勇者リンクS’の人理修復配信RTA   作:はしばみ ざくろ

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もう4月なんですか?勘弁してください


レディメイド

「スコットランドヤードは残念だった。旅を続けていれば、こんな出来事もあるでしょう。君たちが責任を感じすぎることはないよ」

「・・・うん」

「Pに逃げられたのはムカつくが、相手の戦力が削れただけよしとするか」

 

濃い、濃い血の匂いがする警察庁は、霧に冷やされて温度を無くしていく。

分厚い霧の向こうには、きっと夜空が広がっているのだろう。星も照らしてくれない帰路を、四人は歩いて進む。

 

 

マシュ、元気ないなぁ。ぼくが触れても大丈夫かしら

 

 

○騎士 その前にモードレッドが爆発しそうだな。気難しい子だ

○奏者のお兄さん まあ・・・簡単な子ではないよね

 

 

「おいマシュ。なに辛気くせぇ顔してやがる。こっちの気分まで落ちるだろーが」

「・・・すみません、モードレッドさん」

「どうしたのマシュ。つらい?」

 

歩き始めて数分も経たずに、マシュの暗い雰囲気を感じ取ったモードレッドが詰め寄る。

マシュが沈んだ声で謝罪を返すと、さらに苛立ったように舌打ちをした。

 

「オレが何かしたみてーだろ!うじうじしやがって」

「モードレッドが怒ってどうするの。マシュ、私にも話せないこと?」

「いえ、先輩。そんなことは。・・・・・・あの、わたし」

「うん」

 

今にも導火線に火が付きそうなモードレッドを、立香が二人の間に割り込むことで抑える。

マシュは二人の顔を交互に見て、ゆっくりと口を開いた。

 

「先ほどの戦いで、先輩のことを守りきれなくて、すみません・・・・・・」

「・・・確かにキャスターがフォローに入らなかったら、コイツやばかったな」

「え、でも、・・・んん」

「立香。こちらにおいで。二人で話させてあげよう」

 

立香が返答に困ったのを見て、キャスターが声を掛けた。

少女は呼ばれた方に顔を向けて、迷うような瞳を見せる。それでも手招きすれば、側に寄ってきた。

 

「デミとはいえサーヴァントだろ。こんなんでこの先マスターを守りきれんのか?」

「・・・っ」

「その盾構えろ。鍛え直してやるよ」

 

言うが早いか、剣が唸る。

反射的に盾で受け止めて、衝撃を体で散らした。

 

「生意気にもオレの初撃を受けやがったか!ようやくらしい使い方をしやがったな!」

「モードレッドさん・・・!」

「戦え!強くなれ!死んでからじゃ遅ぇーぞ!!人間の命は1つしかねぇんだ!」

「――――――」

「お前は立香のサーヴァントなんだろ?なら命がけで守りやがれ!その盾を持っておいて、守れませんでしたは通用しねぇぞ!!」

 

ちりっと灯った炎は悔しさ?まだ死んでない瞳が燃える。

噛み切れない後悔なぞ捨て置けよ。お前ならきっと出来るから。

 

「・・・マシュ!頑張れ!」

 

先輩(マスター)の声が鼓膜を揺らす。心を振るわせる。この人を失いたくない――――――。

 

「・・・はい!マシュ・キリエライト、戦闘を開始します!」

 

 

○災厄ハンター 熱い展開だな・・・

 

 

「それでいい。行くぜ盾ヤロウ!仲間を守るときは限界より常に一歩前に出る、だ!その宝具を使うってんなら気合いを入れろ!先輩サーヴァントとして、徹底的に鍛えてやる!」

 

 

○ウルフ 青春じゃねぇか・・・

 

 

魔力放出で加速する太刀筋。今までに戦ってきたどの剣士とも違う。

あえて近いものを上げるとしたら、ジークフリートやパーシヴァルだろうか。しかしその二人は剣(槍)の型が体に染みついている。モードレッドのように乱暴にはなれない。

ひたすら実戦本位の効率的な剣技。蹴るし踏むし投げる。形に囚われない、といえば聞こえはいいが、騎士としての礼節はかなぐり捨てている。

それでも圧倒的に強いから、円卓の騎士であるのだが。

 

「くたばりやがれ!」

「くっ・・・!」

 

ヘクトールに習った守り。ケイローンに教わった動き。ヘラクレスの攻撃よりは受け止められる!

訓練の通りに。トレーニングと同じように。

知らず知らずのうちに少女の中に積み重なっている経験が、困難に立ち向かうたびに発芽する。

鈍い音がぶつかり合う、戦闘音は長く続かず。モードレッドが剣を構えた。

 

「耐えるじゃねぇか。いくぞ盾ヤロウ!蹂躙してやる!」

「はい!宝具、展開します――!」

 

赤雷。魔力が迸る。

誇り、執念、怨念、憎悪、怒り。

モードレッドの全てがこの剣にはある。一言でも二言でも言い表せない激情。

でもそれは、いつかの誰かに受け止められたのだ。

もう顔も思い出せない、気高き獅子よ。お前が探していた勇者の魔法はなかったし、煌めく聖杯も手に入らなかったけど。

この誓いが確かに、お前とオレの戦いの証明。いつか勇者に出会えたら、お前の分もサインを貰っといてやるよ。

 

「我は王に非ず、その後ろを歩む者。彼の王の安らぎの為に、あらゆる敵を駆逐する!我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)!!」

「真名、偽装登録。疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)――――!」

 

かつては、ブリテンを守った城。

かつては、ブリテンを滅ぼした邪剣。

ぶつかり合うのは誇りと意地。どちらも引かぬ。諦めぬ。

――――しかし終わりはやって来る。モードレッドの宝具は持続力ではなく、爆発力の宝具である。

赤雷は収束し、突き刺すような殺意が収まる。どれほど膨大な魔力の奔流であっても、白亜の盾は揺らぎもしなかった。

 

「はあ・・・・・・ぁ、っ・・・・・・!」

 

リンクの後ろに庇われていた立香は、いつの間にか彼の腕を強く握っていた。

マシュが負けるなんて思っていなかったけど、それでも不安が完全に消えるわけではない。固唾をのんで見守っていた。

 

「せん、ぱ、い――――良かった。見ていてくれました、か・・・・・・?」

「うん・・・!見てたよ、マシュ・・・!」

「戦闘、終了、です――わたし、ちゃんとモードレッドさんの剣を、受け切れて――――」

 

呼吸が荒くて、でも、晴れ晴れとした顔の少女がそこに居る。

管制室ではパーシヴァルが目頭を押さえていた。色々と堪えきれなかったらしい。

 

「で、どうだマシュ。その宝具の使い方、少しは分かったか?」

「はい・・・ありがとう・・・ございます・・・。なにか、こう――心の枷がひとつ、外れた気がします。クー・フーリンさんの魔術以来の、スパルタでした・・・」

 

 

良かったねぇ・・・・・・

 

 

○うさぎちゃん(光) もうエンドロールが流れそう

○りっちゃん いや泣く・・・

 

 

「ったく。他人に剣を教えるなんてオレの柄じゃねぇぞ」

 

照れ隠しなのか、ぷいと顔を背けてさっさと歩き出す。

その後を追いながら、立香がマシュの元に駆け寄る。管制室ではなぜかネロとティーチがもらい泣きをしていた。感動したらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カップからふわりと湯気が立つ。窓の外が魔霧に満たされていても、時計の針は止まらない。

長針と短針が文字盤を泳ぐのを、リンクは頬杖を突いて見守った。

 

「勇者様はお眠かしら」

「どちらかというと、お暇かな。こんなことを言ったら、怒られてしまうかもしれないけど」

「そんなつまらんことをいう奴がこの部屋にいるものか。・・・というか、お前の話はどれもこれも面白いな。いや分かってはいた。分かってはいたんだ」

「ペンがずっと動いてるね」

「このオレがだぞ!?自分で自分が信じられん!締め切りもないのに!自主的に文字を紡いでいる!」

 

膝の上に乗せたナーサリーの髪を梳きながら、リンクは欠伸を噛み殺す。

立香達が仮眠を取っている間、リンクはアンデルセンのインタビューを受けていた。創作意欲が大いに刺激された大作家は、先ほどからイキイキと手を動かしている。

 

「この原稿は必ず座に持ち帰るぞ。それくらいの報酬はあって然るべきだ」

「書き終わったらぼくも読んでいい?」

「私も読みたいわ!アンデルセン版“ゼルダの伝説”なんて、きっと雲雀も飛び起きるわ!」

 

ナーサリーとリンクがそう言うと、アンデルセンはまんざらでもなさそうな顔をした。

 

「まあもし書き終わったのならば。どうしてもと言うのなら、読ませてやらんこともない」

「うん。頑張ってね先生」

「――――――なんだよフラン。そんなに引っぱんなって」

 

扉の向こうから話し声。

壁に耳も障子に目もないが、なんとなくこの後の出来事が予想できて、リンクはナーサリーを抱えて座り直す。

 

「ウゥー」

「あん?」

「こんばんは、モードレッド」

 

開いた扉の向こうに鎮座する、うつくしい男。

手を引いてくれたフランの純白のドレスが、視界の端できらきらと光った。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふぇっ?」

 

フランがモードレッドをリンクの前に連れてくる。

リンクが彼女と出会った当初は、背中からずっと出てこなかったのに。

今、ぐいぐいと遠慮無くモードレッドを引っ張る姿は、世話焼きの姉のようだ。

記憶の底にもないのに、生前だから霊基に刻まれてもいないのに。それでも心は反応している。――――いい傾向だ。きっと。

 

 

○小さきもの モードレッドが動かなくなっちゃったよ

○守銭奴 カチコチに固まってしまったよ

 

 

ぼくの・・・せいか・・・?ごめんね有名人で(´・ω・`)

 

 

○騎士 ポジティヴだった

 

 

「突然現れた正体不明のキャスターの正体は、何とぼくでしたー!大空の勇者のリンクです。よろしくね」

 

生前はただの知識の1つとしてしか履修しなかった、伝説の物語。

サーヴァントになってから改めて読み直した、勇者の人生。

それが今、目の前に居た。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・か、」

「か?」

「かっっっっけー・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ウー!」

 

モードレッドは、輝く瞳でそう呟いた。

ヒーローに憧れる子供のように。

憧れのヒーローが助けに来てくれた大人のように。

体が震えるのは歓喜か?武者震いか?

空気を読んでぴょんと膝から降りたナーサリーが、優しい目で唇を綻ばせた。

 

「ゆ、勇者リンク・・・」

「うん」

「あの・・・オレ、・・・・・・オレと・・・」

「ゆっくりでいいよ」

「っ、手合わせしてくれ!!」

「ほほう?」

 

 

○奏者のお兄さん ほほう?

○ウルフ 違うパターンきたな

 

 

「オレ・・・思ってたんだ。選定の剣を抜けば、強くなれるんだって。王になれるんだ、って。でも・・・それは違ったんだ」

 

人々を守りたいから、王になった父(アーサー)。

大切な人の力になりたくて、剣を抜いた青年(リンク)。

剣を抜こうとする少女を讃える者は誰もいない。居るのはただ、未来を知る魔術師だけ。

剣を抜こうとする青年を讃える者は誰もいない。居るのはただ、女神に使わされた精霊だけ。

なのにどうして、結末が違う。

 

「オレは王になりたかったんじゃない。オレは父の孤独を癒やしたかった。王であるが故にあの人が捨てたものを抱えていたかっただけだ」

 

あまりに寂しい伝説の幕開け(はじまり)だった。

あまりに静かな伝説の幕開け(はじまり)だった。

曇り空にひっそりと輝く三日月のようだった。

偉大な大空だった。大地を、水底を、世界を駆ける、緑の勇者。

 

「父に対して怨みがない――と言えば嘘になるけど。でも、今度こそ、違う関わり方ができるんじゃねえかって思うんだ。その・・・・・・、サーヴァントの身で何を、と思うかもしれねぇけど」

 

王であるが故に、背負い、捨てた父(アーサー)。

勇者で無くとも、背負い、拾い集めていただろう青年(リンク)。

きっと父も無意識のうちに諦めていた。自分は勇者ではないのだから。こんな余分は(・・・・・・)許されないと。

 

「父はアンタによく似ている。けど、絶対的に違うんだ。父には我欲がなくて、アンタにはある。でも父だってヒトなんだから。ただのヒトなんだから。欲してもいいって、他人のためじゃなく自分の為に、生きてもいいんだって」

 

未練と弁解。惨めで哀れだ。

でも言いたいんだ。やっと気づけたんだから。

 

「もうオレもアンタもサーヴァントなんだから、好きに生きていいんだって、言いたいんだ。・・・・・・でも、オレの言葉なんて、きっと父は聞いたりしない。・・・・・・オレは叛逆の騎士だから」

「・・・・・・」

「だったらせめて強くなりたい。父の敵を全て倒すために。父が苦しむ前に、その原因を絶てるように。少しでも、安らぎの時間が多くなるように。――――だから!」

 

緑色の目をしたホムンクルスは、今、父(人)の心を守るために在る。

 

「オレを鍛えてくれ!アンタに授かった経験なら、きっと座に戻っても消えない!」

「――――――言ったな?騎士モードレッド。ぼくはこうみえて厳しいよ」

「! あ・・・りがとう、ございます!」

 

 

○騎士 泣くが?

○厄災ハンター (´;ω;`)

○海の男 こんなん卑怯やん

 

 

アンデルセンのペンのスピードが増し、ナーサリーとフランが顔を見合わせて笑う。

どこかで小夜啼鳥が愛を歌う、透き通った夜だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔霧の下で、空を見上げる人がいる。

次元を超えて、事象を超えて、赤い橋を超えて。

その騎士王は辿り着いた。

目深くかぶったフードの下で、きんいろが輝いている。

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