勇者リンクS’の人理修復配信RTA   作:はしばみ ざくろ

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1、2!
我が本丸の猫殺し君もついに極めました。


ニュートンダンス

ざあ、ざあ、ざあ。

ざわ、ざわ、ざわ。

くす、くす、くす。

 

 

「失礼します。お邪魔しますね、マスター」

「おお、どうしたのかな!愛しい君よ!」

 

からりと晴れた空の下、じとりと湿った心の中。

 

「賢者様のお力により、カルデアの者を発見いたしました。エウリュアレやもう一つの聖杯も、そちらに」

「そうか、そうかあ!ようやくこの私が、誰よりも強く無敵の存在になる。素晴らしいことだと思わないかい!」

「はい、とても。素晴らしいことだと思います、マスター」

 

そう陽だまりのように笑う顔の下で、“賢者様”に怯えきっていることなど気づかない。

 

「ああ、でも少し疲れているようだね?大丈夫かい?この船の動力源は聖杯に変換したのだから、君が辛くなることなどないと思うが・・・」

「だ、大丈夫です!賢者様のお手伝いをしていたので、少し魔力を消費したのかもしれません。お気遣いありがとうございます・・・!」

「うん、それならいいんだ。素直で可愛い私の妻になる人よ」

 

まるで幼児のお人形劇だ。ヘクトールはため息を呑み込む。

まさか魔人が船に居るとは思わなかった。イアソンはすっかりグフーを信頼している。もう誰の言葉も耳に入らないだろう。

 

「そういえば、“あれ”の神託は下らないのかい?」

「はい、恐らくエウリュアレを確保したときに、向かうべき先を示した神託が下るのだと思います」

「なんだそりゃあ、回りくどい・・・・・・。オレの足ばかり引っ張りやがって・・・・・・」

 

ヘラクレスは何も言わず、機械のバーサーカーは語る口を持たず。

白髪の青年だけが、歌うように隣で呟く。

 

「彼の志は立派ですが、人を見る目はあまりないご様子」

「アンタ聖人なんだろ?なんとかしてくれよ」

「生憎、今はただのサーヴァントですよ。そうでなくとも、私に魔人をどうにかする力はありません」

 

ずいぶん大人びた顔だった。

リンクとはまた違う、どこか諦めの溶けた笑み。

 

「――――あ、いや、すまないね。彼らを悪く言うつもりはないんだ。だが私にだって神託を受ける権利はある。なのに、どうして君だけが・・・・・・」

「・・・・・・?なんですか、マスター?」

「・・・・・・いや、なんでもない。急いては事をし損じる、というヤツさ。今は君の神託を信じて、船長として最善を尽くすよ」

 

でもこの船、泥船ですよ?

呟いた青年の頭を思わず引っぱたく。おい静かにしなさいバカ聞こえたらどうする。

 

「ええ、それでこそ。さあ、エウリュアレを捕まえに行きましょう。我らアルゴナイタイのメンバーは、絶対不敗の英雄たち。寄せ集めの彼らに勝てる道理はありませんもの」

「そうだね、その通りだ!我々は最強だ!間違いなく、文句なしに最強だ!何しろ、世界最大最強の英雄と魔女、そして偉大なる賢者がついている!」

 

高々と出立が宣誓される。

船は旋回。行き先に向けて動き出した。

ヘクトールの咥えるタバコの煙が、風と共に流れていく。

一匙の哀愁すら感じる、細い煙だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝焼けが天に帰っていく。立香は眠気をあくびで誤魔化した。

策略と悪巧みを詰め込んで、黄金の鹿号(ゴールデンハインド)は待っている。

 

「―――よし、見つけたぞ。それじゃヘラクレス。あそこに集っている有象無象のガラクタ共に、1つ挨拶をしてあげようじゃないか」

 

びりびりと雄叫びが響く。

投げられた岩をアステリオスが受け止めた。重みに揺れる船。

 

「あっはっは!ギリギリで受け止めたか!あそこにいる蛮人は・・・・・・。何だ、アレ。獣人か?」

「まあ。あの方、恐らくアステリオスさまですわ。またの名をミノタウロスと申します。神牛と人の、狭間に生まれた悲劇の子です」

 

笑い声はますます大きさを増した。

不快感に眉をひそめる、こちらのことなど眼中にない。

 

「何だ、人間の出来損ないか!英雄に倒される宿命を背負った、滑稽な生物!向こうの人材不足も深刻だなぁ!あっはっはっはっはっは!」

「・・・・・・・・・・・ねぇ、早く黙らせてくれる?」

「そうね、殺しましょ」

「嫌な人・・・・・・」

 

女性陣の殺意が高まっていく。

オリオンはそれを敏感に感じ取り、ぶるると肩を振るわせた。

 

「恥ずかしい・・・・・・。私が恥ずかしい・・・。もう黙れイアソン・・・!」

「なんだいあの“全部最低”みたいな男は。あれがアルゴーの船長か・・・」

「ははは。世界を修正しようとする邪悪な軍団が、私の素晴らしさを理解できないのも仕方がない。・・・だが、少し不敬だな。私の名前は、畏怖と崇拝と共に呼称されるべきだ」

 

 

奏者のお兄さん いやそれは無理でしょ

ウルフ いやそれは無理だろ

災厄ハンター いやそれは無理だよ

 

 

無茶を言うなよ

 

 

「ヘラクレス、メディア、ヘクトール。・・・あの二騎のサーヴァントは?ドクター!」

『カルデアにも記録(ログ)が無い。初めて接触するサーヴァントだ。皆、気を付けて!』

 

この緊張感のある空間でも、青年はいたって脳天気に見える。

意識を向けられたのに気づいたのか、一歩、こちらへ近づく。

 

「初めまして、カルデアの皆さん。私はただのしがないルーラー。天草四郎時貞と申します」

「えっ」

『なんだって?』

「そしてこちらが――――項羽、という方らしいです。召喚が不完全だったのか、会話も困難なバーサーカーですが」

「は?」

 

空気が凍った。文字通り。

 

「は?何を言っているのかしらそこの人間はそんな見た目すら項羽様の偉大なるお姿に掠りもしてないツギハギのガラクタが項羽様?大衆が勝手に思い描いた下らない贋作をその名で呼ばないでくれる?そもそもあの方の偽物がこの世に存在することなんて誰が許容したのかしらよくも紛い物の分際で私の前に顔を出せたわね殺す死ねあの世であの方に百万回詫びなさいこのゴミ共が!!!!」

「先輩!!!!落ち着いて!!!!先輩!!!!」

「・・・・・・まさかの地雷でしたね。もしかして関係者の方ですか?」

「あちらの女性は虞美人さんです」

「おっ・・・とぉ・・・」

 

そもそも項羽とは?

かの始皇帝が仙界探索の途上で回収した、哪吒太子の残骸を元に設計した自立型人造躯体。

『天下泰平』の早期実現のために駆動し続けた機械知性。故に、英霊の座に至るための魂は存在しない。

だからこそ虞美人は、項羽の真実を座に持って行くために英霊になった。

決して――――大衆の創作物によって作られた偶像ではない。

 

 

あーわかった。なんで項羽があんな見た目してるのかと思ったら、この遠目で見たらケンタウロスみたいなイメージに引っ張られたからか

 

 

ファイ “人馬型の項羽”も確かに存在する世界があるため、召喚されたときにマスター藤丸のイメージに引っ張られてあの姿になったのでしょう。

Silver bow 人馬型の項羽が存在する世界って何・・・?

バードマスター そうか僕らがいるから・・・、余計に並行世界に干渉しやすいのか。いや人馬型の項羽がいる並行世界って何???

 

 

「離しなさい後輩!!あの船ごと沈めてやるわ!!!!」

「先輩作戦通り!!お気持ちは察しますが作戦通りお願いします!!」

「・・・ふ、ふん。品のない女どもだ」

 

 

ちょっとびびっとるやんけ

 

 

「アステリオス、頼むよ!」

「うん」

 

暴れる虞美人を立香とマシュが押さえこんでいる間に、アステリオスがヘラクレスを睨み付ける。

エウリュアレはダビデとオリオン&アルテミスの後ろへ。

ドレイクの側にはアタランテが控えている。

 

「・・・・・・まさか、ヘラクレスと戦うつもりか?」

「ぼくが あいて だ」

「わたしたちもいます!」

「アステリオス、サポートは任せて」

 

ようやく虞美人が落ち着いたので(ブチ切れてはいる)、立香がアステリオスの近くに寄る。

ヘラクレスの視界に入りやすい位置に、狙いを定めやすいように。

 

「ハッハー!そうかそうか!君は勇気があるな!とても、とても、とても気に入ったよ!」

 

イアソンは満面の笑みで、だけど見下しきった声で言う。

 

「おまけにそんな可愛いサーヴァントもついている!いいよ、いい!英雄みたいだ(・・・・・・)!ヒューッ!カッコイー!」

 

すぐに顔が歪む。吐き捨てる泥の言葉。

 

「――ったく、塵屑風情が生意気な。サーヴァント諸共、今すぐ消えてくれる?」

 

一瞬で。

ヘラクレスは目の前に現れる。

だから見てからじゃ遅い。あらかじめ展開しておかないと。

 

「まよえ・・・・・・さまよえ・・・・・・」

 

宝箱から飛び出したかのように、迷宮は現れる。

 

「!?」

「これは・・・宝具!?空間を・・・、違う。空間が迷宮に堕ちていく!」

「・・・テメェ、ミノタウロウス。ヘラクレスを閉じ込める気か?・・・あははははは!お前ごときがヘラクレスに勝てるとでも?」

 

万古不易の迷宮(ケイオス・ラビュリントス)

アステリオスが封じ込められていた迷宮の具現化。ヘラクレスを呑み込み、世界の下に堕ちていく。

 

「メディア!私の愛しいメディア!」

「はい。お呼びですか、マスター?」

「私の願いはわかるよね?ヘラクレスが出てくるまでに、あいつらをできる限り粉微塵に殺して欲しいんだ!」

「自分の妻を前面に出して、自分は戦わない。・・・あの、マスター。この人ってもしかして・・・・・・」

「小物だね・・・」

 

だが、彼女が脅威なのは事実だ。

王女メディア。魔術が日常の神代ですら、“魔女”と恐れられた魔術師(キャスター)

それでもそこまで恐怖を感じないのは、すでにそれ以上(・・・・)の魔法使いと出会っているからだろうか。

 

「野郎共、行くよ!」

「「イエッサー!」」

 

リンクに託された聖杯から、無限の弾丸が発射される。

アタランテの弓が、間断なく撃ち込まれる。

メディアの竜牙兵を打ち砕き、船への侵略を許さない。

 

「君の相手は僕だよ。兜輝くヘクトール」

「その名を放って相手するとか、煽りが上手いねぇ。もしかして政治家?」

 

ダビデがヘクトールの前に立ち塞がる。

その隙に立香が、エウリュアレを抱えて船を飛びおりた。

 

『各種礼装、最大励起(れいき)!身体強化と生命維持を最優先よ!』

『イエッサー、所長!』

「どこへ行く気だ?項羽!奴らを挽き潰してこい!」

 

エウリュアレを抱えて、厄介なサーヴァントを契約の箱(アーク)に誘導する。

ここ1番の大仕事。後ろを守るのはマシュとオリオン&アルテミス。そしてカルデアのサーヴァント。

 

「ジル・ド・レェ(キャスター)!」

「お任せを・・・・・・」

 

世界の切れ目から、悪魔の触手がこぼれ落ちた。

ヒトデに似た海魔による物理的な盾。贋作(項羽)を絡め取り、巻き込み、動きを阻害する。

 

「後輩!!」

「はい!」

「ぜっっっったいに潰すのよ!!」

「・・・頑張ります!!」

 

プレッシャーが凄い。

先輩に怒られない為にも立香は走る。走る。

 

「おっと、加勢は無理そうですね」

「あまくさなんちゃら。アンタもここで死んでおきなさい」

「うーん。一応呼ばれたからには、私も頑張りますかね」

 

戦線は混戦していく。

海は黙して語らず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かいぶつは えいゆうに たおされるもの だから

ぼくは かいぶつ だから

ぼくは やっぱり かいぶつで

えうりゅあれの ことを まもりたかった けど

けっきょく いしにされて まもれなくて

 

 

 

 

 

「アステリオス、儂に力を貸してくれ」

 

きんいろのひとは そういった。

 

「ヘラクレスを倒すためには、まず周りにサポートされないように距離を取らなくちゃいけない。けれど、お前の宝具があればそれが叶う」

「・・・ぼくが」

「そう、ヘラクレスを閉じ込めてほしい。でも相手の力量を推測するに、動いてからじゃ間に合わないだろう。あらかじめ仕掛けておくんだ。・・・できるか?」

 

アステリオスよりも随分小柄なその少年は、世界を何度も救った勇者らしい。

あのテセウスのような、英雄らしい。

 

「・・・ぼくに できるかな」

「できるとも」

「どう して?」

「だってお前、悔しいんだろう」

 

夜空を星ごと丸めたら、こんな色の瞳になるのだろうか。

アステリオスの目をしっかり見て、少年は言った。

 

「エウリュアレを守れなくて悔しかったんだろう。悔しさを糧に出来るのが人の良いところだ。悲しい気持ちを繰り返さないために、立ち上がれるのが人間だよ」

「ぼく は」

「うん」

「・・・・・・ぼく」

 

かいぶつ だ。というその一言が言えなかった。

わるい やつ だから。なんだか言い訳みたいだった。

 

「恐ろしいな。理解の及ばない存在は」

「・・・?」

「グフーは災害みたいなものだ。津波から逃げるのは何も悪いことじゃない。そこはそんなに気にしなくていい」

「ぅ・・・ぅ」

「けれどヘラクレスは違う。お前でも届く相手だ。――――いいか、アステリオス。英雄はどうして英雄なんだと思う」

 

大英雄(ヘラクレス)ミノス王の牛(ミノタウロス)が同列であるものか。

だけど彼がそう言うのならば、それが真実のように思えた。

 

「それは心に信念があるからだ。けっして譲れぬ誇りがあるからだ」

「ほこ り・・・?」

「負けてもいい。泣いてもいい。けれど、勇気を忘れてはいけない。お前が真に恐れるべきは、心まで怪物になってしまうことだ」

「―――――」

「アステリオス。空を守る雷光の子。共に戦おう。お互いの大切な物を守るために」

 

決して出られぬ迷宮(ラビリンス)

否、今日からここは試練の祠。勇者を試す力の試練。

 

「さて」

 

凛、とした声。ヘラクレスが顔を向ける。

己を閉じ込めたサーヴァントと、緑の衣に身を包み、背中に剣を携えた少年。

 

「お手並みを拝見しようか。――――勇者(・・)ヘラクレス?」

 

全身を走り抜けた震えは、果たして恐怖か、興奮か。

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