ここは世界の狭間、時の神殿。トライフォースが眠る神秘の場所。
またの名を時の勇者の別荘。本宅は妖精郷にあるコキリの森である。
「では、ミーティングを始めます」
ホワイトボードを指示棒でぺしんと叩いて、次元の勇者は宣言した。
「はーい」
お利口に体育座りをして、ラヴィオは返事を返し。
「おー」
アウトドアチェアに腰かけた時の勇者は、気だるそうな声をだした。どちらも通常運転である。
「これまでのあらすじ。第六特異点に参戦したユガ&ザントは、獅子王に聖罰されそうになった現地人を助け、山の民の所まで連れて行ってくれたのでした」
「善行」
「しかも結界張って食料も恵んでくれてる」
次元の勇者、リンク。
神トラ2ではユガを倒しハイラルとロウラルを救い、トライフォース3銃士ではシスターレディを下した少年――だが。今はオシャレに目覚めカワイイを追求する、流行りに敏感な鍛冶屋である。
「その後二人は山の民の代表として、ファラオ・オジマンディアスの元に赴き、不可侵条約を結びました」
「仕事が早い」
「オジマンもびっくりしただろうな…」
ロウラルの少年、ラヴィオ。
ウサギのフードをかぶれば、人ん家を勝手に店に改造する図々しさをもつ商人で。
素顔を見せれば、後世でロウラルの勇者と呼ばれる存在である。本人はヒルダに仕えるしがない使用人、そんな評価は身に余ると謙遜しているが。
「事態を重く見た獅子王は、2人を倒せる“勇者”を召喚しようとしましたが、失敗」
「それはどうして?」
「勇者リンクではなく、“ただの勇者”だったから。問い合わせが大雑把すぎるうえに、強引に辿れる縁もなかったので」
次元の勇者がホワイトボードに、『獅子王→力をためている』『同盟→カルデアまち』と記入した。
「とは言っても、獅子王もカルデア待ちなんじゃない?あのバリアはマスターソード…退魔の剣があれば解けるんだし。なんなら人質にしたっていい」
「カルデアの人を?人質にして?結界を解かせるってこと?そんな手段を選ばないことある???」
「重要なのは“聖剣”の部分じゃなくて“退魔”の部分なんだけど、獅子王サイドには無いからな。だから半年も膠着状態なんだろうし」
ため息交じりに頬杖をついた時の勇者は、記憶の中の第六特異点とまったく違うルートを辿っていることに、内心で白目を向いていた。
「で、問題はもう1つ。ガウェインの剣がユガに取られちゃったよ。兵士長とどっちがマシかな」
「兵士長、逆に剣を忘れて助かったのかもしれないね……。ある意味面目は保たれてるし……」
「ガウェイン、ほんとにほんとに落ち込んでてかわいそう。相手が相手なのでアグラヴェインも強く言えない時の顔してる」
キュッキュッと水性ペンがステップ、白いステージに足跡を残す。
『てかこれ宗教戦争じゃね?』
「そうだよ。だから俺は妖精郷に逃げる。風の時みたいに手伝えないからな」
「まあ時はね~。生前えらい目にあってるからいいよ。だからって他のリンクが口を出せるのかと言ったらうーん」
「もともとが聖戦と呼ばれてるからねぇ……。でも、行かないって選択肢はないんでしょう?勇者くん」
「まぁね。今回は見届け人として行くよ。どっちにも肩入れはしないけど」
くるんと赤いペンが登場。ついでにボードも一回転!『ユガがえらそうにしてるのはムカつく』
「なにいい空気吸ってんだってなる」
「わかる」
「ボコるにしてもほどほどにな。あの特異点、ジェンガより崩れやすいから」
「あとガウェイン曇らせは需要ないので」
「それは人によるだろ」
第六特異点 神聖円卓領域 キャメロット
聖都、見てみたいぜ。
そんな素朴な気持ちで正門の前にたどり着いた次元の勇者は、城壁を感心した顔で見上げていた。
白がいいよね。白が。絢爛さでいうのならば、ハイラルもドレース王国にも負けていないのに。こんな立派な都市に住むのが神と英霊だけだなんて、もったいないにもほどがある。
街は人が住んでこそ機能するのになぁ。賑やかな営みの中で暮らしていた鍛冶職人には耐えられないよ。
やれやれ。大げさに肩をすくめて、一歩を踏み出した。
「こんにちはー」
固い石壁をノック…するのは痛そうなので、エアーで。
「旅のものでーす。道を聞きたいんですけどー。誰かいませんかー」
もちろんこれは方便だ。門が開いて、誰かしら出てきてくれればいい。あとは口八丁でなんとかなるでしょ。
今日リンクがここに来たのは、ガウェインの様子を見て、自力で剣を取りに行けそうなメンタルが残っているか。そうじゃなかったら代わりに行ってやるか……の確認に来たのだ。
別にリンクは、聖剣を奪われたことを情けないとは思わない。ユガの壁画化魔法はリンクでも腕輪がないと対処できないからだ。
あとあいつらはとにかく精魂がねじ曲がっているからね。他人の絶望顔でご飯食べる奴らだから。あまり落ち込ませていたくない。どうせ虚数空間で留守番してるやつらは覗き見てるだろうし――――。
城門が重々しい音を立てながら隙間を大きくしていく。リンクにとっては耳なじみのある金属音を立てながら、騎士たちが周りを囲むのをぼんやりと見持った。背が高いなぁ。
「客人、名を伺いたく」
「リンクだよ。初めまして、ガウェイン」
「…………。初めまして」
リンクの服よりも深い、深い緑が相対する。
疑いと戸惑いを隠せていない瞳が、さらに困惑を強くした。本物…なのだろうか。
でも、あの背負っている剣はマスターソードだ。見た目をどれだけ偽れても、聖剣の輝きまでは誤魔化せない。…………本物?本当に?
「ガウェイン。ボクは君に用があってきたんだけど、君の王さまはそうじゃないみたいだね」
「え、――――我が王」
「英霊ですら、敵か味方でしか判断できないんだね。女神さま」
正門の上に立つ、威光。変わらず顔は見えず。
けれど、主は槍を構えた。まるで禊を求めるかのように。
〇バードマスター あれが聖槍?すごいな…
〇騎士 ハァッハアッ 身勝手な女神 滅亡の世界 ハァッハアッ
〇ウルフ トラウマ開いてる人いるんだけど
「――――この門をくぐる者は限られている」
鎧が反射して余計に眩しいなぁ。
見上げる顔に危機感はない。動揺しているのはガウェインだけだ。
「旅人よ。おまえは何の為に、この果てに訪れた?」
「この時代の行く末を見届けるため」
「旅人よ。おまえは我が理想を否定するか?」
「いいえ。けれど、肯定もしない。ボクは君を救わないが、君を殺しにいくこともない」
「……………………………」
獅子王。自ら死を選ぶこともできなかった、哀れなヒトよ。
君はボクを引きこむのかな?どちらでも構わないよ。どうせ断るし。
「旅人よ。おまえは異邦より来る"星"であるか?」
「いいえ、女神さま。さっきから質問ばかりだけど、そんなにボクが気になるの?」
こてりと、首を傾げた。
務めて穏やかに、歌うように伸びやかに。
「勇者としての責務は果たすよ。ユガとザントは適当なところで帰らせる。それでは不満?――不満なんでしょう。貴方の計画は、もう半年も停滞しているからね。正直にお願いすれば?あの結界を壊してくださいって」
〇小さきもの 煽りよる
〇うさぎちゃん(闇) 別に勇者くんも聖罰を許してるわけじゃないので……
「不要だ。いかな守りであろうとも、大地を飲む荒波に耐えられるものはいない。旅人よ、おまえはなぜ善を知りながら悪を正さない?善にありながら悪を許す?おまえのような魂は、聖槍に選ばれない」
「―――――」
ガウェインが凍り付いた。
「さすが、ただの
粛正騎士たちが剣を抜いても、リンクは一瞥すら寄こさない。
「悪が善を成すことはあるし、善が悪逆を成すこともある。人間を属性でラベリングしてはいけないよ。――なんてこと、もうあなたは忘れちゃったんだね」
人を愛するあまり、人であることをやめてしまった。やめることが
リンクはマスターソードを手放したが、彼女はロンゴミニアドを手放せなかった。
それは同情すべき事実ではあるが、裁くのも許すのもリンクじゃない。
今を生きる人間しか見ていない神さまには、今を生きる人間が否定をぶつけなくてはいけないのだ。
「おまえは――おまえたちは、世界を救う手段を持っているのに、なぜ動かない?」
「だから自分が救うって?」
「そうだ。私は人間を失うことに耐えられない。だがおまえは、あの悪を野放しにしている時点で悪そのものだ」
サンドロッドを手元に呼び出す、リンクを見ていたのは粛正騎士だけ。
ガウェインの視線は地面に縫い付けられていたし、獅子王はすでに背を向けていたからだ。
そして見ていたからといって、対処できるとは限らない。
「死ぬがよい」
騎士たちがひっくり返った。
地面に叩きつけられる金属の合唱に、うつむいていたガウェインの肩が跳ねる。勢いよく顔を上げて、リンクを囲んでいた粛正騎士が無様に倒れているのを視認する。
「なっ……」
「砂地以外でも使えるんだよ、これ」
よいせっと肩に担ぐと、ふらついていた視線が固定される。
……なんて顔をしているのだろうか。
迷子になった子供が、親を探しているかのような。
「ボクは彼女のお眼鏡にかなう“正しい人間”じゃないみたいだ」
「――――そ」
言葉が詰まる。続かない。
ガウェインの脳内は、もうずっとぐちゃぐちゃで。
「そんな、はずは」
貴方だけは。
……貴方だけは。
正しさと、強さと、勇気の象徴だから。
ブリテンの誰もが憧れた、騎士の中の騎士で。
「でも、君の王さまは違うって言ったよ」
「……いえ、いえ。王だって、貴方のことは、」
「
貴方が間違っているはずがない。私が憧れた騎士たる貴方、が――。
「女神さまになって、それも捨ててしまったかな。そうでなきゃ、部下の憧れを貶さないよね」
「王が…………」
「そうだよ。今、君の憧れたるボクを否定した」
父が亡くなっても。母が狂っても。
泣く弟を慰めた夜も。妹と共に開いた小説にも。
ずっと貴方がいて。
幼い私を、夢の世界に連れて行ってくれた。
あの瞬間だけは、私はただのガウェインだった。
それを王も知っている――――。
「どうして…………?」
知っている――――はずだったのに。
もうあれは、アーサー王じゃないことを。
どうして。
どうして。
胸が苦しい。
「君はボクを正しさの指針にしていたのかな。……だとしたら、なぜこの道を選んだの?」
「ぇ……」
「獅子王ならいいと思った?アーサー王の名誉が穢されるわけじゃないから」
「ちが、違います……!私は、ただ」
わかってる、わかってる。あれはアーサー王じゃない。
でも、我が王だ。騎士として忠誠を誓った、君主だ。
「ただ、剣に」
だからやり直せると思ったんです。
「私怨からブリテンを分裂させ、王を死なせた愚かな私を、我が王は再び呼んでくれました。生前の愚を、二度繰り返すことはできません。ですから私は今度こそ……!」
「うん」
「ただの剣として、王に使えることにしたのです――――」
「ならどうして、そんなに苦しそうなの」
泣くことなど許されない。そんな権利は存在しない。
後悔などない。我らは既に同胞殺し。獣に落ちた罪人なり。
たとえ最後まで生き残ったとしても、聖槍に選ばれることなどない。
なのに!
「貴方は、私の目標で……。指針で……。いつだって考えていた。こんな時、勇者リンクならどうするのかと」
なぜ今になって、胸を掻きむしるような感情がある。
飲み込んだはずの言葉がこぼれていく。別れを告げた心が騒いでいる。
どうして?どうして?
だって私はガレスを、
「でも、獅子王に呼ばれて判断を迫られたとき――。貴方なら彼女を許さないと、わかっていたのに……!」
わかってる!わかってる……!
“獅子王”はもはや、勇者リンクに倒されるような災厄であると……!
だって彼なら世界を救う!諦めるなんてありえない!最後には必ず、全てを救う!
獣になんて、ならないのに……!
「私はっ、自分の、己の未練を優先した!今を生きる人々の意思よりも!人理を救わんとする“星”よりも!」
“ごめんなさい。ごめんなさい”
ぐわん、と耳の向こうから聞こえる声。
“もう耐えられません。もう戦えません。どうか、どうか”
ガレスの声が止まない。
ガレスの声が消えない。
“愚かなわたしに、罰を与えてくださいませ”
違うんだガレス。一番愚かなのは私だった。
アーサー王がどうしてランスロットを許したのか。
ランスロットがどうして王を裏切ったのか。
今の私は知っているのに。
全てから目を逸らして、ただの剣になろうとした。
「ただ一人の、騎士としての名誉などに執着して、」
「君はラヴィオになれなかったんだね」
「――――」
ぐしゃりと顔が歪んで、でも涙は零れなかった。
そんなことは許されないとでも言いたげに、唇が噛み締められる。
握られる拳は固く、固く。立ちすくむ、太陽の騎士よ。
日輪はこんなにはっきりと君を照らしているのに。
君の心中はずっと暗雲なんだね。
〇いーくん お前お前お前 トドメを刺したのお前
〇オルタ 自分にはある
〇フォースを信じろ @オルタ 座ってろ
〇海の男 待て。これは本当に曇らせか?わからせじゃなくて?
〇奏者のお兄さん どうでもいい~~~~どっちでもいい~~~~
「ガウェイン。君はもう選んでしまった。たとえここでボクに怒られようとも、君は道を変えることができない。君はそういう人間だ」
「……はい」
「そして異邦の“星”がいる以上、君を倒すのはボクじゃない。そもそも、ボクは周りが言うほど善悪で動いていない。聖槍に選ばれないという、獅子王の言葉は正しいよ」
「………………」
〇海の男 どうでもよくないぞ!!ジャンル分けは明確にしないと!!
〇銀河鉄道123 とら〇あなで働いてる人?
「でも、困っている君を見捨てる程じゃない。聖剣ガラティーンはボクが取り返してくるから安心しなさい」
「えっ」
「残念ながら、一緒には連れていけないな。ユガの壁画魔法は知っているだろう?ボクでも君を庇いながらは難しい」
あと時の言った通り、この特異点グラッグラだから……。
あの二人が大人しくしてるのも、これ以上崩壊を早めないためだろうし。
「全てが片付いた後に、また会いに来るよ。話の続きはその時にしよう」
「また……?」
「うん。また会おう、太陽の騎士ガウェイン」
友達のような気軽さで、憂うことなど何一つないような微笑みで。
「約束だよ」
その、笑顔を――――――。
ガウェインは一生忘れない。
英霊の座に戻っても、何度サーヴァントとして呼ばれても。
太陽のようにきらめく、偉大な人の姿を――――。
〇Silver bow 魔女&妖精アスレチック(仮)?
〇奏者のお兄さん ……まさかガウェインも放り込む気か!?
〇奏者のお兄さん 居るけど……。いま寝てるぞ?だから人理のことも把握してないと思う
〇ウルフ どうして寝てるんですか?
〇奏者のお兄さん 彼女は多重人格者でな。役割やら感情やらに振り回されて疲れてる
だから俺を探しに来た時に、まず休んでくれって寝かせたんだが…。そろそろ起こしてもいいかもしれんな。
〇ウルフ 先代の優しさが染みる……
〇奏者のお兄さん 俺がついてれば暴れんだろ。なんかすごい好感持ってくれてるらしいし……
もちろん汎人類史のモルガンである。
コキリの森にある自宅で寝転がっていた時の勇者は、あくびをしながら起き上がった。