雑然とした地下通路。閉所に響く、いかづちの轟き。
地上へ向かって歩みを進めていたニコラ・テスラは、行く先を阻むように立つ人影を認めて足を止めた。
「・・・・・・うーん。これは」
「おや、そこに居るのはサーヴァントかな?私の眼前に立ち塞がるということは、少なくとも味方ではあるまい。大変申し訳ないが、突破させていただこう」
金色の佳人が、難しい顔をして首を傾げた。
構わず魔霧が雷を帯びる。腹の底を重く響かせる音が、敵対者を威嚇した。
人間なら優に致死するほどの雷電が、周囲に爆発的に広がっていく。
「見たまえ!これが魔霧の活性化というものだ。サーヴァントの魔力さえ際限なく吸い込もう!」
「なるほど。なるほど・・・。―――宝具」
宝具が来る!
テスラは警戒レベルを上げて腕を構えた。武器を持っていないということはキャスターなのかもしれない。いや、アサシンの可能性もある。
「さあ、冒険を始めよう。約束はこの魂に。雲海の向こう、閉ざされた大地。翼を広げて飛び立つために、ぼくらは勇気を示すでしょう。
空がうまれた。
否、空が現れた?
蒼穹がテスラを見下ろして、服を翻す天つ風。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
魔の手の及ばぬ遠い雲海の彼方、が顕現する。
都市を支えていた聖剣の所有者であり、『スカイロフトの守護騎士』と呼ばれる大空のリンクが使える結界宝具だ。
見たことないけど知っている。誰だってこの場所を知っている。天空都市・スカイロフト!
見渡せば目に飛び込む色とりどりの風景。味気ない文字ではなく、語られる小説の一編でもなく、
「ここはぼくの生きた世界。外部とは遮断されているから、大人しくしてくれると嬉しいな」
耳をくすぐる麗しい声。考える前に振り返った。佳人の魔法は解けている。
あの空と同じ、青い瞳。風に揺れる緑の衣。背中に背負う退魔の剣・・・!
「ちょっとぼくと話・・・うわ!?」
余りにも俊敏な動きだった。
テスラがしゅばっと近づいてきて肩を掴む。
「えっ。・・・あの・・・」
ぺたぺたぺたぺた。
全身を検分するように触れられる。
「・・・テスラくんはどうしたのかな?」
「・・・美しい」
「ありがとう?」
頬を包んでじぃ・・・と眺められた。背が高いな~。
これでちょっとでも下心が出ていたら腕をへし折っていたが、どうもそういう感じではなさそうだ。
研究者が資料を調べるような、他人の発明品を臨検しているような、異様な気迫を感じる。
「これが・・・最も旧き神話の勇者か。世界を繋ぐ星の英雄。人に寄り添い戦う者。なるほど、聞きしに勝る偉大さだ」
「落ち着いた?」
「嗚呼・・・。申し訳ない、取り乱してしまった。・・・・・・ハッ!!ちょっと待て、これは・・・
冷静になったと思ったら大仰に肩を跳ねさせ、ふらふらと膝を着いた。だんだんオモロがはみ出てきている。
○銀河鉄道123 碩学タイプはこうなるのか
○いーくん パラケルススを記憶から消すな
○銀河鉄道123 パラPは魔術師でもあるから・・・
「ニコラ・テスラ。確かに君の雷は強力だ。その魔霧もね。でも、ぼくなら完封できる。知っているだろう?」
「・・・! ハイリアの盾に、マスターソードか。確かに雷は貴方に効かない」
「まあそれを差し引いても、彼の恐ろしいところは魔族の王たる怪力と剣術だったけどね」
リンクはベンチに腰掛けて一息つく。隣を指でトントンと叩けば、首をブンブンと振って拒否された。ダメなの?
「座っていいよ?」
「雷霆を御した偉大なる君よ。我が身は大空に届いただろうか」
「ふむ?」
「かつて雷は神の領分であった。しかし私が、地上に顕した!この天才たる私が!」
「存じているとも。きみこそ偉大だ。雷電博士」
新たな神話を以て、新時代、新文明を築いたテスラといえど、尊敬するものはある。畏怖の念をいだく者はいる。
いかづちの雨降る天空で、神たる邪悪に立ち向かった勇者。人は、神に勝てるのだ。彼が手にした雷電の、その輝きたるや!
「天も地も気に食わないが、貴方は紛うことなき人の英雄。旧き時代と神話に別れを告げ、大地に降りた貴方達に私は敬意を抱こう」
「光栄だ。そしてきみもまた、神話から巣立った星の開拓者であろう。その華麗なる功績、たしかに
・・・届いたのか。
ならば、ならば、やはり私は間違っていなかった!交流こそが素晴らしい!
夢破れて、ひっそりと事切れたあの最後でさえ。今日この日の祝福のためだったのだ!
「誇りなさい。きみの技術は、遙か未来まで生きている」
「貴方こそ・・・・・・。貴方と、貴方の魂が始めた物語は、遙か未来にまで勇気を届けた。お会いできて光栄だ。大空の勇者よ」
固く握手が交わされる。
いつの間にか狂化はすっ飛んでいた。狂っている場合ではないので。
「それで、どこまで話したっけ。・・・そう、だからきみを力尽くでどうこうするのは、すこしハンデが大きすぎるかと思ってね」
「ふむ。確かに私は生まれながらの戦士ではなく。あくまで天才であり、雷電である」
「不本意な狂気に浸されていても・・・、あれ?解けてるな?・・・きみは人類を愛する英霊だろう。だから、取引をしよう」
「取引?」
ばさり、ばさりと翼の音。上空から落ちる大きな影。
天を見上げれば、目に眩しい紅い羽根。思わずテスラは呆然とした。神の鳥・・・!
「ロフトバード!!」
「おっと待て待てストップストップ。お触り禁止です。食いちぎられるよ」
『不敬な人間だな。私に触れて良いのは女神とリンクだけだ。弁えよ』
○災厄ハンター とり!
○ウルフ セコムじゃん
○銀河鉄道123 赤福
○うさぎちゃん(光) とりっぴい
○りっちゃん べにまる
○騎士 赤福!?!?!?
ロフトバードが口を開けば、余計に瞳を好奇心に輝かせた。らんらん。
無邪気な子供のようにそわそわとしているテスラに、あのリアクションは興奮してただけか・・・とリンクは苦笑した。尊大で自信家な性格なため、感動が追いついてくるまでに時間がかかっていたようだ。
愛鳥を撫でてやりながら、話を続ける。
「きみを倒すのは、カルデアのマスターが相応しい。でも、その魔霧は少し邪魔だな。このアゾット剣で吸収しておきたい。もちろんタダとは言わないさ」
「・・・貴方が?私に・・・?施しを・・・?」
「交渉!交渉だからね!脳がバグった顔しないで!」
発言が飲み込めなくて挙動不審になってしまった。しかしテスラは天才なのですぐに立ち直る。
「きみは碩学。叡智を誇るもの。ならば、シーカーストーンに興味はない?」
「・・・・・・・・・シーカー・・・ストーン・・・・・・だと」
「見せてあげるから、魔霧を弾かせてほしい」
「それで・・・足りるのですか・・・・・・?あらゆる碩学が夢を見た伝説の遺産・・・。超超超高性能な叡智の端末・・・。本当に・・・?」
顔を覆ってしまった。まだ出してもいないのに。
やはりこの手の英霊にはアイテム系で攻めるのが効くようだ。心のメモに書いておく。
「ご指名ありがとうございまーす☆ 息吹の勇者です♡」
「ウワーーーーーーッ!!!!」
「大きな声が出たね」
○騎士 大地、赤福って何だ
○銀河鉄道123 赤くてふくふくしてるから
○いーくん この流れで伊勢名物の方じゃないことある?
「息吹の勇者・・・。知、勇、力すべてを携えた英傑のリーダーにして、伝説を幕引いた末代の勇者・・・!」
「その通り!!俺は凄い!!もっと褒めてくれていいぞ」
「英傑の服・・・!」
「いいだろう。お気に入りだ」
むっふん、と胸を張れば膝に力の入らなくなったテスラが完全に立てなくなった。
太陽の下でのびのび育ったタンポポのような、輝く髪。吸い込まれそうな瑠璃の瞳。緑ではなく、冴えた青色の戦闘服。
トライフォースを巡る長い因果を終わらせ、姫と英傑たちと一緒に時の女神から神託を受け「ゼルダの伝説」という小説を書き上げた語り部であり作家。古代シーカー族の遺産であるシーカーストーンと神獣「マスターバイク零式」の所有者だ。
「シーカーストーンが見たいって?ほら、初代様が言うから特別だぞ」
「アワワワワ」
「この画面がマップ。こっちが図鑑。シーカーアイテム」
「ねえテスラくん泣いているけど大丈夫??」
「う゛ぅ・・・ひっ、く・・・・・・。なんという叡智・・・。これが・・・電気を使わずに動いているだと・・・?」
嗚咽を漏らしながらも、息吹が操作するのをしっかりガン見している。テスラは根っからの発明家であった。
「触ってもいいけど、バクダンには気をつけるんだぞ」
「エッ!?!?!?いいいいのだろうか!?いくら私が人類史上最高峰の天才であったとしても!!こんな幸運が許されるのか!?!?」
「おもしれー男だな。俺がいいって言ってるんだからいいの」
震える手でシーカーストーンを受け取り、覚束ない手つきで操作し出す。
ずっと欲しかった玩具を与えられた子供のように、喜悦を隠せない顔で。
息吹の時代ですらオーパーツとして扱われていた、魔術と技術を詰め込まれた情報収集器。魔術に関心のない科学者ですら、これは
「・・・夢のようだ。これは、マスターバイク零式・・・?なんと荘厳な佇まい。神獣の王よ・・・!」
「(あれって神獣の王なの?)」
「(なんかそういうことになってます)」
導師ミィズ・キョシアから伝授された、最高傑作の神獣。
バイク・自転車の源流であり、動物を使用しない移動方法としては革命的な存在だった。息吹もしょっちゅう乗り回している。
「大空よ、差し支えなければ聞いて欲しいのだが・・・」
「ん?」
「クローショットやビートルを見せてもらうことは可能だろうか・・・?あれらも確か、古代の遺物、神器だろう。今後の為にも、是非・・・・・・」
「いいよ~」
濃い魔霧によって活性化した魔本たち。吸い過ぎて成長したホムンクルス。
行く手を阻む敵を捌きながら、立香たちもなんとか地上に辿り着いた。
見上げる空は泥のように黒く、気分が沈むほど汚れている。
「――マスター、前方に確認。ニコラ・テスラとキャスターさんです!」
「来たか!未来へ手を伸ばす希望の勇者たち」
「よかった。みんな無事だったんだね」
バッキンガム宮殿の上空へ続く
「邪魔そうな魔霧は剥がしておいたから、後はよろしく。ぼくは流石に疲れた・・・」
キャスターの持つアゾット剣が、漏れ出る魔力で帯電している。
どうやらテスラの防御を吸収してくれたようだ。ありがたく交代する。
「よき技を見させて頂いた。美しきキャスターよ。だが、哀しいかな。活性魔霧がなくとも私の操る雷電はあまりに強力だ」
力を削がれたというのに、まったく焦る様子を見せない。
むしろ、妙にやる気に充ちているような・・・?
「何故なら、私は天才だ。何故なら、私は雷電だ。神とは――。神とは何だ。そう、雷だ」
終焉の者。主神ゼウス。
「見るがいい。私が地上へ導いたこの輝きこそ、大いなる力そのものだ!新たなる電気文明、消費文明を導きしエネルギー!旧き時代と神話に決定的な別れを告げる、我が雷電!其は新たなる神話!其は人類にもたらされた
○フォースを信じろ やる気まんまんマン
「ご覧に入れよう!――人類神話・雷電降臨!」
テスラの右手に電磁気が発生した。
宝具の電磁操作能力によって電磁投射をおこなうのが、テスラの戦闘スタイルだ。この遠距離攻撃の存在が、本来は弓や射撃武器を用いる英霊ではないテスラをアーチャーたらしめている。
突き穿つ槍の如く、電磁気が敵対者を射貫かんと放たれた。アーサーとモードレッドは飛び退き、立香はマシュに守られる。
「オラッ!」
「はあっ!」
クラレントが唸り、エスクカリバーが追撃せんと迫った。鋭い太刀筋はテスラの展開した防御に阻まれる。
これにも電気が通っているようだ。近づいた瞬間走る、静電気を超えた痛み。下手に身体に触れたら感電するかもしれない。
「っはははは!まさかそこなる少女はモードレッド、そしてアーサー王か。折角だ、地の英霊はすべて砕く!旧時代の神話になど負けはせん!」
手を天に掲げる。放電、篠突くが如く。
音速よりも速く落ちてきた雷電を、モードレッドは
両手に電磁気を纏ったテスラがアーサーに突進する。足を踏ん張って受け止めるが、衝撃で階段の端まで押されてしまう。
「痺れるぞ、耐えてみろ!」
ふわりとテスラが浮き上がった。風を受けて翻るコート。飛び出すマシュの身体は軽く。
全力で放たれた放電は堅牢の盾に阻まれる。ここが地上だったら、地面が抉れているほどの衝撃。
目が眩むほどの光が溢れて、立香は思わず腕で顔を覆った。
「チッ!やりづれえったらありゃしねぇ」
「あの雷を超えないとダメージが入らないようだ。マシュ、行けるかい」
「はい!」
エスクカリバーが魔力を収束した。踏み込みは強く、テスラに接近する。
「いかなる敵も、斬り伏せてみせるとも!」
「何の!こういうのもある!」
テスラの右手から電気の弾が発射された。拳銃よりも大きく、派手な散弾は迫るアーサーを阻む。
「くたばりやがれ!」
「ぬぐっ・・・・・・!」
背後に回っていたモードレッドが赤雷を叩きつけた。テスラの防御が吹き飛ばされるが、この程度で怯みはしない。
「はぁっ!」
「ああ!?てめえっ・・・!」
放電。爆音。うねる稲妻の嵐。
接近していた騎士達を弾き拒む電閃。
「やああっ!」
「! なる、ほど・・・・・・ッ!」
しかしスキルで無敵状態になったマシュの足は止まらない。
身体を劈く雷なんのその。重い盾の一撃がテスラに直撃する。返す刀で二撃目。体勢を崩したテスラが吹き飛んだ。
「ははっ・・・。ふはははははははァ!」
「させません!」
右手に集めた電磁気を振るう腕で投射した。発生するは空気を切り裂く迅雷。
強大な雷の刃はマシュに防がれる。魔力放出で階段を跳び越えてきた騎士達に、敗北を悟った。
「終わりだ」
「赤き竜の
胸を貫く邪剣。霊核を砕く聖剣の閃光。
崩れ落ちるテスラの身体。
「――敵性サーヴァント、撃破しましたっ!」
「残念だったな、ニコラ・テスラ!」
「はは・・・!ははは、はははははははははは・・・・・・!!」
ずっと聞こえていた音が消える。空気を振るわせ続けていた電気が止んだからだ。
リンクの後ろに庇われていた立香は、ほっと息を吐いた。
「いいや、そう残念と言う訳でもなかろうさ!私は紛うことなき星の開拓者なれば!真に、人類と世界の終焉など望むことはないとも。天と地の英霊は未だ以て邪魔ではあるが――――世界の存続は我が雷電文明の存続に他ならない!礼を言おう、新たな神話を望む者ども!」
相変わらず尊大で大仰な振る舞いで、しかし優しい目を浮かべながら、テスラは感謝の意を示した。
「希望の勇者たちよ!我が文明の恩恵を受けし、輝かしき子供たちよ!その道筋に、大いなる雷電の加護があらんことを!」
「――うん。またね、テスラ」
「ああ、また会おう!星見の魔術師よ!――――さらば!」
○銀河鉄道123 最後まで元気いっぱいだったね
○いーくん なんかアイツのこと好きになってきたな・・・
『ニコラ・テスラの消滅を確認。よし、お疲れ様。これで事態は収拾するはずだよ』
「この足場は彼の魔力によって形成されていましたから、じきに存在が不安定になるものと予想されます」
「じゃあさっさと降りるか」
「あとは聖杯を回収するだけかな」
「うん。アングルボダに戻らないと――――」
落雷が緩んだ空気を突き破った。
轟音がロンドンを揺らし、幕引きを拒む。
『!?』
「なんだぁ!?」
「今度は何!?」
○災厄ハンター おやおやおやおや
○りっちゃん もう一回遊べるドン!
○うさぎちゃん(光) 喜ぶカッ!
○海の男 どんちゃんに殺意を抱いたのは初めて