『高密度の魔力反応を確認!バッキンガム宮殿上空です!』
『集積した魔霧が集まって雷雲を形成している・・・!?総員警戒!!』
天を見上げる人々を、冷たい目で見下ろす者がいる。
太陽の輝きを失ったような、鈍い色の金髪。夜闇にただ1つ君臨する、月の如き瞳。
黒き鎧に身を包んだ、その人こそがブリテンの王。
「―――――」
「・・・・・・ッ!!」
「・・・あれは・・・いいえ、彼女は、まさしく・・・・・・アーサー王・・・!」
アルトリア・ペンドラゴン・オルタ。
渦巻く漆黒の長槍を手にし、敵対者を屠らんと殺意を向けた。
『残った魔霧の殆どを吸収しながら現界している!まずいぞ、この魔力量は・・・!』
「・・・なんて、禍々しい魔力」
「魔力・・・感じるの?」
「はい、わかります・・・。魔霧があっても感じ取れるほどの巨大な魔力が・・・」
ニコラ・テスラの時と同じく、盲目的な狂気を感じる。
もっともテスラの時と違って、対話は不可能のようだが。
「どうして・・・今更、貴方は現れるんだ。ロンディニウムを救うのなら、もっと、早くに・・・・・・」
「・・・・・・ロンディニウムを救う為に来たわけではないだろう。あれは嵐。すべてを平等に粉砕する災害」
モードレッドの言葉に返事を返したのはアーサーだった。
魂の同じ他人を見据える目は厳しく、剣を握る手に力が籠もる。
『というかあの槍は・・・まさか・・・、聖槍ロンゴミニアド・・・!』
「世界の表層を繋ぎ止める神造兵器。ある意味、聖剣よりも厄介だ」
「やるしか、ない?」
「ああ、やるしかねぇ。父上に、このオレが、背中なんざ向けられるかよ」
鳴り響く雷鳴に囲まれて、再びの戦闘が始まる。
ランサーの掲げた槍から楔が外されていく。標的を見据えた聖槍は、禍々しい魔力を解放した。
巻き上がるは暴風。うなりを上げるは王の愛馬。最果てにて輝く光の力は、今、すべてを破壊する。
「来るぞ!」
「マシュ!」
「はい!仮想宝具、展開――」
穂先が回転し、風王結界を纏う。極限まで増幅、極大で出力。
すべてを噛み砕け。十三の牙。
「
赤雷を伴って発射された、聖槍の威力は絶大。
「ぐぅ・・・!」
「チッ・・・」
「立香!僕の方へ」
アーサーに手を引かれて懐に仕舞われた。
めちゃくちゃに荒れる髪が攻撃の激しさを表す。踏ん張るマシュの足が徐々に押し返されていく。
あらゆる防御を無視する聖槍は、カルデアの守護障壁すら砕かんと唸る。
「う、うううう、ぐ――――!」
『マシュ!マシュ!頑張って!』
『聖槍の威力が増していく・・・!?マシュ!』
オルガマリーの声が、ロマニの声が、鼓膜を貫く雷の向こうで聞こえる。
マシュは一瞬、世界に自分しか居ないような錯覚に陥った。
「――令呪をもって命ずる」
――――いいえ、いいえ。一人ではない。
あの日からずっと、わたしの魂の側には貴女がいるのです。
「マシュ、私たちを守って!」
「ああああああああーーーーー!!」
牙を折れ。十三番目の盾。
その心が折れぬのなら、その守りも決して崩れぬ。
轟音が耳を劈き、弾けた赤雷がロンドンの空を照らす。静寂は一瞬。
『・・・・・・やった』
「油断するな!まだだ!」
「立香、大丈夫だね」
「うん。ありがとうアーサー」
黒馬が歩みを開始した。ゆっくりと階段を降り、射程圏内まで近づいてくる。
宝具を防がれたというのに、王の瞳は微塵も揺るがない。暴虐をもたらすために槍を構え直した。
「(ナーサリー)」
「(ええ。
けれど、嵐は止むものだから。
傍観していたリンクが呟く。
ひらりと舞い降りたのは小さなクイーン。絵本という名の女王様。
「ナーサリー?」
「ご機嫌よう。
頁は捲られた。
これは貴方が夢見た物語。
これは貴方が目指した物語。
「―――――ぁ」
そう溢したのは誰だろう。
高い高い空が見える。いつの間にか、全員が地面に立っていた。
「ここは、」
『フィローネ地方フィローネの森!!!』
『喧しいぞギルガメッシュ!!』
だそうです。
「繰り返すページのさざ波、押し返す草の栞――全ての童話は、お友達よ」
固有結界そのものがサーヴァントと化したもの、それがナーサリー・ライム。
マスターの心を鏡のように映して、マスターが夢見た形の疑似サーヴァントとなって顕現する。現在はリンクと契約しているが、アンデルセンに名付けられた事によって、彼女はかつてのマスターの姿を取ることを選んだ。
それでも、リンクの心象を映し出して宝具に組み込む事くらいは出来る。
「ブリテンの王様。どうしてその姿を選んだの?」
「・・・・・・・・・・・・」
「わたしはありすが好きだから。ありすのことを覚えているから。貴方はどうして、
完全な聖槍の女神へと転じる直前に、嵐の王として黒き暴虐であることを選択した。
聖槍の女神ではなく、人間アルトリア・ペンドラゴンとして在り続けることを選択したアーサー王。
それはどうして?
ねぇ、覚えてる?
「大人になったから忘れちゃった?世界のすべては明確に、すべての世界は残酷に、貴方の瞳を覚ましたかしら」
「・・・・・・・・・・・・」
「でも物語はここにある。現実を拒んでも、悲しい読み手でも、表紙を捲れば、ほら!緑の風が吹いているわ!」
キュイ族が駆けていく。
水龍フィローネが空を泳ぐ。
森の奥から、聖なる気配を感じる。
初めてこの世界を垣間見たときの、あの興奮を覚えてる?
リンクはずっと覚えている。大地を踏みしめて歩んだ、冒険の始まりを――――。
「――――――――あぁ」
感じ入った声。
郷愁が胸をよぎって、凍てつく瞳が解けていく。
大嵐をも受け止める大空の世界で、ランサーは僅かに微笑んだ。
「何故、だと?決まっている――――」
狂気が剥がれ落ちた。
故国のために戦い続けた、騎士王が此処に帰ってくる。
「世界を、運命を、変える権利があるのは、今を生きている人間だけだと。そう言った彼らを信じている」
アーサーが剣を降ろした。
モードレッドは黙って、言葉を受け止めている。
「我が身は大鴉の化身。ハイラルを象徴する大翼の勇者のように、このロンディニウムを守護する者である。だから、嗚呼・・・。このような現界は、本意では無い」
ランサーの身体がエーテルに戻っていく。自主的な退去を始めたようだ。
「・・・・・・迷惑を掛けました。魔術師達よ。次に相見えるときは、敵でないことを願いましょう」
絵本は閉じていく。小説は語りを終える。されど意志は永遠に続く。
一項目に戻すように、あるいは二巻目を手に取るように。
勇気を与えられた読み手達が、世界を生きるかぎり。
「たった今、Dr.ロマンから連絡があったよ。作戦は成功だ!地下のアングルボダから聖杯を取り外すことに成功したそうだ」
ジキルのアパルトメントはすっかりひとけがなくなっていた。
落雷の雨はとうに止み、暗雲が徐々に薄れていく。
「・・・・・・ウゥ・・・・・・」
「あれ、君だけ?ナーサリーはキャスターに付いていったけど、隣の部屋のアンデルセンとシェイクスピアは――」
「・・・ウ」
「ああ、そうか。それはそうだね。聖杯の回収。特異点の修正。それなら、うん」
この部屋はこんなに静かだっただろうか。
いつの間にか、あの騒がしさに慣れてしまっていた自分が居る。
「時代は正しく修正される。今までの異常事態も出来事も何もかも、消える。すべてのサーヴァントたちは消えて、僕たちの記憶だって修正されてしまうんだろうね」
「・・・ゥ、ゥ・・・ァ・・・・・・」
「ああ・・・うん。そうか。今だけはなんとなく、僕にも君の言葉がわかる気がする」
お菓子を勝手に食べるサーヴァントも、紅茶にケチをつけるサーヴァントも、ソファを占領するサーヴァントも、もう居ない。
「・・・ゥゥ・・・・・・」
「・・・ああ、そうだね。少し、寂しいな」
「ま、何だ。お疲れさん。おまえたちのお陰であれこれ助かったぜ」
「ロンディニウムは救われた。僕からも御礼を。ありがとう、カルデアの善き人々たちよ」
特異点は徐々に修復されていくだろう。
湿っぽい別れはしたくなくて、モードレッドは笑顔を浮かべる。
「おお、そちらが噂のアーサー王ですか。うーむ、主役が栄えそうな美青年!」
「叛逆の騎士殿は相手に絆されやすいな。それとも、異世界とはいえ親が居るから猫を被っているのか?」
「・・・全部終わってからノコノコやってきやがって。いいぜ、そこに並べ。そろって首を落としてやるよ」
ぽてぽてと歩いてきて余計なことをくっちゃべる作家共に、モードレッドがにっこりと笑いながら剣の柄を掴んだ。
「安心しろ。同時に仕留めてやる」
「保護者の方ー!お宅のお子さんがー!」
「おい保護者。ちゃんと叱っておけ」
「モードレッド、止めなさい。それはそれとして君たちの方にも非があるよ」
最後まで賑やかなパーティだ。大団円には相応しい。
立香もマシュも、管制室の職員達も、気の抜けた笑みを浮かべてやり取りを見守っている。
その隅でこっそり胃痛がしそうな顔をしてナーサリーを撫でているのは、リンクだけであった。
○奏者のお兄さん プレッシャーを感じてる
○騎士 かわいそう
『――・・・待った、なんだこの反応・・・!?みんな気をつけて!』
「ドクター?」
突然緊張感を持って告げられた言葉に、マシュが戸惑いを返す。
直感の優れたアーサーとモードレッドが次に反応した。・・・何だ、この悪寒は?
『地下空間の一部が歪んでる!
『そんなはずないわ!カルデア以外にこの技術があるものですか!』
オルガマリーの上擦った声が聞こえる。管制室が一気に騒がしくなる。
不安が募った立香は、思わず辺りを見渡した。
「え・・・先輩、ヘンです。何も異常はないのに、寒気が――凄くて――」
『・・・空間が開く!くるぞ!』
空間が歪む。
世界が軋む。
「魔元帥ジル・ド・レェ。帝国神祖ロムルス。英雄間者イアソン。そして神域碩学ニコラ・テスラ。多少は使えるかと思ったが――――。小間使いすらできぬとは興醒めだ」
膨大な存在が降り立つ。その場の空気を掌握する。
「下らない。実に下らない。やはり人間は、
“それ”は笑う。矮小さを指さして。
“それ”は嗤う。すでに見限った人類を。
『ああクソ、シバが安定しない、音声しか拾えない!どうした、何が起きたんだマシュ!?』
「わ、わかりません。ヒトのような影がゆっくりと歩いてきて――」
「・・・下がるんだ、マシュ。立香の側から離れないで」
まるでこの場にいることが
危険、という言葉では表し尽くせない。不吉な何か。
「――オイ、なんだこのふざけた魔力は。竜種どころの話じゃねえぞ。これは、まるで――」
「伝え聞く悪魔、天使の領域か。いや、それでは足りますまい。このシェイクスピア、生粋の魔術師ではありませんが、キャスターの端くれとして理解しました」
無尽蔵とも言える魔力量。
存在するだけで境域を圧し潰す支配力。
「まさに、まさに神に等しい創造物!というか神そのもののような気さえします!そうですな、我が友アンデルセン!我々、そろそろお
「貴様はどうしてそう大げさなんだ。だいたい神といっても種類があるだろうに。俺が怖いのは編集の神だけだ」
さすが、月の聖杯戦争ではラスボスのサーヴァントをやっていただけはある度胸だ。
シェイクスピアは完全に逃亡の体勢に入っている。
「・・・・・・まあ、逃げの一手には賛成だが。まさか、本命がこの段階でやって来るとはな」
『本命!?本命ってどういう事だ!?立香ちゃん、状況を報告してくれ!』
「ほう、私と同じく声だけは届くのか。カルデアは時間軸から外れたが故、誰にも見つけることのできない拠点となった」
だからこそ生き延びている。
「だからこそ生き延びている。無様にも、無惨にも、無益にも」
魂を振り絞って。誰に笑われようとも。希望と勇気を灯しながら。
「決定した滅びの歴史を受け入れず、いまだ無の大海に漂う哀れな船だ。それがおまえたちカルデアであり、藤丸立香という個体。燃え尽きた人類史に残った染み。
「――――ドクター。いま、私たちの前に現れようとしている、のは――」
「・・・貴方が、レフの言っていた“王”?」
「ん?なんだ、既に知り得ている筈だが?そんな事も教わらなければ分からぬ猿か?」
白い髪。褐色の肌。絢爛な衣装。
きっと、貴い身分のヒトだったのだろう。
「だがよかろう。その無様さが気に入った。聞きたいのならば応えてやろう」
すべてを見下し、蔑む笑みを浮かべていなければ、少しは気品を纏えたものを。
「我は貴様らが目指す到達点。七十二柱の魔神を従え、玉座より人類を滅ぼすもの」
“それ”は名乗る。星の自転を止め、世界を滅ぼすもの。
「名をソロモン。有象無象の英霊ども、その頂点に立つ七つの冠位の一角と知れ」
○ウルフ テメェか
○災厄ハンター ふーーーーーん
○奏者のお兄さん 中身違うだろ。大言吐くな
○いーくん ほんとだ。肉体と中身別人だな。
○Silver bow 重犯罪者がよぉ・・・
○海の男 血の気が多いよ~~
『ソ――ソロモンだって!?確かにそう名乗ったのか、マシュ!?』
「・・・・・・はい、間違いありません。確かにソロモンと・・・紀元前10世紀に存在した古代イスラエルの王と同じ名を名乗りました」
『そんな・・・本当にソロモン・・・。こんな、こんなバカなことが――――』
打ちのめされたドクターの声。
動揺、ざわめき、戸惑い、愕然。管制室は揺れている。
「ハッ、そいつはまたビッグネームじゃねえか。するってーと何だ。テメエもサーヴァントな訳か?英霊として召喚され、二度目の生とやらで人類滅亡を始めたってオチか?」
「それは違うなロンディニウムの騎士よ。確かに私は英霊だが、人間に召喚されることはない」
「なに?」
「貴様ら無能どもと同じ位で考えるな。私は死後、自らの力で蘇り、英霊に昇華した」
○銀河鉄道123 自力で墓地から復活するな
○フォースを信じろ ウチのシマじゃノーカンだぞ
○騎士 これ本物のソロモンはどういう顔で聞けばいいんだ
『み・・・自らの力で、蘇っただって・・・!?』
「私は私のまま、私の意志でこの事業を開始した。愚かな歴史を続ける塵芥――――この宇宙で唯一にして最大の無駄である、おまえたち人類を一掃するために」
「そ、そんなことができるとでも・・・!?」
思わず反論した立香を鼻で笑って、ソロモンは続ける。
「できるとも。私にはその手段があり、その意志があり、その事実がある。既におまえたちの時代は滅び去った。時間を越える我が七十二柱の魔神によって」
『時間を越える・・・じゃああの魔神たちは本当にレメゲトンにある魔神だったのか・・・!?いや、でも伝承とあまりにも違う!ソロモン王の使い魔があんな醜悪な肉の化け物のはずがない!』
ある意味で――――それは正しい疑問だった。
ロマニの知っている魔神の集団は、
「哀れだな。時代の先端に居ながら、貴様らの解釈はあまりに古い。七十二柱の魔神は受肉し、新生した。だからこそあらゆる時代に
新生した魔神たちは、この星の自転を止める楔である。
天に渦巻く光帯こそ、ソロモンの宝具の姿。
「まさか・・・・・・あらゆる時代にあった光の輪は――――」
「そうだ。あれこそは我が第三宝具、
あの光帯の一条一条が聖剣ほどの熱線。
アーサー王の持つ聖剣を幾億も重ねた規模の光。即ち――対人理宝具である。
「ち・・・父上の聖剣の何億倍の熱線――。それで人理を焼き払うってのか。テメエ!?」
「――――さて、その光景を見ることのない貴様に答える気はないな。そちらの質問には答えた。次はこちらの番だ、カルデアの生き残りよ」
「野郎、やる気だ・・・!構えろ!」
○ウルフ やばくね?
○災厄ハンター やばいですねぇ
○守銭奴 やっぱ直接殺るしかないか・・・
「で、でも――あのサーヴァントには、決して――――」
『マシュ、しっかりするんだ!心を保って、しっかり敵を見る!どんな相手であれ、敵はサーヴァントなんだろう!?なら勝機はある!』
怖い。
身が竦む。
勝てるわけがない。
マシュの心を負の感情が覆い尽くしていく。
『君の中の英霊は聖杯に選ばれた英霊だ!英霊の格は決してソロモンにひけを取らない!』
「ハ――――英霊の格、だと?そんなものが基準になると本気で思っているのか」
毒々しい魔力。
禍々しい術式。
ソロモンとは、これほどまでに人間を憎んでいたのか?
「無知とは罪だな。それなりの知恵者かと思えば、貴様らの司令官は取るに足らぬ魔術師らしい。もはや私が気に留めるのは娘、その盾を持つ貴様のみだ」
マシュのことだ。
立香の背筋に冷たいものが走る。
「さあ、楽しい会話を始めよう」
そこからのことを、立香はよく覚えていない。
いや、覚えてはいるのだ。
ただあまりにも非現実すぎて、夢だと思ってしまいたいだけ。
地下を這いずり回る魔神の肉柱。戦闘とはとても言えぬ、一方的な殺戮。
あっという間にキャスター、ナーサリー、シェイクスピアが消えた。
「・・・ドクター、レイシフトを。このままでは全滅です・・・・・・!」
『それが、無理なんだ・・・!そいつの力場でレイシフトのアンカーが届かない!ソロモンがいるかぎり、キミたちを引き戻すのは不可能だ・・・!』
「・・・っ、こうなったら・・・せめて先輩だけでも・・・!」
「駄目だよ!マシュを置いてけない!」
英霊としての格より、出力そのものが違う。
魔術の祖と謳われた、その逸話は伊達ではない。
「王殺しのモードレッド。異界からきたアーサー王。貴様らは特に、念入りに燃やすとしようか」
攻撃がくる。
来る、という知覚が出来ただけで、防御は一切出来なかった。
「・・・ふざけているな。一度防いだだけでこれか。やはりキャスターでは貴様に刃向かえないか」
「クソガキ・・・!?テメエ、なにして――」
「気まぐれだ、気にするな。おまえには散々働いてもらった借りもあったしな」
モードレッドへの一撃を防いだのはアンデルセンだった。
肉体労働嫌いは筋金入りのようで、うまく避けて生存していたらしい。
「・・・まだ生きていたか。物書き」
「ああ、読まなくてはいけないものがあったからな。そして――理解したぞ、ソロモン。貴様の正体、その特例の真実をな」
「ほう?いいぞ、語ってみよ即興詩人。聞き心地のいい賞賛ならば楽に殺してやろう」
興味が湧いたのか、肉柱の追撃が止まる。
上から目線にも程がある態度で、続きを促した。
「ああ、とくと聞くがいい俗物め。時計塔の記述にはこうあった。英霊召喚とは抑止力の召喚であり、抑止力とは人類存続を守る者」
彼等は七つの器を以て現界し、
敵とはなにか?決まっている。我ら霊長の世を阻む大災害!
「この星ではなく人間を、築き上げられた文明を滅ぼす終わりの化身!其は文明より生まれ文明を食らうもの――自業自得の
そして、これを倒すために喚ばれるものこそ、あらゆる英霊の頂点に立つモノ。
「――――そうだ。七騎の英霊は、ある害悪を滅ぼすために遣わされる天の御使い」
人理を護る、その時代最高峰の七騎。英霊の頂点に立つ始まりの七つ。
「もともと降霊儀式・英霊召喚とは、霊長の世を救う為の決戦魔術だった。それを人間の都合で使えるよう格落ちさせたものが、おまえたちの使う召喚システム――――聖杯戦争である」
「な――――オレたちが格落ち、だと・・・!?」
「挑発にのるなモードレッド。格の問題じゃない。これは器、顕現の問題だ。ヤツはただ単に、俺たちより一段階上の器を持って顕現した英霊にすぎない」
我らが個人に対する
その属性の英霊たちの頂点に立つもの。即ち、
「そうだ。よくぞその真実に辿り着いた!我こそは王の中の王、キャスターの中のキャスター!故にこう讃えるがよい!――――グランドキャスター、魔術王ソロモンと!」
○りっちゃん 自分大好きなのはよくわかった
○うさぎちゃん(光) 別人なら自分でもなくない?ソロモンのことが好きなんじゃない?
○海の男 ソロモンに対して大きめの感情を持ってる方ですか?
『グランドのクラス、だって・・・!?根源に選ばれた英霊とでも言うつもりか・・・!?』
「――さて、では褒美だ、受け取れ即興詩人。五体を百に分け、念入りに燃やしてやろう」
「アンデルセン!」
わずかな悲鳴を残して、アンデルセンも消えた。
「・・・テメエ」
「凡百のサーヴァントよ。所詮、貴様等は生者に喚ばれなければ何も出来ぬ道具。私のように真の自由性は持ち得ていない。どうあがこうと及ばない壁を理解したか?」
「っ――――・・・、は。ここまで四つも聖杯を奪われて、何を偉そうに。もう半分も立香にやられて、あわてて出てきたんだろう?負け惜しみにしちゃあみっともないぜ?」
モードレッドの煽りに、返ってきたのは憐れみの目だった。
「――人類最高峰の馬鹿か、貴様?四つもだと?違うな。すべてを破壊してようやく、なのだ。一つも六つも私には取るに足りぬ些事である。藤丸立香なる者が脅威などと、程遠い話だよ」
ため息一つ。踵を返す。
「では帰るか。思いの外時間をとったな」
「え?」
「はあ!?帰るって、テメエ一体なにしにきやがった!?」
「いや、単なる気まぐれだが?」
○騎士 よし
○奏者のお兄さん やったぜ
○小さきもの 勝ったわ風呂入ってくる
「ひとつの読書を終え、次の本にとりかかる前に用を足しに立つ事があるだろう?これはそれだけの話だ」
「なっ・・・小便ぶっかけにきたっつうのか!?」
「――――――、は。ハハ、ハ、ギャハハハハハハハハ・・・・・・!」
○フォースを信じろ 結局アレ?アヴェンジャーくんの活躍?
○フォースを信じろ 大活躍じゃん
○守銭奴 ソロモン(仮)くんは格上の魔術師に会ったことがないんだね
「その通り!実にその通り!実際、貴様らは小便以下だがなァ!私はおまえたちなどどうでもいい。ここで殺すも生かすもどうでもいい」
「だが――ふむ。だが、もしも七つの特異点をすべて消去したのなら。その時こそ、おまえたちを、“私が解決すべき案件”として考えてやろう」
『助かったのか・・・のか?見逃されるのは癪だけど、ここは黙って――――立香ちゃん!?』
「貴方、どうしてこんなことするの?世界を燃やすのが楽しいの?」
「先輩・・・!」
ソロモンが振り返る。
意外そうに、面白そうに。
「楽しいか、と問うのか?この私に、人類を滅ぼす事が楽しいかと?ああ――無論、無論、無論、無論、最ッッ高に楽しいとも!」
「悪趣味・・・」
「楽しくなければ貴様らをひとりひとり丁寧に殺すものか!私は楽しい。貴様たちの死に様が嬉しい。貴様たちの終止符が好ましい。その断末魔がなによりも爽快だ!」
魔神よりも魔神。
悪魔よりも悪魔。
でも、魔王ではない。
「そして、それがおまえたちにとって至上の救いである。なぜなら、私だけが、ただの一人も残さず、人類を有効活用してやれるのだから――!」
「下がってろ、立香!コイツと話すのは無駄だ、心底から腐ってやがる!」
「・・・魔術王ソロモン。貴方はレフ・ライノールと同じです。あらゆる生命への感謝がない。人間の、星の命を弄んで楽しんでいる・・・!」
「――――――」
カチリ。感情が変わる。
カチリ。顔が変わる。
「娘。人の分際で生を語るな。死を前提にする時点で、その視点に価値はない。生命の感謝だと?それはこちらが貴様らに抱く疑問だ。
○海の男 人間に対して大きめの感情を持ってる方ですか?
「おまえたちは死を克服できなかった知性体だ。にも関わらず、死への恐怖心を持ち続けた。死を克服できないのであれば、死への恐怖心は捨てるべきだったというのに。死を恐ろしいと、無様なものだと認識するのなら、その知性は捨てるべきだったのに!」
○銀河鉄道123 ???
○災厄ハンター えっ何急に。それのなにがいけないの
○りっちゃん なんか・・・何・・・?人間の人生を見続けて解釈がぶっ飛んだ方?
「無様だ。あまりにも無様だ。そしてそれはおまえたちも同様だ、カルデアのマスターよ。なぜ戦う。いずれ終わる命、もう終わった命と知って。なぜまだ生き続けようと縋る。おまえたちの未来には、何一つ救いがないと気づきながら」
「・・・・・・っ」
「あまりにも幼い人間よ。人類最後のマスター、藤丸立香よ。これは私からの唯一の忠告だ」
まったく聞く気がしなかったけど、一応耳を傾けた。
「おまえはここで全てを放棄する事が、最も楽な生き方だと知るがいい」
やっぱり聞く必要なかった。立香は憐れみをもって見返す。
先にケンカを売ってきたのは貴方でしょう?
「灰すら残らぬまで燃え尽きよ。それが、貴様らの未来である」
今更、我が共犯者が止まるなどと思っている時点で、もう貴様の負けなのだ。
おまえは火を点けたぞ。魔術王。
人類最後のマスターの心を焚き付けた。その意味をとくと思い知れ。
影の中で、アヴェンジャーは笑った。