勇者リンクS’の人理修復配信RTA   作:はしばみ ざくろ

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次からは第三特異点です。
ちなみにRTA in Japan2021を見ながらこれを書いています。時間が溶ける~。


今年の夏はどこにいこうか?

霊子筐体(りょうしきょうたい)、クライン・コフィン。通称コフィン。

レイシフトを安全に行うために用いる機械だ。

まず、コフィンに入った人物の数値を測定し“どのような数値で成り立っているか”の定義づけをする。

その後魔術を発動。そうすると内部の生命反応が観測できなくなる。

“生きているか死んでいるかわからない箱”の完成――というわけだ。

 

 

ファイ トライフォースの発動を確認。カルデアに到着したと推定します。

 

 

ここがカルデアですか~。おっきいですねー

 

 

リノリウムによく似た材質の床は、ブーツの足音を隠さない。

まるで病院のような白さと清潔さ。手術室のように抑揚を押さえて、カルデアはリンクを出迎えた。

芥ヒナコを含むAチームのマスターたちは、今もコフィンの中で冷凍されている。

まあ開ければ起きるだろう。彼女は不老不死タイプの精霊のようだし。

人気のない廊下を進んでいけば、あっという間に本命の部屋。――――の前で待ち構える、老紳士が一人。

 

「お待ちしておりました。偉大なる緑の君」

「・・・う~ん。どうして来るのがわかったんですー?」

「なに、簡単な話さ。私の召喚者はトライフォースの力を感知できるらしい。そのおこぼれにあずかっただけだ」

「なるほど~。・・・どいてくれます?」

「タダで?それはいけない、キミ。コフィンを開けないのは所長の意志だ。私はそれを守っているだけだよ」

 

ジェームズ・モリアーティは優雅に微笑んだ。

こちらはこう出た。そちらはどうする?お手並み拝見といこうか。

 

「そうですかー。それならしょうがないですねー」

「なぜファイティングポーズをとるのかな?」

「考えるのめんどくさいです~。腹を殴ったら大概の生き物は気絶する」

「それが勇者の台詞かネ!?!?」

 

 

バードマスター ひどい

騎士 どうしてこいつを行かせた

ウルフ 行きたいってゆったから・・・

 

 

「ふむ・・・。クレームが来ました」

「するよ!?クレームしかないよ!?理の勇者ってこんな感じなんだァ!?」

「じゃあこっちでー」

 

のんびりとした口調で、リンクは赤い笛を取り出した。

“ヘンなふえ”と呼ばれる楽器は、仲間の動物を召喚するアイテムだ。

 

「いけ、ウィウィー。エサだよ」

「違いますけ怖!!あぶっ・・・まってまってまって話し合おう!?ネェ!!」

 

真っ赤な恐竜の名はウィウィ。水陸両用の頼もしい仲間。滝だってぐんぐん登れるぞ!

目の前の敵を食べ尽くすその姿から、ついたあだ名は暴食レッド。

なぜ絶滅したはずの恐竜がいるのか?という問いには、異世界なのでセーフ理論が適用されます。

 

「イヤーッ!!助けて!助けて!」

「降参して下さいー。僕もそこまで鬼じゃないですー」

 

モリアーティの体を自慢の顎で挟もうとするウィウィ!抵抗する老紳士!絵面がやばい。

 

 

銀河鉄道123 りっちゃんこんなに血も涙も無い感じだった?

フォースを信じろ 多分、人の目がないからブレーキが無くなってる。ウィウィが魔物しか食えないなんて一言も言ってないし・・・

いーくん 勇者の姿か?これが・・・

 

 

僕がルールです~。今までも、これからも

 

 

ウルフ ヒューッ!

うさぎちゃん(光) さすが異世界を2つ救った人は言うことが違う

海の男 誉は死んでるけどな

 

 

「わかっ、わかった・・・!どくから・・・!この恐竜を・・・止めて・・・!」

「賢明な判断、何よりです」

 

 

小さきもの どっちが悪役かわかんねぇな

 

 

リンクがウィウィを帰すと、モリアーティは腰を庇いながらよろよろと立ち上がった。かわいそう。

老紳士をさっくり通り過ぎ、入った部屋の中にそれはあった。Aチームメンバーの眠るコフィン。

棺のようだ、と例えたのは誰だったか。彼らは未だ、安楽の眠りの中。

 

「モリアーティ、開けれる?」

「・・・まあ私は天才だからね。お代は後払いでいいヨ!」

 

 

Silver bow ネバギブ精神がすごい

 

 

カルデアスタッフでさえ手間取る蘇生手術も、中にいるのは精霊種、という事前情報と希代の数学教授にかかれば造作もない。

そうでなくとも、モリアーティは元々コフィンの解析を秘密裏に進めていた。後は実践でそれを詰めるだけ。

連動しているアナウンスを切ったら、解凍はもうすぐだ。

 

「――――――」

 

コフィンが開く。

どろり、肉片が溶けた。

横たわっている。動いている。伸びる影。

鼓動の音。血管が、心臓が動き出す。自然界からエネルギーを補給して。――ある意味では無尽蔵の魔力をもつリンクから、エナジードレインで大量の糧を得て。

肉体を再構成。瞼を開ける。

限りなく己と近い存在が目の前にいることを認識して、虞美人は飛び起きた。

 

「・・・・・・・・・・・・精霊?」

「初めまして。死後、それに近い存在になりましたー。リンクと申します」

「リンク・・・・・・?」

 

栗色の長いツインテール。ずり落ちた眼鏡を直す。

魔術礼装に身を包んだ女性は、せわしなく周りを見渡し、再びリンクに視線を戻す。

 

「僕は四季のロッドを所持し、大地のことわりを知るため“星の触覚に近い”とガイアは判断しました。そういう属性がついているだけで、中身は生前のまま人間です~」

「・・・勇者リンク・・・」

「はい」

「項羽さまが仰っていた・・・星の意志に選ばれた者・・・」

「それはちょっとわかりませんが、そういうことでもオッケーでーす」

 

 

災厄ハンター パパ星の意志ってなに

バードマスター わかんない。ファイー!

ファイ ガイアに選ばれた抑止力、かと。実際そうであるかはファイにもわかりません。

 

 

警戒はされていないようだ。差し出した手を握り返して、彼女はコフィンから起き上がる。

驚きのほうが勝っているのだろう。目をまん丸くして、リンクのことを()めつ(すが)めつ眺めている。

 

「虞美人さまですね?古代中国で語られる仙女。精霊・妖精と縁深い我らからしてみれば、敬愛すべき隣人。どうぞよろしくお願いします~」

「え、ええ。礼儀を理解しているのね。さすが、項羽様がお認めになっただけのことはあるわ」

「ありがとうございますー。立ち話も何ですから座りましょう。着替えもなさいますか?」

「気が利くじゃない。そうね、この礼装も固っ苦しいし・・・」

 

デキる男・モリアーティの手により、以前着ていた服と談話の準備がされている。すごい。

オシャレなティーカップを傾けながら、二人は現状を話し合った。

 

「――――人理なんて、どうでもいいわ。・・・でも、ここでなら、項羽様に会えるかも・・・と」

「まだチャンスはありますよー。英霊の座に時間の概念はありません。アナタが項羽さんの情報を英霊の座に持ち込めば、今、呼び出すことも可能でしょう」

 

というか実際に項羽はもういる。

虞美人が持ち込んだ真実と、とあるIFから引っ張られた躯体をもって。虞美人の愛した心のままに。

あの時と変わらず、最愛の妻を案じている。

 

「そして項羽さんと再会するためには、生き残ったマスターとスタッフに協力するのが最適かと」

「そうみたいね。・・・仕方ない人間共。手を貸してあげましょう」

「それでこそ虞美人さま。では登場のタイミングは――――」

 

吹雪の夜。

星の内海を越えて、英霊の座に向かう。

見送ってくれた不思議な気配の少年を、虞美人はこれからも時々思い出すだろう。

そして存外すぐに再会して、同じ“リンク”なのに余りにも性格が違うことに叫ぶだろう。

後ろ髪を引かれる思いもなく、虞美人はもう一度、未来へと歩き出した。

 

「スミマセーン、請求書です」

 

こちらは懲りない悪の組織の親玉。

今度は圧倒的暴力に屈しないよう、杖をしっかり握って構えている。

 

「そんなに警戒しなくても、僕は冷静な勇者ですよ~」

「冷・・・静・・・?」

「請求書確認しますねー。“モリアーティの指定する特異点に関わらない”。・・・なるほど」

「私は一度だけ、キミの介入を拒む。もちろんこのグランドオーダーが終わった後、世界の行く末には関係のない場所サ」

「いいでしょう。飲みますよー」

「エッ」

 

余りにもすんなり頷くので、虚をつかれたような顔をしたモリアーティに、リンクは可憐に笑いかけた。

 

「僕はこういうの嫌いじゃないです。お手並みを拝見しましょう」

「・・・いいとも、見せてやろう!悪役の意地をね!」

 

青い蝶々が羽ばたいて、視界を埋め尽くして、もう誰も居ない。

リンクは請求書を懐にしまうと、静かにカルデアを去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――今日も、同じ時間に目が覚めた。

体温を確認する。五感を確認する。客観的にもわかるように、わたしの名前を口にする。

深呼吸をして――眠るたびに消える可能性があるといわれた、自意識を確認する。

わたしはわたしだ。わたしは今日も、存在を許された。

 

「やあ、おはよう■■■。寒くないかい?外の気温はマイナス70℃だ。今朝は特に冷え込んでいてね。まあ、この部屋にいるかぎり関係のない話だけど」

「それはたいへんですね」

 

思ったことを口にした。綺麗で快適な部屋にわたしはいる。

 

「・・・・・・何か不都合はないかな?気に入らないコトがあったら何でも言っていいんだよ」

 

彼は表情を崩してそう言った。とても辛そうな顔で私を見ている。

おそらく彼の体の一部が痛んでいるのだろう。

 

「だいじょうぶですか」

「・・・・・・ああ、ボクは大丈夫。余計な気遣いだったね。おはよう、■■■。5110回目の覚醒、おめでとう」

「ありがとうございます」

 

心からの気持ちだった。

わたしはとても幸せだ。今日も一日、このきれいな世界を見ていられるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フォーウ。フォウ、フォーウ!」

 

てしてしてしと小さな肉球の猛攻。なんだか夢を見ていたような。

立香の意識が浮上する。

 

「い、いけませんフォウさん!噛むのはダメです。もっと丁寧に接触すべきです」

 

いたたたたた。

とうとう噛んできたぞこの獣。

 

「たとえ相手が石のように鈍感でも。こう、人参の皮を剥ぐ刃物のように」

「フォウ!」

「・・・・・・おはよう、マシュ。フォウくんも・・・」

 

ぐしぐしと目を擦ってベッドから起き上がる。

椅子に座ったマシュが、櫛を手にして意気込んでいた。おきまりになったルーティーン。

 

「では早速、髪を梳かさせていただきます!ブーディカさんに習った櫛さばき、とくとご覧下さい!」

「うん、いつもありがとうね・・・」

 

欠伸を一つ。片手でフォウくんをあやしながら、立香はゆっくりと出かける準備をした。

管制室には人が沢山だ。サーヴァント達も揃っている。今朝から賑やかで・・・・・・・・・。

賑やかだな?

 

「ほ、ほんとに芥くんなのかい・・・・・・」

「だからさっきからそう言ってるんじゃない!しつこいわね!」

「人物照合一致。内部データは丸っと変わっているけど、うん、Aチームの彼女で間違いないね」

「・・・・・・ど、どうやって・・・?」

 

騒然とする人々の中心で、虞美人は腕を組んでふんぞり返った。

朝一番に召喚ゲートから堂々とやってきて「オルガマリーはどこ?芥が来たって伝えなさい」と言い放った彼女に、職員達は翻弄され続けている。

暗い紺色のセーターに身を包み、チョコレート色の長髪は三つ編みに。

文学少女など仮の姿。(あで)やかな美女は、すっ飛んできた幹部達に言い放つ。

 

「私は虞美人。項羽様の妻。仙女よ。本来ならガイアの存在なんだけど・・・、人類の守護を誇りとした項羽様のご意志を継ぐべく、英霊になったの」

「まって」

「コフィンの中に居るのも私。ここにいるのも私。以上」

「情報が・・・情報が多い・・・!」

「まだ咀嚼しきってない・・・!終わらないで・・・!」

 

聞き逃せないキーワードに、野次馬のサーヴァント達もざわめき出す。

立香はマシュから、虞美人って誰?仙女って仙人?という疑問を解決してもらっている。

 

「と、とりあえず、ここに来てくれたということは、人理修復に手を貸してくれる、ということですか?」

「不本意よ。でもこの現状を見たら、項羽様は悲しむでしょう。なにより私の当初の目的、英霊の項羽様にお会いすることも敵わない」

 

ため息をつく佳人に気圧されつつも、立香はそそそっと前に出た。

 

「あのっ」

「ん?」

「初めまして、虞美人先輩。藤丸立香です。あの、一応、マスターを、やらせていただいております・・・」

「・・・・・・ほう」

 

実のたっぷり詰まったオレンジのようにみずみずしく。

土から掘り出されたニンジンのように垢抜けない。

相反する要素を意志の灯る瞳で纏めた、たったひとりの少女。

 

「ふん。悪くない態度ね、後輩。お前には私と契約する権利をあげるわ。その代わり、項羽様をぜっっっったいに呼びなさいよ!」

「はっ、はい!」

「あの、あく・・・虞美人さん。お久しぶりです」

「・・・あんたマシュ?随分印象が変わったわね。今の方がよっぽど好感が持てるわ」

「え・・・」

 

先輩、まずは種火を!

当然よ、あるだけ貢ぎなさい。

鈴を転がすような声が混じって遠ざかっていくのを、マシュは動かない足で見送ってしまった。

 

わたしはわたしだ。わたしは今日も、存在を許された。

わたしは・・・わたし。

5110回目の覚醒とは違う。目覚めたいと思って目覚めた。朝がくるのが待ち遠しかった。

許されなくても、生きたいと思っている。

胸の辺りが痛むのを、服をぎゅっと握りしめることで誤魔化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういう訳なのでー項羽は第三特異点で合流して下さいー」

「承知。心遣いに感謝する」

「風の勇者がそのうち来るのでー指示を仰いで下さいねー」

 

休憩室は時間の流れが穏やかだ。

どこからともなく聞こえる水の音に耳を澄ませながら、リンクは閻魔亭名物・すずめまんじゅう(こしあん)を囓った。

 

「あの」

「ん~?」

「人理修復の手伝いとか・・・した方が・・・?」

「はじめちゃんたちの出番はまだですよー。腕を磨いて待ってて下さいー」

「いつでもお声かけ下さい。この剣は泰平の世のためにあり」

「綱は真面目で偉いですねー。頼もしいです」

 

にこにこと機嫌のいい少年につられて、綱も小さく笑みを零した。

 

「これが四季のロッド・・・。なんて柔らかく、花のように馴染むのでしょう」

「まるで初めからここにあったみたい。大地の香りがするわ」

 

四季のロッド。

ホロドラムの四季を変化させることができる杖・・・なのだが英霊に登録された際、リンクの魔力が及ぶ範囲までの四季を変えられるようになった。無法か?

 

「閻魔亭の季節も変えられますよー。女将の許可が下りればですけどー」

「すげぇ!?」「凄いですね!?」「み、見たいです・・・!」「女将さんに聞いてくる!」

 

閻魔亭が桜まみれになるまで、あと少し。

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