勇者リンクS’の人理修復配信RTA   作:はしばみ ざくろ

98 / 117
踊ってない夜が気に入らない

――――――そして、砂丘を越えた。

 

「――これが、十三世紀の中東……?」

 

車体と共に突き抜けた風が、挫けたようにかき消えた。熱風。タイヤが渇いた摩擦音を重ねる。

まず感じたのは暑さ。砂漠の熱とは違う、暑さ。太陽ではない熱。少女たちは目をまんまるくして、周りを見渡した。

眼前に、恵みを奪われた大地が広がっている。渇きに耐えられなかった地面がひび割れて、降り立った足元はざらついた。

雨が降らなくなった土地みたいだ。立香は記憶の教科書から写真を引っ張り出した。ここには水も緑もない。

気温48度、焼け跡が燻る。とても、人間の生きられる世界ではなかった。

 

「砂漠の砂嵐もひどかったけれど、こっちも同じくらいに酷い。……私の予想通りになってしまったな」

「どういう事……?」

 

思いのほか小さな声が出て、立香は自分で自分に驚いた。

動揺、しているのかな。胸元に手を当てて、心音を整えようと意識した。

 

「これが魔術王の仕事、という事だよ。魔術王は人理定礎を乱すことで特異点を生み出した」

 

立香の影に潜むアヴェンジャーが、忌々しそうに顔をゆがめる。

 

「その結果人類史は不安定になり、魔術王は過去に至るまでの一切を燃やす、という偉業を行った。逆に言えば特異点だけには人理焼却の波はこない、という事だったんだが……」

 

ここまで人理定礎が乱れると、特異点であれ例外はないのだろう。

足元からかすかに立ち上がる熱気が、踏みつぶされた大地の嘆きのようで。

 

「結論から言うと、この大地はじき燃え去る。オジマンディアス王が聖杯を使わない理由もそれだ」

 

ダ・ヴィンチちゃんの星の杖が、場違いに青光を携えている。

空が薄暗いのは、夜明けだからだけではないのだろう。

 

「だってそうだろう?聖杯を使うまでもなく、この大地は滅び去るんだから」

「そんな……この時代に何が……。……!」

「囲まれた……!誰……?」

 

ざ、ざ。

ずり、ずり。

じゃり、じゃり。

遠くから遠くからじわじわと距離を詰める影たちは、襤褸をまとった人型。ゆらゆらと幽鬼のごとく。されどげらげらと嗤っている。ここに生者がいることが、嬉しくてたまらぬように!

 

「食べ物……食べ物だ……」

「水もあるぞ……うまそうな女もいるぞ……」

「ヒヒ……太陽王の人食い獣どもから逃げて来たんだろうな……ヒヒ、ヒヒヒヒ!」

 

目が濁っている。どろどろと。

 

「ありがてぇ……ありがてぇ……。オレのために生き延びてくれてありがてぇ……!」

「殺せ、殺せ……!肉だ、肉だ、肉だ――――!」

 

心を滅茶苦茶にされた人間は、こういう瞳に変じてしまうことを。アヴェンジャーもリンク達もよく知っていた。

では少女たちは?知らぬ間に視線を集めていたデミ・サーヴァントが、震える唇から言葉を落とした。

 

「そんな……この人たち、人間です!サーヴァントでも、幻像でもありません……!」

「……マシュ、立香。峰打ちをしてもいいけど、それは可能な範囲でだ」

 

諭す口調の才人が難しい顔をしていることには、まだ二人は気づいていない。

 

「……彼らは半ば屍鬼(グール)化している。ああなってしまったらヒトはもうダメだよ」

 

生きているのに、死んだような。

死ねないまま、生きているような。哀れな魂だった。

……リンクなら、こういう時、どうするだろう。

立香の背中が、じわりと汗をかいて。

 

「憎み、妬み、傷つけることでしか生きられない。生きてたってそう長くはない。ココはそういう時代になってしまっている。そして私たちは、そういう時代を拒絶するために来た」

 

ダ・ヴィンチちゃんのいう事は正しい。

きっとアヴェンジャーも同じことを言うだろう。

 

「であれば剣を取りなさい、マスター。童貞は、ここで捨てる時だ」

 

そうだ、私がマスターなんだから。方針を決める権利がある。

 

「マシュ、ダ・ヴィンチちゃん。可能な限り峰打ちして。……私たちは」

 

ああ……。そうか。みんなも同じだったんだ。

迷った時、悩んだ時、立ち止まった時。いつもあの勇者が先にいる。誰も居ないと思っていたこの道の先にすら。貴方たちはすでにたどり着いている。

だから私たちは勇気を思い出せる。たとえ間違っていたとしても、悔いのない選択ができるんだ。

 

「殺すために、剣を取ったわけじゃない。まだ、諦めるには早いでしょ」

 

大地を焼く炎ではなく、人を見下ろす太陽ではなく。

日の出を告げるマジックアワーが、凛と瞳に輝いた。

 

 

フォースを信じろ(緑) タオル、回します

りっちゃん ペンラ、光ってます

騎士 ウウ ぐう……

バードマスター ごめんまたトラウマ出てる 敗戦系騎士なので

災厄ハンター 1回国が滅びた人は大変だな……

オルタ (お前が言うんだという顔)

 

 

100年眠ってたのは自分ではなく、並行世界の息吹の勇者なので、自分は敗戦系騎士ではないというのが本人の主張です。

 

「いてぇ……いてぇ……!ちくしょう、ちくしょう――」

「せっかく、上等な肉にありつけると思ったのによぉ……。クソが、クソどもが……」

「なんでおとなしく殺されねぇんだ、クソどもがぁ!」

「…………」

 

息を荒げて叫べるだけ、生にしがみつく気力があるだろう。

暗く淀んでいた瞳たちが、痛みでかすかに正気に戻る。地面に這いつくばっているとは思えない減らず口だ。立香はなんだか肩の力が抜けた。

 

「――戦闘、終了しました」

「痛みで逃げ出したものが大半、それでも襲ってきたものが一割、か」

 

マシュはほう、と息を吐きだして構えを解いた。ダ・ヴィンチちゃんは優雅に乱れた髪を整えている。

 

「考える頭を持ちながら、自分を止める方法が『死』以外になくなってしまうとこうなる。そんなのを相手にするならこっちも非情になってしまうものだが――――」

 

屍鬼累累(グールるいるい)。呻き声の合唱。されど血に濡れるヒトはおらず。

 

「恐れ入ったよ、立香ちゃん。結局、死傷者はひとりもなしだ」

「悶絶してるけどね」

「ははっ!いい薬になっただろう」

 

 

いーくん まあまあ 滅国一歩手前騎士もここにいるから

守銭奴(紫) 世界一いらない多様性

 

 

「でも、すぐに移動しないとね。他に仲間がいるとも限らないし」

「ところで、食料が少し余ってたよね」

「! だそうだ、どう思うマシュちゃん?私は反対だけど、キミは?」

「はい、賛成に一票です!2対1で先輩の勝ちですね、ダ・ヴィンチちゃん!」

 

太陽王の加護に入れず、山の民にも受け入れられず、聖都になど選ばれないはぐれ者たちにも。与えられる慈悲があるとするならば。

 

「いいだろう。ほんっとーに単なる気休めだが、たった一口の水が人生の光になる事もある!」

 

それは連綿と紡がれてきた、義の心。弱者である事を悪とせず、弱者が生まれてしまった世界を思う、戦士の施し。

 

「持っていきたまえ!心を失った諸君!明日には忘れるだろうが、なに、たった半日ばかりの蘇生(リアライズ)という事さ!」

「ぁ……やったぁ!水だ、水だ――――!」

「どけ、オレのだ、それはオレのだ……!オレがいちばん働いたんだ!テメェらはその後だ!」

「よし撤収!今のうちにスピンクス号に乗り込みなさい!」

「フォーウ!」

 

その姿を見ていた、襤褸の隙間から光が差す。

それが概念的なものなのか、物理的なものなのか――なんて、無意味な議論だろう。

だってもうずっと前に空は、青さを失っているから。

急ぎ足で4つ足の乗り物に乗り込む少女たちを引き留める、男の声が一つ。

 

「………………………待ちな」

 

真っ先に振り返った立香が、穢れの薄れたヒトを見返す。

 

「アンタら、東にいくのか。……まさか、聖都に?」

「ああ、その聖都(・・)に行くのさ。なにか問題でも?ここで唯一の都なんだろう?」

「……ああ、そうだ。聖都は唯一の街だ。何でもある夢の国だ」

 

ならばなぜ、彼らはそこ(・・)に居ないのか?立香の心に疑問が生まれる。

 

「世界を焼き尽くそうとした十字軍を皆殺しにした、偉大な獅子王がいる街だ……」

「(……やっぱり十字軍は全滅していたか……。でも、サラセン人たちも追い出されている……?)」

 

この3人の中ではもっとも正確に史実の出来事を把握しているダ・ヴィンチが、内心で首を傾げた。

 

「(しかもまた獅子王……てっきり太陽王の妄言だと思ったけど実在するらしい……)」

 

この時代、この地域で獅子王――獅子心王といえば、一番当てはまるのはリチャード1世のことであろう。

しかし十字軍側である彼が、なぜ味方を全滅させる?特異点をも破壊して?おまけにオジマンディアス王を召喚した?んんーなんか違う気がする。

 

「……気をつけな。綺麗なものほど恐ろしい……。……壁には近づくな。死にたくなかったら、砂漠に戻るんだな!」

「……はい!助言ありがとうございます!」

「フォウ、フォーウ!」

 

ダ・ヴィンチが考え込んでいる間に、別れの挨拶は済んでいた。

光を見た彼らがこれからどうなるのかは――それこそ、神のみぞ知る話だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

枯れはてた大地にも日はのぼり、沈んでいく。

(とも)し頃、西日は黄赤。世界が燃えているみたいな橙黄(とうこう)色。

 

『良かった、やっと繋がった!』

 

運転中にぴぴぴと通信。お腹を満たしていた立香の口は塞がっていたので、もぐもぐと食べることを優先する。

 

『大丈夫かみんな!?今回も何か、予想外のアクシデントがあったのかい!?』

「Dr.ロマン、私達は無事です。今は夕食を取りながら移動しています」

 

代わりにマシュが応答した。ぱたぱたと通信越しに聞こえる、管制室の慌ただしさ。

 

『マスターと繋がったって!?』

『マスター、ご無事で何よりです…!』

『はいはいジャンヌコンビはあっちいってて』

『マスター、怪我はないか?珍しい症例に出会ったりは?』

『サンソン!この医神を回収して!』

 

夜行性の鳥が起き出す時間でも、英霊たちは元気いっぱい!

無事を確認して何人かは食堂に向かっていった。お手伝いありがとう!

 

『立香ちゃんの反応は随時確認できたんだけど、こちらからの反応はまったく届かなくて』

『まる2日も支援ができなくてごめんなさい。そちらの状況を教えてくれる?』

「はい。それではこれまでの経緯を報告します。レイシフト後、わたしたちは――――」

 

 

奏者のお兄さん ごはんおいしい

ウルフ 先代が疲れから暴食に走っている

守銭奴(赤) 女王様起きた?

奏者のお兄さん ウン 嬉々としてアスレチックを監修してる

 

 

『……そうだったのか。十三世紀の中東に、紀元前のエジプト領が』

『道理で通信がうまくいかない訳だわ。再調整する時間もないし…、今後エジプトは鬼門ね』

 

回転イスに座ってくるり。オルガマリーがため息をついた。

 

『しっかしオジマンディアス王かぁ……。また面倒くさいのが現れたもんだ』

 

角砂糖をたくさん落としたコーヒーで喉を潤してから、ロマニが頭を掻いた。

 

『でも、今回はこちらには頼りになる味方がいる筈だ。オジマンディアスは獅子王って言ったんだろう?なら間違いなくそれはリチャード一世だ。獅子心王さえいれば太陽王も何とかなる』

 

後部座席の少女たちは顔を見合わせて、運転席のダ・ヴィンチちゃんは素知らぬ顔。

 

『キミたちは十字軍と合流して、うまくリチャード一世に――なんだい、その顔』

 

なんだかとっても可笑しくて、マシュと肩を震わせた。くすくす。乙女たちの柔らかな笑み。

 

『なんで笑いを堪えてるんですかー、立香ちゃんー?マシュー?ボク、おかしなコト言ってるかーい?』

「ははは。ではここからはダ・ヴィンチちゃんが」

 

眼鏡をかける必要もない講義に、ハンドルを握りなおしたダ・ヴィンチちゃんが一言。

 

「ロマン、予想外のアクシデントを聞きたがっていたね。ならば喜びたまえ。十字軍はとっくに敗退している!」

『なんだって――――!?』

『なんですって――――!?』

「所長も叫んでる」

「ひっくり返ってないといいのですが…」

「うんうん。そのリアクションが聞きたかった!」

 

ところでリチャード一世って?もうすこし詳しく解説しよう!

英国王リチャード一世。第三回十字軍で勇名を馳せた獅子心王だ。

その勇猛さから獅子心王(ライオンハーテッド)と呼ばれ、敵将からも“最高の騎士”と讃えられた王である。

 

『ああもう、とにかくカルデアのデータを送るからね!』

 

頭を抱えてしまった所長の肩を支える、ロマニは立派なカルデア職員である。

 

『百聞は一見にしかず、だ!この特異点の地図を見れば分かる!いいかい?その特異点には大きな都がある!間違いなく十字軍が占領した都だ!』

 

覗き込んだデータには確かに、聖都と言われてもおかしくない、大都市が映っていた。

 

『それがある以上、聖地は騎士たちの手で陥落しているはずなんだ!正しい歴史ではないけど今はそういうコトになっている!なのに十字軍は壊滅したっていうのかい!?』

『――警告!生体反応です!五百メートル先に強力なサーヴァント反応!』

「……!いかがします、マスター?」

「…いったん、隠れて様子を見よう」

 

スピンクス号はゆっくりと停止した。

いつの間にか、煤色の空。

 

「……ここまでか。これだけの同胞を連れて逃げ延びる事は不可能……」

 

呟く声が聞こえたから、夕飯中のリンク達も配信画面に視線を戻した。

 

「……不覚、そして無念なり。万事、ここに休した」

「……悲しい。私は悲しい、山の翁よ」

 

黒き衣に身を包む、アサシンのサーヴァント。拳を握りしめ歯噛みする。

赤き美髪をもつ、アーチャーのサーヴァント。その双眼は閉じられている。

 

「貴方一人であれば窮地を脱するは容易い。……しかし、貴方は運命を受け入れた」

 

アーチャーがアサシンに語りかける声には、憐れみが乗っていた。

 

「貴方の背後に怯える聖地の人々。彼ら難民を守るために、貴女は残り続けるのですね」

 

けれど――――、色を失ったカンバスのように空虚。

あらゆる熱意が存在しない、無気力の言の葉。

 

「価値なきものを守らんと、価値あるものが失われる……。私には、それが悲しい……」

 

 

オルタ 誰?

Silver bow トリスタンだ………………

オルタ ああ円卓の

 

 

「あれは……アサシンのサーヴァントと、アーチャーのサーヴァント、でしょうか……?」

 

両者は敵対しているようだ。アサシンの後ろには一般人が40人ほど。対してアーチャーは単騎、なのに。

 

「……その、マスター。わたし、あのアーチャーを見ていると、震えが止まらなくて……胸が、とても痛くて――――」

「……もう少し、下がる?」

「――――駄目だ。一歩も動いてはいけない。気づかれる」

 

ダ・ヴィンチちゃんの声があまりにも硬質だったので、立香は驚いて隣を向いた。

 

「気づかれたら、それで終わりだ。私たちではあのアーチャーに殺される」

「……そんな」

「……あれは、ギフト(・・・)だ」

 

その言葉の意味を問い返す前に、悲劇は駒を進めていく。

 

 

奏者のお兄さん いまちょっと疲れててよくわかんないんだけどあいつ敵だよね

ウルフ はい

海の男 よくわかんないけど敵ならボコすのだ

Silver bow あっこんなところにBBへの直通チャットが

 

 

そして反対側からナイトに乗って爆走してくる、駒があるのだ。

 

「……価値がある。彼らより、私の方が価値がある、といったな?」

「はい。私の弓をもってしても貴方を捉えるのは骨でしょう」

「…………………取引だ。貴様の騎士道とやらが誠のものであるのなら――――」

 

アサシンのサーヴァント――煙酔のハサンが覚悟を決める。悔いを飲み込んで、迷いもなく。

 

「わが命を、ここで差し出す。その代償として民たちを逃がしてほしい」

「なんと高潔な方か。……しかし、逃がすと言っても具体的には?私は撤退を許されていません。……申し訳ありませんが……」

 

申し訳ないなんて、本当は思っていない。

思える心は潰れてしまった。

この騎士もまた、憐れみを向けられるような存在ではあるのだけれど。

 

「貴方たちを捕らえるまで、この場から立ち去ることはできないのです……」

 

そんなことは誰も知らない。

山の翁も、カルデアのマスターも。

ただ見た事だけが事実。

 

「……では、右腕と足だ。我が首の代わりに、その右腕と足を貰う。これより一日、その足を動かさず、また右腕を封じられよ」

 

アーチャーのサーヴァント――――トリスタンの名を知るリンク達だけが、密やかにエンターキーを押した。

 

「情けない我が首だが、その代償としてなら釣り合おう」

「な……なんという。いけません、それでは、貴方は……」

「承諾と受け取った。――しからば、御免!」

 

頸動脈を切り裂く短刀。飛び散る鮮血。立香が両手で口を塞いで、驚愕を飲み込んだ。マシュの強張りは解けないまま。

 

「走れ、同胞たちよ……!東の呪腕であれば、そなたらを受け入れよう!」

「ああ……!ありがとうございます、ありがとうございます!」

 

もつれる足を懸命に動かして、難民たちが逃げていく。

 

「……自ら首を斬るとは……。これでは、私も約定を守るしかありません」

 

そちらに顔を向けてトリスタンは笑う。

もう笑うことしかできないから。

 

「お見事。お見事です。――ですが」

 

現実を知らしめるために放たれた刃は、難民に当たる前にかき消えた。

音の矢と、空気を切り裂く鉄の脚の衝突。鋭い破裂音。遠巻きに見ていた立香たちでさえ、響く衝撃に身を伏せた。

 

「(――――メルトリリス!?)」

 

塞いだままの唇が名を呼んだ。

途端入るSE、軽快なBGM。視界の端に繋がる不法通信!

「BB―――――、チャンネル―――――!」

何?????この状況で????

 

「おやおやおやぁ?お困りのようですねセ・ン・パ・イ♡」

 

はちみつキャラメルよりも甘い囁き。耳元で言われているような無駄な臨場感!

 

「でもでもご安心を!契約の範囲内です!ここはメルトリリスにお任せを!わるーい騎士さんは撃ち落としちゃいます♡」

 

ラスボス系後輩&ハイ・サーヴァント、ここぞという時に登場!

突然現れたサーヴァントに、トリスタンが動揺したのは一瞬だけ。

もう見えぬ瞳の向こうに立つ、気配をただ捕らえた。

 

「おや、新手ですか。山の翁に味方するということは、我らが獅子王の敵ということ。ご理解なさった上での行動でしょうか」

「――あら」

 

純白のプリマドンナが君臨して、フリルをふわりとさばいて笑む。

 

「なんて哀れで、惨めな赤い鳥。貴方が天空の国(スカイロフト)にたどり着くことはないのでしょうね」

「…………………」

「喜びなさい。私が代わりに、地に沈む貴方の、身も心も溶かしてあげる」

 

トリスタンは――――トリスタンは。

泡のように浮かんだ思考はすべて、ギフトにくべられて消えていく。

魂はもう灰になった。ここにいるのはただの残り香。

だから、こう答えるのも必然なのだ。

 

「スカイロフト?そんな場所、行きたいと思ったこともありませんが……」

 

勇者リンクに憧れていた騎士はもう、両目を潰したときに一緒に死んでしまったから。

――死んでしまったから?それがどうしたと勇者は言う!お前もお仕置きアスレチック行きでーす!

 

『(メルトリリスが勝手に飛び出していった!しかも勝手にリソースをごっそり持って行ってるぞう!わはは!もうこっちもしっちゃかめっちゃか!みんな!今のうちに逃げるんだ!)』

「えっ?あの??ドクター?あの、」

「よーし逃げるよ二人ともこっそりね」

「えっえっメルトはいいのえっ」

 

長夜のカタストロフィ、お呼びじゃないわ!

稲妻よりも鋭い、心臓マッサージをどうぞ!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。