『・・・・・・ん・・・・・・マイクがノイズを拾ってるみたいだ。周囲に敵性反応多数』
『さっきよりもアパルトメント周辺をうろつく数が増えているわね・・・。通信に障害が出るほど魔力が歪んでいるわ』
駆動音が入り乱れては、午後の閑寂を引き裂いていく。
外の喧騒に視線を向けた、リンクの瞳が窓に映り込む。
「この駆動音は――ヘルタースケルターの集団と思われます」
「屋内には乗り込んで来ないだろうけど、騒がしいね。どうにか元を絶てないのかな」
『――――あ!そうだ。そうだったよ!ヘルタースケルターの解析が進んでたんだった!』
はっと思い出したように声を上げたロマニに、マシュとモードレッドの胡乱な目が向けられる。
同じ軟弱男でもジキルとはタイプが違ぇし、こいつはこいつで何か癪に触るな・・・。という目を隠しもしないモードレッドに、リンクがおやおやと苦笑を漏らした。
「ドクター、そういうことはもっと早く報告してください」
『ご、ごめんね・・・。あれはやはりボクらには不明の技術で作られた機械だ。恐らくは、魔力で作られた機械――のはずだ』
「それは・・・魔術と科学を併せて作られた機械、ということかい?」
『ちょっと違うな。魔力で作られてはいるが、あれは機械なんだ』
ジキルの相槌に、ロマニがデータを見ながら答える。
『技術体系は相変わらず訳のわからないものだけど、構造そのものは機械。でも、魔力で形成されている』
「つまり・・・・・・ええと・・・・・・」
「宝具みたいなもの?」
『正解!よくわかったね!』
褒められた立香が嬉しそうな顔をした。
話をきいたジキルが、納得した顔で頷いている。
「つまり、サーヴァントの宝具のように魔力で形成された武装である、ということですね」
『うん。なまじ魔力のある機械なものだから、ボクも魔術によるゴーレムとの近似を探しすぎたよ』
魔力に依って編み上げられた、力あるかたちのモノ。
『剣の宝具が「鋭い刃」である代わりに、ヘルタースケルターは「戦う機械」の宝具なんだ。自律稼働しているように見えるけど、実際は、宝具の所有者あたりが動かしているようだ』
言わば、リモコンで動くロボット軍団。
リモコン相当の何かを壊せば全機が停止するだろう。
「では、余程の例外を除けば、宝具の所有者であるサーヴァントを叩けば――」
「連中は消え失せる。何だ、一気に話が見えてきたな」
「それでドクター、宝具の所有サーヴァントはどこに?」
『・・・・・・わかりません』
なんとも言えない空気が漂って、沈黙。
口火を切ったのはジキルだった。
「・・・・・・そうだよね。うん、それはそうだ」
『・・・ごめんなさい。ダ・ヴィンチが忙しい中解析を手伝ってくれて、ようやくここまでわかったというか・・・』
「・・・カルデアって人手が足りてないのかい?」
「一応サーヴァントとかも居るんだけど・・・暇ではなさそうというか・・・・・・」
『レイシフトの最中でもやることが山積みなの。申し訳ないわ、ミスター』
そうこう言っている最中に、扉の向こうからひょっこりと顔を出して聞き耳を立てている少女が二人。
一人はそのまま部屋に入ってきた。
「・・・・・・ゥ・・・・・・。・・・ゥ、ゥ、ゥゥ・・・」
「やるべきことは決まった。うん。だが、その目的地がどこなのか分からん、か」
「・・・ゥ・・・」
「どうしたもんか。こう、一発で、魔力なりを辿ったりできれば・・・・・・」
「
リンクが少女を手招きして近くに呼ぶ。
立香も気づいて顔を向けた。
『こと科学と魔術に長けたダ・ヴィンチちゃんがそう例えてたから、間違いないと思うんだけどね』
「でも、魔霧の影響がある上に、魔力の痕跡を辿るなんて繊細な芸当をこなすのは・・・・・・」
『少なくともボクには無理だ。カルデアの設備でも流石に難しい」
「僕もお手上げだ。そもそも、本物の魔術師じゃないからね。僕」
○災厄ハンター 時先輩できます?
○奏者のお兄さん うん
○災厄ハンター スゲー
「・・・ゥ・・・」
「フランが何か・・・。言いたげにしてるけど・・・」
「フランさん?どうかしましたか?」
リンクの座るソファーの背にしがみついていたフランが、立香とマシュに言われて前に出てくる。
「何だ、隣の部屋の作家英霊どもから逃げてきたか?あいつらうるさいしな、気持ちはわかるぞ」
「・・・ゥ・・・。ゥ・・・ゥゥ・・・」
「ん?オレたちに言いたいことでもあるのか?それならはっきり言ってみろ」
「・・・ゥ」
長い前髪が表情を隠していても、モードレッドにはしかと伝わっているようだ。
ちらりと振り返った先にいるリンクにも優しく促され、口を開く。
「ゥ、ゥゥ・・・・・・ァ・・・。・・・ァ・・・。・・・ァ、ゥ・・・ゥゥ、ゥ・・・。・・・ァ、ァ、ァ・・・・・・」
「な・・・それ、本当か!?」
「驚きました。フランさんに、まさか、そんなことができるなんて・・・」
「?」
『?』
ジェスチャーと手話を混ぜたようなフランの言葉に、モードレッドとマシュが驚いた声を上げる。
反対にジキルとロマニは大きな疑問符を浮かべた。オルガマリーもちょっとあやしい。
『ええと、彼女は何て?』
「わかるらしいぞ、こいつ。ヘルタースケルターのリモコンの場所」
『え!?』
「ほ、本当かい?」
「よし。それなら早速出発するぞ!準備しろ!」
「・・・・・・しっかし、慣れたとはいえこうも視界が悪いとイライラするぜ」
「・・・ゥ・・・」
今日は細雨が振っている。
雨でしっとりと濡れた前髪をかき上げて、リンクは静かに周りを見渡した。
「なあ立香。おまえんとこの宮廷魔術師・・・ドクター・マロンだっけ?あいつに遠見の水晶とか作ってもらえないのか?マーリンだったら一発なんだけどなぁ・・・・・・」
「ロマン!ロマンだからねボク!それとマーリンなんかと比べないでほしい!あっちは究極の引きこもり魔法使い、ボクは現代のお医者さんなんだから!」
「フォウ!フォウ!」
○災厄ハンター 初代様、どうしました?
「まーりん?」
「ああ!?テメェ、魔術師のクセに知らないのか!?アーサー王の後見人にして円卓の仕掛け人。人間と夢魔のハーフの大魔術師なんだが・・・あいつ、もうメジャーじゃないのか?ハハ!だとしたら超愉快だな!ザマアミロ!」
「マーリンは世界でも有数のキングメーカーだよ。アーサー王に岩の剣を抜かせたのも彼だ」
○奏者のお兄さん そのヒト千里眼でずっと見てますよ
○ウルフ ハ!?引く
○災厄ハンター うわ変態じゃん
○フォースを信じろ 暇なの?
「その魔術の腕前は大したものだったらしいけど、最後には女性関係のトラブルで世界の果てに幽閉される」
「ああ。死ぬ事も出る事もできず、今でも
○奏者のお兄さん なので世界が終わるまで死ねないし出れないから大目に見てやって
○フォースを信じろ 暇なんだね
「まあどうでもいいけどな、アイツなんて。ロンドンの異変に駆けつけられない軟弱者なんだから」
「・・・それより、立香、いいの?マシュの元気がなさそうだけど」
「えっ?」
「フォウ・・・」
現実ではずっと黙っていたリンクが口を開く。
雨から避難するために肩に跳び乗ってきたフォウくんを、胸元にしまい込んでやった。
「元気ないぞ、マシュ。また悩み事?」
「・・・はい。
「フォウ?」
「・・・宝具の話です。サーヴァントにとって宝具こそ本当の戦力。今まで多くの宝具を見てきました。どれも英雄の名に恥じない奇跡だったと思います。なのに、わたしは――。まだ、その宝具を使えません。」
雨粒で濡れたまつげが、泣いているように見えた。
「・・・マシュは真面目だね。でも、それはマシュのせいではないと思うよ」
「先輩・・・。いえ、それでも、宝具は必要だと思うんです・・・!」
ぽつり。
また水滴が頬に落ちる。
「・・・そういうコトか。ヘルタースケルターが宝具だって聞いて、落ち込んでたのか。確かに、宝具の使えないサーヴァントなんざサーヴァントじゃねぇ。どんなに弱い宝具であろうと、宝具の在り方自体がその英雄のいた証、誇りみたいなもんだからな」
「・・・・・・」
「でも、お前は違うだろマシュ。おまえはおまえだ。盾ヤロウとは考え方も誇りも違う」
霧にけぶる街は、雨に体温を奪われていく。
ドレスが濡れることに不満げなフランを、リンクが小声であやしている。
「たしかにおまえはその宝具を使いこなしていない。オレが見たところ、三分の一ってところだ。残りの三分の二は眠っている。あるいは、おまえがおまえであるかぎり百にはならないかもしれない」
「やはり・・・そうなのですね。デミである部分・・・人間としてのわたしが、先輩の足を引っ張って・・・・・・」
「バーカ。そんなワケあるか。話は最後まで聞けよ」
にやりと、クラッカーを鳴らす直前の子供のようにモードレッドが笑った。
「おまえは宝具を最大限に発揮できていない。でもな――おまえ、元の英霊より強いぞ、きっと」
「え・・・・・・?元の英霊って・・・。わたしに融合してくれた英霊さんの事、ですか?」
「ああ、そいつよりメチャクチャ強い。オレが言うんだから間違いない。宝具で負けているだけで、他の部分は負けていない。なあ、そうだよな立香?」
「うん。マシュは最高のパートナーだよ!」
そう笑うマスターは、霧雨の下でも綺麗だった。
マシュの心に、また情景が刻まれる。
「・・・・・・っ。そ、そう、なのでしょうか。・・・・・・・・・・・・はい。そうであれば、元気が出ます、わたし」
「ほら見ろ。そもそもサーヴァントの状態管理はマスターの仕事だ。おまえが宝具を発揮できるかは、おまえじゃなくて立香の問題なんだよ」
「マシュ。私も頑張るからね。一緒に一人前になろうね」
「――――はい!」
喜びの感情に反応したのか、フォウくんがふすふすと鼻を動かしている。
水たまりを越えた足音は、踊っているかのように軽快だった。
「・・・ゥ・・・」
「あっち?みんな、ここから西の方向みたいだよ」
「西というと・・・ウェストミンスターエリアでしょうか。国会議事堂があるエリアです」
やがてフランが立ち止まり、西の方向を指さした。
進行方向を切り替えて、少女達は進む。
「んじゃま、さっさと行って叩くとするか。あー。で。その前に、だ」
「はい?」
「ひとつ言っておくことがある。今回、オレはフランを守るので手が塞がっちまう。こいつはサーヴァントじゃないからな。人造人間ってのがどこまで保つのかも不明だし」
「確かに・・・」
○海の男 フランは可愛いねぇ。それに比べファントム!!!!!
○銀河鉄道123 塔の守護者のくせにさぁ・・・・・・
○守銭奴 ファントムにも色々あるから・・・
「だから、こいつはオレが守る。・・・変な縁だ。まったく」
「立香たちは、ぼくがフォローに入るから大丈夫だよ。フランをよろしくね、モードレッド」
「! おう!」
○フォースを信じろ 仕事はやーい
○奏者のお兄さん めちゃくちゃ高性能なのが納品されてる・・・・・・
○守銭奴 英霊の座に時間の概念が無いことを有効活用していますね
雨はまだ止まず。
されど行く末に光あり。