涙を堪え立ち上がるヘラクレス。優しい笑みで手を引く風の勇者。
雰囲気に飲まれ感動しているアステリオス。スタバを飲み終わった時の勇者。
戦いの終わりとしては、かなり理想的な展開と言えよう。
○ウルフ 風、今いい?
○ウルフ お宅の魔王、閻魔亭に来てるってよ
ただしそれもここまでだった。
○厄災ハンター ワ・・・!バグっちゃった・・・!
ビシリ、と風の体が固まった。
時も思わず風を見る。
幸いにもサーヴァントの二人が気づく前に取り繕ったが、内心は大混乱である。
○フォースを信じろ 友達なの?
○うさぎちゃん(光) 仲良しじゃん
魔獣島の主。渇望の王。
体も心も魂もハイラルに縛られ、紋章を持つ者たちの因縁に振り回されてきたガノンドロフは、もう疲れている。
若い頃は残酷冷徹な野心家だったが、長い時の間になりを潜め落ち着きを得た。
ある種の挫折と諦めを知った王は、もう勝手にやってくれワシは知らん。というスタンスに入っている。
なのでまさか表に出てくるなんて、外出してるなんて。
○いーくん 特異点は?
脳内会議終了。
勇者っぽい美しい佇まいを崩さないまま、サーヴァント達に話しかけた。
「これまでの特異点の傾向を見るに、魔神は必ず現れるだろう。その前に儂はグフーを片付けておきたい」
「まじん・・・?」
「黒幕の部下さ。アステリオス、外に出たらお前はまずぐっちゃんの加勢に」
「わかった」
○小さきもの こんなキリッとした顔の裏がアレですよ
○小さき爺 ・・・なんというか、取り繕うのが上手いんだな・・・
○小さきもの 勇者ですので
「ヘラクレス、お前が出るタイミングは自分で考えなさい」
「隠蔽魔法をかけておくから。あと1つの命、無駄にするなよ?」
「時の勇者、風の勇者よ。寛大な恩赦、感謝の至り」
そして迷宮は閉じていく。
各々の思惑をもって、オケアノスの海に帰還する。
「ようしやる気が出てきた!!出てこいグフー!!!」
「クックックッ・・・よく吠えますねゆうしアレーーーーーーッ!!!!二人も居る!?!?!?」
「三秒前の登場台無し」
霧のようにゆらりと現れる。不遜な態度の魔人。
――――は、風の後に時を見つけて一瞬で余裕を脱ぎ捨てた。
「勇者のくせに
「どの面下げて恥を語るんだ」
「恥ずかしくない!!!!」
「こっちは胸を張りすぎだし」
完全に素が出てるグフーは時を指さして騒いでいる。恥ずかしいのはお前だよ。
「俺は見ているだけだから気にしないでくれ。というかそんなに言うならもう帰れ」
「嫌です!!貴方たちを殺すために生み出した新技・・・!今出さなきゃいつ出すんですか!?」
「今でしょ!!来い!!」
「早く終わらせたい感が出すぎ」
グフーを黒い魔力が包む。膨れあがって燃え上がる。
影が伸びてほどけた中から、魔神が姿を現した。
「鳴れ、鳴れ、鳴れ、暗黒の鐘よ!全てのフォースは私の物、誰にも負けない魔神の力。
ピッコル族には有り得ざる姿。成長した大人の姿。
周囲を浮遊する目玉の僕は4つ。赤い光線を放って襲い来る。
グフーは長い袖を靡かせながら、巨大な炎弾を生み出した。
「死になさい!」
相対する風の勇者は、聖剣を構える。
「解き放て、
刀身が輝く。
勇者の心に、声に呼応して、魔を打ち払う為に!
極大の魔力が光となり、グフーの宝具とぶつかる。膨大な余波。
○Silver bow バーーーーーーーカ!!!!!
○バードマスター 特異点ごと吹き飛ばす気!?
○騎士 時!
○奏者のお兄さん エーン
こんなこともあろうかと既に展開している。
こんな状況になるかも、って言われて呼ばれたので。俺は本当に働き者だなぁ!
「根源接続、聖地疑似顕現、全防衛機能発動。何人も――穢すに能わず。
対粛正防御展開。
根源に接続して魔力を取り出し、時の神殿の聖地と同じ空間を作り出す。
防衛機能――時の扉を呼び出すことによって、絶対的な防御壁を展開した。
二人の宝具はほぼ同等の威力を持っているが、グフーでは退魔の剣を凌げない。
拮抗は長く続かず、衝撃と共に雲が散った。
「ぐ・・・!」
髪を乱す暴風に顔を顰め、眼前に迫る剣に気づく。
「あ―――――」
「・・・とどめ」
額を貫く聖剣。逃れる術はなく。
「う、ううううう!この、このっ、覚えてなさーーーーーーい!!」
「ロケット団かあいつは」
「勝った!完!」
「展開が高速」
○ウルフ 俺のマスソ、ビームのご用意されてないんだが
○厄災ハンター あれ詠唱違うんだ
○りっちゃん 【全英霊】閻魔亭のサインについて【緊急集合】
○銀河鉄道123 なになになにそれなに
なんか出てきたぞ。
ガッツポーズしている風の元に向かいながら、時は宝具をしまう。
○りっちゃん 閻魔亭が有名になった原因
○奏者のお兄さん どんな感じのスレ?
○りっちゃん 黒髭の座に火がつけられそうになってる
海は凪に戻る。
インターネットは物騒だなぁ・・・。
世界の下からアステリオスは現れる。
予兆もなく、予想もできず。イアソンは言葉を失う。
「来たわね!」
「な・・・っ」
「うおおおっ!」
船を軋ませる踏み込み。跳躍。虞美人と天草の間に割って入り、斧を振るった。
刀で防いで、受け止めきれずに吹き飛ばされる天草を、逃がさぬように追撃する。
「おまえを たおす・・・!」
ヘラクレスのように力強く、リンクのように速く。その勇ましさは雷光のごとく!
今までは、技量や戦術のド素人である虞美人だからこそ、暴れまくってもなんとか押さえきれていたのだが。
怪力と天性の魔を持つアステリオスは、天草一人では難しい。
揺れる船。白い波。水しぶきが服を濡らす。
飛び起きて攻撃を捌く。乱撃に黒鍵を取り出す間もなく。
その乱闘の間を縫って、短剣が体に突き刺さった。
「しまっ・・・・・・!」
「行くわよアステリオス!」
「うん!」
思わず力の抜けた体に、二人の攻撃が叩き込まれた。
「八つ裂きよ!死になさい!」
「むうううっ!」
霊基の核が砕かれる。甲板に叩きつけられた体はぐったりと弛緩し、やがて霧散していく。
天草は残念そうな顔をして、されど悔しさの感じられない穏やかな声で言った。
「残念です。次はもう少し、まともな召喚をされたいものですね」
「あまり残念そうに見えないけど」
「うん」
「まあ、色々あるのですよ。私にも」
太陽の眩しさに目を細めながら、サーヴァントは消滅した。
この場に敵はあと三騎。
「天草!・・・竜牙兵!行きなさい!」
「まだ出るのかい!キリが無いね!」
「だが足止めは出来ている。踏ん張りどころだ、船長!」
メディアの焦りを感じ取って、ヘクトールは内心で舌打ちを零す。
ドレイクの弾丸は聖杯だろう。なら弾切れは狙えない。
アステリオスが無事ということは、・・・・・・ヘラクレスはやられたか。
まだほんの数分しか経っていないのに・・・!
あまりにも早い決着。流石にヘクトールも驚きが漏れる。
恐らく彼が――――リンクが出たのだろう。まだ姿が見えないあたり、もしかしたらグフーを相手しに行ったのかもしれない。
そしてダビデは相打ち覚悟。振り切るためには、宝具でも出さねば。
「おい」
どろりと落ちる、イアソンの声。
「・・・・・・・・・・・・どういうことだ」
感情を煮詰めて詰め込んだ、暗い声。
「ヘラクレスはどうした!!」
「めいきゅうには いないよ」
「ヘラクレスが生きてたら、アステリオスが無事なわけないだろ?ならアイツは死んだ。わかりやすい理屈じゃないか」
ドレイクの挑発にイアソンは怒号を返す。
「死ぬはずがないだろう!?アイツはヘラクレスだぞ!不死身の大英雄だ!」
「・・・・・・」
「
幼子の癇癪のようだ。
怒りと焦りで震える姿は、いっそ哀れみすら覚える。
アタランテは静かに視線を外した。戦闘に集中する。
「お前のような雑魚に!!醜い怪物に!!倒せるものかァ!!」
「・・・あんなヤツにも一角の友情はあるんだね」
「・・・歪んでいるけどな」
「・・・・・・」
何も言わなくていい。とリンクに言われたアステリオスは沈黙を返す。
それが余計にイアソンの怒りに油を注いだ。
「獣人風情が図に乗るな!!!・・・そうだ。賢者!賢者よ!ヘラクレスを連れ戻してくれ!」
「? ・・・・・・! イアソン様・・・!」
グフーがいない。
気づいたメディアの足下がふらつく。見捨てられた?放り投げられた?それとも気配を消して見ているだけ?
わからない・・・。何も・・・・・・!
正解は勇者に倒された、だが。今のメディアにその考えに至るのは難しい。
「賢者様が居ません!」
「は・・・・・・」
「賢者・・・。グフーのことかな?」
「なんだ、見捨てられたのかい?」
笑うドレイクの顔も目に入らない。
何故?何故?
イアソンの思考がぐるぐる回る。
私は選ばれたんだろう?正義の味方に。賢者に導かれる勇者に。
どうして?裏切ったのか?どういうことだ。なんのつもりだ――――――。
「イアソン様!お気を確かに!まだ私達が居ますから・・・!」
「あーあ、こりゃ不味いな・・・」
「それなら早く倒されてくれないかい?・・・っと!」
槍と杖のぶつかる鈍い音。
ヘクトールの槍に弾かれて、ダビデは後ろに飛び退いた。
「仕事はキッチリやりますよ。アンタを足止めするくらいはね」
「・・・やれやれ、これだから
けど今日の僕もかなりやるよ。勇者リンクに託されたからね。
ダビデは息を整えて、杖を構えた。闘志は強く、心を燃やしている。
「ヘラクレスは儂とアステリオスがやる。ただそれには問題が1つ、グフーがフリーになってしまうことだ」
たき火を囲んだ作戦会議。口火を切ったのはリンクだった。
とろりとした金髪が、まるでハチミツのように煌めいている。
立香は抱えた膝の隙間から、その顔を眺めた。
「恐らく奴の性格からして、直接手をくだすのは最終手段になるだろう。それでも立香を船に置いておくのは、少し心配だ」
『・・・彼の攻撃を防ぐ手段が、カルデア側にないからですか・・・?』
「マシュとジャンヌの宝具なら効くと思う。反応できれば、だが」
『それでも
目が合った。
リンクは立香を見ている。
立香がこっそり見ていることに気づいて、穏やかな視線を返してくれた。
勇気が出せない事を見抜いていて、ずっと待ってくれていた。
「あの、私」
視線が集まる。
「私、走るよ。エウリュアレを抱えて、
「・・・・・・なんだって?」
「そうしたら船から離れられるし、敵を引きつけられると思うの」
「いい案をだすな。立香」
立香の言葉に驚いていた面々も、リンクの声でようやく動き出す。
『それは・・・確かに、そうかもしれないけど』
「ああ、いいね、いいじゃないか!さっすがアタシが見込んだ女だ!」
「うん、妥当な作戦じゃないか。サーヴァントだけじゃなく、マスターも命を賭けることになるけど」
「人生なんて大概博打さ。カルデアのバックアップもあるんだ。きっと上手くいく」
『! え、ええ!当然です!サポートは任せなさい、立香!』
「はい、所長」
ドレイクが、ダビデが、オルガマリーが肯定したことで作戦は決定する。
それでもかすかに不安そうにしているマシュの手を、立香は強く握った。
「マシュ、私のこと守ってね」
「――――はい!」
○騎士 立香・・・こんな・・・なんて・・・良い子で・・・
○バードマスター 立香ちゃん・・・!立派になって・・・!
○守銭奴 後方保護者面落ち着いて