深夜の公園は無法地帯。しかしキャスターの魔術があれば。これこの通り陣地作成。
ふわりと立つ湯気はテイクアウトの牛丼から。食欲をそそるいい匂いだ。
「はふ・・・はふ、もぐっ」
「やっぱりチーズは外れないよね」
「ねぎ玉もおいしいぞマスター」
せっかく現代に来たのだからとランサーが牛丼屋を指さし、立香がノったので無事夜食は購入された。
○りっちゃん あなたリンクにあるまじき料理ステの低さですからね
○海の男 恋しくなくなっちゃうか~
○いーくん 始祖様は戦中だし俺は戦後。飯のレベル推して知るべし。Yeah
○小さきもの ラッパーがログインしました
Ⅱ世は一応任務中であることを指摘したのだが、マシュに色々体験させてあげたい。というマスターの意見には反論できなかった。あとランサーがお金出すっていうから・・・。牛丼に罪はないからな・・・。
「さて、どこまで話したか」
「この戦いが終わると世界が滅ぶとか・・・」
「ああ、そこだったな。冬木の聖杯は戦闘で脱落したサーヴァントを生け贄として取り込み完成する」
食休みを挟んで会議は始まる。
またランサー(リンク)の自己紹介は大半がよくわからなかったことを記しておく。よくわからない、というかわからないようにあえて曖昧にしているのだが、Ⅱ世は私の知見はまだ狭いな・・・という顔をして受け止めた。そんなに重く捉える場所じゃないですここ。
「だがそこから出現するのは願望器ではなくアンリマユ・・・この戦いには初めから勝利者など存在しないのだ」
『ひどい話があったもんだね・・・。他の魔術師を殺してまで手に入れた報酬が、まさか真逆のものだったなんて・・・』
「まったくだ。もし私が第四次の勝者だったら、絶望で悪逆に落ちていたと思うよ。・・・いや、すまない。感傷は意味がない、と言ったのは私だったな」
髪を揺らす程度の、淡い風が吹いている。
いずれ炎に飲まれるとも知らず安寧を保つ街よ。この私で良ければ、やり直しを始めよう。
「私の経験上、大聖杯が限定的ながらも稼働を始めるのは、七騎のうち五騎目のサーヴァントが敗退した後だ」
『つまり裏を返せば、最低でも三騎のサーヴァントを健在のまま戦線離脱をさせれば・・・』
「儀式は有耶無耶のうちに終わり、聖杯は完成せず、その器をだけを確保することができると」
「フォ~ウ」
ロマニが推測を続け、リンクが結論を出した。マシュの膝の上に収まっていたフォウ君が相槌を打つ。
「了解しました。今回は他のサーヴァントを倒すのではなく、守るための戦い、というわけですね」
「穏便にすむなら、それに越したことはないよね」
「ああ、だからといって平和主義で事が済む訳でもない」
ベンチに並んで座る少女達に、Ⅱ世はきっぱりと断言した。
「最終的に和解で決着をつけるためにも、まずは和解に応じる余地のない相手を積極的に排除させてもらう」
「紳士的かと思ったら独裁的だ!?」
立香のツッコミを受け流して、キャスターはにっこりと微笑む。
若干自棄っぱちを感じなくもない、圧のある笑みだった。
「荒っぽいのは自覚している。言っておくと、元来の私はもっと臆病で、卑屈な男なんだがね」
「そうなの?」
「そうとも。今はどうにもこの身に宿した乱世の策士が昂ぶって仕方ない」
「孔明だもんね・・・」
中華の軍師は時に武将より猛々しく、暴力的だ。
○守銭奴 わかるよ。荒ぶるよね
○フォースを信じろ 肉体の主導権で揉めるまでがセット
○守銭奴 だから予め分裂しておく必要があったんですね
○銀河鉄道123 どこで使うライフハック?
「今回の聖杯戦争の参加者のうち、どう転んでも救いようがないのはキャスターとアーチャーだ。こいつらは、はっきり言ってまともに意思疎通できる相手ですらない」
「だから早々にお引き取り願うと」
「ああ。それとアサシン。こいつらはマスターがアーチャーを擁する陣営と結託している」
○Silver bow アサシン単体で勝つのは厳しいか
○災厄ハンター まー俺らでも若干キツイかも
○銀河鉄道123 やっぱ真正面から轢き潰すにかぎる
○災厄ハンター ガチで轢いていた人静かに
「次はバーサーカーだが・・・なにせ狂化している以上、これはマスター次第、というほかない。令呪を温存し、サーヴァントを十全に制御できる状態のうちにマスターを懐柔できるかどうかが鍵だ」
「とはいえバーサーカーだろう?暴走する可能性は常にある」
「しかも召喚者は心身共に危うい状態の人物だったと、後から調査で判明している」
「おっと」
ランサーは飄々と笑っている。それがどうしてか不快でなくて。
むしろ奇妙な安堵をⅡ世に抱かせるのだ。
立香もすっかり懐いてしまった。
「では、バーサーカーについては保留ですか?」
「安全牌ではない、と結論せざるを得ない。よって消去法で最終的な保護対象はセイバー、ランサー、ライダーの三騎ということになる」
『ああ、それで先ほどの波止場ではセイバーとランサーの衝突を回避させたんだね』
「ではあとはライダーの陣営ですね。うまく交渉できるでしょうか」
「・・・。状況次第だな」
・・・・・・他のサーヴァントたちもなんか変になってたらどうしよう。どうしようもないが?我が王までバグってたらどうしよう・・・。あっまた胃痛が・・・。
『どうだいマシュ?サークルの設営は上手くいきそうかな』
空がまだらに白く染まる。
太陽は目を擦って、欠伸をしながら目を覚ました。
「それがどうにも・・・」
「駄目なの?」
「霊脈もあるにはあるのですが、何か別の術式によって保護されていて、こちらの介入を受け付けません」
「フォウ?」
冬木市を中心とした一帯の霊脈は、とある魔術師一族の独占化にある。
質実剛健な術式は外部からの無粋な干渉を阻んだ。
まったくもって良い腕だ。Ⅱ世は内心で賞賛する。
「仕方あるまい。魔術師が設置している要石を破壊し、霊脈の主導権をこちらが奪おう」
「そんなことをしたら
「当然な。だがこの土地を仕切る遠坂家はアーチャーを召喚した魔術師でもある」
「なるほど。あらかじめ喧嘩を売っておくと」
「いや・・・まあ・・・そういうことでもあるんだが・・・・・・」
このランサー血の気が多いな。
いや、サーヴァントなんてそんなものか・・・?
『でも霊脈の要石は慎重に秘匿されている筈だよね?』
「問題ない。位置は予め知っている」
『ええっ?どうやって調べたんですか?』
「次の代の遠坂を継ぐのは私の教え子でね。最終的には彼女の協力を得てここの大聖杯を解体するわけだが・・・」
そのとき自ずと土地と霊脈の構造も把握することになった。
つまり未来の教え子の土地だが、時間軸が違う以上なんの義理も負い目もない。
「そもそも遠坂家は冬木の聖杯戦争の発端について責任の一端を担う家門だ。霊脈を失って素寒貧になろうとも、まぁ自業自得というものさ。きっと未来の遠坂も理解してくれるだろう」
「ものすごい事後承諾だ!」
「悪い大人だな」
立香は呆れた顔をし、リンクはけらけらと笑った。
「――――そろそろ約束の時間だ。ここで切り上げてランサーのマスターと交渉に向かおう」
たっぷり昼寝をした後、一同は霊脈の基点を確保していく。
観光を兼ねた探索は、少女達の心を大いに楽しませた。
「本当に上手くいくのでしょうか。なんとなく、酷薄そうな方のようで・・・」
「冷徹な魔術師っぽいよね」
「任せておけ。ただし藤丸、ケイネス卿との会話はすべて私に一任してもらいたい」
街にネオンサインが溢れて、色とりどりに闇を彩った。
今日は雲もなく、夜空が高く見える。
「いちおう念話のパスだけは繋げておくから内緒話は可能だが、決して口を開かないように。いいな?」
「わかった。お任せします」
いざ、冬木ニュータワーの最上階へ。