VS第8の使徒。旧名サハクィエルくん。何であそこに落下しようとしたのか、そこが分からない。とにかく使徒だからビーム撃つくらいできるよね!
何かのフラグが立った気がする。
「使徒落下中出撃準備中……と」
今置かれている現状を少し前に読んだ漫画のタイトルにヘタクソに
研究施設から戻ってきた直後、ミサトからエヴァでの出撃を命じられたシンジ達。アスカは意気揚々と出撃に頷き、綾波は表情1つ変えないままに零号機ゲージへ向かった。流石のシンジも否やとは言えず、アスカとは対照的なほどのローテンションでゲージへと歩を進めた。いい加減プラグスーツの不快感への慣れを感じてきていることに気づいて、辟易とした。
NERVによる観測では、今回の使徒は宇宙から隕石の如く落下しているという。攻撃はおろか光や電磁波すらも遮断する強力なA.T.フィールドを展開しているため、スクリーンに映されるその姿は真っ黒な球。そのため姿態観測はできず、あらゆる面でぶっつけ本番と言える戦いになる。
各機体は少し離れた場所に配置されており、パイロットは既に搭乗済。あとはミサトによる出撃の合図を待つのみとなった。
「使徒に対してこのやり方が通じるのか、悪いけど実験台になってもらうよ」
シンジはコクピット内のレバーを強く握り、前方を見据えた。
エヴァ各機はクラウチングスタートの姿勢で待機している。落下地点予測から合流地点は決定済み。各機はあらゆる障碍を無視してひたすら真っ直ぐに駆けるのみである。事前の準備などないため、『蒼』による移動は不可能。シンジは息を吐いて呪力を練り合わせた。
『──作戦、開始』
3機は同時にスタートを切った。エヴァの質量に大地が沈み、加速が遅れるも、地を揺らしながら走り出した。同時に背部のアンビリカルケーブルが外れ、内部電源に切り替わる。いつも通り、制限時間は5分だ。
「っ!」
スタートで僅かに初号機が遅れる。シンクロ率の差だ。自身のイメージが動作に反映されるまでの伝達が、シンジはアスカや綾波よりも遅れてしまうのだ。
シンジのシンクロ率は、初めてエヴァに乗ったあの日よりも低めの24.7%である。綾波やアスカは60〜70%、調子が良ければ8割を叩き出すことがあるにも関わらずである。シンジの精神的自立の度合いが子供離れしているためだろう。他にも原因はあるのだろうが。
それでもシンジがアスカや綾波に劣らない動きができるのは、彼が呪力を巡らせているからだ。内側に呪力を介することでカバーしているのだ。
目下の建物を踏み倒し、アスファルトを踏み砕き、路上に止まった車が弾き飛ばされていく。最高速は音速に近く、衝撃波が後方を扇状に吹き飛ばしていった。
山を越え、水田を越えた。呪力温存を考え、空を飛ぶことはしなかった。単純に面倒だったというのが本音だが。
「アスカ、綾波! 僕は着いたけど、君たちは!?」
『っ、あと少しよ!!』
『まだ』
シンジたちはあの施設での交流で、シンジからの一方通行ではあるが、呼び捨てできる程度には互いを知った。根暗のシンジには大躍進とも取れる。それでもまだ距離は遠いが、そこはシンジにとってさして問題ではない。
空を見上げれば、青と白の只中に黒い何かがいる。光すらも通さないゆえに、真っ黒なものとして目に映るのだ。
『なによ、予想より早いじゃない!』
アスカがそう呟いた。半ばヤケクソ気味である。
仕方ない、シンジはしばらく持ち堪えなければならないことを理解した。いくら自分が戦えようと、その限度はある。
瞬間、黒い殻が壊れてゆくのをシンジは見た。バリバリと消えてゆき、使徒の実態が表れてゆく。
「っ、なんて大きさだよ」
目に悪そうな色である。間に黒を挟んだ虹色の球体は、大きく翼を広げた。一目見てその大きさに驚くも、やることは変わらないと頭を振った。
手を掲げて、A.T.フィールドを展開した。相も変わらず無下限が付与されているが、全くもって好都合だ。師である五条と違い、無下限のオート選別はシンジにはできない。シンジのデフォルトでは、無下限は物理的実体のみが絡め取られる。エネルギーや呪力はスルーされてしまうが、今は問題ない。
そんなシンジの脳内で、簡単ながらこの戦いの大まかな流れが組み立てられていく。
「兎にも角にも、都合が良いとは言え、2人がいない間は倒せやしないから、ね!」
無下限付きのA.T.フィールドに使徒が接触し、使徒の落下が押し止められた。このまま耐えられるか否か。
その折、使徒の真ん中から人型が出現した。手を伸ばして初号機に触れようとしているのだ。しかし物理的に触れることは無下限が阻んでしまう。シンジは手を伸ばす使徒の姿を見て、やるなら今だと決めた。
A.T.フィールドを意図的に緩め、使徒と初号機の手を絡めた。その瞬間加わった巨大な質量に初号機の肉体が悲鳴を上げる。シンジはそれを無理矢理抑え込み、歯を食いしばって耐えた。使徒はここぞとばかりに押し込もうと力を込めている。シンジはそれを見ることなく、試そうとしていたことを実行した。
初号機から呪力が奔る。肉体強化の目的でエヴァの内側を廻るそれとは別だ。エヴァを覆うように青い呪力が迸る。質量に耐えながら呪力を練りあげ、全身に力を込めていく。
「ぐう、っ」
シンジがかねてより取り組んできた呪力の精密制御。まだ甘い部分はあるが、術式を通さない分には及第点だろう。そうして使徒の手を握る初号機の手に呪力が纏わり、使徒の手すらも覆わんとした。
「予想通りだ!」
その瞬間、呪力に触れた使徒の腕が解けた。まるで崩れるように消え、だが解けた腕は瞬く間に再生した。そして再び初号機の纏う呪力に触れ、また崩れてゆく。幾度か繰り返し、偶然などではないと確信を得たシンジは、隙を見て再びA.T.フィールドを張り直して耐久戦に持ち込んだ。使徒の腕は元通りに再生し、またも無下限に捉われていた。
だが、次の瞬間。
「っ!!」
使徒が口を開き、眩いばかりの光線を撃ち出した。シンジが実体であると認識できない光のエネルギーは、辛うじてA.T.フィールドで防ぐことができたものの、A.T.フィールド自体の耐久力は削られた。
それを知ってか知らずか、使徒は光線を連射していく。シンジは手札を切ることを躊躇いはしなかった。
初号機は掲げたままで左手を動かし、人差し指と中指を立てた。コクピット内のシンジも同様である。言うまでもない、これは掌印である。縛りに従って術式に通されたのは反転術式。よって術式はその効果を反転させ、使徒の眼前に赫く収束していく。
「──術式反転『赫』!」
開放されたエネルギーは、落下していた使徒が空に吹き飛ばされるほど。とは言え大きなものではなく、吹き飛ばした距離は10メートルにも満たないが、それで十分。
再び落下が始まるまでの間に、零号機と弐号機が揃ったのだ。
「よく分かんないけど間に合ったわね!」
「どうするの、碇君」
「僕が受け止める。2人でコアを叩いてくれ」
綾波が指示を仰ぐと、間髪入れずにシンジはやることを伝えた。
「あたしに命令するんじゃないわよ、七光り!」
「じゃあこれ以外の案はある? あるにしたって似たり寄ったりでしょ。この中じゃ君たち2人の方が身軽だし、僕の方が受け止めるには都合が良い」
「……仕方ないわね!」
方針が一致したところで、使徒が寸前にまで迫る。羽を広げたその大きさは山を跨ぐほどであり、コアさえ壊せば倒せる使徒の特性に有り難みすら感じてしまう。
ただシンジが気になるのは、これを倒した後のこと。
「ミサトさん、近辺で壁代わりになるものがあったら余さず立てておいて下さい」
『……そうね、分かったわ。信じてるわよ、シンジくん』
「……はは、これは今日のご飯、気合入れなくちゃ、ね!」
初号機は改めてA.T.フィールドを展開し、使徒を受け止めた。A.T.フィールドを貫こうと手を伸ばす人型に、横合いから零号機と弐号機が飛びついた。正面からではシンジには分かりづらいが、よく見れば人型の周囲にコアが飛んでいた。
使徒はコアに危険が迫ったのを悟り、さらには一向に破れない目の前のA.T.フィールドにしびれを切らしたのか、広げた羽の縁を変形させていき加速しだした。
「マズい! アスカ、綾波! まだかっ!?」
「っ、うるさい! この、ちょこまかとっ!!」
「コアが動き回ってて捉えきれないわ」
本能か知能か、おそらくは後者だろうがなんて面倒な。シンジはそうごちて、再び掌印を組む。シンジも、もはやなりふり構ってなどいられなかった。
「アスカ、綾波、一度離れて!」
「はぁ!? 何言ってんのよ!」
「弐号機の人、碇君の言う通りにして」
シンジに従うことを渋ったアスカだが、即断した零号機が弐号機を引っ張る形で強制的に離脱した。弐号機と零号機が首を回して初号機の方を向くと、アスカと綾波は見たことのない何かを見た気がした。
「何よ、あれ……」
「呪い……」
それは初号機から霧散した青い何かと、使徒の目の前にあるコアとは違う赤い何か。アスカは呆けたように呟き、綾波はふと思い至ったようにボソリと紡いだ。
その一方でシンジは、間をおかずに再び『赫』を発動させ、2
──もう『赫』を放っても距離を稼げない。なら、これが最後!
「2人とも、最後のチャンスだ! なんとかしてくれ!!」
「っ、分かってるっちゅーの!!」
「うん、分かった」
シンジはA.T.フィールドを展開する限り呪力を消費し続ける。最大出力での2度の『赫』による呪力消費は、例え初号機による増幅があろうと馬鹿に出来ない。残された呪力は無下限の展開維持に回すべきだと判断し、シンジは後を託した。その間にも光線がA.T.フィールドを攻め続けるが、シンジは第六使徒との戦いで会得した多層A.T.フィールドを展開して耐えていた。
「残り1分切った!」
内部電源が切れるまでに決着を付けなければならない。当たり前で、言うまでもないことだ。シンジは声を張り上げ、アスカたちへラストスパートを促した。
焦燥を滲ませるエヴァパイロット達。対して使徒本体は無下限に捉われて前に進めない。必死に眼前のA.T.フィールドに手を伸ばし、そして届かない。
「こんの、大人しくしてろ!!」
弐号機はプログナイフを突き出すも、コアはするりとそれを躱して動き回る。忙しなく目で追うも、その軌道を予測するのは不可能に近かった。シンジに余力が有れば『蒼』かA.T.フィールドでコアを停止させられたかもしれないが、生憎そんな余裕はない。
零号機もコアを追うが、まるで捕まらない。ふと初号機を見やれば、明らかに押されているのが分かる。
「……」
綾波は、覚悟を決めたように使徒を見据えた。そして零号機はある一点のみを見つめ続けた。
「っ!!」
その空間にコアが入った瞬間、神速と形容すべき速さで手を伸ばし、コアを掴み取った。
「ぐう、っ!! 早く、!」
コアを掴む手が赤熱し、同時にシンクロする綾波の腕も赤く染まる。その痛みは常人の想像を絶するも、綾波は鞭を打って耐えた。
そしてアスカも、それに応えないわけにはいかない。
「オラァァァァっ!!」
一瞬呆気に取られてしまったものの、再起動を果たしたアスカは直ぐ様プログナイフをコアに突き立てた。しかしコアはまだ壊れず、零号機から逃れようと震える。アスカは舌打ちを一つこぼし、もう一方の手でさらに掌底を放ってプログナイフを押し込む。
「これでどうだぁぁぁっ!!」
ダメ押しにもう一撃。膝のブレードで追撃をお見舞いすると、コアはその動きを止めて、溶けた。
シンジはそれを見た瞬間、なけなしの呪力を振り絞って3人各々を包むようにフィールドを展開した。無理矢理呪力を捻り出した影響で出血や吐血をしたものの、その次の瞬間には光の十字架を伴う爆発が起こり、あたりは赤い水に包まれてしまった。
莫大な体積の水は津波の如く広がってゆき、先々の街を飲み込もうとした。
「壁……?」
シンジのA.T.フィールドにより爆発から逃れた零号機の中で、綾波が外界を見てそう呟いた。シンジがミサトに頼んだのは、これを想定してのことであった。ミサトは簡単に予測できたことを、使徒を倒すことに傾倒して忘れていたことに情けなさすら感じていた。
赤い津波はせりあがった壁や建物が盾となって大部分の勢いを削いだ。蒸発を待たず、それらはジオフロント内の放置された区画に垂れ流される形で処理され、街は事なきを得た。
「…………っ」
そんな中で、アスカは恨みがましい目をしながらシンジのことを思い浮かべた。電源の切れた暗いコクピット内で、アスカはレバーを殴りつけた。
──あたしはこんなになってるのに、なんで、なんであんなヤツが……っ!
初めて顔を合わせた時も、海洋研究施設を見学した時も。エヴァの操縦では負けない自信があるというのに、アスカは心のどこかでシンジが強いと認めかけていた。お世辞にも男らしいとは言えず、声も顔つきも女の子のようにすら見えるというのに。
そして使徒との戦いを経て、心の底から認めてしまった。碇シンジは心も身体も、戦いも強いのだと。一足先に使徒と相対し、仲間が来るまで奮闘したのだろう。一歩退くことも視野に入れる冷静さも持ち合わせ、零号機パイロットもそれに従っていた。信頼もまたアスカとは桁が違うように彼女は感じた。彼女は自他共に認めるエリートであるにも関わらず、ポッと出のパイロットに持って行かれた。
しばらくするとエヴァ各機はNERVに回収され、パイロットも外の空気を吸うことができるようになった。プラグスーツを脱ぎ、窮屈さから解放されてシンジは一息ついていた。男性更衣室には当然1人である。
一方女性更衣室ではアスカが綾波に詰め寄っていた。
「えこひいき、あんたさっき何か言ってたわよね。七光りのあれ、知ってるなら教えなさい」
「あれって、何?」
「あれはあれよ! 七光り、バカシンジがやってたやつ! 青い何かと赤い何か!」
少し苛立った様子で声を荒立てるアスカに、ややあって思い当たる節があった綾波は、知っていることを語った。
「碇君は呪い、呪術って言ってた。碇君はエヴァパイロットである前に、呪術師だって」
「呪い? 呪術師? 何よそれ、オカルトなら他所でやりなさいよ」
「けど、事実。五条っていう目隠しをした人が、それで使徒を倒した」
「……あー、もう訳わかんないわ」
アスカは第六の使徒との戦闘を知らないゆえ、そう思うのも無理はないだろう。五条サトルという規格外、呪術師という常識の埒外の存在を思い知ったあの日のことは、シンジと五条に行われた事情聴取も含めてデータベース上に例外的に公開されている。NERV職員でなければ閲覧不可な代物だが、当然アスカはそれを見ることができる。
そのことをアスカは知らないが、だが今のアスカには強くならなきゃという、強迫観念じみた渇望があった。
例え呪われることになろうと、躊躇うことなど有り得なかった。
呪術廻戦のキャラ全出しして少し外伝みたいなの作ろうかなとか思ったり思わなかったり。ただ出るだけじゃ何の意味もないので。
さて、感想欄で聞かれたのでここに追加で書き足しますが、『なぜ呪力に触れた使徒の身体が崩れたのか』という話です。別段隠しておくことでもないので。
ここでのキーワードは『使徒は正の呪霊』、『呪力には数学の考えが応用される』でしょうか。
一般にアダム系の使徒は生命の実を持ってますので、生命力、すなわち反転術式に近い正の呪力によって、肉体の末端に至るまで構成されています。その質や量は人間の比ではありません。さらに感情を持たない使徒は、感情から生み出される呪力に対して耐性を持ちません。
一方、呪力は負のエネルギーでありますが、反転術式の生み出し方で分かる通り、数学的な考えが応用できます。ちなみに反転術式は原作曰く、(-1)×(-1)=(+1)で作られます。
すると何が起こるかというと、使徒の肉体そのものである正の呪力と、初号機を覆う負の呪力がぶつかると、計算では(+1)×(-1)=(-1)が成り立ち、接触したそばから正の呪力が負の呪力に変わっていきます。負の呪力に耐性を持たない使徒の肉体は、負の呪力に耐えられずすぐに壊死するように崩れた、という感じです。
もちろん、ただぶつけただけではこんな現象は起こりません。反転術式の生成が出来るシンジが、そうなるように呪力をコントロールして仕向けたため発生した現象です。これはこれでとんでもない難易度なんですが、五条先生はシンジにこれ以上を求めています。
ガバガバなのは許してください(土下座)