ、当代のローマを統べる者である」
「む――」
「あの人は・・・?」
一挙手一投足が洗練され、全身から漲るのは王の気品か。
○りっちゃん あっロムルス元気?
○うさぎちゃん(光) いえーいロムルス見てるー?
「そうか。お前がネロか。何と愛らしく、何と美しく、何と絢爛たることか。その細腕でローマを支えてみせたのも大いに頷ける」
うっすらと微笑みを形作る口が、深くハリのある声を届かせる。
「さあ、おいで。過去、現在、未来。全てのローマがお前を愛しているとも」
「な・・・・・・」
その姿を凝視して、ネロの体が小刻みに震え出す。
驚愕と動揺。
「何、と・・・・・・。あれは・・・。い、いや・・・・・・」
決して喜びなどではない。地を揺らすかのような衝撃。
「そんなこと、が・・・あって、良い、のか・・・・・・。いや、いや・・・しかし・・・・・・」
「ネロさん?顔色が優れませんが・・・」
「あの人知ってるの?」
「そ、それは・・・・・・」
二人に顔をのぞき込まれ、ネロはふらふらと視線を外した。
青くなった唇が、呟くように言葉を漏らす。
「ローマ・・・・・・。あれは・・・あの御方は・・・。一瞥しただけ、でも・・・わかってしまう・・・・・・。あの御方こそ・・・ローマ、だ・・・」
「そうだ。お前には分かるはずだ、ネロよ。
男の声は距離をものともせず、少女たちに語りかける。
慈愛をこめて、慈悲をこめて、しかし突き放すかのように鋭く。
「お前の全てを、
「ああ・・・・・・」
「ここまでおいで。愛し子よ。
「あなただけは、有り得ぬと・・・。余は思っていたのだ、信じたかったのだ・・・」
ぱたり、と地面が濡れた。
泣き崩れた少女のように。雨がぱらぱらと落ちてくる。
「しかし、あなたは余の前に立ちはだかるのか!紛うことなき、ローマ建国王!神祖ロムルス・・・・・・!」
もう背を向けてしまった、男に声は届かない。
「先輩、敵の一団が接近中!ネロさんを狙っているものと思われます!」
「迎撃!(ネロ・・・)」
「はい、マスター!」
雨が体を冷やしていく。
しとしと。しとしと。
「建国の王サマ、ね」
「あんまり興味はないか」
「あいにくただの牧童でして。王族には縁がなく」
○Silver bow その枕詞使えないよ
「お前がただの牧童を名乗るのはもう無理があると思う」
○Silver bow ほら
「・・・でもまあほら。今肝心なのはオレじゃなくてネロ皇帝の方だから」
「そうだな。しかし、どうりで連合の士気が高かったはずだ」
ジト目で見てくる荊軻から顔を逸らしつつ、会話の軌道修正を図る。
目元まですっぽりフードに覆われているため、青い瞳はかなり近くに来ないと見えない。
「どいつもこいつも命を捨てる覚悟の兵ばかり。そればかりか民のひとりに至るまで、兵士気取りで襲い掛かってくる」
つい先ほどまで野菜を売っていた人も、花に水をやっていた人も。まるで親の仇のようにこちらを睨んでいる。
「まるで光に集まる蛾のようだ。これが神祖のカリスマか?」
「兵の士気ならこっちも高いけど、皇帝が少し沈んでるからなぁ」
「・・・そうなのか?私にはあまり、様子が違うようには見えないが」
「勘、だけど」
片頰笑むリンクに、荊軻はぱちぱちと瞬きをした。
「そんなにショックだったのか?ロムルスが敵だったことが」
「オレが敵として出てきたら困るだろ?」
「困る・・・・・・。ああ、そういうことか。うん、それはショックだな。膝をつくかもしれん」
○海の男 こういうところで儂らとみんなの認識の差が出るんですね
○銀河鉄道123 べつに自己評価が低いわけではないのにむしろ高い方なのに
○騎士 まあ夢を見られているんだろう。英雄の性だ
雨はまだ止まない。
泣き濡れた空の下でも、リンクの金髪は淡く輝いた。
「・・・そろそろ動かねば。王宮への侵入経路を探ってくる」
「兵とバーサーカー達の指揮は任せろ」
「ネロ皇帝は?」
「立香とマシュがいるよ」
荊軻は幼い顔で微笑むと、霧雨の中に消えていった。
「・・・・・・む、そなたか。マシュはどうした?向こう?」
「いつも一緒に居るわけじゃないよ」
「そうなのか・・・」
敵の本拠地はもう目の前だ。
でもまだ進めない。立香はネロの隣に立つ。
「・・・情けない姿を、見せてしまったな。まさか、ああまで取り乱すとは」
「ううん。気にしてないよ」
「流石に、今回は、少し、こたえてしまった・・・。ほんの少しだが・・・」
「うん」
頬を滑るのは雨だけど、だけど・・・。
「余は・・・。もしや、とな。もしや、余の歩みが誤りだったのでは、と」
「うん・・・」
「無論、そんなはずはない。余こそがローマであり、第五代皇帝である」
「うん、知ってるよ」
まつげの水滴を、拭ってあげたいと思った。
立香はポケットの中で、ハンカチを握りしめる。
「だが、建国王の声を聞いた瞬間、ほんの僅かではあっても思い浮かべてしまったのだ」
「・・・」
「もしや、と・・・」
「・・・でも、あの人は、ネロのことを見定めるって言ったよ」
「っそうだ!あの方は、余を待っていると言った・・・!」
真紅の
「神祖はきっと間違えている。連合の下にいる民を見よ。兵を見よ。皆、誰ひとり笑っていない!」
「うん。すごくピリピリして、怖いな・・・」
「いかに完璧な統治であろうと、笑い声のない国があってたまるものか!ならば、余は、進まねば!」
何が相手であっても、迷うことなどない。
成すべきことを成すのだ。たとえ、どんな結末を迎えても。
「感謝する、立香。目の覚めた気分だ」
「私はなにもしてないよ。・・・あ」
ぽつり、ぽつり。
ぱたり。
雨が止んだ。
雲の切れ目から日光が差す。
「ネロ、雨が止んだよ」
「ああ、吉事だ」
「ただいま戻りました、先輩。・・・あれ、ネロさん?」
「うむ、マシュか!戻ったならば、そろそろ最後の仕上げと行くかな!」
先ほどとは打って変わって明るいネロを見て、マシュが驚いた顔をした。
「先輩、ネロさん明るくなってますよね」
「ちょっと励ました・・・というか。話を聞いたというか」
「それだけで・・・あんな風に?」
こんどはマシュが沈んだ顔をする。
立香は慌ててハンカチで頬を拭ってあげた。髪からぽたりと水が落ちる。
「ああ・・・。そうすれば良かったんですね。わたし、彼女に何もできませんでした。先輩は凄いですね」
「そんなに気にすることないよ。マシュはこれからだよ」
「む、何を話している?遠慮せず余も混ぜよ。と、言いたいところだが今は我慢だ。これより王宮を攻め落とす!」
威厳のある声が、雨上がりの町に響いた。
「荊軻が既に侵入の経路を見出した。少数精鋭でこれを進み、城内のロムルスを倒す」
「うん」
「はい」
「最後の戦いになる。余と共に来てくれるか。マシュ、立香」
「もちろん!」
「はい、行きましょう!」
空に虹が架かったのを、リンクが見つけて指を差す。
つられて見上げた民たちが、その美しさに、思わず言葉を無くした。