日常回だと思った?残念、ネタが書けなかったから進めるべ。
あと人気が流石に根強かったナナミンと、乙骨君が見参。
ところで皆さんは悠仁が使ってた夜蛾学長のあの呪骸、可愛いと思いますか?笑
その日、日本から遥か海の彼方にて。アメリカと呼ばれる国のある施設が消し飛んだ。
NERV第二支部と呼ばれた施設は、消滅という言葉が相応しいほどに跡形もなかった。同施設で起動実験が進んでいたエヴァ4号機も同様に消滅した。
その報せを受けたNERV本部は大慌てとなり、あらゆる伝手を以って情報を集め、原因や影響の調査にかかりきりとなった。
「やはり、エヴァ4号機が爆心か……」
「次世代型開発データ収得が目的のテスト機だ。何が起きてもおかしくはあるまい」
「本当に、事故なのか……」
結果、エヴァ4号機に原因があると断定。司令部に昏い影が降りた。同時に様々な思惑が、エヴァンゲリオンに絡み、飲み込んでゆく。
──そしてその影は、平穏な日常にも、足を伸ばしていた。
某日、第3新東京市近くの駅にて。
「お久しぶりです、乙骨先輩」
「久しぶり。元気そうで良かったよ」
碇シンジはその場所である人物を迎えた。
特級呪術師・乙骨ユウタ。
年齢はシンジの一つ上だが、その実力は紛れもなく特級。シンジを上回る才と、五条サトルを超える呪力量。そして、特級過呪怨霊にカテゴライズされる『呪いの女王』・折本リカに呪われた被呪者でもある。
自分の力量内ならば術式を模倣することができ、基本あらゆる状況に対応出来る万能さと、数少ない常識人であることから、しばしば扱き使われている苦労人でもあった。
年が近いこととその人柄もあってか、シンジは乙骨に対してかなり心を開いていた。
「……それにしても」
「ん?」
「なぜその人も一緒に……?」
シンジが目線を向けたのは、乙骨の背後。折本リカではなく、れっきとした人間。白いスーツを着こなすその姿は、見間違うはずもない。
「ああ、夏油先生からの提案でね。羽根伸ばしてこいってさ」
「……久しぶりです、碇君」
「お、お久しぶりです、七海さん」
一級呪術師・七海ケント。
デンマーク人の血を引くクォーター。元サラリーマンでもあることから呪術界きっての常識人とされ、その戦闘能力の高さから、乙骨と同じくあちこちで任務に奔走している。
強制クリティカルの術式である『十劃呪法』を操り、どんな相手にも有効打を与えることができる。
シンジは、七海と話すことが多くない。同じ一級術師であっても、七海風に言えば、『大人と子供』なのだから。
「それで、僕たちは五条先生が借りたっていう部屋に住めばいいの?」
「えぇ。大概は揃ってますし、綺麗にはしてあります。あの人たち、なんやかんやで自活能力はあるんですから」
「こちらの呪霊の様子はどうなってますか」
「ほとんどが三級以下の雑魚で、偶に準二級や二級クラスが現れるくらいです。準一級以上は、こっちじゃ僕は知りません。五条先生たちが勝手に払ってたのかもしれませんけど」
「なるほど」
家までの道すがら、事務的な内容も交えた雑談が交わされる。高専周辺にはないNERVの高層建築に興味津々な乙骨は、ところどころ少年らしく目を輝かせていた。
構図は、保護者の七海と子供の乙骨・シンジ。誰が見てもそうにしか見えなかった。
「それにしても、京都とは随分違う景色になってるね」
「まあ、こっちは訳ありの場所ですから。この辺り、地下にも建物が仕込んであって、有事にはそれが地上に
「未来に生きる都市、というには、少々物騒というわけですか」
「使徒が来れば、破壊を止める術を常人は持ち合わせないので」
乙骨とはまた違った目で、七海もこの街の異質さに関心を抱いた。純然たる科学は、呪いとは対照的なものゆえだ。しかし、その本質にあるものは、呪いと同じ。人の持つ感情が、原動力なのだ。
「シンジ君、呪霊討伐の進み具合はどうだい?」
「特級は、この都市の外にでも行かないと見つからない気がします。さっきも言いましたけど、ここの呪霊は雑魚しかいませんし」
──この状況の、それも渦中の最中にいる碇君に、そんなことを課すだろうか。特級昇格はそう簡単ではないと分かってるはず。
七海は考える。楽観的だが、五条サトルは現実を知っている。果たしてその真意はどこにあるのか。
「碇君、その特級呪霊の特徴について、あの人は何か言っていましたか?」
七海はシンジにそう問いかけると、シンジはため息を吐いて、何もないと答えた。五条先生のことですから探すことも任務の内かもしれない、とも。
七海はシンジがそう納得しているのを見て、これ以上深掘りするのを止めた。心労を背負いたくはなかったし、五条サトルのことだから本当にそうなのかもしれなかった。
そうこうしているうちに、しばらく腰を落ち着けることになる住まいにたどり着いた。高専の寮よりも断然キレイで広く、七海の家に比べて無駄のない機能性に優れた作りともいえる。
「出費は全部五条先生に押し付けましょう。どうせ余ってるでしょうし」
「ですね。あの人の財布なら罪悪感もありません」
「あはは……」
さも当たり前のようにそう言うシンジと七海に、乙骨は苦笑いを浮かべる。スーパーやコンビニ、その他の店の配置を教えて、その日は終わり。2人と別れたシンジは相も変わらず賑やかな葛城家のドアを開け、夕食作りに勤しむのだった。
「碇。お前の息子は、とことんお前と反りが合わないようだな」
「……」
「計画はどうするつもりだ?」
碇ゲンドウは黙してどこかを見据えたまま。冬月も、何も言わなかった。
ふと、徐に冬月が1枚の紙を手にとった。
「バチカン条約か。弐号機はまだユーロの管轄にあったが、これを呑むのか?」
彼らは計画のための参謀術数を巡らせる策士であるとともに、一組織の長でもある。取り付けられた契約に、否やと唱えることは出来ない。
バチカン条約は、そんな契約に等しい面倒事の1つだ。一国の持つエヴァの数に制限を設ける、行きすぎた力を持てないようにするための約束であり、これには目下の厄ネタたる3号機が関係していた。
NERV北米支部にて建造・開発が進んでいたエヴァンゲリオン3号機が、此度の北米支部壊滅を受けて、日本に譲渡される形である。
「既に弐号機の凍結は決定している」
「それは、初号機でなくて良かったのか? ゼーレの補完計画はもとより、我々の補完計画にすらも、お前の息子は大きな綻びを生むぞ」
「初号機は補完計画において、最も重要なキーの1つだ。凍結なぞ不可能だ」
頑なにゲンドウはそう言った。それは冬月も分かっていることだ。特別な思い入れのある綾波レイと、それ以上の想いを抱き、かつ計画の中核にある初号機は、ゲンドウにとって変えるべくもない存在であり、しかし初号機パイロットは替えのきかない存在である。もとより弐号機とそのパイロットは
しかし、ゲンドウは上手く進まない計画に、あるいは自らに従順でない息子に、引き攣るような苛立ちを感じる。
父のこの様子を知れば、シンジはひっそりとほくそ笑むのだろう。
「フン、あれとて目の前でまざまざと友人を殺されれば、流石に堪えるだろう」
「息子とはいえ、手厳しいな」
シンジはまだ、死を知らない。大切な人の死を知らない。ゲンドウの今は、全てそれから始まっているというのに。
だが、ゲンドウは知らない。呪術師というものを知ってはいても、その本質を知らなかった。ただ、それだけなのだ。
呪力を知覚することはできるようになった。元々視えてはいたが、その精度と範囲を視野外にも広げ、かつ裡に眠る呪力が分かるようになった。
となれば、続いてくるのは呪力を練るという段階である。幼い頃のシンジはかなり苦労したらしいが、聡明な2人なら、とシンジは思っていた。
「あーもう! 何よコレ全っ然上手くいかないじゃない!!」
「……難しい」
シンジの予想とは裏腹に、その修行は難航していた。
感情表現が豊かにすぎて、蓋をすることが難しいのが、アスカの難点である。少なくともシンジはそう考えた。呪術師にも激情的な人間はいるが、それらは分かっててそういう風に振る舞っているのであって、何も考えずに感情を発している訳ではない。しかし、アスカはそうではない。子供に要求するには酷なことかもしれないが、呪いの世界に踏み込むからには、やってもらわねば始まらない。
綾波の場合は、まだ感情を持て余し気味なのが原因だ。覚えたばかりのものは、扱いが難しいのが道理。そういう意味では慣れさえすればいけそうなので、アスカよりも結果が出るのが早いのかもしれなかった。
「あはは……」
「呪術師では滅多に見ない、素直な子供たちですね。個人的にはあまり踏み込んでもらいたくはないのですが……」
乙骨は苦笑いをこぼし、七海は苦い顔を隠さない。呪術師はクソ、というのは彼の考えだが、常人から見れば間違いないのだ。そんな世界に踏み入れることは、出来ればやめてもらいたい。七海ケントの本心である。
「まあ、彼女たちが決めたことです。七海さんには悪いですけど、僕はこれでも期待してるんですよ」
「……今は、そういうことにしておきましょう」
ため息を1つ置いて、七海はそう言った。そして七海は、乙骨が持っていたある人形に目をやった。
「乙骨君。それは、夜蛾さんの呪骸ですね?」
乙骨が手にしていたのは、不細工な熊と思しき人形だ。不自然に長い腕の先には、ボクシングのグローブのようなものがある。シンジはそれを見て痛い記憶を思い出してしまった。乙骨も覚えがあるのか、少し苦笑した。
「ええ。僕も、多分シンジ君もお世話になった呪骸です。七海さんもこれ使ったんですか?」
「いえ。私は使ってませんね。そもそも呪力を練る段階をすっ飛ばしましたので」
「ああ、なるほど」
それだけ、初めからできていたということだろう。才能云々は別としてではあるが。
「先輩、それをアスカ達に使わせるんですか?」
「五条先生からもそう言われたからね。うすうす察してたでしょ?」
「そりゃあ、まあ……」
というわけで、と前置きした乙骨は持ってきた呪骸を綾波とアスカに手渡した。呪力を練ることは、少なくとも僅かに、ほんの僅かに出来ている。それは文字通り無理矢理捻り出しているとでもいうべき様相で、呪術師としてはとても見ていられないものだった。それをより正確に、余裕を持って意識的に、あるいは身体が覚えて無意識的に引き出せるようにするための訓練にこの呪骸を用いる。
要するに、殴られて覚えろという肉体言語の修行である。
「いたっ!? 何よコイツ、いきなグフッ!!?」
「痛い」
「勿論、僕たちが使ったものより結構マイルドにしてあるよ」
「マイルド……」
痛めつけられる2人を、シンジは遠い目で見つめた。七海はここにいない五条に対して呆れたようにため息をついていた。
「ちょ、バカシンジ! これ、やめ、いてててで!?」
「殴るの、やめて」
暴れる人形は、アスカを容赦なく痛めつける。シンジたちが経験したそれより和やかだが、それでも痛いものは痛い。アスカは力ずくで押さえつけようとするが、それはまがりなりにも呪骸である。只人の力では無理なことだ。
「はぁ……」
「あーあ」
しばらく騒がしいんだろうなぁ、とシンジは遠く思いを馳せた。
そんな日が続くことしばらく、エヴァパイロットたちの下にある報せがやってくる。
それは、エヴァンゲリオン弐号機の凍結決定の報せだった。
〜呪術高専にて〜
五条「………?」
夏油「どうした?」
五「いや、いま少し不自然に呪力が揺らいだような……?」
夏「……私には分からないけど、サトルがそういうなら、何かあったのかもね」
五「なーんか変な感じだなぁ。スグル、仕事片付けたらもっかいシンジのとこ行こうぜ」
夏「暇だったらね」
〜第三新東京市にて〜
シンジ「っくしゅん!」
アスカ「なに?風邪でもひいたの?」
綾波「碇くん、大丈夫?」
シ「や、大丈夫。噂でもされてんのかな?」
ア「あんたバカァ?あんたを噂するやつなんていないわよ」
シ「ならいいんだけど」
ア「そんなことよりバカシンジ。あんたこの前転校生のメガネとデートしてたって本当なの?」
シ「デート?メガネ?……ああ、マリのこと?」
綾「呼び捨てにしてる……」
ア「……ふーん、私たちがあれこれ苦労してる間に、いい身分じゃない」
シ「え?ちょ、アスカ?綾波?」
ア「問答無用! 洗いざらい吐いてもらうわよ!!」
綾「逃さない」
シ「ちょ、まっ、力強っ!?やめ、」
あ"〜〜〜〜〜っ!?
ミサト「微笑ましいわねぇ。シンジ君、後ろから刺されないようにしないとね」
ミサトはぐび、と缶ビールを飲み干した。
なお後日、綾波とアスカ、それぞれとお出かけをするシンジの姿をトウジとケンスケが目撃しているらしい。