呪術師・碇シンジはエヴァパイロットである   作:けし

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五条先生の力が炸裂した結果、ヤシマ作戦は吹き飛びました。ごめんね綾波、ごめんね戦自研、ごめんねポジトロンスナイパーライフル。でも停電しなくて済んだし、税金も無駄遣いせずに済んだじゃないか。

なおシンジ君があまりに有能すぎて綾波は出番がマジでない。いい加減にしようねシンジ君。君まともに傷も負ってないんだから。

少し長くなりましたが、下手に切るよりは普通に終わらせた方がいいと思ってそのままです。



拾弐. 最強

「いいねぇ。中々面白そうじゃないの」

 

 五条サトルはそう言って笑った。最近相手にしてきた呪霊も大したことがなかったために、目の前のいかにもヤバそうな相手に期待していたりするのだ。本来ならば逃げの一手しかないはずだが。

 

「シンジには着拒されちゃったし、まあそのうち気づくだろうけど。シンジが来るまでこいつと遊んどこうか」

 

 だが、ここにいるのはあの五条サトルだ。現代において最強と称されるに能う実力を持ち、規格外とまで言われるほどの異端。云百年振りに生を受けた、無下限呪術と六眼の抱き合わせ。

 その力は人の身でありながら、使徒を叩きのめすことが十分可能といえる。

 

「とりあえず、普通にやってみようか。このくらいでやられるなよ?」

 

 右手人差し指を立て、その指先に呪力が収束していく。

 それはかつてシンジがやったものとよく似ていた。発光色の違いを除けば、一見で見抜ける者はいないだろう。

 しかし、その性質は真逆。

 

「術式反転──『赫』」

 

 目を開けることが叶わないほどの光が、五条サトルの指先から発せられた。そしてその一瞬後には、地面が揺れるほどの大きな衝撃が走った。

『赫』──無下限呪術の術式反転。収束する無限級数を現実にする術式である無下限呪術において、収束の対義である発散が生じた。無限級数を発散させることにより、それは周囲を問答無用で吹き飛ばす(発散させる)強力な衝撃波となる。

 五条サトルがこれを行えば、大地を抉ることなど容易だ。今回は宙に浮かんでいたため、地表への被害は大したことがなかったが。

 

「─────」

 

 浮遊する使徒はその突然の衝撃に咄嗟にA.T.フィールドを展開したものの、あえなく大きく後方へ吹き飛ばされる。使徒は常時A.T.フィールドを展開しているわけではない。展開していないのならば、普通の攻撃も届くのだ。それが有効打になるかは別問題として、だが。

 

「んー、見た目より少し頑丈って感じか? さっきのシールドみたいなのもよく分かんないし、まだ様子見がいるか」

 

 目もない、耳もない、感覚器官の一切が見当たらない。外界の知覚手段が分からないが、少なくとも不意打ちは通じることは理解した。

 五条サトルが見えているのかは分からないが、先程の『赫』が不意打ちになる距離にいて気づかないなら、まだ見えていないかと考えた。

 そう考える中で、五条サトルは自らの攻撃手段を選別する。

 

 ──『蒼』、『赫』、『茈』、『無量空処』、『殴る蹴る』

 

 基本的にこれだけであり、そして殴る蹴るが主な攻撃手段。手札は少ないが、一つ一つが致命的なほどの破壊力を誇るのが無下限呪術だ。

 そして五条サトルは六眼から得た観察結果をもとに、ある結論にたどり着いた。

 ニヤリと笑みを浮かべ、それを実行しようとした時。

 突然、地面から紫の巨人が姿を表した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 遡ること数分前。

 

「ミサトさん、ちょっと」

「何かしら?」

 

 エヴァに搭乗する直前、シンジはミサトのところへ赴き話しかけた。いつもなら早めに搭乗して瞑目しているシンジがこのタイミングで話しかけてきたことに意外感を覚えつつも、ミサトは普通に応対した。

 

「今回、何があっても僕は知りません」

「……はい?」

 

 脈絡もなく言われた言葉にミサトは面食らった。普段から抽象的な言葉を使うこともあるが、ミサトにとって目の前の碇シンジという少年はあまりにも年不相応に大人びており、何なら自分より大人じゃないかと言わんばかりに言葉を選んで話す人物である。

 そんなシンジから発せられた言葉。よく見れば冷や汗と思しき玉汗が浮かんでいるし、顔色も悪いように思えた。

 

「シンジ君、具合悪いの? 大丈夫?」

「や、これはただの嫌な予感です。ええ、僕は知りませんとも」

「……ホントに大丈夫?」

 

 声も震えている。ミサトは普通に心配になっていた。

 一方のシンジは内心で大慌てである。先程の着信を無視した選択肢は間違いではないと思っているが、少し後悔していた。

 今更呪いに関する案件を回してくるほど、五条サトルは人でなしでは無い……、と思いたいとシンジは考えている。呪力に対する感受性が比較的高いシンジは、着信無視をしたあの一瞬だけ、覚えのある呪力を感じた気がした、してしまったのだ。

 

「ミサトさん、今日の夕飯ではお酒の上限開放しますから、頑張ってください」

「マジ!? やた、よーし使徒がなんぼのもんじゃい!! やってやるわよぉ──!」

 

 とりあえずシンジは酒を餌にミサトを調子に乗せた。何があっても知らない(=責任転嫁しないでください)と念を押し、酒を目の前にぶら下げてパワーアップもさせた。

 シンジはミサトの手綱を完璧に操っていた。その手綱が酒と料理であることは明白ではあるが。

 

「とりあえず、やるか」

 

 着たくもないプラグスーツを身につけて、つける必要のないヘッドセットを装着して、シンジは渋々という雰囲気を垂れ流しながら格納庫へ足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 カタパルト上で重力に逆らって加速する初号機。搭乗するシンジは呪力で肉体強化を施しつつ、さっきから感じ続けている覚えしかない呪力に表情が死んでいくのが分かった。

 そうして地上に登り切った時、シンジは青い使徒の姿を捉えると共に。

 

 ──あー、勝ち確ってこういうシチュエーションのことかー。

 

 棒読みでそんなことを考えていた。

 視界の端にとまった、宙に立つ人影を見た瞬間の話である。

 当然その人影は、司令室の側でも捕捉した。

 

『10時の方向に人と思しきものを確認!』

『シンジ君、その人影は!?』

 

 司令室でマヤが声を上げ、ミサトがシンジに確認を促した。シンジはその方向を向き、改めてそれが誰かを理解しつつ、大きな息を零した。

 シンジは初号機を駆ってその人影の方へと走り寄り、目を合わせた。

 

『シンジ君!?』

 

 ミサトは驚きの声を上げた。それは紛れもない人であり、使徒でないことは明確。にも関わらず宙に浮き、笑みすら浮かべている。

 

「何してんですか、五条先生」

「およ、その声はシンジか。ロボット……ではなさそうだね、それ」

『『『!!?』』』

 

 司令室では皆が驚きの目をモニターに向け、シンジはいるはずのない人物との会話に胃がキリキリと痛み始めていた。

 

「アレの位置がかなり後退してると思ったら、『赫』か何かを使いましたね?」

「せいかーい。てかあれ何? 呪いじゃないのは分かるけど、あんなの見たことないよ」

 

 ため息のカウントが天元突破する勢いである。シンジは説明をしてもいいものか躊躇いつつも、とりあえずは前提を口にすることにした。

 

「このロボ擬きも、あの青いのも、その詳細については国家機密レベルの情報ですけど。けどまあ分かってるとは思いますが、どうやら呪いとも無関係って訳じゃないようなんです」

「みたいだね。あの青いのの中で正の呪力が渦巻いてる。六眼が無くてもバレバレだ。にしても、随分面倒なことに巻き込まれてるね〜」

「全くもってその通りなんですが、さてミサトさん」

 

 とんとん拍子に進行する不審人物との会話に呆然とする司令室に、シンジが不意に会話を向けた。改めて皆が気を引き締めるとともに、ミサトは努めて冷静に応答する。

 

『何かしら?』

「ぶっちゃけこの人いるだけで、あの青い使徒との戦闘が勝ち確のヌルゲーになるんですけど、諸々の情報提供してもいいですか?」

『……、シンジ君を信じて許可したいところだけど、私の一存では何とも言えないわ。その男が何者かも分からないし』

「そりゃあそうか」

 

 ふむ、とシンジが思考に身を委ねようとしたとき。

 

『っ、使徒内部に高エネルギー反応!』

『な、シンジ君!!』

 

 浮遊していた使徒が接近し、その姿からは想像もつかない異様な変形をしていく。使徒に常識など通用するはずもないが、シンジは質量保存の法則という単語が頭をよぎった。使徒はそんな変形をして、周囲が歪んで見えるような熱を放ちつつ、シンジたちへ向けて極大の光線を放ってきた。見るまでもなくその破壊力は窺える。

 だが、司令室から飛んでくる言葉は焦燥を含んでいるにも関わらず、五条サトルと初号機の中の碇シンジは、それをチラッと横目で見るだけ。

 光線と激突したのは、五条サトルが先程見たものと同じシールドのようなもの。シンジのそれは特別製であることを見てとったが、その特別さを除いても、五条サトルは光線を阻む赤いシールドの頑強さに目を見張る。

 

「へぇ〜、そのシールド? みたいなの、随分頑丈だね」

「A.T.フィールドって名前らしいですよ。僕が使うとこうなってますけど。…あ、喋っちった」

 

 普通の、とは言い難いが、親しい人間との会話で不意に機密を口にしたことに気づくも、シンジはまあ別にいいかと思い直した。

 五条サトルも、その情報について大した意味を見出さなかったために、問題はないと言えよう。

 

「問題ないさ。それを抜く方法に心当たりは?」

「A.T.フィールドはA.T.フィールドで中和できます。そこら辺は呪術と同じみたいですね」

「なーるほど」

 

 A.T.フィールドは一見するとただのシールドと同じようにしか見えないが、その実は力場と言い換えてもいい。故に形状も変えられるし、ある程度は使用者の意思に沿った使い方ができる。特に中和作用はまさしく呪術における領域のそれによく似ていた。

 

『ちょ、シンジ君!』

「ああ、まあ大丈夫でしょ。父さんは認められないかな?」

『……』

「NERVは使徒を倒すことを優先するんだよね? それとも、何か他の目的でも隠してたりするのかな? 父さん」

『…………、いいだろう。但し、当然だがその男から情報が漏れることは許さんぞ』

『っ、碇』

「……ま、善処しますよ」

 

 ゲンドウは苦虫を噛み潰したような声音で許可を出し、冬月は驚いたようにゲンドウを見た。2人にとっては、碇シンジという少年の予定外の異常な成長が自身の計画の根幹を揺らしていた。

 一方のシンジの中ではこれらは保証しかねる条件だが、呑まないことには五条サトルという規格外を使徒殲滅に利用できないのだから仕方ない。そう思って多少濁した返答をした。

 

「というわけで、五条先生。アレ倒すの手伝ってくれます?」

「今更。君が来なきゃ勝手に遊んでたしね。運動がてら丁度いいさ」

「さっすがー、あれを運動がてらに殺るなんてさいきょー」

「シンジ、あからさまな棒読みなの、僕傷ついちゃうよ?」

 

 あと日本語おかしくない? と五条サトルは笑った。

 エヴァに乗ってやっと相対すことができる自分との歴然とした差。呪術師として、生き物としての格の違い。今更ながらそれを感じ、シンジは棒読みのお褒めの言葉を紡いだ。

 それはある意味では信頼の裏返し。五条サトルは目隠し越しに初号機の姿を見つつ、にやけ面でそれを受けた。

 そんなやりとりの最中にも使徒は光線を放ち、無限が付与されたA.T.フィールドがそれをシャットアウトしていく。射線上にあった建造物はすべて溶解して消滅し、完全に見通しが良くなっている。物理的な防御はほとんど溶かされてしまうことが明らかになっても、五条サトルと初号機は一歩も動かないまま。使徒は連発しても威力を上げても全く意に介さない存在に労力を割くよりも、この真下にいるであろうモノへの接触を優先することにした。

 

「じゃ、そういうことで」

「オッケー、まっかせなさい!」

 

 使徒の弱点などを一通り伝え、作戦を立て、1人と1機は行動を開始した。

 作戦はシンプルに、使徒が簡単に認識できる初号機を囮に変形を伴う攻撃を誘い、コアが露出したところを五条サトルがぶち抜くというもの。

 シンジは使徒が地面に向けて穴を掘り出したことから、その位置から大きく動くことはないとみた。この距離なら術式による瞬間移動でコアを直接殴ってもいいだろうし、なにより五条サトルには不可視の遠距離攻撃がある。

 

『シンジ君、本当に大丈夫なんでしょうね?』

「ミサトさんたちじゃあ五条先生は御せないし、あの人もあなたたちに御されることはないでしょう。あとはまあ、僕がヘマこかないのを祈っててください」

『……無事に帰ってくるのよ』

「すっかり親の顔って感じですね」

 

 司令室の面々は、建物の間を縫うように飛んでは走る初号機と宙に佇む先生と呼ばれる謎の男に翻弄され、半ば機能停止状態になっていた。辛うじてミサトがシンジとのやり取りをしたものの、その会話は最早戦闘員と指揮官のものではなくなっていた。

 ここにおいて、戦いは既に完全に『使徒対呪術師』の構図になっていた。 

 

 

 

 

 

 

 大地を踏み砕きながら疾走し、時折飛んでくる攻撃を防ぎ、躱しながら使徒の注意をひたすら引きつける初号機。

 ミサトたちの解析によると、あの光線は荷電粒子砲と呼ばれる代物らしいとシンジは聞いた。それが何なのかを理解するには流石にシンジの知識では不可能ではあるが、結局シンジの中では莫大な熱量とエネルギーを内包した極太レーザーという解釈に落ち着いていた。

 防ぐ毎に威力が上がっていくレーザー。時折A.T.フィールドを貫くこともあり、そのたびに後方の地形が書き変わっていく。山の一つ二つが軽く消し飛ぶ威力に戦慄するのを抑え込んで、シンジはそれに対して多層A.T.フィールドという対策を講じて防いでいた。

 

「チッ、変形の度にコアが分裂するんじゃ流石にまだ無理か」

 

 目線の先、これまでの使徒とは一線を画すこの青い使徒は、攻撃の際の変形でコアが分裂していた。元に戻る際には1つになるようだが、今のところ変形に伴って分裂しないことがないため、狙い撃ちが出来ない状況だ。

 五条サトルの取れる手札の中から、碇シンジと五条サトルは遠距離攻撃の手札を選んだ。『茈』と銘打たれた、無下限呪術の複合術式である。

 普段なら地形を変える天変地異クラスの威力で行使されるものだが、シンジは五条サトルに条件を突きつけた。

 

 ──『茈』使う時。何とかして一点を一瞬で狙い撃って下さい。

 ──と言うと? 

 ──いつもみたいに周り巻き込んでズドン、じゃなくてコアだけを寸分違わず狙い撃つような感じで。先生なら出来ますよね。

 ──シンジにそう言われると、やらない訳にはいかないね。折角だ、趣向を凝らして遊んであげるよ。

 

 シンジにとってはエヴァに乗ってすら軽く命を削る戦いであるのに対し、五条サトルにとってはこの戦いでも遊びであるのだという。シンジは頼もしさとともに改めて畏怖を覚えた。

 

「残り活動時間もあまり無い、早くしてくれ…!」

 

 それは使徒に対する悪態か、あるいは師に対するものか。無意識に溢れでた言葉を、司令室のみが拾う。

 

「残り30秒っ、まだか…!?」

 

 迫り来るタイムリミットに焦燥感を滲ませるも、努めて冷静に攻撃を防いでいく。高まる五条サトルの呪力が、終わりの近づきを教えてくれる。

 

 ──術式順転『蒼』

 ──術式反転『赫』

 

 不意に、そんな幻聴が耳を叩く。モニターに目をやれば残りは5秒。その瞬間、使徒は一段と強い光を放ち。

 遂に、望む変形を果たした。

 

「っ、今!!!」

 

 ──虚式『茈』

 

 その瞬間シンジの目に映ったのは、まるで狙撃手の放った弾丸のように走る紫色の軌跡と、コアの方へ指を向けて六眼を露わにした五条サトルの姿だった。

 一瞬で迫った不可視の攻撃に使徒は反応すら出来なかった。A.T.フィールドに阻まれることもなく、仮想の質量を持った弾丸はコアを撃ち抜いていた。そしてコアを貫いた『茈』は大地に穴を穿ち、その姿を消した。コアのみですら初号機の手と同じほどのサイズであるのに、それを撃ち抜くことを易々とやってのけた。

 呪力を持たない人間には、何が何だか分かるはずもない。使徒はバランスを崩して形を失い、光の十字架を残して爆散した。この決着は正史より大きく逸れた異聞であり──、五条サトルという規格外を、彼らが知った瞬間でもあった。

 

 

 

 

 

 

 




「あああああ、なんだこの男、、私の計画がぁぁぁ!!?」と嘆くゲンドウさんにシンジ君はこんな言葉を投げかけます。
「うん、笑えばいいと思うよ?」

NERVは空気になってました。是非も無いよネ☆
シンジ君が囮になる意味はまあ、初号機は使徒殲滅に動いていたというせめてもの証明代わりのような。荷電粒子砲を真正面から受けたら流石に狙いがつきにくいでしょ(ダメージ云々の問題じゃない。最強だから)。
なお、以降シンジの友達は胃薬になります。
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