「BB―――――、チャンネル―――――!」
全く予想外の声が管制室に響いて、持っていたカップを落としそうになった。
慌てて指に力を入れてから周りを確認すると、管制室のモニターに映る、見なれぬ少女の姿。
「人類の皆さーん、あいかわらずお間抜けな顔をさらしていますかー?」
桜色の瞳が、笑うチェシャ猫のように弧を描く。
「突如襲われた蟻さんのようにアタフタしていますかー?していますねー?」
黒衣はひらり、スカートはふわり。まるでどこぞの小悪魔のよう。
「いやーん、何千年経っても進歩しないとか皆さんサイコー!これには邪悪なBBちゃんも思わず同情です!」
温室で育てられた令嬢のように澄んだ声。発言内容に目を瞑れば、可愛らしい天使のささやき。
「ま、といっても可哀想、のベクトルではなく、情けない、のベクトルなんですけどね?」
不法接続謎通信。
ラスボス系後輩、カルデアに参上!
「どういう事だ、どこからの通信だ!?通信、何をしている!?」
「それがコントロール、受け付けません!こちらの回線とはまったく別の通信手段です!」
「隔壁閉鎖、霊基保管室ロック、レイシフト用のシステムまで
「カルデアの全コントロールを奪われた・・・!貴女、いったい何者ですか!?」
騒然。混乱。職員達は右往左往。
毅然と立ち上がり相対する所長に、謎の侵入者は得意げに胸を張った。
「えー、この放送は月の支配者ことわたし、違法上級AI、BBの手でお送りしています」
「AI・・・?BB・・・?」
「え?なんでカラーになっているかって?それはもちろん、わたしがチートキャラだからです」
チートかぁ・・・じゃあしょうがないな・・・。
今までのサーヴァント達とは一線を画す佇まい。不安よりも不信よりも、あの子かわいいな・・という気持ちの方が勝った。
英霊って色々いるんだな~。
「初登場時にこそ最大のインパクトを。ヒロイン足る者、少女のように強欲に、天使のように冷酷に。人間との
「でも負けヒロイン臭もする」
「なんですかその切り返し!だれが負けヒロインですか!これだから直感だけで生きてるマスターさんは・・・!」
ぷりぷり怒り出したBBちゃんは、私以外の人間が警戒を解いていないのを見て、こほんと仕切り直しをした。
「さて、そろそろ本題に入りましょう。こんにちは、カルデアの皆さん。わたしは怪しいAIではありません。炬燵に入ってうとうとしていたら、石油ストーブが燃えだしたので飛び起きた系のものです」
騒ぎを聞きつけて集まってきたサーヴァントたちが、興味深そうに、おもしろそうに、面倒ごとを押しつけられた時のようにおののいている。
「石油ストーブなんてどうなろうといいんですけども、ほら、わたしの部屋が台無しにされるのもなんですし?そんなワケで、助けたくもないアナタたちに助け船を出す為に、こうして
「・・・つまり、人理継続のために力を貸してくれると?」
「もちろん。ただしわたしがするのはあくまで裏方。そちらに行くのはわたしの眷属たち。そ・の・か・わ・り。カルデアにムーンセル専用回路の設立と、わたし作成電脳警備プログラムの導入を要求します!あ、あとわたし専用のスペースも♡」
「タイム!」
「どうぞ♡」
所長とロマニとダ・ヴィンチちゃんが顔を突き合わせて作戦会議を始めた。
私は特に発言したいこともなかったので、大人しく座っておく。
気の利くレディことマシュがお茶のおかわりを入れてくれたので、キアラさんが持って来てくれたクッキーと頂くことにした。
「キアラさんこのクッキー美味しいよ」
「ふふっ。ありがとうございます。マシュさんもどうぞ」
「はいっ。いただきます」
「はいそこ、真面目なシーンなのに優雅にお茶しないでくださーい」
「だって他にやることないし・・・」
「もぐもぐ」
「クッキーを食べるのをやめなさーい!」
話し合いがすんだ所長が戻ってきた。
「質問良いかしら。貴女の眷属って?」
「メルトリリス、パッションリップ。カルデアのデータを圧迫するゴミをパッションリップがクラッシュし、メルトリリスがウイルスをドレインします。ちゃんとカルデア用に調整していますから、他のサーヴァントと同じように霊基再臨ができますよ」
「電脳警備プログラムを導入することによる、こちらのメリットは?」
「今回のように回線を奪われる可能性がぐーっと減ります。魔術や機械では届かない部分の警備を担当するなんて、BBちゃんにしかできません!虚数空間へのアクセスもできちゃうかも?とにかくとにかく、こんなにオトクでスペシャルなサービスは他にはありません!さあ、契約書にサインを♡」
「・・・・・・いいでしょう。そのかわり、こちらも条件があります」
あ、ぐっちゃんと項羽だ。
神祖とカエサルも来た。
「カルデアの一員として働く以上、最終決定権は所長たるわたしにあります。報告、連絡、相談を欠かさないように」
「BBちゃんはスーパーAIですよ?そんなのお茶の子さいさいです」
「では労働規則に則った契約書の作成を・・・カエサル、お願いします」
「任せたまえ」
早朝ブリーフィングは一端中断。
所員達は各々の仕事に戻り、BBちゃんがサインをするために一度離脱した。召喚ゲートを潜ってこちらに来るらしい。なんでもアリだな。
「BBとやらが手を貸してくれるのなら、魔術王への対処もなにか浮かぶかも知れないね」
「今は特異点の修正しか、できることはないんだっけ」
「ああ。グランドキャスター、魔術師の中の魔術師ときた。この私より上位のキャスターなんて、かの勇者しかいないと思っていたんだけどねぇ。相手がアレならしょうがない」
さくさくのクッキーをひょいひょい口に入れながら、ダ・ヴィンチちゃんはため息をついた。
受肉した魔神を錨として時代に打ち込むとか、常人の発想じゃないらしい。カルデアにきたメディア・リリィも真っ青だ。現状、探す手段も倒す手段も見当たらない。
「次の特異点は北アメリカ大陸。聞いた?」
「ううん。まだ挨拶しかしてなかったから」
「魔術的な価値も、歴史的な価値も高い国さ。あの大地には、精霊を降臨させるような独自の魔術が発達していてね」
「精霊?」
「そう。勇者リンクと縁深い、精霊が眠るとされる土地。もしかしたら――――居るかもね」
第二特異点、第三特異点、そして監獄塔で存在が確認された勇者たち。
あくまでも主役はカルデアである、という姿勢を崩さずに、的確に力を貸してくれる英雄たち。
観測されたデータを集めても集めてもまだ足りない。憧れの勇者。皆の希望。夢そのもの。あの光が道を指し示す限り、人類が真に挫けることなど無いのだと。
だから―――――もっともっと知りたい!
なのでそろそろ・・・カルデアに・・・来てほしいな~~・・・。なんて・・・。
「もし居たら勧誘する」
「うむ。応援しよう」
「カルデアのアピールポイントは既に資料に纏めてあります。いつでも取り出せる場所にしまっておきますね!」
有能な後輩に頷く。
次のレイシフトも気合い入れて行こう!
「では契約はこんな感じで、えーと、そちらのちっぽけな
「私?藤丸立香です」
「立香・・・うわあ・・・いかにもモブな名前です・・・可哀想に・・・。でもご安心を。わたし、憐れ萌えですので!軽蔑しながらも愉しく助けてあげますね、センパイ!」
腰に手を当てて、座る私を挑発的に見下ろしてくる美少女は、隣に座っているキアラさんに気づいてエビのように飛び退いた。
「な、な、な、なんでアナタがここに!?・・・・・・いえ、失礼。取り乱しました。アナタはわたしの知るアナタじゃないんですね。牙が生えることのなかった、無垢なままの少女のアナタ。初めまして」
「? え、ええ。セラピストの殺生院キアラと申します。はじめまして」
「わたしはマシュ・キリエライトです。初めましてBBさん。なぜ先輩をセンパイと呼称するのでしょうか?」
「ええー、食いつくのはそこなんですかぁ?上級AIとか、この時代だと垂涎のテクノロジーだと思うんですけどぉ・・・そんなに真顔で見ないでくれませんか!?わかりましたわかりましたお答えします!」
最近マシュが私に関してこう・・・積極性を増してきてるんだよな。
第四特異点で、また1つ殻を破ったからだろうか。私としては自己の成長が活発でなによりだと思うんだけど、ロマニが微妙な顔するんだよね。
「すばり――――サービスです!」
「サービス・・・・・・!」
「はい。わたしのモチベーション維持のため、苦肉の策と思ってください。わたしの先輩はこの宇宙でただひとり。キラキラ光る星の王女さま、みたいな」
ほんの少しだけ声のトーンが変わって、BBちゃんの瞳は真面目な色を宿す。
「・・・・・・でも、わたしはそんな人とは出会えなかった。ボスとして君臨した後、色々と後悔したり自重したわたしは、わたしの運命をそのように修正したのです」
なかったこと、にしたのだろうか。
なかったこと、になった時の勇者のように。
「ですので立香さんはあくまで先輩の代理。わたしの先輩の代わりに、今回の事変で翻弄される、わたしのオモチャⅡ号としてセンパイよびしちゃいます♡」
「いいよ。よろしくね」
「先輩がいいのなら・・・いいですけど・・・」
「この後輩さんはあんまりわたしに近づけないでくださいね。相性が悪そうな感じがするので」
「善処しよう」
「カルデア秘密顧問プロフェッサーMダヨ。よろしくね♡」
「何か変なことしたら彼に教育的指導をしてもらいます」
「聞いてなーーーーい!!こんな窮屈な職場イヤでーーーす!!」
「じゃあ、わたしは仕事に戻ります」
さっさと戻っていったオルガマリーにブーブー文句を投げるBBを横目に、モリアーティはのんびり椅子に腰を下ろした。
「なにがそんなに不満なんだい。キミもどうせ、彼の勇者の息が掛かっているんだろう?」
「! ・・・確かにムーンセルとカルデアの接続をしたのは時の勇者です。でも、ここに出向いたのはわたしの意志ですよ」
「勝手に来たの間違いではなく?」
「なんでわかるんですか!?あっいえ違います違います。・・・さーてプログラムのダウンロードをしちゃいますねー!」
「お邪魔します」
「今度は何!?!?」
予兆もなく空間が避けて、当たり前のように足を踏み入れてきたのは一人。
銀の弓矢を背負った少年が、プロフェッサーとAIの間に降りたった。
「目覚めの勇者・・・?」
「はい。こんにちは。コフィンにいるAチームに用があるのですが」
「・・・・・・取りあえず聞こうか。何故?」
冷凍保存された47人のマスター候補生達は、医療系サーヴァントとキャスター達によってすでに治療は完了している。
たがコフィン起動中だったAチーム・・・マシュを除く6人のマスターはまだ冷凍中だ。
解凍と蘇生が他のコフィンに比べて難しいから――――ということになっているが・・・・・・。
「モリアーティ、蘇生はどこまで進みました?」
「半分くらいカナ?」
「BBちゃん」
「結構進んでますよ~?3分の2くらい?」
「アッキミどっちの味方なんだい!?」
「面白そうなほうでーす♡」
「正直ィ!」
○りっちゃん モリアーティは優秀ですね~
○奏者のお兄さん いいコンビじゃん 仲良くしなよ
「それだけ元気になったのなら大丈夫ですね。夢を見せてあげましょう」
「夢・・・?」
「ずっと気になっていたんです。死ぬことも生きることもできず、狭間をたゆたい続けるAチームのこと。虞美人さんがああだから余計に」
取り出したるはセイレーンの楽器。愛用のオカリナ。
夜明け前のうたた寝をあなたに。その目覚めが鮮やかであるために。
○守銭奴 目覚めって・・・いい子だよね・・・
○フォースを信じろ いい子すぎてびびる。さすが良心
「悪夢を見ているのならば――。それを吹き飛ばす音色を。光に誘う唄を。許可を頂けますか?所長代理」
「――――お」
「お?」
「面白そうダネ!!!いいヨ!!!あとその夢って私も見れる?」
「あっわたしもわたしも!体験してみたいです!」
「いいですよ。よかった。断られたらここに銀の雨が降るところでした」
「ここに!?!?やっぱキミも勇者だね!?ぶっ飛んでるよ!!」
○ウルフ だれがこの子をこんな暴力的にしたんですか・・・!
○海の男 許せねぇぜ・・・世界・・・!
○ウルフ (´·ω·`)
○海の男 (´゚ω゚`)
そして音色が、電子の棺を包む。
かぜのさかなよ。僕に力を。
八色の楽器よ、大海にかかる虹となれ。
コホリントじまへようこそ。来訪者よ。
朝がくるまで、楽しんでね。
――――――――――――――――――――
―――――――――――――
―――――――
・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
「えっ??????」
「嘘ぉ・・・・・・・・・・・・・・・」
「!?!?!?!?」
「マジ?えっ。マジ?・・・・・・・・・・・・えぇ・・・・・・・・・」
「―――――――――――成程」
カドック・ゼムルプス
オフェリア・ファムルソローネ
スカンジナビア・ペペロンチーノ
キリシュタリア・ヴォーダイム
ベリル・ガット
デイビット・ゼム・ヴォイドはそれぞれの意識の中で、コホリントじまに辿り着いた。
夢の冒険が、始まる。
「ところでこれは、いつ戻ってこれるんだい?」
「指定のイベントをクリアするか、僕が魔法を解除するかです」
「夢の中のリソースやデータは持ってこれるんですか?」
「僕が不可能だったので・・・。まあ今はかぜのさかなの力が戻っていますし、彼が協力してくれれば」
○かぜのさかな (*゚▽゚)ノ
○奏者のお兄さん あっどうも
○バードマスター お疲れ様です
やーっとAチームに触れれました。