呪術師・碇シンジはエヴァパイロットである   作:けし

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エタらないよう頑張る所存です()

こうして書き上げたのを読むと、原作シンジくんはメンタルがやばかったんやなって分かるネ。


陸. その怒りは誰のために

 起床。日が出る兆しを見せる時間に布団を出て、既知の日課をこなしていく。第3新東京市の開拓も兼ねてランニングの距離を伸ばしていたりするが、日課に費やす時間は変わらない。呪霊との戦いは、半端なスタミナと力では死あるのみなのだ。

 シンジは座り込んだベンチから真白なビル群を見上げて、息を吐く。自分が守ったもの、と言われても実感がない。散々ビルを壊してきた記憶しかないのだ。

 

「さて…と」

 

 よっこらせ、と立ち上がる。ミサトにエヴァの訓練があるなどと言われ、まああるよねそりゃあ、と承諾してNERV本部へと向かう。

 エヴァを動かすわけには行かず、ならばと用意されたのは、エヴァの視界を再現したシミュレーターだ。学生服のまま座り込んだシンジは、訓練って何するの、とシミュレーターを統括していたリツコに問いかけた。

 

「訓練内容は銃火器の扱いよ。近接は問題ないとして、遠くから攻撃できれば、被害を受けるリスクが減るわ」

『A.T.フィールドってのを貫通する銃火器でもあるの?』

「それはないわ。けど、A.T.フィールドを張ってない時に撃ち込めばダメージはあるはずよ」

『希望的観測…』

 

 シミュレーターながら、照準のシステムは現実と変わらない。反動などもシミュレートされている。だが、照準を合わせればエヴァの射撃は当たるくらいには有能なシステムだ。

 

「当たらないわね…」

「当たってないわね」

 

 ミサトとリツコが2人して呆然。シンジの銃火器の扱いがど下手くそ過ぎて、銃弾が当たらない。当たらない。当たらない。ガガガと連打される銃弾が飛び込むのは、ターゲットではなく建物であった。

 集弾率も下の下。弾の無駄遣いが目に見える結果である。

 

「えぇ…、どーすんのよリツコ…」

「これは…、想定外ね。初めから上手く行くとは思ってなかったけど、一向に慣れる気配がないもの。これなら投擲武器とか、そっちの方がいいかもしれないわね」

「プログナイフは? あれなら多少は量産利くんじゃないの?」

「アレも割と値が張るのよ。貴女、一回エヴァの武装関連の書類読み漁りなさい」

「面目ない……」

 

 リツコはミサトのガバガバな金銭感覚に呆れの目を向けながら、シンジの訓練結果に頭を抱えた。

 

『当たんねぇぇぇ!! 当たるかこんなもの!! 目標をセンターに入れてスイッチとか、まずセンターに入らねーよ!!』

「シンジ君、荒れてるわね」

「まず銃を構えた時のブレが大きい。それに反動を吸収できてない。下手に踏ん張るせいで、衝撃が逃がせてないわ。射撃中のブレが大きすぎて目標を捉えきれていない」

『説明してよぉ!! コレ乗って、銃火器持たされて! じゃああれ撃ってね♪ …じゃあねぇよ!! スイッチ押したら撃てるからって言われて押したら衝撃がえげつないじゃん!! 説明したくないんだったら説明書よこせよ!!』

「………荒れてるわね」

『挙句「目標をセンターに入れてスイッチを押すだけ」とか言ってさぁ!! 入らねーって言ってんでしょーが!?』

「シンジ君…」

 

 無茶振りに慣れていてもこれは酷い。五条先生より酷い。シンジは外面を捨てて荒れ果てていた。

 

「おつかれシンジ君、訓練終了よ」

『あ? おわり? やっとですか』

「ミサト。あの子、凄むと結構怖いのね」

 

 リツコはゲンドウとは違う威圧感に、少し冷や汗を流した。

 シミュレーターを降りたシンジは、不機嫌な雰囲気を隠さない。

 

「リツコさん」

「な、なにかしら?」

「使い方くらい説明しましょうよ、ねぇ?」

 

 翌日用意された説明書は、かなり分かりやすかったとかなんとか。

 

 

 

 ──────

 

 

 

 

 ──とまあ、そんな訓練が続くこと数日。気づけば第3新東京市に越してそれなりの時間が経っていた。

 学校でのシンジは、普通にノートを取り、普通に授業を受けている少年である。時折見せる物憂げな表情が女子の間で密かに人気になっているのを本人は知らない。

 その物憂げさの中にリフレインするのは、第3新東京市の風景である。

 あの時見た、ビルが飛び出す景色。夕方、世界が赫く染まる中に現れた非日常。ここの人間にしてみれば日常なのだろうが、シンジにとっては驚くべきものだった。

 

 ──これが、あなたが守った光景よ。シンジ君。

 

 守った自覚はない。戦う時、シンジは意識を呪術師としての自分に切り替えるが、その際シンジは周りのことを最低限しか考えない。無下限呪術を使い戦闘すると周りが悲惨なことになることが多々あり、諸々を考えているとシンジはまともに戦えないからだ。そんなシンジが『守った』と言われても、当の本人は信じられない。そもエヴァに乗ってる時ですら地面を踏み砕き、建物を破壊したのだ。シンジにしてみれば人死が無いのが奇跡である。

 そんなことを考えながら授業を受ける。学校で授業を受けるという感覚は新鮮で、同年代の人間が周りにこんなにいて、自分がそれに混じって同じことをやっているという光景に、少しだけ温かい何かを感じたりしていた。

 そんな中で、ねっとりと暗い視線。これは敵意というべきか。

 

 ──恨まれてる? 何かしたかなぁ…。

 

 思い当たる節はない。引っ越して数週間で早くも恨みを買う身となった。不幸だ…、などと内心で呟いて、弁当を食べる場所を探しに外へ向かう。

 

「おい転校生」

「…なに?」

「…ちょっと面貸しや」

 

 ジャージ姿で目つきの悪い同級生が、ヤクザのような言動で言った。シンジとしては興味ないので無視しても良かったが、最近の面倒な視線の正体がこの男だと悟ると、ついてこいという背中に軽ーくついていった。あとシンジは、このジャージ男の横でにやけている眼鏡に対し妙にイラっときた。

 

 やってきたのは建物の影になっていて、凡そ誰にも見つからないような所。んーベストプレイス。シンジの感想は抜けていた。

 

「昼登校かい、転入生とあの女子」

 

 あの女子とは綾波レイのことだ。あの日ストレッチャーで運ばれてきた幸薄そうな青髪の女子。その姿形にシンジは妙な既視感を覚えていた。

 それを気の所為と忘れることにして、意識を目の前の男子に向ける。

 

「やんごとなき事情ってやつだよ」

「ほぉ。…しっかし、なんやずいぶん減ったなぁ」

「疎開だよ、トウジ」

 

 ──教室の空いた机はそれか。

 シンジの内心はそんなものだった。15年という時間は人が営みを形にするには余りある時間で、土地に愛着を持つにも十分だ。無機質なビル群を故郷と言える子供たちも多い。そんな15年をバラバラにしてみせた使徒という存在。その破壊力、その恐怖は土地を捨てる決断をするには十分といえる。その決断が疎開という形でシンジたちの目に入ってくる。

 

「転入生。お前なんか知らんのか?」

「なーんにも。話せることはないよ」

「ほー、なんか知っとるゆうことやな」

 

 割と目敏いな。まあ隠したつもりもないけれど。

 あからさまに知っているふり。だが、この年代ならさらっと聞き流すだろう言葉にちゃんと反応した。シンジは少し評価を上げ、ひっそりと呪力を練った。なんとなくだが、この後が予想できたからだ。

 

「ここは誰も来ぉへん。存分に話せや」

「話せることはないってば。君が聞きたいのはそれじゃないでしょ?」

 

 読めた感情は、怒り。シンジにとってありふれた負の感情だが、子供ゆえの純粋なそれを感じるのは久々だった。

 

「潔ええな、なら聞いたるわ。…あの時デカいロボットに乗って滅茶苦茶やらかしたんは、お前か?」

「そのロボットがどんなのかは知らないけど、ビルよりデカい紫のロボって言うなら、心当たりはあるかな」

 

 シンジは感情を逆撫でするような言葉を選んで投げかける。直情型という見込みは正しかったらしく、少年の額に青筋が浮かんでいる。

 だが、少年はそれを爆発させるのを抑え、静かな声で言った。

 

「ほぉ…、ならワシはお前を殴らなアカンわ」

「理由は?」

 

 シンジは畳み掛ける。少年は脅しをかけているつもりなのに飄々と顔色一つ変えない目の前のなよっとした男子に、さらに怒りを募らせる。

 

「お前らが無茶苦茶やったせいで、ワシの妹が怪我して入院しとんのやっ!」

「なるほどね…」

 

 至極真っ当な。それは家族愛と銘打たれた怒りだった。

 シンジはその怒りに息をつき、そうして目の前の少年を見据えた。

 

「一発だ。たしかに、殴る権利くらいはあるよ」

「なら遠慮なくいかしてもらうで!!」

 

 バギィッ、という殴打の音。見事に左頬をぶん殴られた。口の中を切り、端から血が流れる。痛いが、気にはならない。

 しりもちをつき、どさりと音を立てる。血を手の甲で拭って、少年を見上げた。

 

「…納得した?」

「納得いくわけあらへん。も一発殴らせい!」

「僕は一発だけって言ったんだ。それ以上は僕も殴り返す」

「やれるもんならやってみぃ! 転校生!」

 

 今度は右頬。大上段から振り下ろされる拳は、歯を折りかねない。シンジはまだその拳を追い、掴んで受け止めた。

 

「なっ」

「君が家族想いなのは分かったよ。分かったけど、もう一発殴るならそれは君の妹がやることだと思う。それでも君が殴りたいなら、僕は容赦しないよ」

「っ…」

 

 シンジは僅かに殺気を漏らしつつもそう警告した。感情をよく知る呪術師だから、その感情は家族であろうと肩代わりできないと知っている。シンジの言葉に、少年は言葉を詰まらせる。

 しばらくの間の後、拳を引いた少年は、少しだけ罪悪感を感じながらその場を去った。

 

「もうええわ。今度からは足元よう見て戦えや」

「肝に銘じるよ」

「チッ、腹立つやつやなお前。名前聞いたるわ」

「自己紹介したはずだよね。いいけどさ。僕は碇シンジ」

「ワシは鈴原トウジや。今の言葉、忘れんなや」

「ちょ、トウジ!?」

 

 メガネの少年が慌ててトウジを追いかけていき、その場はおひらき。

 しばらく痛みを噛み締めていたシンジは、建物の陰から誰かが来たのを目にした。

 

「…非常召集。私は先に行くわ」

「…ああ」

 

 淡々とそれだけ告げて、空色の髪をした少女は立ち去った。

 

「綾波レイ…」

 

 無感情。それがシンジの抱いた感想だ。正も負もない。レイ…零なのである。表情から、心から、言動から。感情が揺らがないし、何なら感情を感じられなかった。

 人形のような表情という言い方がしっくりくるだろうか。シンジは左頬をさすりながら、反転術式で口内の傷だけ治癒をする。顔の腫れは、治さなかった。

 

「…いったいなぁ」

 

 シンジは大の字に寝転がり、そう呟いた。

 

 

 




無下限呪術の『極の番』について考える今日この頃。

綾波は感情がゼロってわけじゃないですが、ゼロに近いくらいの振れ幅みたいな。からくりサーカスだとしろがね的なサムシング。
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