勇者リンクS’の人理修復配信RTA   作:はしばみ ざくろ

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あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


L'amour est aveugle

あれ?ナイチンゲールは?

時の勇者は画面を見つめながらしばし動きを止めた。思考をぐりぐりと動かし、考えても答えが出ないという答えに辿り着き、ゆっくり椅子にしていたクッションに沈んだ。

 

「(俺らが居ることで多少の違いがあるとはいえ、こうも明確に出てくるか・・・)」

 

三つ編みにされた髪をいじりながら、ごろりと寝返りをうつ。

まぁいざとなったらオルタがいるし・・・。生前と違って他のリンクもいるし・・・。まぁ・・・いけるだろ・・・。

ぽこん、ぽこん、と軽快な通知音が重なって、画面越しの会話が続く。

手を伸ばした先のマグカップが空になっているのに気づき、渋々と起き上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サーヴァントは睡眠を取る必要が無い。

しかしカルデアでは無駄な魔力や電力を消費しないために、夜は自室で休むことが推奨されている。

 

「私は見張りをしています」

「え~。オルタも一緒に寝ようよ」

「こんな狭いベッドで?二人で?子供じゃないんですから・・・」

 

そこまで言って、オルタは目の前に居る少女がまだ十代の高校生であることを思い出した。

少しの間を空けて、わざとらしいため息をつく。鎧を霊体化してはずしながら、寝台に身を乗り出した。

 

「もう少し詰めなさい」

「! うん」

 

腕を回して胸に抱き込む。

本で見た慰め方だ。こんなものは、ただの真似事。親に不安や寂しさを宥められた幼少期など、自分には存在しない。

それでも立香は安心したように力を抜き、やがて穏やかな眠りにつく。

それを見守ってオルタも目を閉じた。柔らかな沈黙。

二人分の寝息が、静かな牢にたゆたっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「女に甲斐甲斐しく世話を焼かれるのはどうだ。悪い気分ではないだろう」

 

窓の無い牢屋では、昼夜の概念も無く。

 

「シャトー・ディフで女にメイドの真似などさせた豪傑はおまえが初めてだろうよ、マスター」

従者(サーヴァント)ですもの。マスターのお世話をするのは当然です」

「おはよう、アヴェンジャー」

 

絵の具が紙に滲むように、影が溶けて男が現れる。

寝起きに見る金色の瞳が、この牢獄では太陽の代わり。

 

「しかし見事に寝呆けたものだ。丸一日近く眠っていたのだぞ、おまえは」

「えっ」

「待って、そんなに寝てたの?」

「こと魂はひとりでに安寧を求めるものだ。おまえがそうとは限らんが、今日は少なくともな」

 

釣られて寝呆けていたオルタが、気まずさと恥ずかしさで頬をちょっと赤く染めた。

さっさと歩き出すアヴェンジャーを追って牢の扉を潜る。石畳の廊下は、相も変わらず明暗差が激しい。

 

「目覚めはどうだ、我が仮初めのあるじよ。その呆けた頭にひとつ尋ねるぞ。――――怠惰を貪ったコトはあるか?」

「怠惰?」

 

アヴェンジャーはいつものように、道すがら語り出す。

七つの大罪。人間が容易に転がり落ちる、悪徳。悪逆。そのうちの一つを。

 

「成し遂げるべき事の数々を知りながら、立ち向かわず、努力せず、安寧の誘惑に溺れた経験は?

 社会を構成する歯車の個ではなく、ただ己が快楽を求める個として振る舞った経験は?」

 

 

騎士 (社会を構成する歯車すらガタガタだったので)ないです

Silver bow 立ち向かわず、努力せず、安寧の誘惑に溺れたら死ぬんよ

海の男 かわいそう

銀河鉄道123 やっぱ勇者って貧乏くじやんなぁ!?

 

 

「うーん。ゆっくりするのも、のんびりするのも好きだけど」

「怠惰、とは随分強い言葉ですね。ですが確かに、世の中勤勉な人間ばかりではありません。愚かで無知な群衆が殆ど。人間は基本、か弱い生き物です」

 

歌うように紡がれる言葉に、立香は否定も肯定も返さない。

神に、人間に、世界に対する憎悪から彼女は生まれた。ジャンヌ・オルタは基本的に、人間を不信している。

 

「・・・・・・そろそろ分かっていると思うが。第三の裁き。今回は、怠惰を具現した輩が相手となろう」

 

そして扉は重々しく開かれる。

 

「――――主よ!!

 此なる舞台に我を降ろしたもうたは貴方か!ならば宜しい、私は悲劇にも喜劇にも応えられようぞ!」

 

ジャンヌ・オルタは一瞬で死んだ目をした。

かつては高潔だった男が、高らかに演説する。

 

「しかしどうか勘違いめされるな。我が演目のすべては涜神(とくしん)のそれと定められているが故!」

 

その手に抱えるは異界の魔道書。人皮で装丁された、おぞましき異本。

 

「輝かしきモノよ、我が冒涜を前に震え上がるがいい!

 聖なるモノ、我が嘲りを以て地に落ち穢されよ!

 おお、おお、祝福を此処に!我が胸の高まりはここに極まれり!」

 

神への信仰心が深すぎたが故に、神を呪い貶めることに取り憑かれた男。

唯一無二の救いを失い、神を見失い、それでも求め続けた聖なる怪物。

 

「神の御前に最高のCOOLを供えてみせましょう!たとえばそう、希望に満ちて歩む勇者の魂を供物として!」

「怠惰・・・?」

「怠惰です。ええ、間違いなくあれは怠惰の極みです」

 

ぎょろり、と動く二つの目玉がこちらを向く。

男の名はジル・ド・レェ。運命に狂い、狂わされた男だ。

 

「騎士でありながら礼節も誇りも高潔も忘れ果て、悪魔の召喚なんてものに傾倒して魂を腐らせた。己の役目から目を逸らし、堕落と凌辱に耽った怠惰の果て。それがあの男です」

 

哀れみと呆れの混じった声で、オルタは断言した。

 

「小娘一人に総てを預けるから、そんなことになるんですよ」

「お褒めにあずかり恐悦!!」

「別に褒めてはいませんが」

 

 

災厄ハンター 騎士に求められるハードル高すぎんか?

Silver bow 騎士だから

バードマスター なんて感情の籠もったセリフなんだ・・・

 

 

「おおジャンヌ!黒き竜の魔女よ!ようこそ永劫の監獄へ!」

「ごきげんよう、ジル。一応聞いておくけど、貴方はマスターを阻むのね?」

 

オルタは一歩、前に出る。

剣の柄に手を置いた。

 

「ええ!ええ!無論ですとも!どれだけの希望を持っていようと、その人間はここで終わるのです!魂の指を折り、魂の手足を断って、魂の腹を裂き、魂の臓腑を攪拌しながら魂の眼球を抉れば――――」

 

大仰な身振り手振りが空を切る。

愉悦に歪んだ顔が、立香の魂を値踏みした。

 

「いかな勇者であろうとも、たちまち絶望へ滑落する!そのとき生まれる絶念の甘美さ!まさしく喜劇!神の御前に捧げる演目として、これ以上のものはありません!」

「そう」

 

静かに、爆発的に、殺意は膨れあがる。

 

「ならば死ね!!ジルだろうと悪魔だろうと神だろうと!私のマスターに手を出す輩はすべからく焼き死ね!!」

「・・・オルタ、」

「それは従者(サーヴァント)としての義務か?エデなりし復讐鬼。お前はどうしてこの人間を信じる。それこそ、勇者の真似事でもしているのか?」

 

見定めるようなアヴェンジャーの言葉。

立香は思わず男の顔を見上げた。金色の目は、ただ真っ直ぐに前を向いている。

 

ジル・ド・レェの持つ魔道書が、風に捲られたかのようにページを開いた。

宝具、起動。

瞬間、ジル・ド・レェの体が肥大化した。

海魔の醜い肉体を敷き詰め、重ね、膨張させ、ぬめった触手を数十と生やす。ジル・ド・レェと融合した、天を衝くほどの超巨大な異界の神の模造品。

かつてフランスにも現れた、総てを破壊する地獄の怪物!

 

「なぜ・・・。なんて」

 

しゃんと伸びた背筋が、声が、立香の意識をオルタに戻す。

 

「決まっているでしょう。マスターが・・・、私にずっと構うから」

 

淀んだ空気を吹き飛ばすかのように、黒い炎が巻き上がる。

 

「呪わしい魔女なぞに付き合ったら、共に炎で焼かれるかもしれないのに。私の手を、ずっと握っているから」

 

物語の中にしかないと思っていた、ありふれた優しさに、人間の善性に、照らされていることに気づいたから。

 

「貴女が私を信じると言った。ならば私はその信頼に応えましょう。それが誠意というものです」

 

振り返った魔女の笑みは、本当に美しかった。

 

「違いますか?黒き哄笑者。私とは似て非なる復讐鬼」

「クハハハハハハハ!違わんな!良い答えだ。それでこそ、希望を探すマスターの復讐鬼(エデ)だ!」

 

バサリとマントを翻し、アヴェンジャーがオルタの隣に立った。

 

「さあ命じろ!殺せと!アレはおまえの魂の咀嚼方法(たべかた)を知っているぞ!」

「オルタ、アヴェンジャー・・・。・・・うん。二人とも、私に裁きをこえる力を貸して!」

 

瞬間、海魔の肉体に穴が空く。

雷撃にも似た閃光が海魔を抉っていく。

黒炎が踊るように触手を焼き尽くしていく。

 

「チィ!流石に再生が速いわね!」

「マスター!魔力をよこせ!触れる者を死へと至らせる、毒の炎を見せてやろう!」

「わかった!――――令呪を以て命じる!」

 

怠惰は確かに罪かもしれない。

けれど休むことは、穏やかな時間を感じることは罪じゃ無いはずだ。

毎日頑張っているオルガマリー、ロマニ。

いつも万全のサポートをしてくれるダ・ヴィンチちゃん。

優しくて暖かい、姉のような母のようなキアラさん。

そして何より自慢の後輩、マシュ。

無理をしないでほしい、といつもみんな私に言うけれど。

私だって、無理をしないでと思ってる。

その気持ちが、罪であるものか。罰せられるものであるものか。

 

安らぎのない日々は地獄だ。勇者リンクだって、休息をしながら旅をしたのに!

 

「アヴェンジャー、私達に勝利を!」

「クハハハハハハハ!もはや慈悲などいらぬ!」

 

虎のように吼えよ!闇の底でなお、希望を謳え!

 

「我が征くは恩讐の彼方――――虎よ、煌々と燃え盛れ(アンフェル・シャトー・ディフ)!!」

 

超高速思考が肉体に反映された、超高速行動。それは複数の分身をつくる。

魔力によって形成された怨念の黒炎が、分身から放たれた。その余りの多さに、流石の海魔もされるがまま。

 

「トドメです!」

 

アヴェンジャーの攻撃によって抉られた肉塊。露出したジル・ド・レェに突き刺さる魔女の剣。

断末魔は短く、消滅は一瞬。

第三の裁きが終わる。

 

「ふん。まあまあですね。次もマスターの為に励みなさい」

「ありがとう、アヴェンジャー。いまの凄かったね!」

「フン」

 

三人の声が戯れるように響くのを、影に潜む青年は退屈そうに聞いた。

 

 

奏者のお兄さん オルタ参加しないの?

オルタ は?ダル・・・

奏者のお兄さん このままだとただの後方彼氏面になりますが

オルタ ・・・・・・・・・・・・

うさぎちゃん(光) ちょっと葛藤してるのオモロ


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