カルデア・データベースと特異点の勇者達を更新しています。
「・・・さて、地図によれば次の島はもう少し先か・・・。ん?」
「どうしました?」
「あー、ちょっと風向きが変わったな。こりゃ、陽が沈む前に嵐になるかもしれないねぇ」
襲ってくる海賊共をぶちのめし、ぶんどった地図に従って船は進む。
ざあざあと流れる風を敏感に感じ取ったドレイクが、クルーに指示を出していく。
「お前たち、貨物や食料を整理しておきな!」
「あいよ!」
「~♪」
「・・・歌?」
「あら、聞こえてた?」
そっと流れてきた歌声に立香は発生源を探す。
正体はすぐに見つかった。石化したアステリオスに寄り添って、エウリュアレが囁いている。
「ま、いいわよ。あなたにも特別に聞かせてあげる」
「うん。ありがとう」
「ラ、ラ、ラ・・・・・・」
つかの間、甲板には穏やかな空気が流れた。
雲の影が通り過ぎる。
「いいねぇ。癒やされるわー」
「なかなかいいじゃない」
「・・・綺麗な歌ですね」
「フォウ・・・」
「・・・はい、おしまい」
入道雲がのぞき込むように体を大きくした。
潮風が立ち止まっていく。
「・・・そういえば、エウリュアレさん。1つ質問が。あなたはどうして追われていたのです?」
「厭なこと思い出させるわね、あなたは」
「ごめんなさい。それでも、聞いておくべきだと思ったのです」
「・・・・・・ふうん。ま、悪気はないようだから許してあげる」
樽の上に腰掛けて、女神はゆるりと視線を向けた。
すこし不機嫌そうに口を尖らせたものの、隠す気はないようだ。
「・・・・・・ほら。私、可愛いじゃない」
「・・・・・・はい?」
「だから、私可愛いでしょ?」
「ええとその・・・はい」
「あなたもそう思うわよね?」
くるりと近くに腰を下ろしていた立香に向き合う。
立香はぱちりと瞬きをして、頷きながら答える。
「うん。エウリュアレは可愛いよ」
「そう。私可愛いし、可憐なの。だからいつも男共に狙われるんだけど・・・・・・」
ふう、と頬に手をつき、憂う姿はまさしく優美な乙女。
「今回は特別たちの悪いヘンタイに狙われたみたい。ドレイクと同じ、妙な海賊にね」
「海賊に・・・?」
「ただの海賊じゃないわ。
「・・・・・・!」
真名はわからない。
ただ、世界最強の気持ち悪さなのは確かである、と。
「アイツの前じゃスキュラも自分の体を見直すくらいに」
犬の頭をもつ怪物と比べられるとは。
一体どんな海賊なのだろうか・・・・・・。
「姉御、前方に船一隻!」
「海賊かい!?」
「そうです!・・・・・・ああ、アレだ。あの旗だ!姉御!あの船、例の旗と同じ海賊旗を掲げてます!」
そうこうしているうちに地平線の向こうから、近づいてくる船が見えた。
勢いを落とさぬまま突っ込んでくる。牽制の砲撃も効かぬ。
「急速旋回!」
「間に合いません!」
「チッ・・・衝撃に備えろ!ぶつかるぞ!」
船と船がぶつかり合う、轟音が海に響いた。
衝撃に身を伏せる。
しばらくして周りを見渡すと、こちらをねめつける巨船。
「あの旗・・・そうだ!ドクター!」
『そういえば通信断絶で聞こえてなかったね!いいかい、あの旗は――伝説の海賊だ。ハイラル史以降、史上最高の知名度を誇る海賊だ!』
「ハイラル史以降の史上最高の知名度・・・・・・。まさか!」
『そう。黒髭だ!真名エドワード・ティーチ!みんな、気を付けて!』
「アイツ・・・!覚えてるよ、あの髭野郎だ!」
船首からこちらを見ている、黒い髭の男がいる。
鉤爪が光を反射してきらりと光った。ぴりりと引き締まる空気。
「エウリュアレちゃぁぁぁぁん♡♡♡」
くう、き・・・・・・・・・。
「ああやっぱり可愛い!かわいい!kawaii!ペロペロしたい!されたい!主に腋と鼠径部を!あ、踏まれるのもいいよ!素足で!素足で踏んで、ゴキブリを見るように蔑んでいただきたい!そう思いませんか、皆さん!」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・ん?」
目ざとくマシュと立香を見つけた男が、でれっとさらに相好を崩した。
「んー・・・・・・んー、んーんー・・・・・・・・・・・・
「!?」
「ンー、片目メカクレ系は誰が好きだったんだっけ?バーソロミューの奴だったカナ?いやアイツは両目メカクレ属性だっただっけ・・・・・・。まあどうでもイイことですな。ともかくそこの
「さ、さもないと何ですか」
「今日は拙者、眠るときにキミたちの夢を見ちゃうゾ♪」
○ウルフ こいつキモイな
○騎士 何の法なら裁ける?はやく合法的に殺してくれ
○バードマスター 犯罪者じゃん 犯罪者だった
「マシュ・キリエライトと言います!デミ・サーヴァントです!」
「藤丸立香です・・・・・・」
『いいのよ素直に答えなくて!?』
『
『神祖の殺意が鰻上りだーーっ!?』
○奏者のお兄さん じんましんがでそう
○うさぎちゃん(光) この人生前からこうなの?流石に違うよね?
「テメェ・・・。何無視してやがる・・・!」
「ワー・
「散々、アタシにちょっかいかけやがって!!聞いてんのかこの髭野郎!!」
まるで居ないかのように振る舞う黒髭に、業を煮やしたドレイクが発砲する。
ぎらりと睨むその姿は、まさしく偉大なる船長の迫力。
「はぁ?BBAの声など一向に聞こえませぬが?」
でも相手はこんな感じなんですよ。
「・・・・・・・・・・・・は?」
「BBAはお呼びじゃないんですぅ。何その無駄乳、ふざけてるの?まあ傷はいいよ?イイよね刀傷。そういう属性はアリ。でもね、ちょっと年齢がね。困るよね。せめて半分くらいなら、拙者許容範囲でござるけどねえ。ドゥルフフフ!」
「・・・・・・」
「船長、だいじょう・・・。死んでる(精神的に)」
「ど、どうしましょう。こんな変な人初めてです・・・」
「・・・・・・んー?」
空気が廃墟のプールより死んでしまった。
こっちはこんなに淀んでいるのに、まったく気にせず黒髭が首を傾げた。
「あれ?BBAの聖杯無くない?」
「・・・!」
「あっれー?もしかしてBBAちゃん・・・盗られちゃったんですかー?ええー!ウッソー!ぷぷ、ウケるー!」
「殺せ・・・」
「え?」
「大砲、撃て。あんのボケ髭を地獄の底に叩き落としてやれェェッ!!」
「ア、アイアイマム!」
振り切れた怒りで正気に戻ったドレイクが、殺気と共に指示を出す。
走り出す船員。変態に目をつけられないよう、隠れていた虞美人も出てくる。
敵のサーヴァントたちも勢揃いだ。磨き上げた武器を構える。
「ドゥフフフ!盛り上がってきた!では海賊同士いざ尋常に――ブッ殺!」
即座に乗り移ってくるのは二人組のサーヴァント。
マスケット銃を携えたアンと、カトラスを持ったメアリーだ。
「パーシヴァル、船長をお願い!」
「お任せを!」
「ランサーが来るわよ!」
「はいっ!」
カトラスを聖槍が受け止めた。
小柄な体躯は小回りがきく。襟の高いコートは死角をつくる。捉えづらい連続切りが騎士を縫い止める。
だが甲板という慣れない場所でも、騎士の強さは揺るがない。
正確に受け止め、打ち返す。――殺気!
「くっ・・・!」
銃が横から振りかぶられる。
紙一重で避ければ、ドレイクの銃弾が撃ち込まれた。飛び退く二人。
「悪い!突破された!」
「いえ。・・・凄まじいコンビネーションですね」
アンとメアリーは笑っている。
楽しくて楽しくて。
「流石、フランシス・ドレイク。まだ人間なのにその身のこなし」
「アタシを知ってるのかい?もしかして同業?」
「百年以上後の海賊さ。だから敬意を表して告げさせて」
パーシヴァルは前に出て、油断なく構えた。
マスターに任されたからには、相手が誰だろうと負けるわけにはいかない。
「我らが真名“アン・ボニー”と“メアリー・リード”。此度の現界、敵として立ったからには――この名を抱いて死ね。偉大なるフランシス・ドレイク」
「いいね同業・・・!殺し合えて光栄さ!」
同時に飛び出した二人に、聖槍の突きが出迎える。
槍の連突きを、僅かに勝る敏捷で避けて躱して突破したのはメアリー。すぐさま撃ち込まれた弾丸など当たらない。
「――!」
「ハハッ」
突っ込んできたのはドレイクも同じだった。右手の正拳突きを受け止めて、衝撃に勢いが殺される。
咄嗟に出た蹴りでドレイクを引き離し、カトラスと銃がぶつかり合う。
それを横目で見ながら、アンは歯がみした。
このしろがね色のサーヴァント。地力が違う。
海上では海賊のサーヴァントであるアンの方が有利なはず。
なのに完全に拮抗している。ぴったりとくっつかれ、メアリーの援護には行けなさそうだ。
そもそもアンは狙撃手である。近接戦闘は分が悪い。
「くっ・・・!」
「はぁっ!」
○災厄ハンター パーシヴァルくんさらっとカルデアに居るけど何の縁?
○りっちゃん たぶん僕~。僕がカルデアに居るときに召喚されてたっぽい
○Silver bow モリアーティが泣かされてる裏でそんなことが・・・
同じランサーでも随分違う。
ヘクトールの槍はマシュの盾を弾き、虞美人の短剣を叩き落とす。
「(なんて技量・・・!)」
「ええい、鬱陶しいわね!」
「怖いねぇ。オジサン肝が冷えちまう」
長い槍が懐への侵入を阻む。
石突の殴打が虞美人を吹き飛ばし、速さで劣るマシュは盾で攻撃を防ぐのが精一杯。
「ぐっちゃん・・・!応急手当!」
「先輩をつけなさい・・・!」
「遅い遅い。そんなんじゃ一撃も入らないぜ?」
とん、とんと槍で肩を叩く。ヘクトールは余裕そうだ。
後ろでそれを静観する、黒髭は残酷に笑った。
「宝具解放準備――完了☆」
「! マシュ、宝具・・・!」
「おっと、危ない」
ヘクトールにマークされたマシュは動けない。
虞美人が援護に回るが、鞭のようにしなる槍が短剣を砕いていく。
敵の船の砲塔に魔力が集まっていく。
「マスター!魔力を!」
「パーシヴァル・・・!?」
「大丈夫!いけます!」
砲撃に巻き込まれる前に、アンとメアリーが船に戻る。
ドレイクとパーシヴァルがフリーになった。宝具まであと数秒。
「全員聞けぇ!生きたい奴は今から、アタシの言うとおりに動けぇっ!!」
「お願い、パーシヴァル!!」
「聖槍、二重拘束解除。カウントダウン──」
ヘクトールが撤退した。あと3秒。
「ああ、やっぱりテメェはそういう女か」
どこか嬉しそうに、黒髭が呟いた。
「だが、遅ぇ。刻め、
走り回る船員。槍を構える男。真っ直ぐにこちらを見ている少女。
全て沈めてみせよう。全て砕いてみせよう。
「これが黒髭の“
「
爆発音が海を、空を、潮風を散らす。
砕けた波が飛び散るのを、風の勇者は一人眺めた。
「あーあ、逃げられちゃいましたね」
「あいつら、船長の宝具を受けてよく平気だったね」
「それはね、メアリー」
海が静けさを取り戻すのに、しばし時間を必要とした。
「とっさに船を傾けたのよ。それで威力を分散させたの」
「その前に真正面からぶつかった宝具のせいで、相当威力が落ちてたしな」
「リンク殿~!」
船室からのんびりと出てきたリンクの前に、ずさーっと黒髭が滑り込んでくる。
「お疲れ、お前達。みんな強いじゃないか」
「当然です!」
「ま、まあこれくらいはね」
「お褒めいただき光栄です」
胸を張る三人をにこやかに眺めてから、不審者を見る目つきで黒髭の方を見た。
「聖杯の所在なら知らないぞ」
「えーっ!」
「凄い・・・勇者にあんな目を向けられても通常運転なの凄い・・・」
「もうちょっと気にするべきだと思う。人として」
「海賊スゲーなぁ」
「でも1つわかることがある。この時代に魔物が発生してるあたり、どうも儂らの時代の誰かが来ているようだ」
「・・・ほほう」
○小さきもの ねぇあの船からグフーの気配しなかった?
○守銭奴 した。魔力を感じた
○フォースを信じろ 聖杯、あいつが、持ってったのでは・・・・・・?
「というわけでそろそろ儂はお暇する。どうも状況が変わってきた」
「えっ」「えっ」
「アン、メアリー。これからも仲良くやるんだよ。ヘクトール、くれぐれも
「はいっ」
「うん」
「・・・へいへい」
「ティーチ」
「デュフ」
「・・・悔いの無いように生きなさい」
○銀河鉄道123 わかりますよ。その微妙な心境
手を振れば赤獅子が水面に現れる、と全員が柵にしがみついた。
幼子のように目を輝かせて、唯一無二の
「あ、ああああああ赤獅子の船」
「・・・ほっ、ほんっ。ほんっ・・・」
「やべぇ・・・・・・・・・・・・」
「リンク、行くのか?」
「うん」
「マジで喋ってる!!!」
「じゃあな。お前達、元気でやれよ~」
ひらひらと手を振ってやれば、4人全員が振り返してきた。
まるで港から出港する船に手を振る子供のよう。
リンクと対面すると、自然と精神があの頃に戻ってしまうのだろう。
そういうところは微笑ましくてかわいいな。
匂やかな笑みを向ければ、顔を赤くして沈黙する。
赤獅子がざぷりと波に乗り、姿が見えなくなるまで、4人はリンクを見送った。