勇者リンクS’の人理修復配信RTA   作:はしばみ ざくろ

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リンクたちの口調を直しました


抗菌性の絶唱

燦々降り注ぐ太陽の光。焼かれて熱した荒廃の地。

場違いなほどに絢爛なのは、プレジデントのおわす王宮だけ。

 

「ようこそ!会えて嬉しいぞ!クリミアの天使にカルデアの諸君!」

 

分厚い城門は開かれた。王の心情を表しているかのよう。

先に合流していたレジスタンスの面々と打ち解けているのがいい証拠だ。大統王は葛藤を降ろし、夢を背負い直し、誇りを掲げて歓迎した。獅子の毛づやもピカピカである。

 

『我々のことをご存じで?』

「大地の勇者から聞いたとも。星見の愉快な後輩たち、とな」

『ヒュッッ・・・・・・・・・・・・』

『メディア・リリィ!パラケルスス!気を確かに!』

「先ずは現状から説明しよう。この時代を苛んでいる、女王と狂王についてだ」

 

現在確認されている東部側のサーヴァントは六騎。

メイヴ、クー・フーリン、アルジュナ。そしてケルトの戦士と思われる三騎だ。

聖杯を持つメイヴによって無尽蔵に生み出される無限の兵士たちは、大統王率いる機械化兵士によってギリギリのところで食い止められている。

しかしそれも長くは続かないだろう。数、質、勢い、全てにおいてこちらが劣っている。―――――劣っていた、のだ。

 

「大地の勇者は線路を敷いた。西部の領土、隅々まで行き渡るように!それによって人員と物資の速やかな移動が可能になった!」

 

しかもこれは宝具だ。

旧き神話。ハイラルの時代の神秘。

たとえ千軍万馬のサーヴァントだとしても、壊すことすら容易ではない。

 

「徐々に、徐々に、攻勢は転じてきている。この機会を逃す訳にはいかない!」

「同意です。これ以上怪我人を増やすわけにはいきません。早急に根本を断ちに行きましょう」

「あのCMについては触れていいの?」

「あれか!君たちも見たかね!素晴らしい出来だろう!!!西部のプロパガンダとして製作したのだが思いのほか反響が良くてね!勇者が最高、私も最高、兵士の士気も急上昇!!!!本当にいい仕事をしたものだ!!」

『素晴らしいのは勇者リンクと編集者の腕だろう。そんなこともわからんのか凡骨が』

「その不愉快な言動と態度はすっとんきょう!ミスター・すっとんきょうではないか!私がリンクくんと一大プロジェクトを成し遂げたからといって、そう嫉妬するな。見苦しいぞ?」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

画面越しの睨み合い。二人は犬猿の仲だ。

鼻で笑うライオン。青筋を立てる美丈夫。

立香は火花が散ったのを幻視した。

 

 

『「死ね!!!!!」』

「や・め・な・さーい!!」

 

「スゴいですね先輩!史実通り仲が悪いようです!」

「水と油ってこういうことを言うんだね」

 

があがあと騒ぐ大人たちの声が天に響く。鳥もびっくりなシンプルな煩さ。ここでブリテン平等チョップ!

大人しくなったテスラをランサー・アルトリア〔オルタ〕が隅に片付けた。世話の焼ける天才である。

 

一方エジソンは麗しい少女に叱られている。あんまり良くない絵面の後ろをゆったり歩いてきたのは、黄金の鎧を纏いし戦士だ。

 

「こんな時まで喧嘩しないの!リンクに言いつけるわよ!」

「そそそそれは勘弁してくれ私が悪かった!!!」

「お前たちがカルデアか。自己紹介が遅れたな」

「い、いえ、お気遣いなく」

「すでにマイペースなのがわかる」

 

ベレー帽で東雲色の髪をおさえた少女。キャスター、エレナ・ブラヴァツキー。

空を泳ぐ雲のように白い髪のランサー・カルナ。西部側に組みするサーヴァントだ。

 

「先に伝えておく。勇者リンクは不在だ。自力で西部まで逃げられない避難民を救出しに行った」

「そうなんだ・・・!ありがとう」

「それともう一つ。フローレンス・ナイチンゲール」

「なんでしょう」

 

芽吹いたばかりの若草の瞳が、ナイチンゲールをひたと見据えた。

 

「レジスタンスの長が呼んでいる。治療を施してほしい英霊がいると」

「行きます。すぐに案内しなさい」

 

風が吹いている。

枯れた大地を呑み込むように、冷たい風が。

 

「先輩、私たちも行きましょう」

「うん」

 

日盛りは過ぎた。

陰影が濃くなって、足下にぞろりと広がる。

駆けだしていった少女たちを叩く、向かい風の強さよ。

 

「・・・来たか。待ちくたびれたぞ・・・・・・」

「すぐに治療を!」

「酷い・・・!心臓が・・・!」

 

避難民のテントが点在する庭に、濃厚な死の気配が漂っている。

入り口で待機していたサーヴァントに促され、幕を上げれば血のニオイ。心臓から溢るる呪いの血。

 

掠れた視界で、途切れ途切れの呼吸で、それでも少年は希望を待っていた。

それだけが、今の自分にできる唯一のことだから。

 

「――こんな傷は初めてです。ですが、見捨てることはしません。安心しなさい、少年。地獄に落ちても引き摺り出してみせます」

「くく・・・・・・それは、安心できそうだ・・・!あ、イタタタタタ!加減は!加減はしてくれ!」

 

この希望、怖いなぁ・・・!

若干そうも思ったが、どのみち動けないので大人しくした。

彼こそがインドにおける二大叙事詩の一つ、「ラーマーヤナ」の主人公。セイバー・ラーマである。

 

邪魔にならないように退出した立香とマシュは、三騎のサーヴァントと相見える。

乾いた大地に根を出した木のように、揺らがぬ意志の瞳をもつ英雄たちと。

 

「私はジェロニモ。キャスターのサーヴァントだ」

 

ネイティヴ・アメリカン一部族の“精霊使い(シャーマン)”であり、何十年も“白人社会”と戦い続けたアパッチ族の戦士。

獅子の如く戦うその様は聖ジェロームと恐怖され、大翼の勇者と讃えられた。

 

「アーチャー・ロビンフッド。ま、ぼちぼちよろしく」

 

ロビンフッドに該当する、数多くいた"誰か"のひとり。

顔のない、名前のない森の義賊。世界一有名な緑衣の英雄に重ねられたせいか、知名度は非常に高く。本人の劣等感は強い。

勝つために手段を選ばないのは、リンク達だって同じなのだが―――――。

 

「同じくアーチャー。ビリー・ザ・キッドさ」

 

アメリカ西部開拓時代の代表的なアウトローであり、21歳で21人を殺したと言われる、少年悪漢王。

アウトローな金髪ガンナーという経歴から、光の勇者を重ねる人間も多い。ビリー自身も満更ではない。

 

「なんか・・・二人とも、元気ない?」

「勇者リンクに会えると思ったのに会えなくて肩透かしを食らっているだけだ。気にしないでくれ」

「はーーーーーー!?別にそんなんじゃないし!!」

「はーーーーーー!?ガキじゃねえんだからそんなワケないでしょ!」

 

そんなワケありそうだが、立香は慣れていたので流した。

カルデアのサーヴァントたちも、わかり顔をして頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・悔しい。悔しい、悔しい、悔しい、悔しい・・・!追いかける死の速度を鈍くはできても、止めることはできないの・・・!?」

 

立香の肩が驚いて跳ねる。初めて聞く女の声だった。

怒りと悲鳴が混在した、ナイチンゲールの魂の叫び。

 

「いいえ、諦めはしません。この肉体が生きているかぎり、私は私の役割を果たすのです!」

「ああ、婦長、お手柔らかに!」

 

鬼気迫る表情で治療を施すナイチンゲールは、確かに正気とは思えない(・・・・・・・・)

殺してでも治してみせる。死んでも救ってみせる。狂気に感じるほどの信念と姿勢。しかしこれこそが、「近代看護教育の母」と呼ばれる女の姿。

看護師という職業そのものの社会的地位向上に貢献した、鋼の意志を持つ看護師の生き様なのだ。

 

「(同じ医療従事者でも、キアラさんとは違うな・・・)」

 

その背中を、立香は天幕をずらして覗き見た。

将来の夢は決まっていないけれど、将来のために色々見ておくべきだって、高校の先生も言っていたし。

 

「ラーマは、誰にやられたの・・・?」

「・・・・・・アイルランド最強の英霊」

 

喘鳴のラーマに変わって、答えたのは悩ましげなジェロニモ。

まるで大岳で立ち往生した登山家のようだ。吐息が転がり落ちた。

 

「狂王クー・フーリンの持つ槍ゲイ・ボルクによって、ラーマは呪いを受けた。放てば必ず心臓を破壊するという“呪い”に」

「!!」

「“呪い”・・・?オカルトは好みません。どういった対処ができますか?」

 

ラーマの心臓は半分抉られ、治癒しても抉られた状態に戻っていく。

まるでその状態こそが、正常だとでもいうように。

 

『治療より解呪が先だよ。一番手っ取り早いのは、傷を負わせた本人を倒すこと。もしくは解呪できる者を探す』

『これは本来は死んでいるはずの状態を、ラーマが無理矢理逆転させているのが現状だ。その2つよりも、治療の精度を上げるのが現実的だろう』

『アスクレピオスの言うとおりだ。医療に人体の理解は欠かせない。患者が人間ならば貴女の理解は万全で、治療の効果が上がることはない』

 

だが彼は“英霊”。精度に伸びしろがある。

 

『一番いいのは生前の彼を知っているサーヴァントと接触を図ることだ。生前の彼という設計図(にくたい)を知っているのなら、間違いなく治療の効果はあがるだろう』

「・・・・・・・・・・・・それは、なんとも幸運だな」

 

全員の視線が集まった。

快調なら薔薇のように赤いだろう瞳は、今は苦痛に染まっている。

 

「一人、いる。・・・余はその者の行方を尋ねる為・・・あの狂王に、戦いを挑んだのだから・・・」

「・・・誰、ですか?」

「――――我が妻、シータ」

「敵襲!!」

 

反射的に立ち上がったのは立香とマシュ、ジェロニモはもう飛び出している。

ロビンは避難民と共に残り、ビリーが後を追いかけてきた。

 

 

・・・地鳴り。

地鳴りだ。

大地が、揺れている・・・!

 

 

「ドクター!」

『サーヴァント反応が一騎!まだかなり遠いが・・・! 何だ・・・!?地面が・・・!』

「先輩、気を付けて!」

 

地面が割れて、裂けて、砕かれていく!大地を犯す虹色の剣光よ!

猛獣が吠え猛るような螺旋を引き連れて、その男は現れた。大熊のような足取りで、大口をあけて笑いながら!

 

「はっはっはっはっはぁ!来たか、誇り高き西部のサーヴァントたちよ!」

『リンクの線路だけを(・・・・・)避けて地形を破壊している!?なんて宝具の精度だ・・・!?』

「この線路は壊すのに手間取りそうだったのでな。だがこれ以上敷かれるのも困る。故に、地形ごと破壊させてもらった」

 

その剣の名は虹霓剣(カラドボルグ)

『虹の如く伸びた剣光』によって丘を切ったという伝説により、地形破壊兵器としての側面を色濃く有している魔剣だ。

そしてその剣を携える、恐れ知らずの勇士の男。西部のサーヴァントたちに囲まれても、堂々とした姿を隠しもしない。

 

「セイバー、フェルグス・マック・ロイ。ケルトの将としてお前達を穿ちに来た。・・・何だ、たった三騎か?」

『フェルグス・・・!クー・フーリンの友にして養父でもあった魔剣使い。彼の下に仕えるのは道理か・・・!』

『どう思うさっきから不自然なほどに黙ってるキャスター』

『俺も槍欲しいなー』

『現実逃避が過ぎる・・・』

 

管制室では天を仰いでいるキャスター(クー・フーリン)がモードレットとアーサーに呆れられていた。

 

「まあいい。お前達全員を殺せば、穴熊を決め込んでいる勇者も出てくるだろう」

「!!」

「行くぞぉ!」

 

剛撃刺突。引き絞られた豪腕が勢いよく剣を引き、貫く。

たったそれだけの攻撃をマシュは冷や汗をかいて受け止めた。手が痺れるほどの衝撃。アステリオスやヘラクレスに純粋な腕力は劣るものの、技術の上手さがそれを感じさせない。

両手にナイフを構えたジェロニモが背後から襲いかかる。フェルグスは盾を弾いた残心のまま横薙ぎで打ち払い、死角から飛び出してきたコヨーテに気づいた。

 

「ぬんっ!」

「く・・・!」

 

即座に背後に回した剣で祖霊を受け止めて、ひび割れた大地を踏みしめて放った剣閃の余波で銃弾を撃ち落とす。

虹色の剣光が出鱈目に唸りを上げる。どんどんと地形を破砕していく。立香はまだ影響の少ない部分を移動しながら、タイミングを待っていた。

マシュとジェロニモが仕切り直すために体勢を直し、ビリーが遠距離から撃ちまくる。鼓膜を掻き回す鉄の歌が、荒れ続ける大陸に響いた。

 

「当たらん!」

「ムカつくなぁ!」

「手を休めるな!引いたら勝てんぞ!」

「マシュ!」

「はい!」

 

瞬時に間合いを詰めて、勢いのまま盾を振るう。当然のように受け止めたフェルグスの袈裟切り。重い唐竹、技量の逆袈裟。受けづらく、躱しづらい縦横無尽の連撃。だが、まだ見える(・・・・・)

 

「(疾さならディルムッドさんやヘクトールさんの方が上・・・!)」

 

百戦錬磨の戦士に敵わなくとも、こちらだって経験は唯一無二。

受けづらいのならば(・・・・・・・・・)受けてやろう(・・・・・・)。マシュが体運(たいはこ)びを僅かに変えた。

 

「・・・んん?」

「(奮い断つ決意の盾――)」

 

怪力を受け止めきれずに盾ごと吹き飛ばされ――――たように見えた。剣先が勢いのまま外にずれる。軽い手応え。フェルグスは奇妙な感覚に訝しみ、極限の鍛錬によって染みついた体捌きで剣を構え直してマシュにトドメを――――。

 

 

「オーダーチェンジ」

 

 

入れ替わった。

まずそう知覚して、認識して、既に動いていた剣に更に怪力を乗せた。驚愕はほんの一瞬。

マシュと位置が変わったジェロニモが全力でそれを受け止める。衝撃が空気を割り、甲高い音が戦場に鳴った。

勇士は油断しない。フェルグスの魔力量が上がった。報告するロマニの声を聞きながら、立香は虹の波濤が吹き上がるのを見て。

 

壊音の霹靂(サンダラー)

 

岩に当たって砕かれた波のように、崩壊していくのを見た。

 

必中の矢の如く霊核を砕く、ビリーの射撃。

ビリー・ザ・キッドが愛用していたと言われるリボルバーによる、カウンターの三連撃。つまりフェルグスが宝具を発動した「後」に、フェルグスより「先」に宝具を撃ち放ったのだ。

正確に言うと拳銃が宝具という訳ではなく、「この拳銃を手にしたビリー・ザ・キッドの射撃」全体を包括して宝具と見なされており、固有のスキルに近いもの。

 

「・・・ははっ!」

 

フェルグスは笑った。

いつの間にか黄昏に染まっていた空を見上げながら、なんと清々しいと。

 

「いや、見事だ。西部の勇士達よ。女王には顔向けできんが、これも戦士の宿命。大人しく去るとするか」

「待って!フェルグス、ラーマの妻・・・シータを知らない?」

「おお、将来有望そうな可憐な娘!シータという女かどうかは知らんが――――アルカトラズ島に幽閉されているサーヴァントがいる。いるとしたらそこだろうな」

『アルカトラズ島・・・!?脱獄不可能と謳われたあの島か!?』

 

いつの間にか風が止んでいる。誰そ彼がやってくる。

ラーマの視界にはまだ、薄暗く染まっていく天幕しか映らない。

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