今更ですが、ここから先は隔週にしていきます。一週間あっても納得いくクオリティに仕上がらないこと、私生活が割と重石になってるのが大きな理由です。
全く話が進まないのはご愛嬌、でも呪いのことを進めとかないと今後の展開に関わるので、どうかお許しください。
なんていうか五条と夏油の会話って不思議とテンポいいんですよね〜。
──呪いは、人の心から生まれる。
呪術師──五条サトルが語るそれは、あらゆる呪術師が知ることであり、そして呪いが人の在る限り消えないことを意味する。
知恵の実は感情をもたらし、そして感情が呪いをもたらすのなら、ゆえに呪いもまた知恵の実を持つ存在なのかもしれない。
「なんでもいい。人の負の感情を種火にして、呪いは火を灯されるんだ。人の心から生まれるってのは、そういう意味だよ」
嫉妬、憎悪、殺意、悲哀、恐怖。人間1人が抱くそれは、所詮種火に過ぎない。
だが人の恐るべきところは、弱い個が群れ、強い群となること。種火に種火が寄り添い、最初の火は大きくなっていく。灯されたそれは炎となり、母たる人を焼き尽くさんとする。
呪術師は人知れずそれを知る者。どれほど強くとも、呪術師とて一介の人に過ぎず、故にその身に灯るのも種火でしかない。しかし彼らは術式というの名の炉を持っていた。
際限なく湧き出る薪を焚べ、故に決して絶える事のない火。それをもって彼ら呪術師は、呪いを手にする。
「君らの年頃は特に、感情の揺れ動きが激しいから、僅かな種火っていうか、まあ要するにふとした切欠で呪力の制御を手放しかねない。だから、かなり厳しめの訓練やってもらうけど、大丈夫?」
「はん! 誰にモノを言ってるのよ、そんな訓練、乗り越えてやるわよ!」
「頑張る」
「……死なないように、ね?」
五条の語りにプライドと好奇心を刺激されたアスカは、意気軒昂にやる気を漲らせた。綾波もまた、握る手に力がこもっていた。
シンジはかつて自分が受けたこの手の訓練──修行のことを思い出しつつ、せめて彼女らが死なないようにと祈った。
だが、そんな蚊帳の外ぶっているシンジも、五条や夏油からみたら完全に当事者な訳である。
「シンジ、君には祈る暇もないはずだけど」
「サトルが言う通りだ。曲がりなりにもあの子たちの先輩なんだから、当然のようにこなしてね?」
「……は?」
シンジに課せられたのは、呪霊討伐。それも特級クラス。その呪霊の実際の戦闘力は一級レベルであるものの、術式を介して戦うことから特級扱いされている。
要するに今のシンジを試しているということだ。錆びつかない程度に呪霊を祓っていたシンジだが、彼の本業はあくまでも呪術師である。呪術師の仕事は回ってこないにも関わらずこの仕打ち、シンジは諦めた風にため息をつき、反抗はしなかった。夏油はそれを見て僅かに苦笑していた。
「まあ、そんな顔しないでくれシンジ。実はとある事情で、一時的に私とサトルは高専に戻ることになってしまってね。少し先の話にはなるけど」
「クソ面倒な上の連中に、天元様のあれやこれやを報告しなくちゃならないのさ。つーか今更だけど僕が行く意味ある?」
「溜まった仕事くらい処理してくれ。仮にも五条家当主なんだから貯められる量にも限度があるよ」
咎める視線を向ける夏油。向けられた側は少しも罪悪感を感じない──わけでもない。相手が夏油だからか、少々申し訳なさそうな雰囲気を滲ませていた。
少しどころかかなり珍しいその表情に、シンジは2人の深い友情というものを感じた。そしてそれと同時に、それが今の自分にないものだということを感じ、羨ましくも思えた。親友とも呼べる人間は、少なくともシンジにとってそう思える人間は、まだいなかった。
「悪かった、悪かったってば。でも、僕がこっちに来なきゃ使徒が何かも分からなかったろ? だからおあいこってことにしといてよ」
「それはそれ、これはこれ、だよサトル。ちなみに8割は私の私怨だけど」
さすが、五条相手にはとことん容赦の無い夏油である。とはいえ、私怨が混ざっているとしても正論には違いないのだ。
「代わりといったらなんだけど、乙骨がこっちに来ることになってる。組手とかの鍛錬には事欠かないと思うよ」
乙骨ユウタはシンジの先輩にあたる術師である。歳の差は一つもなく、しかしシンジを遥かに上回る実力を持つ、数少ない特級術師でもある。
呪術師としてのキャリアはシンジが上だが、実力至上主義のきらいがある呪術の世界では関係のない話。ほぼ同級生といっても差し支えない乙骨のことを、しかしシンジは五条に並ぶほどに尊敬していた。人間性の面では、あるいは五条以上に敬意を持っているのかもしれないが。
「やっぱり、特級術師は暇なんですか?」
「特級術師が出張るほどの案件もないってことさ。ま、平和になってるってことかもね」
呪術界の現状を思えば、それは皮肉というものだろう。呪いが衰退すれば、それと共にある呪術師もまた衰えていく。平和とは、シンジ達呪術師にとっては、滅びともいえるものなのだ。
「ま、そんなことはどうでもいいとして。先にシンジに伝えなきゃならないこともある。スグル、先に準備しといてくれない?」
「OK、やりすぎないようにね」
「シンジはそんなヤワじゃないさ」
嫌な予感を感じるシンジ。しかし逃げ出す手段はない。
同じ術式を持つ者と出会うことはそうそうない。ましてやそれが相伝の、五条家の無下限呪術ともあればなおさら。そんな世界にまたとない間柄でもあるシンジと五条。五条は何を伝えるのか。
横合いでアスカと綾波が、師弟である2人に目を向けている。
それに気づいた五条が忘れていたというように取り出したのは、シンジも世話になった呪骸──ではなく。
「これは、呪いを込めた石。僕の呪力が込められているだけのね」
手渡したのは、呪力を込めた石だった。
「あんな風に言っておいてなんだけど、君たちは制御がどうこうとかいう話をするより前に、呪力とは何かってとこから始めなきゃならない。頭で理解するのと、体で理解するのと、両方ね」
五条が言うことは要するに、石に込められた呪力を、石を割ることで解放してアスカたちに流し込む。そうして無理矢理呪力を体感させるということである。これにより、眠っている呪力がわずかながら目覚める可能性もある。
石を割るのはシンジの役目だ。押し付けられたとも言う。
「今の僕はこれだけしか手持ちがないから、なくなったらシンジに都合してもらうといい。コントロール訓練のついでだし、出来るでしょ?」
「いきなりですね。まあ問題ないですけど」
「流石。今度ユウタにあの呪骸を持ってこさせるから、この子たちに使わせといて」
アスカと綾波は、怪訝そうにそれを見つめながらも、呪いを手にする者としての自身の立ち位置を理解した。碇シンジの立つ場所は、遥か遠く。今立つこの場所は、シンジが走り抜けた場所でもある。
五条は2人の傾向を良いものだと感じ、それ以上は何も言わなかった。そして改めてシンジに向き直り、首根っこを引っ掴んだ。
「えっ」
五条は無下限呪術を起動。瞬間移動が如く、瞬き以下の速さでその場から消えた。
綾波は珍しく驚いた表情を見せ、アスカは何処ともなく虚空を見つめていた。
夏油は2人に別れを告げ、転がり込んでいた五条の家へと足を向けた。
「ただいま」
そしてその後、シンジが帰ってきたのは、日付も変わろうとする深夜であった。その姿は汚れに塗れており、ボロボロであった。
アスカと綾波は何があったのかと詰め寄ったものの、ボロボロのシンジはほぼ無意識に風呂などをこなして布団に落ちた。
ミサトは酒の回った顔で珍しげにそれを見ており、アスカと綾波は追及を諦め、同じく布団に潜り込んでいった。
呪術師は、狂ってなければ務まらない。
彼女らは人の道を外れているのかもしれない。しかし、呪いの世界ではまだ足りない。人であろうとなかろうと、彼女らはまだ、呪いの世界では常人であることを、知ることになる。
呪いの女王と共に。ーー乙骨憂太、参戦。
それはそうとアスカと綾波に術式があれば、どんなのがいいんでしょうか。(もし、感想で触れようとすると消されるかもしれないので悪しからず)
マリさんとカヲル君が息してないのは、次回多分蘇生させる()です。