覚醒を促す、目覚まし時計のアラームは無く。
ただふわりと意識は浮上する。監獄生活、四日目。
「よぉ、マスター・リツカ。願望器の
男の声が聞こえた。
朝の挨拶を返そうとして、それが全く知らない声であることに気づく。
「だっ、誰よアンタ・・・!」
立ち上がってそう言うオルタの背中から、男の姿をのぞき見た。
牢の外で気怠げに壁に寄りかかり、あぐらをかいて座っている青年がいる。
初雪のように白い髪、白い肌、黄金色の瞳。まるで人形のように整ったその顔は、立香もよく知る、とある青年にそっくりだった。
「・・・リンク?」
「の、オルタナティブだ。
「は!?そんなのアリ!?・・・ど、どこのシャドウ?ダーク?ガノンドロフの部下の方?鏡から生まれたやつ?」
「オルタ詳しいね」
「まあそこの女とは同族みたいなもんだしな。それら全部をひっくるめて、一つの霊基で顕現してるのが自分だ」
ポケットに手を突っ込んだまま立ち上がる。柄が悪い。
不良のような態度なのに、どこか危ない魅力を感じてしまうのは、彼もリンクであるからだろうか。
「それで・・・なんでリンクのオルタがここに?」
「不本意だ。来たくて来たわけじゃない」
「召喚されたってこと?」
「・・・その理解でいい」
不意にぴりぴりと空気が震えた。
暗闇の向こうから現れたのは、監獄島のアヴェンジャー。
「・・・・・・・・・・・・目覚めたか」
ちら、とリンク・オルタに視線を向けたものの、特に触れずに踵を返した。
「第四の裁きへと赴くぞ。遅れるな」
「・・・・・・なんかアイツ機嫌悪くない?」
「確かに、テンションが低いような」
「(めんどくせー・・・)」
○うさぎちゃん(光) このまま彼氏面でいるかどうか一晩悩んでたのオモロ
○奏者のお兄さん もうちょっとダルい感じ隠して
「・・・・・・・・・・・・先に、言っておく。お前が殺す相手。第四の『裁きの間』にいるのは、憤怒の具現だ」
「憤怒?」
立香とジャンヌ・オルタが並んで歩き、その一歩後ろをリンク・オルタが着いてくる。
「憤怒。怒り、憤り。それは最も強き感情であるとオレが定義するモノ。
自らに帰因する怒りたる私憤でも、世界に対しての怒りたる公憤でも構わん」
「ほう」
アヴェンジャーの話に興味が湧いたのか、リンク・オルタが相槌を打った。
「等しく、正当な憤怒こそが最もヒトを惹き付ける。
時に、怒りが導く悲劇さえもヒトは讃えるだろう。見事な
怒り、それはヒトを突き動かすモノ。
理屈も理性も吹っ飛ばす、強い、強い感情。
「古今東西、老若男女の別なく。復讐譚を
「違いない。他人の悲劇こそ、我らにとっては最高のエンターテイメントだ」
「悪属性だ・・・」
「悪だとも」
鼻で笑うように返された言葉に、やはり彼はリンクであってリンクではないのだと思い知る。
「それを・・・・・・!ヤツは認めようとはしない!怒りを、最も純粋なる想いを否定する!」
爆発するようなアヴェンジャーの憤怒。激高が廊下に響く。
黒い炎が猛っている。ちりちり、びりびり。
「第四の支配者に配置されておきながら、さも当然とばかりに救いと赦しを口にし続ける!」
眉をひそめたジャンヌ・オルタが「まさか、」と小さく呟いた。
「許されぬ。許されぬ。おお、偽りの救いの手なぞ反吐が出ようというものだ」
「ああ、成る程・・・。それはさぞ焼き尽くし甲斐があることでしょう!ふふっ、腕が鳴るわ!」
「四肢を引き裂いて断末魔を瓶に詰めてやろう。ふは、俄然やる気が出てきたな」
「このパーティ血の気が多すぎる・・・」
○バードマスター 聖職者アレルギー?
○騎士 教育に悪すぎる
重々しい音を立てて、扉は開かれた。
「・・・・・・来ましたね。迷える魂を更なる淀みに引き込む者、正義の敵よ」
「あ?」
「もう一人の私は狂気と共に在ったようですが、この私はジル・ド・レェ、聖なる旗に集いし騎士!正義の刃のもと、あなたたちを断罪しよう!」
「セイバーのジル・ド・レェ?」
「前回とは些か気配が異なるな。ほう、ヤツに引きずられて現界したと見える」
行く手を阻むは、白銀の鎧に身を包みし騎士。
まだ狂気に堕ちていない、痩せぎすの男。
「見ろ!見ろ!あれが!聖なる旗を掲げるモノ!愚かしくも主の加護なぞを口にして調停者を気取る!」
「ああやっぱり――――。全てに裏切られてもなお、恨み言の一つも落とさない気狂い女。愚かなんて言葉じゃ表しきれない脳筋女」
「忌まわしきはジャンヌ・ダルク!我が道を阻まんとして自ら望み監獄塔へ入りし女!」
「望んでここ来るとかガチで引く。あのアホ共でもしねぇのに」
三者三様の復讐鬼。
しかし語る内容は皆同じだ。ジャンヌ・ダルクを嘲っている。
「・・・・・・アヴェンジャー。はい。あなたの言葉通りです。私はあなたを止めるために此処へと至った。かつての昔、導く者として立った私があなたを阻む」
「ジャンヌが、憤怒の具現・・・?」
第一特異点の彼女を思い出す。
あんまり、そんな感じはしなかった。
彼女の胸に燃えていたのは、炎というよりはきらめく光。
「そうだ、ジャンヌ・ダルクこそ憤怒の具現よ!今更言うまでもなかろうよ!
ギラギラと光る金色の目。アヴェンジャーは吼える。
「ならばその魂には消えぬ炎が灯る。いいや、炎こそが核として燃え盛るが道理!哀しみをおまえは知るだろう!怒り、哀しみ、噴きあがる黒き炎こそおまえだ!おまえこそ!第四の裁きに相応しい!」
「そんな思考回路の女だったら、どれほどよかったか・・・。私もすんなり、世界に生まれてこれたのに」
ため息と共にこっそり吐かれた、ジャンヌ・オルタの言葉。
彼女は所詮うたかたの夢でしかない。だってジャンヌ・ダルクというコインに、裏面なんて存在しないのだ。
「いいえ。アヴェンジャー。私には、元から憤怒など存在しないのです。
私は決して藤丸立香を裁きません。その資格も、その意志もない」
とつとつと吐かれる気高い台詞に、リンク・オルタは白けた顔をした。
「この場にいる私が・・・正しく現界した私ではないのだとしても、構わない」
「へぇー」
「・・・・・・何ィ・・・・・・?」
「あなたです、復讐者。世界とヒトを憎悪し続けるようにと定められた、哀しくも荒ぶる魂、アヴェンジャーよ」
アヴェンジャーの顔が歪む。
「私は、あなたを救いましょう。聖旗が、シャトー・ディフに在ってもこうして輝くように」
「黙れ。黙れ。黙れ!!」
「黙れェ!!」
「ふっ、あはははははははははははは!!聞いたかお前ら!救うだと!」
とうとう耐えきれなくなったのか、リンク・オルタが弾けたように笑い出す。
ジャンヌ・オルタは呆れたように首を振り、アヴェンジャー三人の間でおろおろと視線を迷わせていた立香の手を引いて後ろに下がった。
「マスター、私達の出る幕はなさそうです」
「ええと・・・」
「なにやら男二人に火が点いたようなので」
心底愉快だと白い青年は笑う。
心底不快だと黒い男は燃える。
「ジャンヌよ、お下がりください!神と貴女に捧げた剣、今こそ振るう時であると心得た!」
「ジル!いけません、彼は私が――――」
聖女を庇う騎士、おおなんと美しいのか!
「彼の黒き気配、邪悪の怨念!監獄塔に在っては、主の救いさえあの魂には及ばず!聖女よ、アレは貴女の思う魂とは違う!狂い果てた魂は断罪の刃を以てあたる他にない!それに――――」
ジル・ド・レェは難しい顔をしてリンク・オルタを見た。
へらへらと薄い笑みを浮かべる、彼の勇者の有り得ざる―――――。
「生憎自分らは、正真正銘リンクの裏側。悪しき心の具現だ。我は世界に憤る黒き炎」
「・・・・・・!」
「
「なっ・・・」
「なあアヴェンジャー?どこぞの王のように、世界に復讐せよと願われたモノよ」
○海の男 ガノンドロフのことか────っ!!!!!
○銀河鉄道123 その言い方だとクリリンポジみたいに思われちゃうから
○Silver bow オルタはジルとジャンヌがウエメセっぽいからムカっとしてるでOK?
○いーくん あとそもそも人間が好きじゃないし、魔王の部下なので聖人が特に嫌い
「はははははははは!そうだ、このオレは恩讐の彼方より来たる復讐者!そう在れかしと誰もが言うのだ。憎め、殺せ、敵の悉くを屠り尽くせと期待し続ける!ならばオレはそう在ろう!
猛る黒炎が噴きあがり、火の粉を撒き散らす。
「ここに愛しきエデはなく、尊きファリア神父はなく、ならば主さえも我が魂を救えはしない!」
「もっとわかりやすく言って!」
「ああ、そうだな!おまえのために第四の支配者を殺すというコトだ!希望の旗を鮮やかに引き裂こう!輝きも、聖なるモノも、オレには何の意味もない!尊く、聖なるモノ!すべて等しく無価値に過ぎぬわ!」
「わかりやすく言ってくれた」
「貴女には甘いですね」
「・・・・・・仕方ありません。対話では、あなたを止められないのなら」
ジャンヌ・ダルクが旗を広げ、翻す。その姿よ。なんと勇ましき。
「私は戦いましょう。ジル、どうか力を貸して下さい!」
「はっ聖女よ。貴女と主の輝きの旗に勝利あれ!」
ジル・ド・レェの刃がアヴェンジャーに迫る、ことは叶わなかった。
リンク・オルタが一瞬でその首を掴み、喉を圧迫したからだ。
男の体が宙に浮く。呼吸を阻害され、苦しげな顔で手を振りほどこうとしがみつく男に、冷たい双眼が刺すような視線を放つ。
「殺人鬼は貴様もだろう。
「ガッ・・・ぐ・・・」
「ジル!」
「よそ見とはな!」
魔力を纏った高速の格闘術が、ジャンヌを襲う。
重い拳を旗で受け止め、叩き込まれる蹴りを紙一重で避ける。
白き旗を燃やさんとする、黒炎の熱さよ。
「マスター・リツカ、何を他人事のように見ている」
星見のマスターを誘う、これは悪の囁き。
「え?」
「お前は何も奪われていないのか?怒りを感じていないのか?死にたくないと叫ぶ心の底に!燃え上がる炎はないのか!」
奪われた、もの・・・?
「人理は焼かれた!未来は奪われた!お前の夢は踏みにじられた!それに何も思わないのか!」
「―――――」
「理不尽に憤れ!他人の為に!自分の為に!その怒りで心を燃やせ!」
【ねー立香。将来の夢とか決まったー?】
友達の声がする
【とりあえず大学行っとけばいんじゃね】
【アンタ人生舐めすぎでしょ!】
【ウチはねー、空港で働きたい。CAになりたいの】
【いいじゃんそれ!応援するわ!】
楽しくて賑やかな、高校時代の一幕。
【うぃーす藤丸。相変わらず鍛えてんな】
【そりゃ今度こそ優勝したいからね!】
【やべぇ俺藤丸より筋肉ないかも。腕相撲負けそう】
【おっやるか?やるか?負かしてやんよ】
部活、委員会、満たされていた日々。
【ただいまー!お母さんご飯なに?】
【今日はシチュー。寒くなってきたしね】
【やった!】
【お父さんが帰ってくる前に、お風呂入っちゃいなさいよ】
【はーい】
お父さん、お母さん・・・。
「・・・っ」
「マスター?」
気遣わしげなジャンヌ・オルタの声は、立香の耳をすり抜けた。
「・・・う、う」
心の奥底で、ぐちゃぐちゃに絡まった感情が暴れている。
みんなみんな、
「苦しんで死ね。青髭。それが貴様に相応しい末路だ」
首の骨が砕ける。喉が圧しつぶされる。
それなりの体躯を持つ筈の男は、軽々と地面に叩き落とされた。
そのあまりの衝撃に、ジル・ド・レェを中心に地面がひび割れる。霧散する体。
「くっ・・・!」
「見ろ!敗れ消え失せたのはおまえの騎士だ!」
ジャンヌの体も消えていく。悔しさを滲ませ、しかし瞳の強さは消えることはない。
「しかし、私は諦めません。必ずあなたを止める――――」
「はは!ははは!はははははははははははははは!」
「マスター。マスター、しっかりしなさい。男共は放っといて、部屋に戻りましょう」
「・・・・・・・・・・・・うん」
○騎士 おい立香真っ青だぞ
○災厄ハンター オルタくん・・・?その煽り必要だった・・・?
○ウルフ オルタくん・・・?強めにどつくぞ・・・?
○オルタ お前らだってしょっちゅうキレてただろ
○いーくん しょっ・・・ちゅうはないし・・・・・・