勇者リンクS’の人理修復配信RTA   作:はしばみ ざくろ

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いつも感想ありがとうございます。今から返信します(報告)


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「ドレイクさん、船の方はどうですか?」

「駄目だね。とてもじゃないけど動けやしない」

 

時は少し遡り。

黒髭を撒いた立香達は1つの島に辿り着いていた。

沈没こそしていないが、所々から浸水が始まっている。修繕しないことには先に進めないだろう。

 

『幸いこの島には森があるし、ワイバーンもいる。鱗を加工すれば材料には困らないだろう』

「そうですね。まずは体勢を立て直さないと」

「海で何かあったの?」

「何かあったというか――――。え?」

 

聞き慣れぬ鈴を転がすような声。

一拍おいて、聞こえた方に視線が集まる。崖の上からこちらを見つめているのは、熊のぬいぐるみを抱えた女性。

豊満な胸をきわどい衣装で隠し、艶やかな美しさを振りまいている。

 

「あ、貴女は・・・?」

「んーと・・・」

 

白銀の髪が揺れる。よく見れば弓を携えているようだ。

 

「なんて話すんだっけダーリン?」

「俺は喋らないって段取りだっただろ!?」

「あ」

 

・・・訂正。

ぬいぐるみではなさそうだ。

 

「なにかしらこのお花畑そうな2人」

「ぐっちゃんが言うのかい」

「どういう意味よ!?」

「いやなんか・・・ぐっちゃんはあんまりそういうこと言わない方が良いと思う」

 

ドレイクが何かを受信している間に、謎の2人はわちゃちゃと話し合い始めた。

ぬいぐるみ(仮名)がぺちぺちと女性の頬を叩き始めたところで、立香がひとまず声をかける。

 

「あう、DVだっ!DV事案って言うんだよね、これ!」

「あの、えーと・・・。貴方達の名前は・・・?」

「え?アルテミスだけど」

「・・・はぁ!?」

「フォウ!?」

『何ぃ!?』

 

一見ただの恋愛脳(スイーツ)にしか見えない女――――。

彼女こそ月光を表す神性、狩猟と永遠を守る玲瓏貴影。

処女神アルテミスである。

 

「で、ではそちらのぬいぐるみさんは・・・?」

「こっちは私の恋人、オリオンよ。召喚されるって聞いて不安になったから、私が代わってあげることにしたの!」

 

一方こちらは、ギリシャ最高の狩人を自称する超人・・・・・・現ぬいぐるみのオリオンである。

 

『な、なるほど。神霊のランクダウンによる代理英霊召喚か・・・。そういう例はないでもないらしいが・・・』

「オリオンです。召喚されたと思ったら、ヘンな生き物になってました」

 

アルテミスの腕の中で、オリオンはぺそっと小さくなった。

 

「ヘンな生き物に・・・・・・。ヘンな・・・・・・」

「泣けるわね」

「強く生きて」

 

ちなみに見てわかるとおり、当然この状態のオリオンは限りなく役立たずだ。

アルテミスに超依存しないと生きていけない、今世紀最大のヒモである。

 

「うふふ。もっと依存してくれてもいいのよ、ダーリン」

「自立したいなぁ・・・」

 

悲哀が強い・・・。

 

「まぁサーヴァントであることには違いない。そこのカワイコちゃん、マスターだろ?契約してくれねぇか?」

 

もふっとした手を振りながらオリオンが言う。

なかなか魅力的な毛皮のボディである。

 

「藤丸立香だよ。もちろん、よろしくね。2人とも」

「わたしはマシュ・キリエライト。こちらが船長のドレイク。アサシンの虞美人さん、アーチャーのエウリュアレさんです」

「よろしくね~♪」

『それじゃあ早速、船の修繕を始めようか。竜巣へのナビゲートは任せて』

「ようし、野郎共。しばらくこの島で狩猟生活(ハンターライフ)だ。やるよ!」

「「ハイホー!」」

 

キャプテンの指示によってクルー達も動き出す。

どんなに手痛い敗北をしても、惨めに逃げ帰っても、生きてさえいれば勝ちなのだ。

生きてさえいれば何度でも挑める。魔王にだって魔神にだって、勝つまで立ち向かっていけるだろう。

それは勇者リンクが教えてくれたこと。ある意味1番大事なこと。

恐るるべきは敗北ではなく、誇りを失うことなのだ。

 

「仲間ぁ?」

「2人で行動してたんじゃないの?」

 

すっかり夜も更けたころ、立香達はたき火を囲んでいた。

天高く星駆ける晩。話を切り出したのはオリオンだった。

 

「実は召喚されてすぐ、縁あるサーヴァントに出会ってな。別行動を取ってたんだ」

『縁あるサーヴァント?』

「俺達はマスター含む戦力探し」

「その子はある(・・)物を探してたの!」

 

ぱちんと火花が鳴る。

暖色の炎に照らされて、アルテミスの髪が夕映えのように染まった。

 

「ある物?」

「合流すればわかるよ。そう遠くない場所にいるだろうし、明日には会えるだろ」

『ふむ、なにか現状の打開策があるんだね?』

「まあそんなこった」

「んじゃ、明日1番に出発するかね」

 

そのまま自然とお開きムードになり、各々が寝床に戻っていく。

エウリュアレは与えられた船の一室に戻ると、静かに佇むアステリオスの石像に触れた。

 

「(・・・・・・・・・・・・)」

 

つめたくてかなしい。憐れな怪物。

それでもエウリュアレにとっては“たいせつな”存在なのだ。

 

「(勇者様・・・・・・)」

 

まだ蜘蛛の糸は垂らされず。

賢者の導きもなく。

ただ月だけが美しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さく、さくと葉っぱが擦れる音。

エビの青シャツが膨れあがり、体を風が通っていく。今日もいい天気だ。

 

「――――来たぞ!」

「勇者よ。貴方は・・・」

「ここに居るさ。隠れる必要もないし」

 

陽光に導かれるように、黄金の鹿号(ゴールデンハインド)は島に辿り着いた。

マスターとサーヴァント達を連れてくると行って、アタランテはひょいひょいと森を抜けていく。

木々が作る影のおかげでこの場所は涼しい。

時折聞こえる鳥の鳴き声を聞きながら、リンクとダビデは待ち人を待つ。

 

「―――――と、だ」

「他に―――居る―――」

 

 

災厄ハンター キマシタワー

Silver bow やっと合流デスワー

 

 

「汝達も知っている相手だ。紹介しよう」

「やあ。イスラエルの王、ダビデさんだよ」

「やあ。風の勇者のリンクじゃぞ」

「以上だ」

「・・・・・・・・・・・・」

『・・・・・・・・・・・・』

 

立香とマシュが、キュウリを見た猫みたいになった。

通信機の向こう側では、物が盛大に落ちる音と割れる音が聞こえる。

ドレイクが一歩後ずさり、真後ろにあった木に衝突した。

虞美人が「あ」という顔をして、辺りをせわしなく見渡し出す。

エウリュアレがへたり込んだ。瞳を潤ませるその姿は、朝露に濡れたスミレのよう。

アルテミスが瞳をぱちくりと瞬かせた。珍しい宝石を見るかのように、間近に近づいてじーっと眺める。

その腕の中でオリオンは絶句していた。生前もこんなに驚くことは無かった。嘘だろ本物?

 

「嘘だろ本物?」

 

あっ声出ちまった。

 

「本物だよ。証拠にホラ、マスターソード」

「ウワーーーーー!!!!!」

「わぁ~。貴方が勇者リンクなのね」

 

まつげが触れあいそうな距離で話し出すアルテミスに、特に動揺するそぶりも見せず。

女神に負けず劣らず(ナンデ??)の美しい少年。大人と子供の狭間、成長途中の未成熟な肉体が、危うい色気を放っている。

老齢の男がもつ深い色の瞳と、いとけない笑みが溶け合い、くらくらするほど艶っぽい。

 

「ねえねえ、私貴方のことちょっぴり好きよ!女神を愛したのよね?」

「それは多分、大空とか大翼とかの話だと思うけどありがとう。女神アルテミスにも知られているとは光栄だ」

「あ、それは俺がこいつに教えたから・・・。・・・覚えてるとは思わなかったけど・・・(よっぽど女神と人間の話が気に入ったんだな・・・)」

 

 

騎士 俺は違いますよ。守護女神には敬意しか抱いてません。恋愛的にどうこうはないです

いーくん 超早口

バードマスター そういえば最近ゼルダに会ってないなぁ。ちょっと顔見てきていい?

銀河鉄道123 うちのお転婆姫も心配になってきた。見てくるね

 

 

自由か???

 

 

「さて、と・・・!?」

「ちょっと来なさいアンタ!!」

 

そろそろ本題に入るか~と仕切り直そうとすると、虞美人がすっ飛んできて端に引っ張られる。

その鬼気迫る姿に、思わず全員見送ってしまった。

 

「項羽様は!?この特異点にいる??いつカルデアに呼べるのよ!?」

 

 

忘れてたなぁ

 

 

りっちゃん 忘れないでくださいー。英霊の座で良い子に待ってますよー?

 

 

すまんて。なんか良い感じになったら呼ぶわ

 

 

「項羽ならすぐに会えるだろう。大丈夫、儂の勘は当たるんだ」

「・・・本当でしょうね」

「信じて待つのも大事だぞ。貴き姫」

「・・・・・・アンタ、嘘ついたら承知しないからね!」

 

 

うさぎちゃん(光) 困ったら勘で押し通すのどうかと思うよ。ねえエゼロ

小さき爺 まあ相手は納得したみたいじゃぞ。怪しまれないうちに次の話題に移っておけ

 

 

さすエゼ。この話はここでおしまいにしようね

 

 

不思議そうな顔でこちらを見てくる立香たちに誤魔化しながら、ダビデに契約の箱(アーク)の説明をするよう促すのだった。

そしてドレイクの口から語られる、魔人グフーに聖杯を奪われたこと。アステリオスが石化してしまったこと。

そしてちょいちょいぼかしつつリンクが黒髭の顛末を伝えると、みな神妙な顔をして状況を呑み込んでいた。

 

「ドレイク、この聖杯はお前に渡しておくよ」

「えっ、えっ。な、なんでだい?」

「そりゃ儂が持ってても使わないからなぁ。船の強化に必要だろう。持っていなさい」

「わ、かった・・・。アンタがそう言うのなら」

 

黒髭も、ドレイクが持っているのなら文句はないだろう。

海賊である以上碌な死に方はしない。覚悟はしていたはずだ。弔い合戦なんてするつもりもない。

ただ、イアソンとやら?テメーは儂を怒らせたぞ。

 

「勇者様」

 

澄んだ声がリンクを呼んだ。

エウリュアレが落ち着きなく座っている。服の裾を握りしめ、視線は少し下を向いている。

 

「アステリオスのこと?」

「・・・ええ」

「呪いを解いてやらないとな。案内してくれるか?」

「! ええ・・・!」

「立香、マスターとしてお前さんもおいで。他は好きにするように」

「うんっ」

「えっじゃあ着いていこうかな」「アタシも・・・」

 

ぞろぞろと一同は船まで戻る。

青い水面を走る潮風が、リンクにじゃれつくように触れた。

 

 

で、実際どれで解呪出来るんです?解説のエゼロさん?

 

 

小さき爺 素直にフォーソードを出すのじゃ

小さきもの 使っていいんじゃぞ

 

 

_,_,_ミミミ゚+.(っ´∀`)っ゚+.゚_,_,_

 

 

フォースを信じろ 字幕機能を使いこなしてる・・・だと

 

 

「フォーソード。おいで」

 

これこそが、全てのエレメントの力を宿した究極の剣。

一つ目の形をした鍔を持ち、掌に収まるのは金色の光。

聖剣というよりは魔剣のようだ。その妖しい魅力が、リンクの手の中でより一層輝きを増す。

 

 

フォースビーム!!

 

 

守銭奴 そんな名前だっけ

フォースを信じろ わかんない。感覚でやってる

小さき爺 コイツらふわふわしすぎでは???

 

 

アステリオスの目覚めは、青い空の下でだった。

くすん、くすんと涙を落としながら抱きついてくるエウリュアレを受け止めながら、ぼんやりと首を傾げる。

 

「・・・・・・だ、れ?」

「初めまして、アステリオス」

 

その瞳の色を、アステリオスは一生忘れない。

アステリオスに“ゆうき”を教えてくれた、その人の事を忘れない。

マスターともエウリュアレとも他のサーヴァントたちとも違う。深くて濃い猫の眼。

怪物がただの少年であることに気づいてくれた、その勇者のことを――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ザイ゙ン゙下゙ざい゙!!!!」

「王様勝手にこっちに来ないで!?!?」

「はぁ!?サインならアタシも欲しいんだが!?!?」

「船長も!?!?」

 

スライディングお願いしますでギルガメッシュが勝手に来て滑り込んできた。

リンクはけらけら笑っている。

 

「お前が噂の金ぴかの王サマ?あはははっ、実物は5割増しで面白いな」

『・・・噂の・・・・・・?』

「光から聞いたよ。カルデアの愉快な奴ら」

「モ゜ッ゜ッ゜」

『認知・・・・・・だと・・・・・・』

 

ギルガメッシュが崩れ落ちるのを、立香はハラハラしながら見ている。

 

「サイン・・・いや握手してくれ風の勇者。たとえこの記憶が消えても、アンタへの憧れは忘れない」

「へえ。儂のファン?光栄だな、キャプテン・ドレイク」

「船乗りでアンタらのことを知らない奴なんていない・・・。海を渡り新天地を見つけた、世界最古最強の海賊団・・・・・・!」

 

震える手で握る。タコが出来て固い。とても少年の手とは思えない。

船の上で生き、剣を握った戦士の手だ。

 

「そう言ってもらえるのなら、テトラたちも喜ぶだろう。・・・ああ、もしかしてそこ(・・)もあるのかな」

「・・・そうだね」

 

運命に翻弄され、運命に立ち向かった。

気高き女海賊。勇ましきキャプテン。滅びた伝説の王国の姫。本人すら知らぬ宿命を、されどリンクと共に乗り越えた少女。

――――尊敬、している。

 

「海は平等だ。平等に残酷で、慈悲深い。それをアンタたちが教えてくれた。だからアタシは世界を一周できた。どんな栄華を誇った王国さえ滅びるのだから、太陽だって沈められるのだと気づかせてくれた」

「そうだな。ハイラル王国でさえ滅びた。永遠のものなど存在しない」

 

 

奏者のお兄さん 永遠じゃねぇ。無限だよ。

ウルフ レインボーは空だけじゃない。胸にも架かるぜ

災厄ハンター そういうの好きそう(納得)

 

 

「ゆう しゃ」

「うん?リンクは勇者だよ」

「・・・・・・?」

「・・・そうね、貴方は知らないのね。アステリオス」

「うん。しらない」

「なんと勿体ない!!!!」

 

死んでいたギルガメッシュが復活した。

思いの外声が大きかったので、みんなびっくりしている。

 

「勇者リンクのことを知らずに生きるなど人生の大いなる損失!我が教えてやろう今夜は寝れると思うな!!!!」

「所長、お願いします」

『こうなった英雄王はもう梃子でも動かないから好きにさせましょう・・・』

「本人の目の前で凄いこと始めるじゃん」

 

突然講義が始まってしまった。あっドレイクが最前列に座っている。

それを横目に、顔をぐしゃぐしゃにして泣き崩れるドレイクのクルー達をあやしていると、近づいてくる聖なる気配があった。

 

「・・・これは、聖槍か」

「はい。初めまして、勇者リンク。円卓第二席、騎士パーシヴァルと申します」

 

背え高っか。

 

「円卓の騎士にお目にかかれるとは。守護の騎士、聖杯の加護を持つ者。他人の気がしないな」

「!! じ、実は・・・・・・私も、そう思っていました」

「ほほう?」

「貴方のことは、貴方の存在があったから、私は、」

「取りあえず座りなさい。儂はどこにも逃げないから」

 

パーシヴァルがカルデアに呼ばれたのは、いや、あれは呼ばれたというよりは。

そこにとんでもない触媒(・・・・・・・・)があって、思いっきり引っ張られたと言うべきだろう。

だが実際にカルデアに辿り着いても、そのとんでもない縁は見つからず。

マシュの中に居る同胞には気づいたものの、パーシヴァルを呼べるほどではなかった。

・・・これは、ただの仮定なのだが。

 

「あの、カルデアに、来ていましたよね・・・?」

「・・・内緒だぞ?」

「誰にも言いません」

「聖槍の担い手よ。どうか立香とマシュを導いておやり。特にマシュは、お前が側に居れば安定するだろう。・・・英霊もね」

「――――はい。このパーシヴァル、偉大なる先達のご期待に応えられるよう、全力を尽くします」

 

何度も何度も考えた。

もしも自分が勇者であったらば。

もしも“リンク”であったならば。

何度も何度も悔いている。

円卓は、ブリテンは、王は、後輩達は――――――。

 

「パーシヴァル」

「・・・っ」

「ブリテンの事情に、儂が言うことはないよ。ただ」

 

掌が頬に触れる。そっと引き寄せられて、額と額が合わさった。

 

「思うことがあるならば、今度こそ騎士として、大切な人を守りなさい」

「――――――」

「聖槍を持っていても、お前は人として生きたのだろう?儂と同じだ。無辜の人々を守り、罪を許さず、されど人は憎むな」

「ぁ、あぁ・・・・・・」

 

視界が滲む。

慌てて袖で拭っても、拭っても、零れた涙は止まらない。

胸の中が燃えるように熱い。涙の温度に肩が震えた。

 

「悔しい・・・・・・!」

「うん」

「私は、弱くて・・・!」

「だけど、誠実であったのだろう。それは本当に難しいことだ。お前は偉いよ、パーシヴァル」

 

脳裏に次々と浮かぶ同胞達。王の背中。在りしブリテン。

今度こそ、今度こそは。

だけど、今だけは。

私の髪を梳く手に浸っていたい。

慰めるように、鼓舞するように背中を叩いてくれる。少年の胸で泣くことを許してほしい――――。


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