勇者リンクS’の人理修復配信RTA   作:はしばみ ざくろ

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活動報告にお題箱の返信もといプロットを乗せています。
心当たりのある方はどうぞ。


ワタリドリ

火薬のニオイも届かない、アメリカ独立軍の後方基地。

怒号と銃弾の飛び交う戦場を外れて、辿り着いたのは野戦病院。

ため息の充満するテントの中で、立香達はそのサーヴァントに出会った。

 

「―――ありがとう、ございます・・・・・・。あなたは・・・天使ですか・・・?」

「知りません。天使とは美しい花を撒く者でなく、苦悩する誰かのために戦う者。貴方が苦悶し、それでも戦いを選ぶ限り――私は此処に居ます」

「・・・先輩、やはりあのサーヴァントはフローレンス・ナイチンゲールかと思われます」

 

花園に咲く花のような色の髪をかちりと纏めて、赤い軍服を身に纏う女性。

彼女こそが奉仕と献身を信条とするクリミアの天使。“看護師の祖”と呼ばれる、不屈の女である。

 

「患者ですか? ・・・・・・人の名を用もないのに呼ばないで下さい」

「用はあります!ナイチンゲール、わたしたちに協力して下さい。特異点を修復しなければ――」

「愚かなことを仰らないで下さい。目の前に患者がいます。私が召喚され、働く理由はただそれだけです」

 

アスクレピオスが頷いた。素晴らしい。それでこそ医療従業者だ。

白い手袋で覆われた両手が的確に止血を行う。苦痛にうめく患者に薬を塗り、包帯を巻いていく。

バーサーカーとして狂気に浸されていても、女はずっと看護師だった。

 

「・・・ナイチンゲール。でも、このままだと患者は増え続けるよ。これは普通の戦争じゃないから」

「・・・なんですって?」

「その通りです。根本を断たないことには、この病は完治しません。わたしたちと一緒に、原因を取り除きに行きましょう」

 

治療が終わった。

感情の読みづらい瞳が振り返り、ポケットから何かを取り出す。

 

「そういうことは早く言いなさい。ところで、貴女達はこれ(・・)をご存じですか?」

「これ? ・・・・・・・・え?」

「えっなにこれ」

 

 

〈ケルトに負けるな!アメリカを取り戻せ!我々には大地の勇者が付いている!〉

〈大地に汽車を。勇敢なる戦士と資源を乗せて、列車は走るよどこまでも〉

〈我らの故郷を守れ!逃げる勇気を。レジスタンスは味方だ。今こそアメリカは1つに〉

 

 

チラシ・・・である。

軽快な謳い文句が踊る、西部の首脳部が発行している広告だ。

しかし採用されている写真に映る人物は―――――。

 

「リンク・・・だよね?」

「服装と容姿の特徴からして、大地の勇者かと・・・」

『は??????』

『え??????』

「そろそろCMが流れる時間ですね。動ける方でご覧になりたい方はどうぞ」

「CM!?」

 

慌ててテントから飛び出せば、日脚が移っている。

空中に展開した魔術が映像を流しはじめた。

患者も医者も避難してきた兵士たちも、みなかぶりつきで見つめている。

 

 

〈この大統王たるエジソンのもとに、大地の勇者は降り立った!我らがアメリカを駆ける汽車、これこそが祝福の証!西部万歳!西部万歳!ケルトを下し、戦争を終わらせよう!〉――このCMはご覧のスポンサーの提供でお送りしました

 

 

小気味よく流れるBGM。

勝利を宣誓する大統王。(ライオン)

大地を走る神の汽車。運転席にいるよく見知った(・・・・)機関士。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

『・・・無駄にノリノリだね』

『りんく?』

『西部のプロパガンダか。出来はともかく、効果は発揮しているようだな』

 

絶句する立香とマシュ。職員たち。

ジキル、アステリオスは思わずといった風に言葉を落とし、バベッジが冷静に所感を述べた。

 

「数日前から流れはじめたこのCMにより、明らかに軍の士気が上がってきています」

「・・・本人?」

「知りません。ですが、この汽車が走り出したことにより戦況は変わりました。患者の数が減ったのです(・・・・・・・・・・・)

「!!」

「ならば私がここを離れても大丈夫でしょう。ドクター・ラッシュ!」

「な、何かね!?今度は何かね!?」

 

色々慣らされている。

すっ飛んできた医者――ドクター・ベンジャミン・ラッシュに引き継ぎをし、カルデア一行はエジソンのいる宮殿を目指す。

今後の方針と、リンクの真偽を確認するために。無駄に写りのいいチラシを握りしめながら。

 

「・・・これ、貰って帰れない?」

「このチラシ自体は現代に近い印刷技術で作成されているようですし・・・。貰って帰りましょう」

『凡骨のくせにやるではないか。まあ、真の天才たるこの私の足下にも及んでいないがな!』

『マスター、吾輩たちの分も貰って帰ってきてくだされ~』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?いや勇者リンクをプロパガンダに使うとか何様????いやでも本人かも知れな・・・えっ本人?これ本人?えっ。・・・・・・ど、どうしよう」

「知らね~~~~~なんでだよ~~~~~~。本物だろうと偽物だろうとレジスタンスの士気も上がっちまったしマジエジソン余計なことしてくれたっつーかほんとに本人だったら逆にどうする??????オレは無理です。座に帰ります」

「帰らないでくれ。・・・さて、どうしたものかな、これは・・・・・・」

 

動揺のままにチラシを握りしめる金髪の少年。ビリー・ザ・キッド

机にぐったりと突っ伏したまま動かないオレンジ髪の青年。ロビンフッド。

理知的な態度を崩さない、民族衣装を纏った男。ジェロニモ。

 

ここはレジスタンスの隠れ家の1つ。エジソンの思想に反した人々と、サーヴァントたちの集まりだ。

 

「(我々がすることは変わらない。東部の(キング)を討ち取り、この大地を人間(ひと)の手に取り戻す・・・。・・・・・・だが)」

「ねえ本人だったらエジソンのとこに居るってことだよね。これ機関士の服だよね。じゃあライダーとして現界してるのかな。ねえねえ二人はどう思う??」

「本物リンクの前でこんな緑マントしてるのキッツいからライダーで来てくれてよかったと思う」

「・・・・・・会いたいのか?二人とも」

「いいいや別にそんなんじゃないしまだ本人だって決まってないし」

「いや別に大丈夫だしファンとかじゃないしマジでほんとにほんとだし」

 

うん、会いたいんだな。

ジェロニモは空気の読める大人だった。

でもジェロニモだって、許されるのならば一度、話をしてみたいと思った。

 

「いくらエジソンとは言えど、彼を無許可で使うことはないだろう。それにあの汽車(・・・・)、かすかに神性を感じる。・・・本物だろう」

 

勢いよく振り向いた二人の顔があまりにも幼くて、画面越しのヒーローを応援している子供のように、幼くて。

 

「勇者リンクがついているのならば、エジソンのやり方も矯正されているかもしれない。ならば今度こそ、共にケルトに立ち向かえる道がある。――会いに行こう」

 

ジェロニモは柄にもなく、笑いを溢してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どう思う?」

 

噛み殺し切れなかった笑いを含んで、半裸の偉丈夫が口火を切った。

 

「どうもせんさ。敵ならば、殺す。それだけだろう?」

 

長く美しい金髪を靡かせて、美丈夫が言う。

 

「しかし妙な汽車(・・・・)が走っているという報告もあります。放置するのは不味いのでは?」

 

そう発言したのは癖のある黒髪を後ろに撫でつけた、片目の下に泣き黒子のある美男子。

 

「別に? 恐るるに足らないわ」

 

清楚さと淫蕩さを混ぜ込んで、白い衣装で包み込めばこの女になるのだろう。

余裕をたっぷり、無垢を一匙、女王が断言する。

 

「大空、時、息吹の勇者ならともかく、一般人に近い大地の勇者でしょう?じゃあ勝てるわ(・・・・・・・)。殺せるわ。私のクーちゃんなら、必ずね!」

 

話を振られた狂王は、閉じていた瞳をひらいた。

もし彼が、本来のクー・フーリンならば。死力を尽くしての戦いを望む、戦士ならば。

たとえどの年代だろうと勇者リンクと戦える幸運に歓喜し、狂喜し、今すぐにでも飛び出していただろうけど。

 

「・・・所詮サーヴァントだろう(・・・・・・・・・・・)。生身じゃねぇんだ。過剰に警戒する必要はねえ」

「ええ、ええ、そうよ!流石クーちゃん!こっちには聖杯だってあるの、勇者だろうと無様に殺してあげる!」

 

狂王たちの見解は正しい。

生前ならともかく、いまは過去の影法師の身。リンクと言えども、どうしても本来の格からスケールダウンしている。

おまけに本職はただの機関士。初期は回転切りで目を回していたレベルの剣士が、聖杯の後押しを得たクー・フーリンに勝てるのか?

 

「・・・では、私が索敵してきましょうか?真偽がどうであれ、西部の士気が上がっているのは事実。ついでに妙な汽車とやらも確認してきましょう」

「んー、そうね。・・・ああ、ついでに。この世界を修正するサーヴァントが現れたらしいわ。もし見掛けたら殺してきて♪」

「了解しました」

 

そう返答した青年の声を最後に、会議が終わった。

各々が夢を見ている。ここは狂乱の国。凄惨な未来が約束された、血に濡れた大地。

悪夢は続く――――――――?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白壁の門を見下ろして、アルジュナは周囲を確認する。

念の為弓は出しているが、放つ気は無い。

・・・・・・放てる気が、しない。

・・・・・・どうして、来たのだろう。もし、本人だとしても、どうすればいい(・・・・・・・)のだろう。

アルジュナはずっと立ち止まっている。心が、体が重い。

 

もっともそんなことは、リンクには関係ないのだが。

 

「あ、本当にいましたね。さすがカルナ」

「―――――――――」

「東部の斥候か?アルジュナ。生憎見せられるものはない。大人しく――――む」

 

カルナに抱えられて崖を上がってきた少年に、アルジュナの視線は釘付けになった。

思考が一瞬で吹っ飛んで、考えていた言葉を忘れて、持っていた弓を落としそうになる。

 

「こんにちは、わたしはこういう者です。ご用件は?」

「ヒッ」

「すまない。アルジュナはお前たちのファンでな。動揺しているようだ」

 

いつものように名刺を差し出せば、息を思いっきり吸って吐き出せない時の声が漏れた。

ふらりと後ろに後ずさり、縋るようにカルナを見ては頷かれ、震える手で名刺を受け取るが――。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・む」

「む?」

「む?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・無理、です・・・・・・・・・」

「アルジュナ、落ち着くがいい」

「これが落ち着いていられますかぁ!?!?!?」

 

 

Silver bow 爆発した。

小さきもの 泣いているのか怒っているのかわからん。どうした。

 

 

「だって・・・!勇者、勇者リンクがいて、れいっせいになるなんて、ム゙リ゙で゙ず。あなただってそうでしょファンなんだから!!!!!」

「そうだな。偉大なる勇者に相見えるなど、やはりオレは運がいい。アルジュナ、お前に再会できたことも含めてだ」

「~~~~~~そ、ういうところですよ兄上!!!!!!私だって私だって女王メイヴに先に会わなければ西部に居たかったですし貴方たちばっか勇者リンクと共に戦えるなんてずるい羨ましい羨ましい!!!!!!」

「だがここまできて裏切るなど、戦士の名折れ。己が務めを果たせ、アルジュナよ」

「ゔ~~~~~~~~~~」

 

「仲がよろしいんですね。兄弟としても、ライバルとしても」

 

半泣きでカルナにしがみついていたアルジュナがびっくう!と肩を跳ねさせて、後ろにそっと隠れた。

 

「・・・・・・・・・あの、」

「はい」

「サーヴァント・アーチャー、アルジュナと申します・・・。お会いできて光栄です、大地の勇者」

「こちらこそ。マハーバーラタの英雄に二人も会えるとは、サーヴァントにもなってみるものですね」

「ヒェ、・・・イエ・・・ソンナ・・・・・・」

「すまない。容量オーバーのようだ。普段はしっかりした子なのだが・・・・・・」

 

カルナの腕にしがみつくアルジュナからは、殺意も敵意も感じない。むしろ大きな好意と敬意を感じる。

ならばもう少し踏み込んでみましょう。リンクはことりと首を傾げる。

 

「アルジュナ、あなたはわたしのことを探りにきたのでしょう?心配しなくても、わたしでは狂王に勝てませんよ」

 

驚いて息を呑む兄弟に、のんびりと説明する。

 

「わたしは剣士ではなく、魔法使いでもなく、フォーソードも持っていません」

 

いや、持ってこようと思えば持ってこられるのだが、それは秘密にしておこう。

 

「次元や光のように特殊能力も持ってませんし、理や回生のような旅人ではありません」

 

大地の笛や神の汽車は託されたものだ。リンクの肉体能力が上がっているわけではない。

 

「何より、カルデアがいます。今を生きる人々が懸命に戦っているのだから、あまり手を出したりはしませんよ」

「・・・・・・メイヴやクー・フーリンも、同じような推測を」

「ならば訂正する必要はありません。あの汽車も、物資や人々を運ぶために使っていますが、線路がなければ走れません(・・・・・・・・・・・・)し」

 

アルジュナは思わずカルナを見た。

 

「嘘はついていないな」

「ふふ」

 

 

海の男 まー悪い子

騎士 意外と口が上手いんだよな・・・

 

 

「・・・・・・わかりました。ですが、こちらに居るサーヴァントは皆ケルトの戦士。貴方を見つけたら即座に殺しにかかるでしょう」

「注意しておきます。警告の御礼に、汽車に乗せてあげましょうか?」

「エ゙ッッッッッ!?!?!?いいんですか!?!?!?ののののりたいです!!!!!!」

「カルナ、あなたもどうぞ」

「では言葉に甘えよう」

 

アルジュナ()の手前平静を装っていたカルナも、衝撃と感動と興奮で優等生の仮面をぶん投げたアルジュナも、輝く瞳で汽車に乗り込んだ。

風と共に地を駆けるこの汽車があるかぎり、大地が血に濡れ続けることはない。

そう確信できるほど、素敵な時間だった。

 

あの日振りしぼった勇気が、叫んだ言葉が、泣きながら抱きしめた希望は。

今、咲き誇る。

太陽と雷の兄弟の無邪気な笑みを見て、大地の機関士もそっと微笑んだ。

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