プロローグ そして君は目を覚ました
空間が歪む。
「魔元帥ジル・ド・レェ。帝国神祖ロムルス。英雄間者イアソン。そして神域碩学ニコラ・テスラ。多少は使えるかと思ったが――――。小間使いすらできぬとは興醒めだ」
膨大な存在が降り立つ。その空気を掌握する。
「下らない。実に下らない。やはり人間は、
“それ”は笑う。矮小さを指さして。
“それ”は嗤う。無様で、無惨で、無益だから。
「我は貴様らが目指す到達点。七十二柱の魔神を従え、玉座より人類を滅ぼすもの」
“それ”は名乗る。星の自転を止め、世界を滅ぼすもの。
「名をソロモン。有象無象の英霊ども、その頂点に立つ七つの冠位の一角と知れ」
ソロモンは見誤らない。カルデアという屑など取るに足らぬ。そしてそれは事実である。
驕っているわけではない。七つの特異点全てを消去するほどの存在と化したのなら、自ら手を下すことも辞さぬだろう。
ソロモンは――――“そう名乗るもの”は知らなかっただけだ。
世界の根源に触れてもなお、星の本質を理解していなかった。
故に観測された。見られてしまった。そこに居ることが確定してしまった。その気まぐれがどれほど致命的だったのか・・・。
それら全てを、勇者だけが知っていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ベッドから飛び起きたのは美しい青年だった。
金色の髪は腰まで長く、青い瞳は眠気を纏っている。寝巻きに身を包む姿であってもその超絶とした雰囲気は隠せない。
ゆっくりと立ち上がりながらカーテンを広げ、室内に日光を差し込んでから男は口を開いた。
「ファイ、いる?」
「イエス、マスター。ファイはお側に」
「ちょっと聞きたいんだけどこの世界にカルデアってないよな?ないと言ってくれ」
「人理継続保障機関フィニス・カルデアのことですか?それならば南極大陸に存在していたと記録しています」
「夢じゃなかったわ・・・・・・。ちょっと初代様呼んできて・・・・・・」
さて、知らない方もいると思うので説明しよう。
たった今起床した青年の名はリンク。人々には時の勇者と呼ばれている。
彼には生涯誰にも伝えていない秘密があった。それは前世が21世紀に生きていた社会人だったことであり、かなり詳細に記憶を維持しているということである。しかし生まれ変わった「ゼルダの伝説」の世界では、記憶を使ってチート☆ということも特になかったためこの件はそこまで重要ではない。
では次に、ここは何処なのかというと――――。
「時~どうしたのかな?」
「初代様・・・・・・。ちょっと夢を見まして・・・」
マスターソードの精霊、ファイに呼ばれてきたのは「大空の勇者」リンクである。
彼らがいるこの場所は、時空の狭間に存在する時の神殿の聖地だ。
「ブレスオブザワイルド」の時代にトライフォースは再度封印された。人の手の届かぬ領域―――時の女神の聖地に。
そもそも時の勇者は代々、時の女神に使える一族の末裔であった。
しかしハイラル統一戦争によって一族は傷つき、聖地を開けるために必要な「時のオカリナ」と「時の歌」を王家に譲渡すると、殆どはハイラルを出て行ってしまった。
残った一族の1人であり元当主の者から産まれたのがリンクである。
世界を救い老いたリンクは時の女神に祈ると、己の持っていたトライフォースの封印を頼んだ。
「多分いつもの予知夢だと思うんですけど・・・。まずカルデアってところがありまして――――」
「ふむふむ」
女神はそれを聞いて涙した。「私の愛し子がこんなにも世界の平和を祈っている・・・!なんて尊いの・・・!私も手を貸さねば・・・!」という感情から。
「ブレスオブザワイルド」の時代、トライフォース保持者の姫は「勇者、魔王、姫の因果を終わらせる」ことを祈った。
そしてそれは叶えられた。もう「勇者リンク」が現れることはない。
故にトライフォースも世界に不要になった。行き場の無くなった神器を時の女神が預かり、そして「私の推しの勇姿が世界から消えるなんて耐えられない」という主張により、英傑達にそれ以前の過去や平行世界の勇者達の事も含めてこの事実を記録させたのだった。
「そういうことならみんな呼ぼうか。映像も繋ごうね」
「現地中継だ!」
「最近はもっぱらア◯プラに使われてる」
「動画見放題につかわれる神の遺産」
勇者やそれに匹敵する魂達は死後、人類存続を守るものとして英霊の座に招かれた。
そう、あくまで
その一人が時の勇者であり、彼は時の女神の最後の御使いとして、トライフォースの守護者として聖地にいることを選んだ。
というもっともらしい理屈をつけて面倒ごとを回避したという。
だって英霊の座って・・・fateじゃん・・・。そこ繋がってんのかよ・・・。俺はニ○ニコ動画が開設されるまで外には出ないから・・・。トライフォースで現世の様子は見てるから・・・。
しかしそう思い通りにはいかない。英傑達の残した記録は読みやすいように書籍となり、ハイラルを飛び出して各国に広がり、そして滅びたあとも新しい文明の人々に発掘された。
勇者リンクの冒険譚とその結末はさらに広がり「勇者=リンク」という概念が成立した。同一に近い存在になったことで、抑止の座に居た他の勇者達が聖地に来れるようになったのだ。
だからといって毎日のように来なくていいんだよ??いや今回に限っては良かったけどさぁ・・・。
「カルデアカルデア・・・ここか」
「確か中にカルデアスっていうのがあるはず――」
衝撃、轟音、爆発。火花は大火に覆われる。
『緊急事態発生。緊急事態発生。中央発電所、及び中央管制室で火災が発生しました。中央区画の隔壁は90秒後に閉鎖されます。職員は速やかに第二ゲートから退避してください。繰り返します。中央発電所、及び中央──』
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
・・・どうしていつも詰んだところから始まるんですか?