勇者リンクS’の人理修復配信RTA   作:はしばみ ざくろ

33 / 117
ONE PIECEを履修して書きました。百巻おめでとう。僕はローとサンジくんが好きです。
あと前作に少し加筆してます。


比翼の連理

海は誰も拒まない。

大海(オケアノス)は何も区別しない。

全てを呑み込み、全てを許し、時に全てを映し出す。

その黒い瞳もまた、同じように。

 

「邪魔するよ。キャプテン・エドワード」

 

見回りに行かせた船が乗せてきたのは、女神エウリュアレでも財宝でもなく。

ある意味この世でもっとも貴重な、一人の少年だった。

 

「へえ・・・。良い船じゃないか。うん、大きさも申し分ない」

 

迷い無く船室を進み、向けられる4つの視線に笑みを返す。

目を見開いてその一挙一動を焼き付ける大男に、腰に手を当て、にやりとしながら話しかけた。

徐々に、徐々に――エドワード・ティーチの体が震えを見せる。掴もうとしたジョッキは指先が蹴飛ばした。

酒が飛び散って、アルコールのニオイがぶわりと広がる。

 

「オイオイ・・・」

「ん?」

「ここは海賊船だぜ・・・。ガキが来る所じゃねぇ・・・」

「膝震えてるけど。ガキが怖いのか?」

「ハハッ!」

 

普通に会話しているようだが、黒髭の顔は汗まみれだ。

立ち上がろうとして椅子の肘おきに手を置いているが、一向に中腰から動けない。

あ、転んだ。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・やってくれるじゃねぇか」

「何にもしとらんが。いい加減突っ込むけど緊張してる?まあお前儂のファンだもんな」

「はあ!?してませんけど!?大体まだ本物だとは決まってないし!拙者をダマそうとは良い度胸・・・」

「おいで、マスターソード」

「ヒッ」

 

手の中に愛剣を呼び出す。

眩いばかりの光を纏い、退魔の剣は現れる。

思わず漏れた悲鳴は四方から聞こえてきた。なんだ皆疑ってたのか?失礼な奴らだな。

 

「これで証拠になるな?儂は風の勇者・リンク。この海に呼ばれて来た(・・・・・・・・・・)。状況を把握したい。質問には素直に答えるのが吉だぞ」

「あ、あぁ・・・!メアリー・・・メアリー!」

「おっ、おちっ、おちついてアン僕を前に出そうとしない見てる!」

 

いや見るだろ。そんなにテンパってたら。

お互いにしがみつきながら段々と声量を上げているのは、金髪のアン・ボニーと銀髪のメアリー・リード。

槍から手を離さず、しかし震える手を隠せていないのはヘクトール。他の三人とは違い警戒を解いていない。・・・ふうん。

 

「お前は聖杯の所有者だな。女神エウリュアレを探しているらしいけど、目的は」

「・・・目的ぃ?」

 

問われてゆるりと顔を上げた海賊の顔は、不敵に剛腹に染まっていた。

 

欲しいから(・・・・・)に決まってるだろ!欲しいもんは奪う!邪魔者は潰す!それが海賊のルールだ!」

「・・・違いない。確かに海賊はそう(・・)だな。念のため確認しておくけど、特異点を修復する気は?」

「ないね!どうしてもってんなら、拙者達を倒してみせ・・・」

「ああ、そういうのはいい」

 

しかし美しい笑みに躱される。こつ、こつ、とリンクが黒髭に近づく。

未だ膝をついたままの海賊は、気圧されて動けない。す、と美貌が近づいた。

 

「海賊に善悪の押しつけなんてしないさ。好きにしろ、エドワード」

「―――――」

 

至近距離で囁かれた声は、匂い立つような色気を放つ。

どう考えても十代の少年が持ち得るものではなく、しかし相手が“勇者リンク”であるならば納得してしまうような、溺れてしまう瞳だった。

放心した黒髭から離れ、次は女海賊達のもとへ。

 

「あっアッあっこっちくる」

「なななななに僕たちなにも知らないよ」

 

完全に腰の抜けた二人の近くでしゃがみ込み、視線を合わせる。

 

「アン・ボニーとメアリー・リードだな」

「!? しっ、て・・・」

「同業者だろう?当然だ」

「・・・・・・ひっ、ひっ。うっ・・・・・・ぐすっ」

 

 

泣いてしまったんだが・・・・・・?

 

 

奏者のお兄さん 風も俺の気持ちを味わって

ウルフ やーい泣かした~

銀河鉄道123 先輩イケメンに慰めてほら

 

 

やってやんよウオオ

 

 

「なにがそんなに悲しいんだ?それとも・・・嬉しいのか?」

 

こくこくと頷く二人。

暗い夜道からようやく抜け出せた、迷子のような泣き顔だった。

 

「わっ、わたしたち、みたいな、海賊まで・・・。勇者リンクの・・・耳に・・・」

「憧れてたんだ・・・本当だよ・・・。あなたと、キャプテン・テトラに・・・」

「テトラの名前を出すとは、見る目があるじゃないか。しばらく世話になるから、よろしく」

「ばい゙」

「ゔん゙」

 

震える手で握手をすると「もう洗わない・・・」とえぐえぐと泣くアンが言いだした。メアリーは縋るように握った手を抱きしめている。落ち着いてほしい。

 

「ほらハンカチ」

「私物!?!?!?」

「無理い゙!!!!!」

「・・・そう言わずに」

「イヤアアアア!!良い匂いする!!!!」

 

 

言いたいことはわかるけど単語のチョイスには気を付けろ。泣くぞ、儂が

 

 

Silver bow 無理って意味じゃない無理・・・?(thinking face)

いーくん おじいちゃん頑張って

 

 

なんとか二人にハンカチを押しつけ(なんかこっちも意固地になった)、ただひとり緊張を解かない男に向き直る。

 

「外で話そうか」

「・・・ええ」

 

男の表情は固い。

ほんの僅かな時間でこの船を掌握してみせた少年は、大人びた笑みを崩さない。

真昼の太陽が甲板をじりじりと照らし、サーヴァントたちを熱気で包む。

 

「・・・・・・」

 

タクトを構える。身長差ゆえ首筋を差すだけだが、抑止力としてこれ以上のものはない。

 

「誰の手先?」

「・・・お見通しですか」

「兜輝くヘクトール。今までの特異点の傾向からして、黒幕の指示を受けてるサーヴァントがいるな?・・・教えてくれるか?」

「すいません、勇者リンク。雇い主を選べない戦争屋でも、義理くらいは通します」

 

内心の感情を消し、脳天気にへらりと笑う。

なるべく軽薄に見えるように、不真面目に感じるように。それが自分の仕事なので。

リンクはぴくりと眉を動かして、やがてゆっくりとタクトを降ろした。ふう、と息を漏らす。

 

「仕方のない子」

「おや、見逃してくれるんですか?」

「海の上くらい、お前の自由(すき)にすればいい。自由と信念のある奴が、海では1番強いんだ」

「・・・・・・」

 

ひらりと手を振って、手遊びにタクトを揺らしながらリンクは船内に戻っていった。

一気に汗が噴き出して、ずるずると手すりにもたれかかりながら尻餅をつく。

思い出したように心臓が騒ぎ出した。痛い。・・・破裂しそうだ。

 

「(なんだあのプレッシャー・・・!? ・・・・・・あれが、風の勇者・・・)」

 

ヘクトールが無理矢理従っているわけではないから、リンクも引いたのだろう。

あんな少年の体からこんな凄まじい圧が出るのか。決して舐めていたわけじゃないのに、しばらく足腰に力が入らなそうだった。

 

「(世界を救った勇者。海を制した海賊。新生ハイラル王国の初代国王・・・。なんて、偉大な)」

 

涙が出そうだった。押さえていた感情が溢れだし、混じり、ぐちゃぐちゃになっていく。

顔をとっさに手で覆う。漏れる嗚咽を堪えられない。

人生の手本だった。子供の頃からの慰めだった。夢と希望と、勇気の詰まった物語。

こんな形で会いたくなかった。・・・なんて。

贅沢すぎるだろう。こんな悩み。

 

 

うさぎちゃん(光) せんせーー!!!!!ヘクトールくんが泣いてる!!!!!

災厄ハンター 許せねぇよ・・・風の勇者・・・!

 

 

儂のせいか???ちゃんと空気読んで一人にしてあげただろ

 

 

潮風が慰めるように、肩を抜けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、な、な、な」

「えっえっえっえっ」

「なっ・・・・・・なんで」

 

駆ける、駆ける、駆ける、駆ける。

迷宮の中を走り回る。後ろを時々振り返って、叫ぶ。

 

「なんでリザルフォスがいるのーーー!?」

 

緑色の肌をした、爬虫類のような姿の魔物が追いかけてくる。

パニックになった思考のまま立香たちは逃げる。

キィキィと嘲るような声。バッと勢いよく顔を向けると、一つ目の翼をもつ魔物、キースが大量に横から来ていた。

剣と盾を構えた石像の横を通り過ぎる。すぐに聞こえたのは石を引きずるような重い音。しかも二つ。

 

『アモスだ・・・・・・』

 

呆然としたロマニの声が、静まりかえった管制室に響いた。

幾多もある曲がり角を越え、階段を駆け下り進む。子供が遊びで作ったような、滅茶苦茶な配置の地下迷宮(ダンジュン)は、ただ侵入者をのみこんでいく。

ようやく振り切ったところで立ち止まった。ぜいぜいと息がきれる。

 

『どうしてゼル伝の魔物たちが、このダンジョンに・・・?』

『壁の意匠を見る限り、ギリシャの建造物であると思う。ギリシャで迷宮っていうと・・・』

「ラビリンス・・・だね」

 

クレタ島にはかつて迷宮が建てられており、その奧には人の体に牛の頭を持った怪物がいたという。

決して、魔物ではなかったはずだ。

 

「・・・思わず逃げてしまいましたけど、倒せるんですか・・・?」

『・・・わからない。なぜ魔物が生息しているのかも判明していない以上、無用な攻撃は避けるべきだと思う』

「でも、また追われたら逃げれないよ・・・、!」

 

複数のリザルフォスが動き回っている。ブーメランや槍、盾を構えながらうろつく姿は、まさしく迷宮の番人だった。

咄嗟に身を隠すものの、あそこに居られては奧に進めない。

迷宮を照らす燭台の火が妖しく揺れ動くのを、マシュは視界の端で捉えた。

影。

 

「・・・っっ!! キャプテン!!」

「うおっ!?」

「なに!?どうし・・・・・・!」

 

巨大な手首の形をした魔物、フォールマスター。

天井から落下して獲物を捕らえ、ダンジョンの入り口に戻してしまうというモンスターである。

ドレイクがマシュに引っ張られて避けたことにより、本体だけがボトッと落ちる。ガサガサと巨大な虫のように蠢きながら闇の中に消えていった。しばし荒い息だけが響く。

 

「ありがとう、マシュ。助かったよ・・・」

「いえ、ご無事でなによりです・・・」

「ここも危ないのか・・・」

『・・・先に進みましょう。フォールマスターの縄張りから出ないと・・・』

 

ずん、と地響き。

 

一度だけではなく、連続的に。

不審がったリザルフォスたちが音の元に駆けていく。

ファイアキースが火の粉を撒き散らしながら飛んでいった。

耳を劈く雄叫び。思わず立香は膝をつく。

衝撃的な出来事の連続で、精神を摩耗していた。

 

 

「オオオオオオオオオオ!!」

 

 

ダンジョンが揺れる。石畳を伝って、びりびりと衝撃が体に響く。

 

「・・・行くよ。マシュ、立香。怪物が出るか魔物が出るかだ」

「キャプテン・・・?」

「ダンジョンのボスを倒さなきゃ、外に出ても意味が無い。ゼル伝で習っただろ?」

「・・・・・・!」

「・・・倒せるかな」

「弾が当たるなら倒せるさ」

 

先の見えない道の真ん中で、それでもドレイクは勝ち気に笑った。

立香はマシュに支えられて立ち上がる。汗を拭って、水分補給をして。

 

「・・・先輩、手を繋ぎませんか。少しのあいだだけでも」

「! ・・・うん」

 

咆哮はまだ聞こえている。

三人は周りを警戒しながらゆっくりと、しかし確実に進んでいった。

 

「オオ・・・!オオオオオオオオ!!」

 

やがて開けた場所に出る。

飛び散る瓦礫に当たらないよう様子を伺うと、暴れ回っている巨体が見えた。

顔には仮面を着け、全身は傷だらけ。牛頭人身の怪物――――。

 

「ミノタウロス・・・!」

『すごい・・・!魔物達を圧倒してる・・・!』

 

テリトリーに踏み込まれた怒りか、はたまた別の感情か。

片刃の斧が振り回される。ボコブリンを吹き飛ばし、リザルフォスを壁に叩きつけた。

 

「こ・・・ろ・・・す」

「こちらに気づきました!」

「戦闘態勢!」

「こ、ろ、す・・・!」

 

仮面の向こうでらんらんと目が光る。間髪入れず斧が振りかぶられる。

殺意と殺戮を召し上がれ。ようこそ我がラビリンスへ。

 

「ぐぅぅっ!?」

「・・・えっ?」

 

けれど背後から、巨体を襲う一撃。

なすすべもなく崩れ落ちた怪物の後ろに、あらゆる計測機をぶっちぎる存在がいる。

その場の全ての意識の外。カルデアの観測さえも欺いて、その魔人は現れた。

 

「迷宮を作れるとは、便利な能力ですね」

「・・・・・・・・・・・・なんで」

 

艶やかな髪を揺らし、紫のマントを揺らしながら。

ドレイクの掠れた声の問いかけに、魔人グフーはにこりと笑って答えた。

 

「この特異点には聖杯が二つあるのでしょう?一つくらい、ワタシが貰ってあげますよ」

『なっ・・・なっ・・・』

「ああ、なかなかですね。それではさようなら」

 

いつのまにか石化したミノタウロスは、当然ぴくりとも動かない。

その影響で迷宮は元に戻る。間にドレイクの体に腕が突っ込まれる。何も反応できなかった。

ねがいのぼうしが無くとも、元々グフーは武術と魔術の天才。ただの(・・・)人間のドレイクでは、なすすべもなく。

きらりと輝く聖杯を眺めながら、魔人は姿を消した。

 

「・・・・・・・・・・・・」

『・・・・・・・・・・・・』

 

沈黙が支配する。何を言えば良いのか、しばらく誰にもわからなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。