熱砂の風が遠のいていく。
肌に滲んだ汗が引いていくように、物語は結末へ向かう。
「――では、大聖杯を破壊する。準備はいいな?」
「いつでもどうぞ」
「はい」
宝具を構えるのは三騎。アサシン、ヒロインX、子ギル。
ぽたり、ぽたりと垂れ落ちる汚泥に眉をひそめながら、ルーラーは号令を掛けた。
「さあ、ついてこれるか。
時は流れ、今日には微笑む花も明日には枯れ果てる。
守護者は今日も花を
「野蛮ですがこれも戦法の一つ。財宝とはこう使う物です。
見よ。王の宝物庫を。この世の全ての財宝を。
それはすなわち、あらゆる宝具の原典が納められているということ。
360度から一斉投射された武具たちが、大聖杯に罅を入れた。
「星光の剣よ!赤とか白とか黒とか消し去るべし!・・・みんなにはナイショだよ!
白き剣と黒き剣。交われば無敵。攻めれば最強。そして勝利!
連撃、連撃、トドメはX!王道の力を知れ!カリバーーーッッ!!
大空洞が揺れる。光がまだら模様をつくって、見守る立香たちの体に映った。
「フォウ!」
「うん、やったね」
煙が晴れたとき、もうそこに悪性の杯は無く。
やりきった三騎のサーヴァントが、各々の速度で戻ってきているのだった。
『・・・・・・アレ?君たちは消滅しないの?』
「私はサーヴァントユニヴァースから来たので」
「右に同じく」
「おまえたちを見送ってから戻るさ」
「この程度の小細工は造作もないですよ」
『イロモノサーヴァントしかいないの?この空間』
ヒロインXはともかく、リンクは座から直で来ているし、シャルルマーニュはリンクに召喚された形で顕現しているし、子ギルはなんか勝手に色々している。変なやつしかいないな。
『さて、カルデアが検知した聖杯は、けっきょく出現することもなく姿を消した。あとは、聖杯になり得たかもしれない、という可能性の存在だったアイリスフィール、貴女の身の振り方だが・・・・・・』
「ええ、聖杯戦争が無意味になった今、私は存在価値そのものを失ったも同然ね」
白皙の顔に憂いが浮かぶ。
こんなに怒濤の一日を過ごしたのは初めてだ。落胆とは別に、不思議な安堵がある。
聖杯戦争が終わっても生きている、という。むずがゆい事実が。
「そもそも、この手で大聖杯を壊してしまった身で、おめおめとアインツベルンに戻れるはずもないし・・・」
「あの、我々の本来の目的には、特異点に出現した聖杯の回収も含まれています」
マシュの言葉に、スカーレットが瞬く。
「もし宜しければ、一緒にカルデアに来ませんか?」
「そうだね。彼女のような存在を放置したら、後々もっと厄介な輩に目をつけられて悪用されかねない。ボクらの庇護下に入ってもらえるなら、それに越したことはないんだが」
「・・・寄る辺ない身にとっては、またとないお誘いね」
微笑みは雪解けのように。
「ええ、それならば是非。この身はあなたたちの手に委ねます。どうかよろしく。違う世界のマスターさん」
少女のような彼女はようやく、
「ならば私もお世話になります」
『えっ』
「昨今、社会的な問題となっているセイバー増加に対応するためにも、地球用の拠点が必要ですからね。決してマシュに聞いたそちらの雇用形態と美味しいご飯に釣られたわけではありません。今後もよろしくお願いします」
『あっはい』
「二人ともよろしくね!」
「セイバーも来てくれるの?なら安心だわ」
『立香ちゃんとアイリスフィールがいいなら・・・・・・』
このセイバー、長期で居座る気マンマンである。まぁ戦力にはなるので良いのだが・・・。
ワイワイと話し込む少女たちの輪から少し離れて、Ⅱ世が葉巻に火を着けた。
「・・・オマエらも・・・帰るのか?」
「ああ。・・・地上まで送ろう。途中の洞窟は迷路だからな。そこで、解散だ」
「では、僕ともここまでだな」
「あんたは地上に戻らないのか?」
少し腫れた目元を隠すように遠くを見ていたウェイバーが、アサシンに振り向く。
煙を細長く吐いたⅡ世が、肩に乗っていた髪を払った。
「もとよりこの世界の住人ではないんだ。無駄足さ。このまま待てば、ほどなく座へと呼び戻される」
「そうか、お前はそういう存在だったな」
「・・・・・・」
別れの気配を感じ取って、アイリスフィールが近寄ってくる。
理由は・・・よくわからないけれど。なんだか、側で話したいと思ったのだ。
「・・・不思議だな。君とは出会ったが最後、どちらかが死んで別れるものかと思っていたが」
「ええ、不思議。なぜそれが不思議なのかさえ分からない。けれど・・・この違和感。不愉快ではありません」
「ああ、僕も・・・・・・」
アサシンもそれを当然のように受け入れた。そうしたいと、なぜか思ったので。
「・・・・・・何かを切り捨てることでしか使命を果たせない、そういう星の
相変わらず顔色の窺えない風貌で、けれど、先ほどよりはかすかに、かすかに。
軽やかな口ぶりで、アサシンは言った。
「さようなら。・・・・・・礼を言う筋合いかどうかも分からないが」
「ええ、さようなら。あなたと出会えて良かったわ。名も知らぬ英霊の人」
「ギルガメッシュ。帰れ」
「いやですぅー!座までついていきます!だってボクは弟ですからね!」
「斬るか?」
「斬らんでいい」
リンクにしがみつく子ギル。を指さして不穏なことを言うシャルルマーニュ。疲労を感じ始めたリンク。
大空洞の真ん中で騒ぐ三人組を横目に見ながら、アサシンは聖杯があった場所を窺った。
「・・・はぁ、仕方ないな。ギルガメッシュ」
「はい!」
するりと膝を付いて、幼い瞳にめいっぱい映るよう、額を合わせた。
肩と背中を優しく引き寄せながら、にこりと笑いかける。近距離で直視した子ギルはここで思考が飛んだ。
「――イイコだから、兄さんの言うことが聞けるな?」
頬ずりするような温度で、とびっきりの包容力を込めて囁いてあげれば、もう貴方は私の虜。
「ミ゜ッ」
「死んだ!?!?」
聞き分けのない子を宥める、甘い甘いブルー。
子ギルは至福の笑みを浮かべながら、鼻血を流しつつ消滅した。
「ヨシ!いくぞシャルル」
「・・・うむ!」
○災厄ハンター 最後までいい空気吸ってたなコイツ・・・
「では守護者よ、また会おう」
「あ、ああ・・・」
勢いに気圧されつつ、アサシンは二人を見送る。
影に隠れていたアンリマユは、明らかに相性不利の二人組が居なくなったことに、ほっと息をつくのだった。
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―――――――
・・・・・・
真昼間でも薄暗い、間桐邸は静か。
鍵の掛かった門を過ぎれば、一斉に発動したトラップが襲いかかってくる。その内の1つも二人の歩みを止めることができず、主人達を守るように浮くジュワユーズに砕かれていく。
異常事態に飛び出してきた老人が来訪者を見て、―――ただ、言葉を失った。
「ご機嫌よう。マトウ・ゾウケン」
「・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「世間では大翼の勇者と呼ばれている。我が名はリンク。アポ無しで失礼する」
「セイバー・シャルルマーニュだ。よろしく!」
「ああ、なにも言わなくて良い。さようなら、かつての求道者よ」
剣を抜いたことすら知覚できず、間桐臓硯は死んだ。
臓硯の肉体を構成していた蟲群は、もう崩れ落ちたまま動かない。
屋敷のそこかしこからしていた蟲が這いずる音も、電源を切ったかのように消えていた。
「お見事」
「お前こそ。素晴らしい剣のコントロールだ」
「! えへへ・・・」
シャルルの頭を撫でてやると、照れたようにふにゃりと笑った。
玄関を上がって、屋敷からする気配は2つ。サクラと、恐らくカリヤの兄。
今後の為にも本人のためにも、兄の方にはさっさと出ていってもらった方がいいだろう。
「・・・・・・・・・・・・。お兄ちゃんたち、だれ・・・?」
「おや、ようやくまともに会えたな。リトル・レディ」
黒髪の少女が、開いた部屋の扉からおずおずと覗いている。
リンクとシャルルが安心させるように笑いかけると、とてとてと近寄ってきた。
Fate/Zero 春風の騎士と大翼の騎士
「リンク!カリヤが泡を吹いて気絶した!」
「その辺に寝かせておけ」
この後――――マスター・リンク、サーヴァント・シャルルマーニュで他陣営を蹂躙しさっさと聖杯を浄化して聖杯戦争を終わらせるだなんて。
気絶している雁夜にも、準備を進めるアインツベルンにも、勝利を確信している遠坂時臣も。
当然、分かるわけがないのだった。
「サクラ、虚数魔術の練習をしようか」
「うんっ」
「カリヤ、カリヤ。手が震えてるぞ。大丈夫か?水飲むか?」
「・・・・・・熱いお茶を・・・ください・・・・・・」
配信中です。 | 上位チャット▼ ○ラスボス系後輩 ちょっとちょっとぉ、待ってください!異議を申し立てますぅ!月からのお助けキャラと言ったらこのグレートデビルな月の蝶、BBちゃんの役目でしょう!? ○奏者のお兄さん シャルルとカール大帝の縁を伝ってムーンセル・オートマトンに繋がったぞって言いに来たんだけどもういるなAIが ○ラスボス系後輩 こうなったらわたしもサーヴァントになって直接介入するしかないですね・・・!いざゆかん、カルデア! ○小さきもの カルデア行くって ○奏者のお兄さん 行ってらっしゃい |
【寄り道中】れっつごー冬木 21人が視聴中 | |
「そういえばシャルル。大帝は元気か」
「俺を通して今も見守ってるぞ。・・・あ、代わる?」
「カリヤが出かけているときにしよう。いよいよ死にそうだから」
次は第五特異点です