UAとかお気に入り数がなんかめちゃくちゃ伸びててびっくりしてます。
そんな今回からは、あの人物が本格的に暴れ出します。
ヤシマ計画……?ああ、いたねそんなやつ()
オリジナル設定がありますので、ご注意下さい。
「綾波さんって零号機のパイロットだよね? 初号機にも乗ってたって聞くけど、なんか感触とか違うの?」
「…………」
無視は辛いなぁ、などと心中で呟くシンジ。駅の改札のような場所でNERVのIDカードを通せば、あとは長いエスカレーターに揺られる。いずれ共闘するのは明らかなので、少しでもコミュニケーションを取ろうというシンジの考えは、綾波によって完全に破壊されていた。
シンジとて根暗な人間である。取らなくてもいいコミュニケーションなら取らないし、1人でいる方が全然気楽である。だがコレは必要なものであるとシンジは思っている。
だからこそ苦手な人物であっても、態々話しかける努力をしたのだ。使徒のみならず呪霊との戦いを経験しているシンジが、である。
「綾波さんはさ、父さんと何を話すの?」
「……碇司令と?」
──反応した? やっぱりそこなのか?
シンジは綾波が関心を示すネタを見つけ、そこから会話を組み立てていく。
「そそ。僕はまともな会話をしたことが無いから。そも僕にはパイロット以上の価値を見出してないのかもしれない。君に対して父さんが何を思ってるのかなんて知らないけど、君にとっての父さんはどんな人なのかなーって」
「別に。碇司令は私じゃなくて、私を通して何かを見ているもの。碇司令は信頼してるけど、私にとってはエヴァに乗ることが全て」
嘘はついていない。そう思っているのは確かだ。綾波レイにとって碇ゲンドウとは直属の上司であり、おそらくそれ以下ではないだろう。もしかしたら父親のように見ているのかも分からないが、慕っているという感情は少なくともシンジには見えない。
エヴァに乗ることが、今の綾波レイを支えている。あんなものに乗って何が楽しいのやら、というのがシンジの思うところではあるが。
それよりシンジが気になるのは、父親が綾波レイを通して見ているものである。
「綾波さん、父さんは君を通して何を見てると思う?」
「……分からない。でも私と話している時の碇司令は、少し柔らかい表情だった気がする」
「…………」
気難しそうな表情が、碇ゲンドウの常である。幼い頃の記憶はほとんど忘れかけているが、今のシンジが見る限りは眉間のシワが取れる気配はない。
その『何か』について、シンジは思い当たる節がないように思えた。だが、それとは別の記憶がリフレインした。
────────
「シンジは分からないだろうけど、シンジの記憶には細工がされた跡がある」
「細工…ですか?」
遡ること1年前の呪術高専京都校にて。シンジは呪術師だが、高専生徒ではない。そのため今はかつて家族で住んでいた家に一人暮らしである。
そんなシンジは、自身の師である五条サトルと共に京都校の一室にいた。
「そ。かなり拙いからよく見ないと分からないだろうし、かなり昔に施されてるからもう消えかけてたけど」
「えぇ…。なんか気持ち悪いんですけど。どんなやつだったんですか?」
「ほとんど残穢になってて、僕が推測したものでしかないけど。おそらくは記憶の抹消、あるいは封印」
五条サトルは六眼を持っている。術式情報が丸裸になり、呪術に関する未知はその眼の前では既知になる。例え残穢に感じるほどの拙い情報でも変わらない。
その五条サトルが言ったことだ。呪術に関してなら殊更信用できるだろう。
「抹消…ですか。なら、なんの記憶が抹消されたんですかね?」
「流石にそこまではもう読み取れないかな。君が幼い頃のものみたいだし」
抹消された本人であるシンジは、当然思い当たる節などない。幼い頃の記憶などは時間経過で忘れていくものであり、ましてや戦いの中に身を置いているシンジの今の記憶は濃いものばかりである。忘却が加速してもおかしくはないだろう。
「まあ抹消された記憶に関してはどうでもいいんだけど」
「いいのかよ」
「だーって僕にはどうしようもないし。僕にとってはそれを施した人物が気になるね」
五条サトルは目隠しを捲り六眼をシンジに向けながらそう言った。シンジは向けられたその視線に息を呑む。
「記憶抹消に関しては、普遍的な術式として成立してる。『帳』と同じように、呪術師なら誰でも使える術式の1つさ。呪いを目撃した一般人に対する対処法として、だけど」
「へー。でもそれならバレてもいいんじゃないですか? 少なくとも呪術師ではあるんでしょ? 犯人」
呪術師は基本的に表の世界では戦わない。それは必然であり、もし勘繰られなどした場合は、本人に呪術師としての才能がない限りはそれらのことを忘れてもらうことになっている。
シンジとてそれは弁えている。結局、呪術を使えるのは呪霊や呪詛師を除けば呪術師のみであるのだから。
そういう意図を含ませて言ったシンジの一言に対して、五条サトルは、んー、そうじゃないんだよ、と言って返した。
「『帳』にしろ『記憶抹消』にしろ、これは多少のアレンジは出来るけどすでに完成された術式だ。やったのが呪詛師か呪術師だったとしても、これはあまりに杜撰すぎる」
「…というと?」
「こればっかりは六眼持ちじゃないと分からない感覚なんだろうけど。術式の制御、呪力の制御。これが甘すぎる。ぶっちゃけ偶然成功したと言ってもいい」
何となくだが、シンジは五条サトルの言わんとするところが理解できてきた。
「要するに、このキモい術式の術者は呪術師では無いかもしれない、と」
「そーゆーこと! 術者は非呪術師で確定でいいと思うけど、犯人探しは無理かなぁ。というかもう時効だろうし」
「まあ、抹消された記憶に未練とかないですし。なんなら施術されてなくても忘れてたんじゃないですか?」
シンジはあっけらかんとそう言うが、やはり五条サトルは気になるものがあるらしい。
「どーだろうね。幼い頃の世界は狭いものだ。自分と、両親と。世界を構成する要素はそれくらいで事足りるからね。シンジは
「仮にあったとしたら、僕はここにいませんよ」
シンジはそう返して、五条サトルはそれもそっか、と笑った。
「じゃ、早速任務に行こっか」
「唐突なんだよやめろそういうの」
「……碇君は」
「…………ん?」
シンジの意識がリフレインから帰還する。経過したのは数秒程度らしい。前を向いたままでいる綾波レイは、微動だにしていなかった。
そんな綾波レイが、シンジに対して何かを口にした。
「碇君はなぜエヴァに乗るの?」
「なぜ…か」
そう問われて、初めてシンジはエヴァに乗る理由を探す。シンジにとって、ここに来てからの全ては唐突に過ぎた。父親の手紙も、エヴァに乗ることも、使徒と戦うことも。父親は一切なにも説明せず、ただ戦えというばかり。戦うことに忌避感はない。シンジは呪いと10年近く戦い続けてきた呪術師なのだから。
今戦う理由は、エヴァに乗れば分かると思っていた。でも、分からなかった。気づけば呪霊とはまるで真逆にある存在との戦いに身を投じる羽目になっていた。
「──僕にとっては、始まりは成り行きだったよ。エヴァで戦うことも、呪いと戦う事も」
「……?」
綾波レイは知らない単語と、質問に対する返答になってない言葉に首を傾げた。
それを見たシンジは、自分の迂闊さに少し呆れつつも続ける。
「痛い思いをすることも、もう慣れた。銃火器はまだまだだけど。でも──」
シンジにとって、戦うことに理由はいらない。呪術師である自分はもう狂っているのだから。
けれど綾波レイが求めている答えはそれではない。
「──エヴァに乗る理由は、僕が僕であるため、かな。父さんは僕を道具として見てるんだろうけど、僕は碇シンジなんだ」
少し難しく言ったかな、とシンジは思った。これは要するに仕返しみたいなものなのだ。
シンジは他人からの強制を酷く嫌う性質だ。成り行きとは言え、あの男の思うままに動いているのかと思うと、苛立ちが湧いてくる。
「あなたは、碇司令の息子なんでしょう」
「一応、ね」
綾波レイの雰囲気が、僅かに張り詰めた。それを見てシンジは苦笑した。
──なんだ、なんやかんやで父さんを慕う気持ちはあるんじゃないか。唯一信を置ける人…って感じかな?
「信じられないの? 自分の父親の仕事が」
「信じるも何も、僕は
綾波レイは振り返り、シンジを見つめた。シンジはその赤い目の中に、怒りがあるのを見てとった。振れ幅の大きい、初めて見た明確な情動だ。
シンジは少し安心すると同時に、綾波レイへの見方を変えた。
──そっか、まだ子どもなんだ。僕が言えた口じゃないかもだけど。
綾波レイはそんなことを考えているシンジに対して、右手を大きく振りかぶった。
シンジはそれをしっかり目で捉えていた。
「僕はね。僕にとって理不尽に殴られるのが嫌いなんだ」
「……」
シンジは左手を顔の横に構えて、綾波レイの手を受けた。
押してもびくともしない。綾波レイはそのうち右手を下ろして、エスカレーターを駆け足で下って行った。
シンジはそれを目で追って、コケないでよー、などと呟いた。
「綾波レイ、ね。なんていうか、末恐ろしいって感じかな?」
受けどころが悪かったのか、割と痛かったらしい。今後どうなるかは、まだ分からない。
「や、それよりもさっきから嫌な予感しかしないのは…」
「〜〜♪」
高専に置き手紙を残して、ぶらり第3新東京市まで一人旅。五条サトルは鼻歌混じりに、電車の車窓から景色を覗いていた。
「んー、外の空気はいいね〜」
荷物は大して持ち合わせて無い。特級なだけあって金は腐るほど──ブラックカードという形ではあるが持ち合わせている。
あとは服やら何やらくらいだろうか。結局いつもの服装で適当な電車に乗り込んだ。
「たまにはこういうのもアリ、だねぇ」
ちなみにコレらのことは完全にサプライズである。高専にとっても、シンジにとっても。
「さーて、シンジは元気にしてるかな」
旅路の中で、何をしようかと内心で考え続ける。
そんな中、第3新東京市に向かって使徒が接近していた。裏死界文書に曰く、其は第6の使徒。
最強の呪術師と第6の使徒が向かう先は同じ。
五条サトルが第3新東京市に着いた時、人影はチラホラといたが、すぐにそれらは消え失せた。耳を叩くサイレンの音と、目まぐるしく飛んでいく弾丸。空は弾幕に覆われ、轟音が降り注ぐ世界だ。
「えぇ…、物騒だねぇここ」
呪霊は見当たらない。いたとしても蠅頭程度のもので放っておいても害はない。
「さて、とりあえずシンジに迎え来てもらお」
ぴっぽっぱっ、とボタンを押す音。携帯電話が繋ぐ先は当然、碇シンジの携帯である。数度のコール音が鳴り、プツリと切れた。
「あれ?」
この時、シンジはエヴァに乗る直前。たまたま私物の携帯の着信音に気づき画面をみれば、見覚えのある番号。げっ、と思わず漏らしたのは仕方のないことだろう。シンジは彼を色んな意味で信頼しているのだ。
そういうこともあり、シンジはコールを完全に無視した。胃が荒れるのは勘弁と。
無視された五条サトルは携帯をしまい、あーらら、などとボヤいた。
「──ん?」
そこでふと、異様な空気を感じた。飛び交う弾丸の音とは違う、無機質な音を耳にした。
視界が遮られて見えないビル群の中から飛びだし、五条サトルは宙に止まった。
「青い…立体?」
何だあれ? と思うのは当然。使徒を視認するのは初めてなのだから。
「へぇ…」
六眼で使徒を捉え、五条サトルは笑みを浮かべた。
「これはまた…、くくっ、楽しくなってきた」
最強の呪術師が、使徒と相対した──。
綾波の描写むつかしい……。
アンケートの中身を見る限り、夏油さん(メロンパンでない)とナナミンがやっぱり人気みたいですね。
ちなみに今の日本は東に使徒、西に呪霊みたいな感じで発生してます。呪術高専長野校計画もあったようですが、いろいろあって頓挫したようです。東北以北には、普通に呪術師が赴く形で呪霊退治してます。
五条先生は作中で多分25歳くらい。伊豆あたりまで術式で飛んでそこから電車できてます。