呪術師・碇シンジはエヴァパイロットである   作:けし

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呪術要素は今のところシンジ君のみが関わりを持ってますが、もしかしてもしかするとシンジ君以外にも呪術に関わりのある人が現れるかも分かりません。未定よ未定。


あと、タイトルは意味浅です。テキトーなのよさ!


肆. 導く人

「ほら、ミサトさん」

 

 自慢のコミュ力の完全敗北に打ちひしがれるミサトの首根っこを引っ張って立ち上がらせたシンジは、どことなく面倒臭い時の五条先生に似ているなぁ、などと思い出していた。

 

「しっかりしてくださいよ。僕の住処とか、そのあたりも全然知らないんですから」

「ああ…、そうだったわね…。…ヨシ! 報告書まとめなきゃね! シンジ君、ついてきて!」

「うっわぁ、立ち直り早いなぁ…」

 

 根明のミサトの、この切り替えの早さを羨ましく思いながらも、シンジはミサトの後を追った。

 辿り着いたのは居住区と思われるフロア。シンジの荷物は僅かなもので、家具家電は部屋にほぼ備え付けらしいので、生活は自炊でどうにかする算段だ。

 ふと横目に、ミサトがうんうん唸って、建物内の電話ボックスで女性らしからぬ体勢で大声の電話をしているのを捉えた。

 

「えーと、ミサト…さん?」

「っし、シンジ君! あたしの家行くわよ!」

「……は?」

 

 突然の方針転換。さっきまでここで一人暮らしと説明されていたはずのシンジから漏れた言葉は当然、呆れの意味をご多分に含んだものだった。

 NERVの調査によるシンジの過去に、ミサトが少なからず同情した結果の選択である。家族を知らないシンジにとっては、家族との生活というものはおそらく五条サトルとの生活のそれに近いだろう。だが、あくまで彼との関係は師弟関係とでも言うべきであり、父と子のそれとはやはり異なっていた。実際、彼は五条サトルと共同で生活していたわけではない。

 当然ながら、NERVの調査書には呪術師のことなど記されてはいない。それを隠匿しながら、傍目から見たら普通に生活しているようにしたのだから。

 ミサトが一人暮らしの寂しさを紛らわす目的もあっただろう。が、その本質は同情。憐れみ、憐憫と言ってもいい。それらはわずか14歳の子供に対して抱くのは仕方のない感情だった。

 

「いきなりですね、何のつもりですか?」

「んー、ちょっちね。ま、細かいことはいいじゃない! さ、あたしの家に行くわよー!」

「もう、この人はホントに…」

 

 無茶振りは五条サトルでいくらか慣れていたシンジは、まあ人と暮らすのもアリかと、呪術師にはない人情味を見せるミサトを見て思った。母か、あるいは姉か。年齢差はその程度で、おおよそ一回りの差。それがシンジにどんな変化をもたらすのかは、まだ分からない。

 

「諸々の準備は任せますよ、ミサトさん」

「まっかせなさーい!」

 

 どこまでも陽気なミサトにあてられたのか、シンジも思わず笑みをこぼす。それは苦笑ではなく、いつ以来かの、期待に対する笑み。

 それを見たミサトは、シンジの笑った顔を見て。初めて彼に子供らしさを感じた。

 

「シンジ君、そんな顔で笑うのね。かわいいじゃない」

「へ? 僕、笑ってました?」

 

 シンジはミサトの言葉にそう返した。ミサトはその返事に何かを察しつつ、「そーよ、笑ってたの」などとさらに陽気に笑う。

 僅かに頬が持ち上がっている感覚が、違和であるはずなのにそう思えない。笑う、という行為そのものがシンジにはあまり馴染みがなかったのだ。

 

「そっか…、笑ってたんだ…僕」

「そーよ、もっと笑いなさいシンジ君!」

 

 ミサトはそう言って、車まわしてくるわねー、と駐車場へ向かっていった。

 シンジは徒労になったエネルギーを少しだけ惜しみながら、エントランスの壁に背中を預けて滑るように座り込んだ。

 ふぅ、と息を吐く姿は14歳の子供とは思えないもの。

 そのまま脱力した指先でプレーヤーを操作し、いつものように耳にイヤホンをかけ、目を閉じた。

 リフレイン。それは虚無に浸る、ある種の自己暗示。戦闘後の回想は、呪術師碇シンジのルーティンでもあった。

 

 10年越しの肉親との対面。無関心というわけではない。シンジの中には愛情に対する飢えがある。だが碇ゲンドウという父親はそれを与えることはないだろうし、シンジにとっての対象ではない。彼にとっての父親とは、自分を捨てた者というその一点に収束していた。

 しかし、呪術師になったがゆえに、父のことを少しだけ理解できるようになった。呪いとは負の感情。碇シンジは年頃ゆえの多感さと呪術師としての感覚から、感情に対して敏感な節がある。極端に振れた感情はもとより、蓋をされた感情もなんとなく察することが出来る。

 父の目を、黒いプラスチック越しに見て。なんとなくわかったのだ。

 

 僅かな作動音。S-DATが曲目を進め、同時にシンジはリフレインを終える。ゆっくりと目を開ける。音楽は途中から流していたので、経過時間は2分ほどだろうか。

 目が痛いほどの青空。傾きかけた陽光が人型の影を背後に作る。自らの影を見つめ、手慰みとばかりに影絵を作ってみる。

 

 ──犬、兎、鳥、蛇。

 

 手だけでなく、腕まで使ってちょっとリアルに。

 しばらくそうして遊んでいると、ぬっ、と犬の影が重なった。

 首を回して振り返ると、片手で犬を模して微笑むミサトの姿。

 

「かわいい遊びしてるじゃないの」

「ミサトさん…。遅かったですね」

「ゴメンゴメン。にしても、影絵、随分上手ね?」

「そうですか?」

「あたし、犬くらいしか知らないわよ。しかも片手の。シンジ君のは両手でしょ?」

 

 あとで教えてネ☆──と明るいトーンでミサトが言う。

 いいですよ──と立ち上がりながらシンジが返す。

 

 碇シンジは少しだけ、ワクワクした自分を自覚した。

 

 ────のだが。

 

「ミサトさん…、これは?」

「アハハー、ちょーっち散らかってるけど気にしない気にしない」

「ちょっと……? これが……?」

 

 車に揺られること十数分ほど。ミサトの自宅のあるマンションに着いたというので、少しの高揚感と共に部屋の扉を開いた瞬間のシンジの心中は、『汚ね……。あなた女性ですか?』という至極尤もなものだった。

 床は足の踏み場もないほどに散らかされ、ゴミ袋と思しき大きな袋があちらこちらに散見された。机の上にはインスタント食品の容器と酒瓶、ビールの空き缶が多数。酒瓶に至っては専用棚なのかと思えるほどに並んでいるのも見えた。銘は大半が『獺祭』だ。缶ビールは全て『YEBICHU(ヱビチュ)』で、踏まれたのか何なのか潰された空缶が転がっている。

 シンジは荷物を端にそっと置き、あははーと頭をさするミサトを見据えていった。

 

「…ミサトさん。片付け、しましょうか。ね?」

「………ハイ」

 

 その後、家事に関する一切の権限をシンジが手中に収めたのは、言うまでもないだろう。

 酒にもかけられた制限にミサトが反発したが、シンジの笑顔の下に黙殺された。

 

 

 




シンジ君は家事もこなせるスーパー14歳!お世話されたい人は手を挙げてー!

なおここでは腕っ節もありますよ。
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