あわれで可愛いトミーサム、いろいろここまでご苦労さま。
夜のとばりは落ちきった。アナタの首も、ポトンと落ちる?
配信中です。 | 上位チャット▼ ○バードマスター 次の特異点は僕が行くよ ○奏者のお兄さん その心は? ○バードマスター 呪殺、ムテキンVで弾けんか? ○海の男 現代の人間がムテキンVキメて大丈夫? ○バードマスター わかんない。ファイー! ○ファイ 宝具の1つとして処理される確率70% その場合人体に影響を及ぼさない確率98%です ○騎士 ポケモンなら外れる ○いーくん きあいだまに苦しめられてきた者だ。面構えが違う |
【新人の】人理修復RTA【アヴェンジャーくんをよろしく】 20人が視聴中 | |
ここはロンドン。死界都市。
空を覆い尽くすほどの霧が、異常な魔力反応を検出した。
まるで大気に魔力そのものが充満しているようだ。生命には有害な、死にいざなう魔霧。
『マシュ、立香ちゃん、体の調子は?』
「わたしは問題ありません。デミ・サーヴァントであるからでしょうか」
「私も。ダ・ヴィンチちゃんと先生たちが作ってくれた礼装のおかげかな」
カルデアに続々と集結する叡智を動員して作られた、新たな礼装。アトラス院制服。
無事眼鏡っ娘デビューを果たした立香は、ドクターの質問に、ネクタイの結ばれた胸を張って応えた。
『確かにバイタルにも変動がないな。周囲の様子はどうだい?犠牲者は、見掛けられる?』
「いいえ、ドクター。往来は全くの無人です」
現在時刻は午前二時。
しかし、馬車はおろか歩行者さえも居ない。
まるで廃墟になってしまったかのようだ。建物のすべての戸や窓は閉められ、外界を懸命に遮断している。
「早く聖杯を見つけなくちゃ。行こう、マシュ」
「はい、先輩」
『待った、生体反応だ』
踏み出そうとした2人の足がロマニの言葉で止まる。
即座に立香の前に出てきたマシュが、一番にその姿を捉えた。
「・・・・・・なんだ、おまえら?」
「え・・・・・・と。はい、わ、わたしたちは――」
『モードレッド卿!』
「え?」
「げ」
通信機越しのパーシヴァルの声に、三者三様の反応を返す。
声を上げたのはマシュと鎧の騎士――モードレッドだ。
歴史では男として伝わっている彼女は、魔女モルガンの奸計によって生み出された人工生命、ホムンクルスの一種である。
「なんだよ知り合いがいんのかよ・・・」
『モードレッドか!パーシヴァルと同じく円卓の騎士であり、叛逆の騎士・・・!』
「モードレッド卿、貴方はこの都市について詳しいのですか?それでしたら是非、お話を聞かせていただきたいのですが」
「あーへいへい。しょーがねーな」
面倒そうな顔を取り繕いもせず、モードレッドはがりがりと頭をかいた。
これで相手が兄貴風を吹かせるあいつや、不倫紫だったら帰っていたが・・・。パーシヴァルは円卓の中でもかなりまともな部類の騎士だ。ならまぁ・・・いいだろう。
「その前に、ハッキリさせとこう。おまえ、デミサーヴァントってやつだろう?」
「はい。わたしは、マシュ・キリエライト。デミ・サーヴァントです」
「で、お前は?」
「藤丸立香。カルデアのマスターです」
「取りあえず、オレの当座の拠点に行くか。話はそこからだ」
少女の姿をした騎士に促され、立香達は静まった都市を歩き出した。
遠くから聞こえる謎の音が、世界の異質さを表している。
夜霧はまだ、何も語らず。
「ふ、ふふふふふふふふ」
どこもかしこも、濃くて妖しい霧が覆う。まったく視界が悪くてしょうがない。
「フハハハハ!!まったくふざけているな。碌な脚本も書けない三流作家が!よりにもよって俺を呼ぶとはどういう了見だ!」
そんな都市の一角で、叫ぶ少年が居る。
春の海のように青い髪、青い瞳。なんだかとっても美声の少年は、地団駄の代わりに天に向かって叫ぶ。
作家を聖杯戦争に呼んでどうする。そういうのは月だけで十分だ。しかもなんだこの霧もう詰んでるぞ。
魔力は多いがただそれだけ。三流サーヴァント1人では雨風凌ぐのが精一杯だろう。
「(とりあえず、何処か安全な場所に居座るか・・・)」
そういって歩き出した小さな背中は、なかなかの哀愁に充ちていた。
そんな彼の名はハンス・クリスチャン・アンデルセン。世界三大童話作家の一人だ。
自分の人生を嫌っていたからか、召喚された姿は見ての通り幼年期のもの。
眼鏡越しに世間を見澄ます、人間観察の達人である。
そんな少年に忍び寄る、無慈悲で素敵な絵本が一冊。近づくものみな眠らせる、無音の子守歌をどうぞ。
「厄日だ。それ以外に形容できん。肉体労働など死んでもするか。追われるのは締め切りだけで十分だ!」
走るアンデルセン。追う謎本。サーヴァントでよかった。生身だったらもう倒れていた。
影は二つ。足音は一つ。追いかけっこ追いかけっこ!
そんな二つに引き寄せられて、三人目が落ちてくる。
「ん?んんんー?」
器用に首を傾げながら、影は2人の間に着地した。
「こんにちは、ミスター・アンデルセン。困っているようだから、割って入らせてもらうよ」
「は?」
声が耳を通過し、振り返った視界に姿が映る。
金色。
まず目に入ったのはその髪。どこもかしこも灰色の風景を切り裂くように、美しい男が立っている。
「あの本、なんだかご存じ?見た感じ、固有結界かなーって思うんだけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・その考察であっている、というか俺が貴方に指導するようなことがこの世に存在するのか」
「そりゃあるでしょう。だってぼくは作家じゃないもの。本のことは本のプロに聞かなくちゃ」
「・・・・・・・・・・・・ああ、そうか。確かに貴方は執筆者じゃないな。失礼した」
よく回る口先がこの時ばかりはありがたかった。
人間は脳みそが回っていなくても、わりと他人と会話が出来る。助かる。
「自己紹介を忘れていた。ぼくはリンク。大空の勇者と呼ばれています」
雲1つない空の青を詰め込んだ瞳は、魔霧であっても遮れない。
どんなに人生を嫌っても、彼方から差し込む光がある。拭うことの出来ない希望がある。
あの日の童話。絵本。小説。ページのさざ波。
所詮自分は、物語を紡ぐ事だけしか出来ないけれど。だからこそ、誰よりも真摯でありたいと思った。
なによりも誠実に、あの小説を残した執筆者たちのように。
「俺の類推するところでは、こいつは本来、マスターの精神を映し出すサーヴァントだろう」
「なるほど。でも見るかぎりでは
「だからこそ、こいつは人々を襲っているのだろう。眠りに落として夢を見させ、夢の顕現として実体を得ようとしている」
サーヴァントですらない、サーヴァントになりたがっている魔力の塊は、会話の合間も蝶のように浮遊している。
実体の無いものは倒せない。・・・・・・こともないけれど、そこまでするほどではないだろう。
もっと平和的に、勇者的に解決したいものだ。
「名前のない本は探せない。付けてほしいな、大作家さん」
「やめろ!照れるだろう!足が震えてるのがわからんのか!もっとファンには優しくしろ!」
「うん、気を付けるね」
「聞こえるか!おまえに名前を付けてやるぞ。――――
福音のように言葉は紡がれた。
魔本は童歌に。誰かの為の物語に。黒いドレスを身に纏い、少女が世界に現れた。
「・・・・・・ナーサリー・・・・・・ライム・・・・・・」
瞳の色はローズピンク。今は困惑したように揺れている。
「いいえ、ちがうわ。それは名前じゃない。名前は、
「ん? おや?」
「ありす、どこ?ここには・・・・・・ありすがいない・・・・・・」
変身するわ、変身するの。
私は貴方、貴方は私。
「ねえ、お兄ちゃんたち。ひとりぼっちの
「ふーむ、これは・・・」
「・・・・・・お前にマスターはいない。いや、正しくは、この時代にはいないのだろうな。・・・・・・まさか、名前のない本をここまで愛した
「幸福だね。・・・こんにちは、迷い子の君。1つ提案があるのだけど、聞いてくれる?」
「なにかしら、お空の騎士様。誰よりも勇敢なあなた」
膝を曲げて、視線を合わせる。少女の瞳を覗き込んだ。
「ありすはきっと空にいるよ。ぼくで良ければ案内しよう」
「・・・・・・本当に?」
「うん、約束しよう。でもロフトバードが空に飛び上がるには、まずこの霧を晴らさなくちゃ。君が手伝ってくれれば、きっとすぐに終わると思うんだ」
「・・・わかったわ。約束よ、大空の勇者様。幸福の紅い鳥で、私をありすのところに連れて行ってね」
小さな淑女、お手をどうぞ。少女はようやく笑みを零した。
「・・・・・・見事だな」
「光栄です。先生も一緒に行きませんか?」
「一も二もなくそうさせてもらおう。あとサインも貰えるか?それといくつか質問があるのだが貴方もこの特異点に呼ばれて来たのか?他の勇者達も英霊化しているのか?ハイリア関係者は?宝具は何だ?マスターソードは持っているのか?剣の精霊は?」
「絵に描いたようなマシンガントーク」
ぴいちくぱあちく囀って。影が3つ、魔霧の中に消えていった。
ページを開いて、こんにちは!
嘘みたいな真実のスープ。パンプキン味の優しいスープ。貴方のために作りましょう!
アンデルセンもナーサリーも難しすぎて泣いてる。