閻魔亭復興RTA
「チュンチュン、ようこそお客様!ここが地獄の番外地、どんな御霊も安らぐ秘湯!」
「ほう」
「人の世に言う神隠し、数ある迷い
どどーん!と眼前に広がる立派な温泉宿を見て、ミドナは感心したように頷いた。
「ようこそ閻魔亭へ。歓迎するでち――――」
「こんちは~。女将さん?」
「・・・・・・ハッ!も、申し訳ありまちぇん。女将の紅閻魔と申しまちゅ。どうぞ中へ!」
着物の袖を翻し、ぱたぱたと先導する少女をリンク達は追いかけた。
「温泉が閉まってる?ここは温泉宿って聞いたぞ」
「申し訳ありまちぇん・・・」
「なんか訳ありっぽいな?女将、良かったら話してくれる?」
白米をぽふぽふと盛りながら、紅閻魔はため息をついた。
お座敷で振る舞われる料理はどれもこれも逸品だ。ちまい雀たちを侍らせながら、ミドナは機嫌良く箸を進めている。
「以前、武蔵という羅刹が酔っ払って暴れ回り」
「もう見えてきたな」
「残留思念となって残り“自分より強いもの”と戦わないと満足して消えないのでちゅ」
「あっ真面目な話か」
「“相性の問題で負けただけだからぜーんぜん悔しくありません!私は私が納得するまで
「ちょっとしばいてくるわ」
「おう」
緑の勇者服に着替えて出ていった青年を見て、女将はもじもじとした。
しかし自分もプロ。プライベートに不用意に踏み込まないのが一流というもの。聞きたいこともお願いしたいもあるが、ここはぐっと我慢・・・。
「女将、アイツが気になるのか?」
けれどそんな遠慮もミドナには関係ない。
美味しい料理とお酒で気分も上向いたし、ちらりと見た部屋も趣があった。ぜひ長居したい。
そのためにも懸念は払っておかねば。
「き、気になる・・・ことはありまチュが、慰安中のお客様にご迷惑は」
「アイツがそんな小さいことを気にするタマか?・・・この旅館全体に、良くない気配が漂っているな。借金でもしているのか?」
「!」
「聖遺物が1つ。この建物の心臓部だな。しかし妙に陰りがある」
「・・・そこまで見抜かれているのなら、隠すのも無意味でちゅね。実は・・・」
500年前に起こった盗難事件。それが全ての原因だろう。
当時の宿泊客、竹取の翁が物取りに遭ったと言う。
“仏の御石の鉢” “蓬莱の玉の枝” “火鼠の裘” “龍の首の珠” “燕の子安貝”
しかし犯人は見つからず、翁は宿側に賠償を要求した。
とても払えない金額だった。閻魔亭は借金を背負わされた。
物盗りの悪評が立った宿からは客足が途絶え、もう利息分を払うだけでせいいっぱい。
「・・・勇者様のお知恵をお借りしたいでち・・・。あちきと雀たちではもうどうすることも・・・」
「フン。いつの時代も意地汚いヤツはいるもんだな。任せておけ。ワタシから話しておこう」
マジックアワーも恥じて隠れる、見事な髪を揺らして、黄昏の姫は笑った。
「500年前の物盗りかぁ」
「どうにかしろ」
「ひゅー無茶ぶり」
窓から見える美しい山の景色は、姫の心を癒やす。吹き込む風が気持ちいい。
備え付けの急須でお茶を入れながら、リンクはむむむと考える。
「まず本当に宝は盗まれたのか。竹取の翁が嘘をついているかもしれない」
「そうなると罪が重くなるな。ふふ、裁くときは手伝ってやる」
「まあ一番無難なのは、宿の復興をしつつ同じ宝を集めることかな。・・・いや、集める必要もないか?ほかのリンクがどうにかできるかも」
ほこりと湯気を出すお茶は温かい。
ミドナの体がぽかぽかとしてくる。・・・ちょっと眠くなってきた。
「んじゃ女将を手伝ってやれ。ワタシは昼寝したあと温泉に入る。あ、夕食は魚が食べたい」
「はいはい。おやすみ相棒。なんかあったら呼べよ」
可憐な微笑みは月下美人のごとく。
愛しい姫の安眠を守るため、ううんと伸びをして立ち上がった。
○Silver bow 誰がフォロワーだ
○うさぎちゃん(光) やだ・・・ブロックしなきゃ・・・
○災厄ハンター 何すか。温泉行ったんじゃないんすか
○Silver bow 説明をサボるな
○いーくん 分かるのが嫌
○海の男 ・・・で?
○Silver bow 思いません
○海の男 解散
○奏者のお兄さん 英霊の座に従業員募集のチラシ配った方が早いよ
○バードマスター 解決した
○騎士 無事返済したら教えてくれ。温泉は俺も入りたい
「という訳でチラシを作りました!雀たち、後はよろしく」
「任せるチュン!」「チュンチュン!」「がんばるチュン!」
「どれどれ・・・。宿の警備員、厨の料理人、お部屋係、清掃員・・・。ずいぶん細かくわけてありまチュね?」
「まず、これなら自分でも出来そう、って思ってもらわないとな。とっつきやすさは大事だ」
「なるほど・・・!さすが勇者様でち!頼もしいでち!」
ようやく表情が明るくなった、紅閻魔に安堵する。
この小さな体でよく500年も堪えたものだ。――――その背中を蹴飛ばそうとする、魔性を斬るのはこちらの役目。
円卓が英霊を集めるように、勇者のもとには勇あるものが集まる。すぐに人手も潤うだろう。
「(・・・さて、)」
まずはこの場に張られている、武者よけの結界を斬っておこう。
猿長者、蛇庄屋、虎名主にも話を聞かねば。
あそこまで力の落ちた存在なら、リンクが聖剣の勇者だと分かってもどうしようもできないだろう。
「チューーン!女将!女将!さっそく面接希望者が来たチュン!」
「なんでチュと!一体どなたでちか?」
「“斎藤一”って名乗ってるチュン!」
「人材ガチャ神引き過ぎる。さすがオレ」
幕間特異点 雀のお宿の活動日誌~閻魔亭繁盛記~