――――いよいよ、返済日がやってきた。
「あーら、剣呑な雰囲気じゃなぁい?朝からみんな集まっちゃって、どうしたのぅ?」
「宴会をするという顔ではありませんねぇ?ほほ。これはいよいよ閻魔亭の幕引きですかな?」
「・・・・・・」
蛇庄屋・猿長者・虎名主は高みの見物だ。別に構わない。
理の勇者・リンクが一瞥すらしないのを見て、他の四人も気にするのを止めたようだ。
ちなみに光の勇者はミドナに付き合って出かけている。
「来たチュン!来たチュン!竹取の翁がやって来たチュン!」
「従業員総出で出迎えとは関心ですね。まぁ、こちらは何百年も返済を待たされている身。それくらいの礼は尽くして当然ですな」
悠々とした足取りで翁がやって来る。
勝利を確信した目で。人の善性を笑いながら。
「(どうして俺らが従業員だって知ってるのかな~?ボロが出るのが早いな~)」
「とはいえ気持ちで懐は潤いません。まずは去年の利息分――」
「ええ、ええ。その心配はもっともですわ。翁さま。ですがご安心を。貴方さまの懐は、今からもっと素晴らしいもので満たされます!」
「・・・なんですって?」
ふわりと耳もとで囁いた。マタ・ハリの声に顔を向ける。
「お喜びください・・・竹取の翁さま。貴方さまが無くされた大切な宝は、私たちの頭」
「頭・・・?」
「叡智を携えた竪琴の使者。時空のことわりを知る聖剣使い。理の勇者・リンクがあっさりと取り戻したのですから」
「!?」
「――――ほほう。それはそれは、優秀ですね」
翁は余裕を崩さずに言う。
態とらしいくらいに。
「ですが、それは誰彼から手に入れた代用品でしょう?」
「まさか。この僕がそんな生半可な仕事をすると?正真正銘、アナタが500年前に失った宝ですよー」
澄んだ声が突き刺さる。
翁はそこでようやく、女将の後ろに控えていた少年に気づいた。
・・・蒼い
蒼い
「・・・聞き間違えですかな?」
「では早速場所を移しましょう!500年前に事件のあった客室、明烏の間にね」
少年特有のすこし高めな声が、スキップでもするかのように響いていく。
扉を開けて中に入れば、もうそこはリンクの独壇場。
「ご静聴ください。“ときのしらべ”」
時のたてごとは歌い出す。まやかしを破り、真実を見極めるために。
麗しの旋律は時をこえる。過去へ過去へ。戻れ戻れ。
「着きましたー。500年前の閻魔亭。あれがアナタの巾着?」
「・・・・・・・・・ばかな。そんな、」
「あら、でもそれだと巾着の中は空になってしまうわ。500年前の翁さまが困るかも」
「こんな筈は――こんな筈は――」
「でも辻褄は合うわね?ねぇ翁さま」
震える体にそっと寄り添い、じわじわと追い詰める女の声。
「・・・
「ぐ・・・く・・・!ぐぐぐぐぐぐぐ!」
じり、じり。巾着に近づいていく男の背中を、白けた目でリンクは見る。
○いーくん やはり悪事はよくないのでは
○奏者のお兄さん 万能下の句じゃん
「ぐぐ、ぐぅぅううう!くそう!そぉーーーれ!」
竹取の翁が巾着を開ける。
中は勿論空である。
「どうして空なのかしら?もしかして、はじめから宝なんてなかった・・・とか?」
「い、いや――あった。あったに決まっているんだろう!私は竹取の翁だぞ!?“五つの宝”をもっていて当然だろう!」
「“竹取の翁”が宝をもっているわけ無いでしょう?百歩譲ってもかぐや姫のものですよー」
対して声を張っていないのに、呆れた声が部屋に響く。
のびやかで甘い、琴の調べ。時逆の歌は終わる。
「嘘、ついたのね」
翁の仮面が斬り飛ばされる!
地獄の裁判官が刀を抜いた。目にもとまらぬ居合い術!
「謀られた事はあちきの落ち度、責めはしまちぇん。でちが、その二枚舌は許しまちぇん」
「・・・ぐ、う・・・。雀の分際で・・・・・・よくも、オレの顔、を・・・・・・」
霊基が急速に変化していく。
泥にまみれた中身が溢れた。
「許さねぇ・・・許さねぇ・・・!むかつくガキどもがぁ!!せっかく純朴なガキを騙して遊んでいたのによぉ!」
「今のは自白だな?斬る」
「――――ァ?」
渡辺が踏み込む、一閃。
「ぐ、・・・キヒャヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!効かねぇよ!蛇、虎、戻ってこい!」
「・・・・・・まぁ、そうなるわよねぇ」
「・・・・・・・・・・・・」
分裂していた体が戻る。性根爛れた夜の鳥。
視界に飛び散るのは火花。不思議なふしぎな木の実。
「ア゙ッヅ!?」
「綱、宝具。ブリュンヒルデ、ルーンで足止め。はじめちゃんとマタ・ハリは入り口を塞いでくださいー。女将、行けますかー?」
「了解」「はい」「ええ」「はいはい」
紅閻魔は一度目を閉じて、開いたときには姿が変わっていた。
「猿面の怪異様。閻魔の法廷に出るつもりはないのでちね?」
「あぁ!?なんでオレが地獄に出向かなくちゃいけねぇんだ!離せクソ女!」
「では代理官として理由を問うでち。なぜこんな事をしたのでち」
「この後に及んで情状酌量かぁ!?どこまで救いようがねぇんだ、テメェは!楽しいからに決まってるだろ!」
拘束されている立場とは思えない醜悪さで、怪異は嗤う。
500年近く閻魔亭の神気を集めてきただけあって、魔力は膨大だ。
だけど誰も怯えない。
「幸せそうなヤツラを騙すのが!よわっちいガキが必死に踏ん張っているのを台無しにするのは!最っ高に面白えからだよぉ!」
「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前──我が剣、魔性を斬る物。
「ガ・・・ッ」
「燃えろ、罪障が消滅する」
聞くに耐えぬ魔鳥の
「その所業、閻魔に代わってあちきが裁く!鬼の強面も震え出す、刹那無影の雀の一刺し――」
「効かねぇ・・・!」
「閻雀裁縫抜刀術、奥義の三。罪科あればこれ必滅の裁きなり。
正気を引き裂く鵺の
炎に包まれ葛籠に封じられ、最後は聖剣で真っ二つ。
「ぐえぇぇぇぇぇ!なんっ、なんだ!?なんなんだお前らはぁ!?」
「それがおまえ様の末路でち。己の利益、悦びのために嘘をつき、人様の幸福を嫉んだ罪!地獄の底からやり直すでち!」
「テメェ、テメェらもだ!オレの足を引っ張るんじゃねぇ!なにしてやがる!」
霊基が分裂してぽろりと落ちた。
蛇面と虎面がいなくなって、ああもう頭しかない。
「マスターソードは悪しきものしか斬りませんよー。つまり魔物は
「・・・ふ、ふざけんな・・・!」
「力と立場にものを言わせて、他人の自由を奪った罪。ちゃんと償いましょうね」
霞のように消えていく、猿面の
閻魔のお裁き、これにて閉廷。
「なんだ、解決したのか?」
「そうだね、お前の出る幕は無かったよ」
お茶菓子をかじりながら、リンクは横になった。今日は絶好の昼寝日和だ。
蛇庄屋・虎名主は猿長者に脅されていただけ(と、理の勇者が庇った)であると、情状酌量して減刑になった。
償いとして、今は閻魔亭で働いている。
「失礼するでチュン。リンク様、女将が呼んでるチュン」
「ん?」
「ワタシはエステールームに行ってくる」
「はいよ~」
待っていたのは女将と、巨躯の男。・・・いや巨躯っていうか。
「お会いできて光栄だ。光の勇者よ。姓は項。名は籍。あざなを羽。この躯体は・・・どうにも色々な縁があったようだ。驚きを理解する」
ケンタウロスのような下半身、何本も生えた腕、知的な風貌。
属性盛りだくさんの男は、リンクを見て丁寧に礼をした。
「初めまして、項羽。オレに用事かな」
「ああ、実は・・・・・・。妻を探している」
史記、漢書にて断片的に語られる、謎に包まれた項羽の寵姫、虞美人。
その正体は、地球の内海から発生した表層管理のための端末。――精霊である。
「マジで?」
「うむ」
「閻魔亭にも時々来てくれたでちゅ。でも、ここ500年はすっかり姿が見えなくて・・・」
「我が妻のことだ。未だ、寄る辺なきままに彷徨う身であってもおかしくはない」
○奏者のお兄さん それ芥さんじゃないの
○フォースを信じろ 誰だっけ
○奏者のお兄さん コフィンにいるAチームの芥ヒナコさん。虞美人草=雛芥子=芥雛子でしょ
○災厄ハンター シンプルぅ
「・・・もしかしたらカルデアにいるかも。見てこよっか?」
「カルデア?」
「あっまだ知らないのか。えーとちょっと待ってな。説明は後でいいか?」
「構わぬ」
「項羽様、お茶をいれるでち。こちらへどうぞ」
○りっちゃん 綱とはじめちゃんと温泉なう
というわけでコフィンを開けに行きます。
次週、約束されたトンチキ先輩。
お楽しみに!