ちなみにRTA in Japan2021を見ながらこれを書いています。時間が溶ける~。
レイシフトを安全に行うために用いる機械だ。
まず、コフィンに入った人物の数値を測定し“どのような数値で成り立っているか”の定義づけをする。
その後魔術を発動。そうすると内部の生命反応が観測できなくなる。
“生きているか死んでいるかわからない箱”の完成――というわけだ。
○ファイ トライフォースの発動を確認。カルデアに到着したと推定します。
リノリウムによく似た材質の床は、ブーツの足音を隠さない。
まるで病院のような白さと清潔さ。手術室のように抑揚を押さえて、カルデアはリンクを出迎えた。
芥ヒナコを含むAチームのマスターたちは、今もコフィンの中で冷凍されている。
まあ開ければ起きるだろう。彼女は不老不死タイプの精霊のようだし。
人気のない廊下を進んでいけば、あっという間に本命の部屋。――――の前で待ち構える、老紳士が一人。
「お待ちしておりました。偉大なる緑の君」
「・・・う~ん。どうして来るのがわかったんですー?」
「なに、簡単な話さ。私の召喚者はトライフォースの力を感知できるらしい。そのおこぼれにあずかっただけだ」
「なるほど~。・・・どいてくれます?」
「タダで?それはいけない、キミ。コフィンを開けないのは所長の意志だ。私はそれを守っているだけだよ」
ジェームズ・モリアーティは優雅に微笑んだ。
こちらはこう出た。そちらはどうする?お手並み拝見といこうか。
「そうですかー。それならしょうがないですねー」
「なぜファイティングポーズをとるのかな?」
「考えるのめんどくさいです~。腹を殴ったら大概の生き物は気絶する」
「それが勇者の台詞かネ!?!?」
○バードマスター ひどい
○騎士 どうしてこいつを行かせた
○ウルフ 行きたいってゆったから・・・
「ふむ・・・。クレームが来ました」
「するよ!?クレームしかないよ!?理の勇者ってこんな感じなんだァ!?」
「じゃあこっちでー」
のんびりとした口調で、リンクは赤い笛を取り出した。
“ヘンなふえ”と呼ばれる楽器は、仲間の動物を召喚するアイテムだ。
「いけ、ウィウィー。エサだよ」
「違いますけ怖!!あぶっ・・・まってまってまって話し合おう!?ネェ!!」
真っ赤な恐竜の名はウィウィ。水陸両用の頼もしい仲間。滝だってぐんぐん登れるぞ!
目の前の敵を食べ尽くすその姿から、ついたあだ名は暴食レッド。
なぜ絶滅したはずの恐竜がいるのか?という問いには、異世界なのでセーフ理論が適用されます。
「イヤーッ!!助けて!助けて!」
「降参して下さいー。僕もそこまで鬼じゃないですー」
モリアーティの体を自慢の顎で挟もうとするウィウィ!抵抗する老紳士!絵面がやばい。
○銀河鉄道123 りっちゃんこんなに血も涙も無い感じだった?
○フォースを信じろ 多分、人の目がないからブレーキが無くなってる。ウィウィが魔物しか食えないなんて一言も言ってないし・・・
○いーくん 勇者の姿か?これが・・・
○ウルフ ヒューッ!
○うさぎちゃん(光) さすが異世界を2つ救った人は言うことが違う
○海の男 誉は死んでるけどな
「わかっ、わかった・・・!どくから・・・!この恐竜を・・・止めて・・・!」
「賢明な判断、何よりです」
○小さきもの どっちが悪役かわかんねぇな
リンクがウィウィを帰すと、モリアーティは腰を庇いながらよろよろと立ち上がった。かわいそう。
老紳士をさっくり通り過ぎ、入った部屋の中にそれはあった。Aチームメンバーの眠るコフィン。
棺のようだ、と例えたのは誰だったか。彼らは未だ、安楽の眠りの中。
「モリアーティ、開けれる?」
「・・・まあ私は天才だからね。お代は後払いでいいヨ!」
○Silver bow ネバギブ精神がすごい
カルデアスタッフでさえ手間取る蘇生手術も、中にいるのは精霊種、という事前情報と希代の数学教授にかかれば造作もない。
そうでなくとも、モリアーティは元々コフィンの解析を秘密裏に進めていた。後は実践でそれを詰めるだけ。
連動しているアナウンスを切ったら、解凍はもうすぐだ。
「――――――」
コフィンが開く。
どろり、肉片が溶けた。
横たわっている。動いている。伸びる影。
鼓動の音。血管が、心臓が動き出す。自然界からエネルギーを補給して。――ある意味では無尽蔵の魔力をもつリンクから、エナジードレインで大量の糧を得て。
肉体を再構成。瞼を開ける。
限りなく己と近い存在が目の前にいることを認識して、虞美人は飛び起きた。
「・・・・・・・・・・・・精霊?」
「初めまして。死後、それに近い存在になりましたー。リンクと申します」
「リンク・・・・・・?」
栗色の長いツインテール。ずり落ちた眼鏡を直す。
魔術礼装に身を包んだ女性は、せわしなく周りを見渡し、再びリンクに視線を戻す。
「僕は四季のロッドを所持し、大地のことわりを知るため“星の触覚に近い”とガイアは判断しました。そういう属性がついているだけで、中身は生前のまま人間です~」
「・・・勇者リンク・・・」
「はい」
「項羽さまが仰っていた・・・星の意志に選ばれた者・・・」
「それはちょっとわかりませんが、そういうことでもオッケーでーす」
○災厄ハンター パパ星の意志ってなに
○バードマスター わかんない。ファイー!
○ファイ ガイアに選ばれた抑止力、かと。実際そうであるかはファイにもわかりません。
警戒はされていないようだ。差し出した手を握り返して、彼女はコフィンから起き上がる。
驚きのほうが勝っているのだろう。目をまん丸くして、リンクのことを
「虞美人さまですね?古代中国で語られる仙女。精霊・妖精と縁深い我らからしてみれば、敬愛すべき隣人。どうぞよろしくお願いします~」
「え、ええ。礼儀を理解しているのね。さすが、項羽様がお認めになっただけのことはあるわ」
「ありがとうございますー。立ち話も何ですから座りましょう。着替えもなさいますか?」
「気が利くじゃない。そうね、この礼装も固っ苦しいし・・・」
デキる男・モリアーティの手により、以前着ていた服と談話の準備がされている。すごい。
オシャレなティーカップを傾けながら、二人は現状を話し合った。
「――――人理なんて、どうでもいいわ。・・・でも、ここでなら、項羽様に会えるかも・・・と」
「まだチャンスはありますよー。英霊の座に時間の概念はありません。アナタが項羽さんの情報を英霊の座に持ち込めば、今、呼び出すことも可能でしょう」
というか実際に項羽はもういる。
虞美人が持ち込んだ真実と、とあるIFから引っ張られた躯体をもって。虞美人の愛した心のままに。
あの時と変わらず、最愛の妻を案じている。
「そして項羽さんと再会するためには、生き残ったマスターとスタッフに協力するのが最適かと」
「そうみたいね。・・・仕方ない人間共。手を貸してあげましょう」
「それでこそ虞美人さま。では登場のタイミングは――――」
吹雪の夜。
星の内海を越えて、英霊の座に向かう。
見送ってくれた不思議な気配の少年を、虞美人はこれからも時々思い出すだろう。
そして存外すぐに再会して、同じ“リンク”なのに余りにも性格が違うことに叫ぶだろう。
後ろ髪を引かれる思いもなく、虞美人はもう一度、未来へと歩き出した。
「スミマセーン、請求書です」
こちらは懲りない悪の組織の親玉。
今度は圧倒的暴力に屈しないよう、杖をしっかり握って構えている。
「そんなに警戒しなくても、僕は冷静な勇者ですよ~」
「冷・・・静・・・?」
「請求書確認しますねー。“モリアーティの指定する特異点に関わらない”。・・・なるほど」
「私は一度だけ、キミの介入を拒む。もちろんこのグランドオーダーが終わった後、世界の行く末には関係のない場所サ」
「いいでしょう。飲みますよー」
「エッ」
余りにもすんなり頷くので、虚をつかれたような顔をしたモリアーティに、リンクは可憐に笑いかけた。
「僕はこういうの嫌いじゃないです。お手並みを拝見しましょう」
「・・・いいとも、見せてやろう!悪役の意地をね!」
青い蝶々が羽ばたいて、視界を埋め尽くして、もう誰も居ない。
リンクは請求書を懐にしまうと、静かにカルデアを去って行った。
――――今日も、同じ時間に目が覚めた。
体温を確認する。五感を確認する。客観的にもわかるように、わたしの名前を口にする。
深呼吸をして――眠るたびに消える可能性があるといわれた、自意識を確認する。
わたしはわたしだ。わたしは今日も、存在を許された。
「やあ、おはよう■■■。寒くないかい?外の気温はマイナス70℃だ。今朝は特に冷え込んでいてね。まあ、この部屋にいるかぎり関係のない話だけど」
「それはたいへんですね」
思ったことを口にした。綺麗で快適な部屋にわたしはいる。
「・・・・・・何か不都合はないかな?気に入らないコトがあったら何でも言っていいんだよ」
彼は表情を崩してそう言った。とても辛そうな顔で私を見ている。
おそらく彼の体の一部が痛んでいるのだろう。
「だいじょうぶですか」
「・・・・・・ああ、ボクは大丈夫。余計な気遣いだったね。おはよう、■■■。5110回目の覚醒、おめでとう」
「ありがとうございます」
心からの気持ちだった。
わたしはとても幸せだ。今日も一日、このきれいな世界を見ていられるのだから。
「フォーウ。フォウ、フォーウ!」
てしてしてしと小さな肉球の猛攻。なんだか夢を見ていたような。
立香の意識が浮上する。
「い、いけませんフォウさん!噛むのはダメです。もっと丁寧に接触すべきです」
いたたたたた。
とうとう噛んできたぞこの獣。
「たとえ相手が石のように鈍感でも。こう、人参の皮を剥ぐ刃物のように」
「フォウ!」
「・・・・・・おはよう、マシュ。フォウくんも・・・」
ぐしぐしと目を擦ってベッドから起き上がる。
椅子に座ったマシュが、櫛を手にして意気込んでいた。おきまりになったルーティーン。
「では早速、髪を梳かさせていただきます!ブーディカさんに習った櫛さばき、とくとご覧下さい!」
「うん、いつもありがとうね・・・」
欠伸を一つ。片手でフォウくんをあやしながら、立香はゆっくりと出かける準備をした。
管制室には人が沢山だ。サーヴァント達も揃っている。今朝から賑やかで・・・・・・・・・。
賑やかだな?
「ほ、ほんとに芥くんなのかい・・・・・・」
「だからさっきからそう言ってるんじゃない!しつこいわね!」
「人物照合一致。内部データは丸っと変わっているけど、うん、Aチームの彼女で間違いないね」
「・・・・・・ど、どうやって・・・?」
騒然とする人々の中心で、虞美人は腕を組んでふんぞり返った。
朝一番に召喚ゲートから堂々とやってきて「オルガマリーはどこ?芥が来たって伝えなさい」と言い放った彼女に、職員達は翻弄され続けている。
暗い紺色のセーターに身を包み、チョコレート色の長髪は三つ編みに。
文学少女など仮の姿。
「私は虞美人。項羽様の妻。仙女よ。本来ならガイアの存在なんだけど・・・、人類の守護を誇りとした項羽様のご意志を継ぐべく、英霊になったの」
「まって」
「コフィンの中に居るのも私。ここにいるのも私。以上」
「情報が・・・情報が多い・・・!」
「まだ咀嚼しきってない・・・!終わらないで・・・!」
聞き逃せないキーワードに、野次馬のサーヴァント達もざわめき出す。
立香はマシュから、虞美人って誰?仙女って仙人?という疑問を解決してもらっている。
「と、とりあえず、ここに来てくれたということは、人理修復に手を貸してくれる、ということですか?」
「不本意よ。でもこの現状を見たら、項羽様は悲しむでしょう。なにより私の当初の目的、英霊の項羽様にお会いすることも敵わない」
ため息をつく佳人に気圧されつつも、立香はそそそっと前に出た。
「あのっ」
「ん?」
「初めまして、虞美人先輩。藤丸立香です。あの、一応、マスターを、やらせていただいております・・・」
「・・・・・・ほう」
実のたっぷり詰まったオレンジのようにみずみずしく。
土から掘り出されたニンジンのように垢抜けない。
相反する要素を意志の灯る瞳で纏めた、たったひとりの少女。
「ふん。悪くない態度ね、後輩。お前には私と契約する権利をあげるわ。その代わり、項羽様をぜっっっったいに呼びなさいよ!」
「はっ、はい!」
「あの、あく・・・虞美人さん。お久しぶりです」
「・・・あんたマシュ?随分印象が変わったわね。今の方がよっぽど好感が持てるわ」
「え・・・」
先輩、まずは種火を!
当然よ、あるだけ貢ぎなさい。
鈴を転がすような声が混じって遠ざかっていくのを、マシュは動かない足で見送ってしまった。
わたしはわたしだ。わたしは今日も、存在を許された。
わたしは・・・わたし。
5110回目の覚醒とは違う。目覚めたいと思って目覚めた。朝がくるのが待ち遠しかった。
許されなくても、生きたいと思っている。
胸の辺りが痛むのを、服をぎゅっと握りしめることで誤魔化した。
「そういう訳なのでー項羽は第三特異点で合流して下さいー」
「承知。心遣いに感謝する」
「風の勇者がそのうち来るのでー指示を仰いで下さいねー」
休憩室は時間の流れが穏やかだ。
どこからともなく聞こえる水の音に耳を澄ませながら、リンクは閻魔亭名物・すずめまんじゅう(こしあん)を囓った。
「あの」
「ん~?」
「人理修復の手伝いとか・・・した方が・・・?」
「はじめちゃんたちの出番はまだですよー。腕を磨いて待ってて下さいー」
「いつでもお声かけ下さい。この剣は泰平の世のためにあり」
「綱は真面目で偉いですねー。頼もしいです」
にこにこと機嫌のいい少年につられて、綱も小さく笑みを零した。
「これが四季のロッド・・・。なんて柔らかく、花のように馴染むのでしょう」
「まるで初めからここにあったみたい。大地の香りがするわ」
四季のロッド。
ホロドラムの四季を変化させることができる杖・・・なのだが英霊に登録された際、リンクの魔力が及ぶ範囲までの四季を変えられるようになった。無法か?
「閻魔亭の季節も変えられますよー。女将の許可が下りればですけどー」
「すげぇ!?」「凄いですね!?」「み、見たいです・・・!」「女将さんに聞いてくる!」
閻魔亭が桜まみれになるまで、あと少し。