勇者リンクS’の人理修復配信RTA   作:はしばみ ざくろ

89 / 117
タイトルと本文をいくつか訂正しました。


輝く王冠(キリーティ)

時は少しさかのぼり。

ホワイトハウスは一触即発。対してリンクは侃侃諤諤。

表面上は喧騒から遠い、白壁の宮殿にて通信中。

 

 

奏者のお兄さん 北部でなにかしらの召喚術が動いてない?

いーくん これは……ハァ?なんだこりゃ

うさぎちゃん(光) どうすんの大地~~

 

 

どうしましょうかね。丸投げしたいけどするほうが面倒。なぜならわたしが一番強い

 

 

目を閉じて、探知を迸らせる。

大陸を覆う宝具のお蔭で、魔力の道ができていてよかった。わたしこれでも素人ですからね。北部の様子を精査して、異物たる術式を読み取っていく。

聖杯をこう使うとは――。なるほど。敵ながら天晴。これが女王メイヴですか。

 

 

騎士 詳細は省くがサーヴァント全キルした

うさぎちゃん(闇) この人は何?????

 

 

その報告今じゃないとダメでした???

 

 

わたしたちの始祖がマイペースすぎる。

いけないいけない、集中して…。……ああ、でもこれ用は召喚術ですね。なら、確かまだアルジュナがいたはず……。

 

 

騎士 お前は多忙で二窓できていないだろうし、読者にも忘れられかけていそうだから……

 

 

はいはいメタ発言メタ発言。その調子で聖杯でも手に入れてください。…こちらは今――

 

魔神の召喚なうです

 

 

不自然に乱れる魔力が大地の秩序を絡めとり、ごうごうと荒ぶり始めた風が金髪を乱す。

ピンと張った布に突き立てられたナイフを幻視して、リンクはため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月面顔負けのクレーター荒野。佇む白だけが光を反射して。

きらり。

風に吹かれた綿毛のようにほどけていくエーテルは、天を仰ぐアルジュナの輪郭をぼやけさせていく。水に溶ける絵の具のように、境界線をなくしていく。

悪くない。

心は澄んで静謐を取り戻し、闘志はそっと仕舞われた。

最後に、この「新生ハイラル王国」という大地に受け入れてもらえるのならば――――。

 

「感傷に浸っているところ申し訳ありません。アルジュナ。今よろしいですか?」

「…はい? ………………………!?!?」

 

 

ウルフ やんのかステップ

災厄ハンター エビ

 

 

キュウリを背後に置かれたネコみたいだなぁと大地は思った。

カッ!!っと見開かれた目が驚愕を表して、体重移動に失敗した足元がふらつく。無様!アルジュナの脳内に一瞬で嵐が吹き荒れる。恥!リンクはまったく気にしていないし、なんなら初見の時の方が荒ぶっていたが、とりあえず消えなくては――――と混乱した思考が逃亡を図った。お手本のようなパニックである。

 

「すみません。ちょっと還るのは待ってもらえますか?あと大丈夫ですか」

「ハイ……(小声)。大丈夫です。元気です(震え)」

「そうですか(全てをスルー)」

 

なんとか腰を抜かすのだけは回避したようだ。英雄…!私は英雄……!頑張れアルジュナ……!

 

(そういえば今ここはハイラル(仮)なんですから、リンク(わたし)の気配が馴染んで同化しているのは必然でしたね。反省反省)

 

「では改めて。お願いがあります、アルジュナ。最後に一度だけ、わたしに力を貸してください」

「……ぇ」

「貴方の宝具が必要なんです。カルデアに、この世界に――」

 

見つめる眼は黒曜石。鋭い切っ先を内に隠し、少年はか弱く訴えて。

憧れの勇者に頼られるという予想外の展開に、インドの英雄は象に轢かれたような衝撃を受けた。

 

 

ウルフ 押せーっ!

災厄ハンター いけーっ!高い壺とか売れーっ!

いーくん 売るな

うさぎちゃん(光) 買いそう

 

 

「――アルジュナ」

 

真っ直ぐに、差し出された手は余りにも少年だった。こんなに、小さかったのか?

すこんと押し出された思念が言う。豆がつぶれた掌を見下ろして。他人事みたいに感じている。

まだ騒いでる頭から滑ってつるん。スピンしそうな言葉尻を捕まえた。行くな行くな待て待て。今なんて言った?反芻。お構いなしに流れていく全身の魔力が、光の粒子となって視界を遮る。消えて、いく――――。

 

「はい!!!」

 

からまだよくわかっていないけれど返事をした。大きな声だったので、わりと響いた。

 

「ありがとうございます。では先ほど線路から塔に集まった魔力を回収してきたので、貴方に譲渡しましょう。これだけあればもう1発撃てますね」

「2、3発撃てそうです」

「1発に収めてください。わたしが今から指定する場所へ赴き、召喚された"モノ"。――魔神柱を完全消滅させる。それが貴方の、この特異点での最後の仕事です」

 

「よろしいですか?」と猫目が言う。できないなんて思っていない、確信に満ちた笑みがある。

アルジュナはもう夢中で頷いて、ぎゅっと握りしめた両手から流れてくる暖かい魔力に、なぜだか泣きそうになって。

振り返ることを我慢して一歩を踏み出せば、背中をぽんと叩かれる。友のように軽快に。仲間のように気安く。

――――それで十分だった。

 

 

彼……いい子ですね

 

 

同意のチャットが流れ、アルジュナの好感度が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エレナ君」

「何かしら」

「アレは何かな」

「そうね。世界の終わりに見えるわ……」

 

北部戦線異常アリ。

その禍々しさは、観衆の目に焼き付いた。不本意に。

地を割り血を吸い世界に割り込んで!肉の芽が芽吹く。肉の目がひらく!――――咆哮。

ビリビリと大気が震えて伝わるのを、エジソンとエレナは受け止めて。見上げるままに呟く。ああ、空が見えない。

 

「全軍、撤退!!てったーーーい!!人間の兵士は下がれ!」

「残ってたケルト兵も飲み込んだ(糧にした)か……」

「やばぁ……」

 

引いていく人波。駆けつける英霊。近づくほどに圧が増え、口数は少なくなる。静かなる対峙。

魔神柱がハイラルの大地を穢しては、かき消していく。むき出しにされたアメリカを踏みにじり進軍する。

李書文とベオウルフは顔を見合わせて、勝負の続きに戻った。管理者たるリンクが気づいていないわけがないし、本人が即座に出てきていないのなら、その程度(・・・・)だろう。

 

「とはいえ流石に気が散るな。あれが噂に聞く魔神ならば、この戦いも終盤のようだ」

「やれやれ、リンクとの戦いはお預けかねぇ。――とはいえ」

 

構えを直す。極限まで引き絞られた弓の弦のように。

鍛え抜かれた鋼の肉体が、今か今かと、獲物に食らいつくのを待っている。

 

「相手に不足は無し」

「然り。戯れは仕舞いだ。我が絶技、その真髄以て――貴様を、殺そう」

 

闘争心は振り切れた。次で、全てが終わる。

 

「上等!――源流闘争(グレンデル・バスター)ーーッッ!!」

絶招(ほうぐ)猛虎硬爬山(もうここうはざん)ッッ!!」

 

雄叫。

振動。

打撃音。

混じりあって、

 

 

 

「――――お待たせしました」

 

 

 

川のせせらぎのような、声。

 

「えっ」

「えっ」

「アルジュナじゃん」

 

涼やかに、男は降り立った。

深い青が視界を泳いで、すぐに彼のマントだと気づく。

 

「あの魔神柱は、私にお任せを」

 

霊基が再臨している――?

集った英霊たちを庇うように現れたその背中を、ジェロニモは無言で観察した。そして息をのむ。

アルジュナの身体を満たし、爪の先までめぐる、濃厚な魔力を。

 

「…味方かね。」

「ええ。大地の勇者が私を使わせました」

「じゃあよかった。貴方に任せるわ。お願いね、アルジュナ」

 

エジソンとエレナが肩の荷を下ろし、ロビンとビリーは安堵の息を吐いた。

もちろん、増援が来なくても死ぬ気で抵抗する気ではあったけど。

いざこうして的確な采配を見せられると、さすが勇者リンク…!の気持ちが無限に湧いてくる。今ボルテージは最高潮!そうだね…。わかる。サーヴァントたちはアイコンタクトで通じ合った。

ふわりと、気負いも殺意もなく、アルジュナが一歩を踏み出して。

 

「神性領域拡大。空間固定」

 

託されたことを、託されたままに。

必要なのは、誇りだけ。

 

「神罰執行期限設定――全承認」

 

光球―――、下から見上げるサーヴァントたちには、眩しい白にも、(そら)の黒にも見えた。

 

「シヴァの怒りを以て、汝らの命をここで絶つ」

 

魔神柱を見下ろして、光はさらに天に上る。

地を這いずる触手にも、命を潰す死線にも、決して届かぬ次元へ。

 

破壊神の手翳(パーシュパタ)!! 弾けて……落ちよ!!」

 

飲み込んで押しつぶして広がって巻き込んで――――。大地を揺らす。

魔力の突風が突き抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしにもダメージ来てるんですけど

 

 

奏者のお兄さん しゃーないて

いーくん あんなに広く宝具を展開してたらね

 

 

余波は地鳴り。光は雲を晴らして。

無残に崩れ去ったホワイトハウスに、君臨するのは狂王だ。

七十二柱の魔神が一柱、ハルファス。それすらも噛み砕いて、取り込んで、まだ強さを求めている?

 

「貴方の命を救いたい。――貴方の命を奪ってでも」

 

瓦礫まみれの戦場に立つ、天使は凛と宣言した。

一足早く復帰したラーマと、カルデアの面々は釘付けになる。

ごうごうと燃えさかる、ナイチンゲールの瞳を見て。

 

「…ハッ!先輩!先輩!ご無事ですか…!」

「うん…なんとか。マシュが庇ってくれたから――」

 

嗚呼!魂が叫んでいる!

 

「全ての毒あるもの、害あるものを絶ち! 我が力の限り、人々の幸福を導かん!我はすべて毒あるもの、害あるものを絶つ(ナイチンゲール・プレッジ)!!」

 

幻にしては鮮やかな、白衣の女神。

戦場を駆け、死に立ち向かったナイチンゲールの精神性が昇華され、「傷病者を助ける白衣の天使」という看護師の概念さえもが結びつき誕生した宝具。効果範囲のあらゆる毒性と攻撃性は無効化される。

振り下ろされた剣は傷を癒すために、貴方を、治すために――!

 

「――マスター。さあ、救命の時間です」

「傷が……!魔力も……」

「ええ、私が癒します。何もかも全て、元通りにします。何度でも何度でも何度でも」

 

鎖で身体を雁字搦めにされたような息苦しい拘束を受けてもなお、狂王――魔神クリード・コインヘンは揺らがない。

 

「理不尽を踏みにじり、絶望を踏破して」

 

剣は手から落ち、銃は弾を吐き出さず、爆弾は化学反応せず、魔術は組みあがらず、宝具は真名解放されない。強制的に作り出される絶対安全圏の中でも。

魔人の殺意は消えず、ただ冠を抱いた。

矜持によく似た、心持ちで。

 

「その為に、私は全てを捧げましょう」

 

 

パパこれどうなるの

 

 

海の男 勝負が長引くことはないだろう。最終決戦ってやつさ

 

 

シールダー、マスター、ソルジャー、ナース。

誰も彼も、怯むことなく。

魔神クリード・コインヘン。

姿形が変質しても、どうしようもなく、クー・フーリンだった。

立香の知る、真面目で義理堅く、最後まで格好いい英霊だった。

 

「だから」

 

右手の甲が光る。

 

「だから、絶対に、負けない…!」

 

正々堂々叩き潰して、貴方の冠を砕いてあげる!

ちょっとティーチャーたちの教えが良すぎて、好戦的に育ってしまったマスターなのだった。

 

「令呪をもって命ずる――――!」

 

 

……勝ちましたね。やれやれ。久しぶりに大仕事でした




次はエピローグです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。