呪術師・碇シンジはエヴァパイロットである   作:けし

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かなり原作から外れてもーた……。

果たしてミサトさんが本当にこんなことを思ってたかどうかはさておき、今作のシンジ君はモノホンシンジ君と違って父親に対して何かを思うわけではありませんが、向けられる感情に鋭く聡くなってる分、呪術師やってるときに向けられたことのなかった「温かくて真っさらな情」というやつに当てられやすいです。

あとはご都合主義丸出しの設定には目をつぶってくり。(平伏)


玖. 新しい居場所

 NERV本部にて。エントリープラグから出た碇シンジは、助けた2人をリツコに預けて更衣室の椅子に1人で座っていた。灯りは頭上の蛍光灯のみ。まるで部室のロッカールームのような部屋だった。

 シンジは両手を握っては開いてを繰り返し、そして掌印を組んで『蒼』を起こした。

 先の使徒戦で消耗し、搾りかす程度しか残っていなかったシンジの呪力では、適当に放ったカバンを動かすのがやっと。だが何の問題も無いのを見て、シンジは大きなため息をついた。

 

「どーなってるのさ……?」

 

 初号機を介した初めての『蒼』は、使徒が接近したように見えたという周囲にとって分かりやすい結果を齎した。だがシンジにとっては全くもって不可解に過ぎた。

 それはA().T().()()()()()()()()()()()()()。それが功を奏して周囲には使徒が背後にA.T.フィールドを張りながら近づいてきてやられたと見えている。なぜA.T.フィールドを張ったのかの議論は行われなかった。ゲンドウ然り、NERVは結果重視の組織なのだ。唯一リツコだけが怪訝な眼を向けたが。シンジはそれを見なかったことにした。

 それはともかく、発生した現象はシンジの意図していないものだった。シンジは術式の発動しか行なっていなかったのだから当然である。現に、先程の『蒼』は正しく起動していた。

 その違いとはなにか。それは────。

 

「エヴァしかない、か」

 

 エヴァに搭乗している際、シンジと外界にはシンジの肉体ではなくエヴァの肉体が境界を張る。故にシンジは自身の肉体のみならず、エヴァの肉体を媒介にして外へ呪力と術式を発現させることになる。

 シンジはこのときのエヴァの肉体が、先の現象の原因であるとみた。

 

「A.T.フィールド張るときのイメージが呪力放出のそれと同じだからなぁ。逆もまた然りってことかな」

 

 ──逆ってより、エヴァのせいで呪力放出すると勝手にA.T.フィールドが出てくる感じかもしれないけど。

 シンジはひとまずそう結論づけ、弱々しい『蒼』で引き寄せた荷物を片付けた。この部屋には監視カメラの類は無いので呪術を使っても問題ないことは確認済みである。

 こうして外に出ようとして、突然滑るようにドアが横開いた。

 

「……どうしたんですか、ミサトさん」

「シンジ君……」

 

 ミサトの目には、怒り、焦燥、安堵といった感情が流れていた。相変わらず感情豊かな人だと思いつつ、そのままの状態で何用かを尋ねた。

 

「さっき、勝手に民間人をエントリープラグに乗せたこと。独断で行ったのはなぜかしら」

「それを問いただしますか」

 

 シンジは逆に呆れたようにそう言った。ミサトは真面目そうな表情をして、答えを待っていた。

 

「逆に聞きますが、何か問題がありましたか?」

「戦闘における指揮権はあたしにあるのよ? 独断は」

「現場における判断を一任すると言ったのはあなたですよ?」

 

 ミサトはうっ、と言葉を詰まらせた。そう言ったのは確かにミサトではあるし、しっかり記憶もある。

 その瞬間、ミサトの中の怒りが消え失せ、怒りの感情がポーズだったことをシンジは悟った。

 

「逆にあの場面で彼らがシェルターに逃れるまで時間稼ぎしろと言いますか? そうなったらジリ貧ですよ」

「ぐ……」

 

 呪力なしじゃね、などと意地悪な表情を内心でしつつそう指摘すると、少し仰け反るようにミサトが一歩下がった。

 

「残り稼働時間も少なくて、なおかつ民間人を助ける。なんだったら、ミサトさんの上官である父さんの言質もとった。完璧じゃないですか」

 

 ほかに文句あるんですか? と更なる追撃をかまし、遂にミサトは追い込まれた。

 

「ないでしょ? なら」

「それでもよ!!」

 

 ひし、と強く抱きしめられたことにシンジが気づいたのは、遅れること数秒後のことだった。僅かに震えた声が、ミサトの心をシンジに伝えていた。

 

「文句は言えないわ。あたしがそう言ったのは確かだもの。けどそれとこれとは話が違うわ」

「……何のつもりですか」

「まだ分からないの? ……心配、したのよ」

「しん……ぱい……?」

 

 シンジには初めての感覚だった。心配されたことが、ではない。これほどの親愛の情と共に向けられたことが、である。

 師であり同族でもある五条は、心配こそするものの、親愛というよりはやはり師が弟子に向けるそれであった。常に生きるか死ぬかの瀬戸際に立つ呪術師は、五条であっても自己本位である。そしてそれはシンジも同じだ。

 だが目の前のこの人は違ったのだと、シンジは理解した。呪術師でない存在は、こうも豊かな感情を他者に向けるのかと。

 

「そう、心配。シンジ君、心配されたことないのかしら?」

「ないとは言いませんが、あれは少し……いや、何でもないです」

「?? ……まあいいわ。兎に角、あんな無茶なことは可能ならしないこと。エヴァにどんな影響があるか分からないし、何よりシンジ君もどうなるか分からないもの」

「善処はしますよ。それとあれはそちらが気を付けてれば起きなかったことでは」

「保安部にはお叱りがいったらしいわよ。まあああいうのは滅多にないし」

 

 抱擁を解かれ、人肌の温もりの余韻がシンジをまだ包んでいた。その温かみはやはり、シンジにとって新しい。

 

「さ、あたしの仕事も終わったし、帰るわよ!」

「帰る……」

「どーしちゃったのよ。元気ないわよ!」

 

 余韻を感じてぼーっとしていたシンジが半ば上の空で反芻した言葉をミサトが拾った。

 

「……今更どーしたのよ。あたしとシンジ君はもう()()なんだから、当たり前じゃない」

「……あぁ、そっか。……そうでしたね」

「??? ほらほら、今日はパーっと行くわよ──!」

 

 子供のように高いテンションのまま歩いていくミサトを、シンジがゆっくり追いかける。悪意のないまっさらな親愛は、シンジの閉じていた心を開く鍵足りうるだろうか。

 僅かに持ち上がった口の端を自覚せぬままに、シンジは歩いていく。

 

「晩酌の上限本数、今日だけは無しにしてあげますよ」

「やたっ! シンちゃん大好き!」

「子供かよ」

 

 ──扱いは五条先生と同じ説明書が使えるんだよなぁ。甘いものをお酒に変えればいいだけという。

 ミサトの扱いを心得たシンジはあっという間に葛城家の支配者になっている。ミサトも平伏する家事スキルは、その年においておつまみには困らぬと大好評。

 NERVの駐車場から勢いよく飛び出していくミサトの愛車から空を眺めて、シンジはミサトに言った。

 

「帰り、スーパーかどっかに寄ってくださいね。おつまみも作っちゃいますんで」

「しゃあっ、今日は飲むわよー!!」

「……ま、今日はいっか」

 

 飲み過ぎはやめて、という言葉を飲み込んだシンジ。憂鬱な心と疲れた身体に、少しだけ力が籠る。

 

 

 ──五条先生。新しい居場所っていうの、作れそうです。

 

 

 雲間にかかる蒼い空。雲が増えてはきていたが、シンジは少しだけ笑えていた。

 

 

 




感想欄で言及してる人がいたので書いておくと、無下限呪術は六眼ありき、というのはその通りだとは思いますが、六眼が無くても決して全く使えない訳ではないと思われます。ただ五条悟レベルで自由に使いこなすには必須で、ただ使うだけなら、という話ですが。その場合、『赫』も『蒼』もろくにコントロール出来ずに終わるとは思います。無限の展開もギリギリ、ましてや『茈』や領域展開など論外。

今作においてはシンジ君の並々ならぬ努力と才能、エヴァという超常存在、ご都合主義の味方「縛り」がシンジ君の無下限呪術のコントロールの根幹にあると思ってもらえれば。
まあ、それでも『蒼』『赫』が精一杯っちゃ精一杯なのが流石六眼流石無下限といったところでしょうか()
今後の呪術師シンジ君の成長にご期待してくだせぇ。
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