呪術師・碇シンジはエヴァパイロットである   作:けし

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はえーこのシンジ君強すぎワロタw

なお、使徒の攻撃力は呪霊でいうとスケール的に漏瑚だとか宿儺レベルでいいのかなとお悩み中。


参. 呪術師と使徒

 エントリープラグがエヴァンゲリオンに挿入された。中のシンジは何も見えていない。真暗な中、ルーティンと化した体内での呪力転回を行なって平静を保っていた。

 

『エントリープラグ注水』

 

 赤木博士いわく、L.C.L.と呼ばれる液体。肺に満たすことで液体呼吸というものが可能になるらしい。衝撃緩衝、精神防壁等の主要な役も担うのだとか。肺に液体があるのは気持ち悪いが、慣れるしかないだろう。

 このエヴァとやらを介した呪力操作はできるのだろうか。バレなければ、多少のズルは問題ないだろう。中にいると分かるが、このエヴァには生命の持つエネルギーが感じられる。呪力が反転した正のエネルギーに近いか。となると、このエヴァというものも生きているのか。

 シンクロ率とやらは、無線から漏れる声を拾うところには29.7%。高いのか低いのかイマイチだ。

 そして、準備が整う。シンジは習慣的に、呪力を身体中に巡らせる。

 

『発進!!』

 

 襲いくる猛烈なG。ミシミシ、という音が聞こえんばかりの力に耐えながら、数瞬後。ふと気づいたら地上にいた。

 L.C.L.が電化することで投影される眼前の景色は、なるほど確かに、大きなエヴァンゲリオンから見える景色らしい。アリのように見える足元の車が、まるで自分が強くなったような錯覚をさせる。

 

『シンジ君、まずは歩くことに集中して』

「イメージするんでしたね、確か」

『そうよ、難しく考える必要はないわ』

 

 歩く、とりあえずは足を出す。するとほんの僅かなタイムラグを挟んで、左脚が前に出た。続いて右脚。少しバランスが悪いか。重心が思ったより上らしく、まだ慣れない。

 

『う、動いた…!』

『暴走もありません!』

『シンクロ率も安定してるわ。流石、というべきかしら』

 

 こうして同じスケールになると、近くで暴れているデカブツの姿がよく見える。肩より上のない人型。手足は細く真っ黒。妙な形の仮面がついていた。呪霊とはまた違った、無機質な恐怖感が煽られるイメージだ。

 

『使徒接近!』

『シンジ君、早速だけど戦闘よ。真ん中の赤いコアを破壊すれば勝ちよ!』

「なるほど…」

 

 弱点は明確らしい。目の前の敵はその弱点が露出している上、今のところ無防備だ。

 

『っ、高エネルギー反応!』

『避けてシンジ君!』

 

 咄嗟にしゃがみ込む。その直後に頭上を掠める熱線。背後の建造物は抵抗なく崩壊する。

 

 ──攻撃力は呪霊とは比にならない! なら、防御の方はどうだ? 

 

 シンジは初号機の掌ほどある崩壊したビルの破片を握り、それを使徒へアンダースローで投擲した。

 ミサトやリツコ、ゲンドウすらもその行動に目を見張る。

 猛烈な速度で飛ぶ単純な質量攻撃。まともに当たればダメージはあるが、使徒相手には意味がない。当然、軽々と飛んで避けられてしまい、こちらへと猛スピードで落下してきた。

 

『、シンジ君!』

 

 シンジは重心を落とし、いつもの構えを取った。敵を特級クラスの呪霊と同等と仮定し、再生能力などもあるとみた。事実それは合っているが、果たして呪霊と同じ戦い方が通じるのか。

 顔面へ向けて手を伸ばした使徒の手を躱し、伸びていた手をその勢いのままに掴み。

 

「、せー、の!」

 

 背負い投げ。使徒の背部が大地と重たいキスをする。同時に重い音と振動が都市を揺らし、さしもの使徒もその行動を止めた。隙と見たシンジは初号機の肩部より飛び出したプログレッシブ・ナイフを掴み、それをコアへと振り下ろした。

 

「は?」

 

 ガギィン! と大きな音を立てた。ナイフとコアの間に張られたバリア。シンジの知らない防御方法。A.T.フィールドと呼ばれるソレは、ほぼ無敵にも等しいシールドだ。

 直後、かざされた使徒の両手から飛び出したパイルのような攻撃を後ろに跳んで避けた初号機の中で、シンジは舌打ちを漏らした。

 

『すごい…』

『あんな動きが出来るなんて…』

『シンジ君、随分戦い慣れしてるわね』

『迷いがないわ。バイタルにも慌てた様子はない』

 

 時折漏れる無線音声を完全に無視し、ナイフを構える。先のバリアを突破しなければ、このナイフを突き立てることも出来ない。

 

「ミサトさん、あのバリアは何ですか」

『あれはA.T.フィールドよ。使徒が持つ強固堅牢なバリア』

「突破法はあるんですか?」

『A.T.フィールドは同じA.T.フィールドで中和できるわ。エヴァもまたA.T.フィールドを張れるの』

「ふざけんなよ、コイツ!」

 

 シンジはもたらされた後出の情報と、隙を与えぬ使徒の突進の両方へ悪態を吐いた。

 光のパイルによる距離感の曖昧さ。手の延長線上にしか現れないそれをなんとか躱す。だが、距離を取ろうにもすぐにそれを潰されてしまい、余裕が取れない。

 

「コイツ、常にバリアを張ってるわけじゃないみたいだ」

 

 しかし、結局はシンジがA.T.フィールドを展開できなければ勝ちは拾えない。さらに言うと、それを会得しなければ、恐らく今後も現れるだろう使徒とやらには対抗できない。

 エヴァがイメージで動くからには、エヴァに命令して張るというものではないだろう。それはエヴァの一機能としてではなく、パイロットであるシンジがA.T.フィールドを張る意思を持って初めて展開できるものになる。

 ゼロからイメージを作り上げ、実践する余裕などない。かといって、これまで身を置いてきた呪霊戦ではバリアという概念などない。

 

 ──無下限使った無限の展開はできるのに…。…ん? …あ、無限…。

 

 六眼を持たないながらも、シンジは五条サトルが常時展開している無限の膜を張る修行をやったことがある。原子レベルの呪力制御などというどこかの木原以上の精度が要求されるそれは、六眼ありき。オートでの選別も出来ず、流石のシンジといえど数秒の展開がやっとだった。

 その時のイメージはシンプルで、術式を介して無限を内包した呪力を身に纏うイメージだった。内に留まる無限を、外に出すと言ってもいい。当のA.T.フィールドはよく分からないが、身を守る堅牢なバリアをその無限と同様に内から外へ放つものだろうか。

 よく分からないがきっと似てる。似てるったら似てる。──ならば。

 

 目を閉じて、集中。術式ではなく、結界ではなく、バリアのイメージ。堅牢強固な、完全無欠の障壁。それを──、展開する! 

 

 初号機が手を翳す。使徒が、その突進が、止まった。

 

『これは…!』

『A.T.フィールド……!』

 

 たしかにバリアはある。A.T.フィールドの力場が観測されており、確かに使徒は止まっている。

 

「違う、これはA.T.フィールドだけじゃない…。無限が、僕の無下限も展開されてる」

 

 誰も分からないだろう。使徒はA.T.フィールドによって止まっているのではなく、なぜか同時展開された無下限によって、無限に遅くなっているのだ。結果、使徒の突進は無限に遅延され、遅延対象になかったその衝撃のみがA.T.フィールドに伝わっていた。

 だが、これは好機。初号機はこのまま使徒に接近し、右手のナイフを、左手での顔面攻撃を囮にして隠しつつコアへと突き刺す。間のA.T.フィールドは直前に解除。反応が遅れた使徒のコアに、狙い通りナイフが突き刺さる。

 

 ──このコア、固い! 

 

 瞬時に、そして無意識に呪力を回して身体強化。シンクロ率が然程ではないからか、強化のほどはそれほどでもなかったようだが、十分。瞬間、コアは完全に砕け散った。

 使徒はその形が崩壊し、嫌な予感がしたシンジは再び背後に跳躍。もう慣れたといわんばかりにA.T.フィールドを展開し、それを足場にして後退。その数瞬後、巨大な十字の爆発が巻き起こり、あたりを飲み込んだ。

 

「使徒の反応、消失!」

「やった! 倒したのね!」

「エヴァの損害も軽微…、やるわね、彼」

 

 司令室でミサトやマヤ、リツコらはその戦績に賞賛をあげる。それを下に見ながら、ゲンドウはモニターを虚無のままに見つめる。

 

「ゲンドウ、これは…」

「どうやら、俺の知らない間に何かあったようだが…。問題はない。計画に変更はない」

「………」

 

 ゲンドウは冬月コウゾウを連れて司令室を去った。思い当たる節の無い碇シンジの変化に、碇ゲンドウは少なくない戸惑いを覚えていた。

 

「…っぁああー」

『シンジ君、お疲れ様。鮮やかなお手並みだったわよ』

 

 ふざけんなクソが、と悪態をつきたくなるのを飲み込み、呪力を解く。A.T.フィールドも完全に解け、ようやくひと息。

 シンジが思い返すのは呪力を放出する感じで展開されたA.T.フィールド。呪力は結局のところ負の感情の発露であるから、A.T.フィールドもおそらく感情が絡むシステムなのだろう。そう当たりをつけ、とりあえず要実験の印を脳内で押した。

 

『歩くだけでなく、ほぼ完璧に戦闘をこなして見せたわね。あなた、戦いの心得でもあるの?』

「まあ、喧嘩紛いのことが多かったので」

『あら、そうだったの』

 

 嘘だ。なにせ呪霊との戦いは喧嘩のレベルではない。とは言えさっきの戦いも、エヴァの痛覚フィードバックシステムのせいで結局生身で戦うのと大差はない。呪霊と使徒、両者との戦いを比較するのは間違いか。

 ぶっちゃけた話、このエヴァンゲリオンに対して外部から干渉できるのが怖い、というのがシンジの心情である。

 呪霊や呪詛師との戦いではシンジは腹を貫かれるだとか、手足の怪我や穴が空くことは割とよくあった。自己補完の一環として弱冠14歳で反転術式を使えるシンジにしてみれば怪我などより、その外部からの干渉が最も怖いのだ。実際問題、暴走だとか操作権の乗っ取りとかが起こったらもうシンジにはどうしようもないのだから。

 そんな益体もないことを考えつつ、ミサトの案内に従い(かなり不安はあったが)、エヴァの格納庫に辿り着いたシンジは、エントリープラグから降りることが出来た。

 

「おかえりなさい、シンジ君」

「どうも」

「暗い! 暗いぞシンジ君! あれだけ自由にエヴァを操って、使徒倒したんだから、もうちょっと誇ったらどうよ!?」

「や、別にどうでも。それと赤木博士に話があるんですけど」

 

 くってかかるミサトをあっさりスルーし、リツコに話を投げるシンジ。そのスルー力に、コミュ力に自信のあったミサトは崩れ落ちたという。

 

「あら、何かしら?」

「イメージの反映にズレがあるように感じました。ほんの少しですけど」

「そう…、分かった。改善しておくわ」

 

 研究者としては、使用者のフィードバックが最も使える資料。そう言う意味では碇シンジという少年は好ましく思えた。

 

「怪我とかはないの?」

「特には。まあ問題ないですよ。この程度なら、自分でどうにか出来ます」

「申し訳ないけど、念のために検査を受けてもらうわ。怪我の有無もそうだけど、エヴァ搭乗前後での肉体情報の確認が主ね」

「…それ、本人の前でいうことですか」

「あなたなら、大丈夫だと思うけど?」

 

 そういったリツコをジト目で見ながら、また一つ、シンジはため息を重ねた。

 

「分かりました。僕は荷物を取ってきますから、後で呼んでくださいね」

「分かってるわ」

 

 ──達観、と言うべきかしら。諦観とも取れるけど、やっぱり年不相応に大人びてるわね。あれじゃあ、ミサトの方が子供みたいだわ。

 

 リツコはミサトが聞いたら大ダメージだろうことを考えつつ、眼前のエヴァを見上げた。

 モニターで分かってはいたことだが、改めて見ると装甲板へのダメージは軽微。エヴァそのものも、ほとんどダメージを受けた跡がない。

 

 ──いや、これは治ってるというべきね。エヴァの自己修復能力かしら。

 

 リツコはそう結論づけ、シンジの言うラグの改善に取り掛かった。

 

 

 

 




暴走どころか圧勝したわww

無下限シンジ君やっぱ強すぎゼーレもゲンドウもびっくりだわwww
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